物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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446話 始まりの一歩

 メアリは退屈を持て余して遊びに向かったらしい。サラとシュテルから、そのように報告を受けた。なんだかんだで、活発な子ではある。だから、納得できる部分はある。

 

 とはいえ、状況が状況だ。ということで、メアリの様子をアクセサリーを通してうかがっていた。すると、メアリが魔法を使った反応が出てきた。そこで、急いで転移をして向かう。

 

 そこには、大勢の人が倒れていた。メアリやジュリアには傷一つない様子ではあるが、ジュリアの剣は血で汚れている。つまり、襲われたのだろうな。

 

 ひとまずは無事であるように見えるが、何かあったかもしれない。ということで、問いかけていく。誰か生きていないか、魔力で探りながら。

 

「メアリ、大丈夫か!?」

「あっ、お兄様。もう終わったの。ジュリアちゃんと、いっぱいやっつけたんだよ」

「メアリ様の敵みたいだから、片付けちゃったよ。何人か残しておいた方が良かったかな?」

 

 メアリは元気いっぱいに、ジュリアは落ち着いた様子で返事をしてくる。ひとまず、精神的にも問題はないらしい。見えないところにケガを負っている可能性も、なさそうだ。

 

 軽く息をつきつつ、これからどうするかを考える。全員死んでしまったとなると、情報を引き出せないな。生きていれば、脳から読み出すという手段もあったのだが。そこまで考えて、ある案が浮かんだ。

 

 もしかしたら、死体の脳からでも情報を抜き出せないか? 闇魔法を使って読み取ることだけなら、すでにできる。同じやり方を応用すれば良いのではないだろうか。

 

「そうだな、できれば……。いや、手段はあるかもしれない」

「何か思いついたの、お兄様? 面白い?」

「その前に聞きたいんだが、中心人物というか、指示を出していたやつはいるか?」

「うん。その人が、命令を出していたみたいだったよ」

 

 ちょっとだけ身なりの良い相手を指差しながら、ジュリアは返してくる。おそらく、指揮官か何かだろう。うまく情報を探ることができれば、黒幕にたどり着けるかもしれない。そんな希望を持ちながら、相手の頭に闇の魔力を侵食させていった。

 

「分かった。なら、ちょっと待ってくれ。……ふむ、依頼を受けた傭兵ってところか」

 

 どうにも、誰が裏にいるかまでは判断できなかった。報酬を餌に依頼を受けただけで、具体的に誰が絵図を書いたのかが分からない。完全に、使い捨てられている。

 

 裏取りもしていないあたり、傭兵の中でも凡庸な存在だったのだろう。まあ、仕方ない。

 

「すごーい! 言ってないのに、分かっちゃったんだ!」

「本当に、闇魔法って万能だよね。僕の無属性とは、ぜんぜん違うみたい」

 

 メアリは目を真ん丸にしていて、ジュリアはしみじみと頷いている。実際、闇魔法があるから俺は強い。無属性だったら、今ほど活躍はできなかっただろうな。

 

 とはいえ、だから無属性に価値がないかと言えば、話は別だ。単純な戦闘力において、とにかく強い。闇魔法メタ的な側面もあるからな。万が一ジュリアと戦うことになれば、負ける可能性も否定はできない。まあ、ジュリアが俺の敵になるなんて、あり得ないことではあるが。

 

「その分、無属性は威力が大きいんだがな。とはいえ、今回みたいな場合だと、闇魔法の方が便利か」

「メアリも、お兄様みたいなことができないかな?」

 

 首を傾げながら、メアリはこちらに質問をしてくる。闇魔法の場合は、直接頭に侵食する形で情報を抜き取っている。五属性だと、別のアプローチが必要になるはずだ。

 

 そうなってくると、良い案は思い浮かばない。というか、闇魔法以外にはそこまで詳しくないんだよな。

 

