物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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469話 進む計画

 王女姉妹との計画は順調に進み、いよいよ本番の日がやってきた。今回は転移も使わずに移動しているので、それなりに時間がかかったな。

 

 あくまで俺は部外者になってくるので、別の場所で見ることになっている。予定されている場所に向かうと、予想外の相手が居た。

 

「……歓迎。レックスは、私たちと見ていくと良い」

 

 フィリスと一緒に、先輩であるセルフィ、そして同じ闇魔法使いのミュスカが居た。

 

 まず、フィリスはメアリと模擬戦をして以来になる。ミュスカはルースと一緒に戦った時に会った。セルフィは、もっと前だな。ブラック家が襲われた時に、心配して連絡してくれたことがある。その時一回会ったくらいじゃなかっただろうか。

 

 あんまり会えていない相手が多いから、どうにも懐かしくなってしまう。これも、ミーアのはからいだろうか。どちらであれ、嬉しい限りだ。

 

「みんな、久しぶりだな。セルフィは、特に」

 

 フィリスは相変わらずの無表情で、ミュスカは人好きのする笑みを浮かべている。セルフィは、とても穏やかな顔をしていた。

 

 歓迎の意志が伝わってきて、とてもありがたい。みんなも、俺を大切に思ってくれていたのだろう。

 

「私のことは忘れてしまったのかと思っていたよ、レックス君?」

「立場が違うと、会うことは難しいからね。ね、レックス君」

 

 セルフィはからかうように、ちょっとトゲのある物言いをする。実際、あまり連絡も取れていなかったからな。返す言葉もない。

 

 そんな俺を、ミュスカはフォローしてくれる。今でも変わらず、優しいままだ。これからもきっと、変わらないのだろうな。そう思える。

 

「ミュスカの言う通りだな。とはいえ、心配させたのは悪かったよ」

「いや、元気なら良いんだよ。妹さんも気がかりだろうし、ね」

「……同感。ひとまず、私たちは観察するのが役割」

 

 とりあえず、セルフィは分かってくれたみたいだ。とはいえ、俺としてもこまめに連絡したいところではある。せっかく通話があるのだし、もっと話をしても良かったかもな。

 

 まあ、今はメアリのことだ。これからのことは、これから考えていこう。

 

 今は、ミーアが開会のあいさつをしているところだ。穏やかな笑みを浮かべて、落ち着いて言葉を発している。王女としての態度は、いつもと明らかに雰囲気が違う。どうにも、違和感があるな。

 

 まあ、よそ行きの態度が身内への態度と違うのは当たり前だ。慣れないままだと、問題だろう。

 

 ひとまずは、元気いっぱいのミーアのことは一時的に忘れてしまおう。それが妥当なところだ。

 

「そうだな。もう、始まりそうだ。やはり、ミーアはしっかりしているな」

「王女様だもんね。頑張っているのは、私にも伝わってきたかな」

 

 そんな話をしているうちに、最初に魔法を使う人が出てきた。一般的な三属性魔法といったところで、父も使っていたような技だ。

 

 フィリスの五曜剣(チェインブレイド)を大幅にダウングレードしたような感じだな。魔力どうしの反発を利用した爆発。俺の知り合いなら、大体は歯牙にもかけない技だろう。

 

「……開始。とはいえ、見る価値もない魔法も多い」

 

 フィリスは淡々とこぼす。世界でもトップクラスの魔法使いを感心させられる技は、そう多くはないだろう。とはいえ、見る価値もないと言い切るほどか。

 

 実際のところ、どの程度なんだろうな。まあ、よく考えたら、俺達の中では弱い方のシュテルやサラですら一番上のクラスだった。なら、フィリスが切り捨てても仕方ないのだろう。

 

「そうなのか? いや、よく考えたら入学した時点で上澄みだったな」

「レックス君たちのような特別さは、そう持てないものだよ。私が、カミラさんに勝てなかったようにね」

「でも、セルフィ先輩も強くなったよね。私も、手伝ったんだよ」

 

 やはり、俺の居ないところでも、いろいろと進んでいるんだな。みんなも、知らないうちに変わっていたりするのかもしれない。

 