「どうだろうな。俺が分かるのは、闇魔法のことだけだ。フィリスなら、詳しいかもしれないが」

「あの人に頼らなくても、メアリがなんとかするの!」

 

 負けたばっかりでは、さすがに師事を乞おうとは思えないか。フィリスほど優秀な教師なんて、俺は知らないんだが。

 

 まあ、自分で試行錯誤するのも、それはそれで大事な経験だ。今は暖かく見守っておけばいいだろう。

 

「フィリス先生なら、できそうな気はしちゃうよね」

「ジュリアちゃん、どっちの味方なの!? もう、悪い子なんだから!」

 

 ジュリアは困った顔をしてこちらを見ている。メアリの怒り方は可愛らしいものではあるが、それは俺の妹だからだろう。ジュリアからしたら、明確に立場が上だからな。対応は難しいはずだ。

 

 ひとまず、軽く話をそらしつつ本題に戻してみるか。それが、都合が良い。

 

「メアリを守ってくれて、ありがとうな。やっぱり、噂が原因みたいだな」

「なんか、秘密を教えろとか言ってきたの。邪魔だから、やっつけちゃったけど」

「ああ、それで良い。メアリに攻撃しようとしたんだから、自分の身を守るのは当然だ」

「メアリ様の秘密ね。こっそりレックス様の服を着てみたこととか?」

 

 そんな事をしていたのか。魔力に包みこまれるのが好きみたいだし、似たような感覚を味わいたかったのだろうか。それとも、男の服が気になったとかだろうか。

 

 いずれにせよ、俺からしたら可愛らしい程度の話だ。メアリの年齢もあって、変態的な行為に使われたとは思えないし。恥ずかしい気持ちも、まあ分かるが。寂しかったにしろ、好奇心だったにしろ、自分をさらけ出すみたいな感じになるからな。

 

 実際、メアリは頬を膨らませている。ご機嫌斜めという様子。

 

「なんで言うの、ジュリアちゃん! お兄様には知られたくなかったのに!」

「僕はレックス様の味方だからね。誰を優先するかは、決まっているんだ」

 

 しれっと言っているが、俺のせいになっていないか? ジュリアが密告しただけの話で、俺には関係ないと思うのだが。まあ、厳密には俺の服は関わっているとはいえ。そんな怒るような話でもあるまいに。

 

「じゃあ、ジュリアちゃんの秘密も教えちゃうんだから! お兄様に笑顔を見せる練習をしているって!」

「そ、それは……。ち、違うんだよ、レックス様。雇い主には、しっかりした態度を取らないといけないから……」

 

 ジュリアは目を逸らしながら、軽くうつむいて言い訳をしている。普通にありがたい話ではあるのだが、本人視点では影の努力を明かされてしまった形だからな。

 

 まあ、これで痛み分けというのが良い感じなんじゃないだろうか。うっかりからかうと、からかい返される。いい関係と言える気もする。

 

「ははっ、メアリから反撃を受けてしまったな。これで、五分五分か?」

「メアリの味方をしないからなの! 次からは、ちゃんと言うことを聞くこと!」

「レックス様に迷惑をかけない範囲でなら、ね」

「メアリだって、お兄様に迷惑をかけたりしないんだから! 悪い子の秘密、もっと言っちゃうもん!」

「分かった、分かったから! レックス様、メアリ様を止めてよ!」

「あっ、ずるい! お兄様を味方にしようなんて、そうはいかないんだから!」

 

 そのまま、ふたりはこちらをじっと見てくる。その姿に、俺は笑いをこらえきれなかった。すると、ふたりともから、にらまれてしまう。

 

 困った事件もあったものだが、とりあえずふたりは傷ついていない様子。それだけでも、ありがたい限りだ。できる限り早く黒幕にたどり着いて、つまらない事件を終わらせたいものだ。

 

 そう思いながら、俺に飛びついてくるふたりをなだめる言葉を考え始めた。

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