 セルフィとミュスカは、どこで仲良くなったのだろう。あんまり、俺は交流を見たことがない気がするが。まあ、いろいろとあったのだろう。俺は、かなりの期間アストラ学園から離れていたからな。

 

「それは気になるところだ。とはいえ、今は見ることに集中したいところではあるが」

「……肯定。そろそろ、メアリの番。私としても、興味深い」

 

 フィリスの言葉に、あらためて舞台に集中する。すると、杖を持ったメアリが前に出ていくのが見えた。心の中で応援しつつ、俺はじっと見ていた。

 

「仮にも五属性だからな。それだけでも、見る価値はあるだろう」

「私としても、気になるところだよ。才能に劣る身としては、壊したい壁としてもね」

 

 セルフィが言ってすぐに、メアリは魔法を使っていく。いつもの竜巻だ。岩や雷、炎が暴れ狂い、範囲に入ったものをチリへと変えていく。

 

 竜巻は、風だけで岩どころか家まで吹きとばせそうなほど。その中で、岩が飛び回っている。まあ、受けた時点で終わりだと言って良い技に仕上がっている。メアリも満足げに頷いていた。

 

 メアリの番が終わったのを確認して、俺たちはまた雑談へと移る。

 

「カミラさんやエリナさんは、レックス君に勝ったって聞いたかな」

「ああ。俺の慢心も、一度打ち砕かれたよ。まったくもって、驚かされた」

「本当だったんだね……。私も、負けていられないや。カミラさんは、さすがだ」

「私も、だね。同じ闇魔法使いとして、まだまだ先は遠いんだから」

 

 セルフィは感慨深そうに、ミュスカは元気よく言っている。負けていられないというのは、俺も同じ気持ちだな。

 

「ミュスカの魔力は、前よりも高まっている気がするな。良い訓練ができているのか?」

「訓練だけではないかな。ただ、レックス君のおかげなんだよ」

 

 俺の目をまっすぐに見ながら言われた。何か一緒に努力したりはしていないし、ここ最近は話すことすら少ない。そんな状況で、俺のおかげだという。

 

 アイデアを出したりもしていないし、新しい魔法も見せていないとは思う。俺のおかげだというのなら、もちろん嬉しい。だが、理由としてはよく分からないのが実情だ。

 

「どういうことだ? 俺は、何もしていない気がするが」

「レックス君なら、どんな私でも受け入れてくれる。それなら、私はどこまでも強くなれるんだ」

 

 それなら、分かる気がする。強くなったことで誰かから拒絶されないかという考えなら。ミュスカが俺より強くなろうと、俺はずっと信じ続けるだろう。そして、ミュスカも俺を信じてくれている。

 

 だったら、強くなったとしても、ひとりにはならずに済む。みんなを疑う訳では無いが、俺とミュスカは同じことを考えているのだろう。

 

「そのまっすぐさが、まぶしいね。私も、まだまだだな」

「……同意。私も、刺激を受けている。本当に、悪くない」

 

 そんな事を話しているうちに、発表会は終わっていった。結局、あまり見るべきところのないというフィリスの言葉に同意するようなものだった。

 

 とはいえ、メアリ以外の番でも拍手は起こっていた。それも、けっこう大きく。なら、一般的な価値観では十分な魔法だったのかもな。

 

「これで最後か。どう見ても、メアリを超えるやつは居なかったな」

「表彰は、伯爵様がするんだね。あの人、ちょっと変な目をしているかも?」

 

 メアリに向けて、多くの褒め言葉を告げる。その中で、屋敷で歓待したいというような言葉もあった。これは、釣られたと見ていいだろう。こちらも、準備をしておかないとな。

 

「メアリさんを屋敷に誘っているように聞こえるけれど。おかしな人としか、言えないね……」

「やはり、そういうことか。いざという時には、手伝ってもらえるか?」

「……肯定。レックスの懸念は、理解している」

「闇魔法が必要なら、私に言ってね。レックス君のために、頑張るよ」

「微力ながら、私も手を貸そう。先輩として、ね」

 

 さて、敵はどう動くものか。注視しながら、俺の打つ手を決めないとな。

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