物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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471話 愛情の形

 ブラン家の当主を倒して、事後処理を進めていった。領地は事前に手を結んだ相手と切り貼りしていく形になった。

 

 そして、ミーアが噂に関する布告を流してくれた。反乱を企んだブラン家が、レプラコーン王国を乱すために流した噂だと。

 

 これで完全に噂の影響が消えるかは怪しいが、噂を信じるものは王家の敵というレッテルを貼れる。まあ、悪くない着地ではないだろうか。

 

 事後処理には王女姉妹だけでなく、ジャンやミルラ、モニカも駆けずり回っていた。フェリシアやラナにも手伝ってもらったな。

 

 それが終わって、ようやく一息つけるようになった。みんなにもお礼を言ったが、当事者であるメアリをねぎらうつもりだ。

 

 俺はメアリとふたりになったタイミングで、まっすぐにメアリの目を見ながら告げる。

 

「さて、これで全部終わったな。お疲れ様、メアリ」

「面倒だったけど、強くなれたの!」

 

 晴れやかな顔で、メアリは返してくれた。あんまり気に病んではいないみたいだ。ひとまず、ほっと息をつく。

 

 まあ、実際メアリは新しい魔法を覚えたし、それを使いこなしてもいた。強くなったのは、間違いない。

 

「それは良かった。悪いことばかりでは無かったのかもな」

「これからは、メアリがお兄様を守ってあげるの!」

 

 胸を張って宣言している。可愛らしいものではあるが、実際に相応の力はあるだろうな。戦力としては、今の段階でも相当優秀なはずだ。

 

 とはいえ、あんまり巻き込みたくない気持ちも否定はできない。可愛い妹だからな。とはいえ、頭ごなしに否定するのは絶対に違う。メアリの気持ちを大事にするべきだよな。

 

「ああ、頼りにしているよ。兄としては、妹を守りたい気持ちもあるが」

「メアリが困った時は、助けてくれるでしょ?」

 

 まるで疑っていないような純粋な目で、問いかけられる。俺は強く頷いた。

 

「もちろんだ。メアリは、とても大切な存在なんだからな」

「ね、お兄様。一緒に、お茶会をしたいの。オトナの証!」

 

 お茶会がオトナだと思うあたり、微笑ましい。ただ、いい機会だし受けておこう。ご褒美というか、なんというか。頑張ったで賞と言うと、少し軽すぎるか。

 

 とにかく、今はメアリが喜ぶこと優先だ。一番大変だったのは、メアリなんだから。

 

「分かった。じゃあ、メイドたちに準備をしてもらうか」

「うん! 楽しみにしているの!」

 

 アリアやウェスに伝えると、しばらく待つように言われた。急に仕事を増やして悪い気もするが、だからといって自分で準備するのは論外だ。メイドたちの役割を奪っては、確実に悲しまれる。

 

 なんだかんだで、みんな自分の仕事に誇りを持っている。ミルラたちも、マリンたちも。だから、奪うべきではない。

 

 そのままメアリと待っていると、アリアとウェスがこちらにやってきた。

 

「ご主人さま、メアリ様、用意ができましたよっ」

「おふたりとも、ご案内いたしますね」

 

 メイドたちに連れられて、中庭に用意されたテーブルについていく。お茶とお菓子が用意されていて、かなり美味しそうな感じだった。これなら、メアリも満足してくれるだろう。

 

 そう思ってメアリの方を見ると、目をキラキラさせていた。やはり、可愛らしい限りだな。この場を用意してくれたメイドたちには、しっかりと感謝しないと。

 

「ウェス、アリア、助かる。いつも、ありがとう」

「ありがとう、メイドさん。これで、お兄様と楽しめるの」

「ごゆっくりどうぞ。用があれば、お呼びください」

「兄妹ふたりで、楽しんでくださいねっ」

 

 そう言って、メイドたちは去っていく。今回がどういう場か、理解してくれているみたいだ。俺はともかく、メアリはふたりきりが望みだろうからな。

 

「気を使わせちゃったかもな。でも、今回はふたりきりの方が良いか」

「お兄様も、ようやく女の子の気持ちが分かるようになったの」

 

 普通の顔をして、そんな事を言われる。これまでは分かっていなかったとしか聞こえない。まあ、褒められていると思えなくもないが。ただ、メアリの顔は喜んでいるという風でもない。どちらかというと、普段の俺に呆れている方だろう。

 

「ひどくないか? いや、あんまり否定はできないが……」

「ね、お兄様。あーんして? メアリに、優しくね?」

 

 俺の言葉をスルーして、メアリは自分の要求を叩きつけてくる。さっきの話が続いていても困っていたので、俺は素直に受け入れる。

 

 お菓子を手にとって、メアリの口元へと運んでいく。

 

「分かった。ほら、あーん」

 

 メアリは小さく口を開けて、俺の差し出したお菓子を食べていった。ちょっとだけ指もくわえられて、変な感じもした。

 

 とはいえ、メアリは幸せそうにお菓子を食べている。そんな顔を見ていると、とても満たされた気持ちになれた。

 

「こうして食べると、いつもよりおいしい気がするの」

「それは何よりだ。メアリが楽しんでくれてこそだからな」

「お兄様は、楽しくないの?」

 

 小首をかしげて、そう問いかけられる。誤解をさせる言い回しだったみたいだな。反省しておこう。

 

 ただ、今はメアリのことだ。俺は心からの笑顔を浮かべて返事をする。

 

「もちろん楽しいぞ。メアリとふたりで過ごせるんだからな」

「なら、良いの。ねえ、お兄様。メアリのことは、好き?」

 

 目をうるませて、メアリは聞いてくる。なんだか強い感情が見える気がした。とはいえ、俺の答えは決まっている。迷わずに返す。

 

「大好きに決まっている。これからもずっと、な」

「じゃあ、キスしてくれる? ほっぺでいいの」

「それくらいなら、構わないぞ。ちょっと、じっとしてくれよ」

 

 メアリの頬に軽く手を添えて、逆側の頬に唇を当てる。ちょっと照れくさいが、これも兄妹のスキンシップなのだろう。メアリは目を閉じながら、ちょっとだけ唇を開いていた。顔から満足感が伝わってくる。

 

 そんなメアリは、目を開けてじっとこちらを見てくる。

 

「ねえ、今度はぎゅっとして。苦しくなっちゃいそうなくらいに」

 

 また、俺はメアリの言葉に従う。本気で痛くならないように、でもしっかりと抱きしめていく。

 

 メアリは少しだけ身じろぎをして、それから俺の胸元に頭を預けてきた。俺はメアリに合わせて、頭をゆっくりとなでた。

 

「分かった。なあ、メアリ。お前は今、幸せか?」

「うん。お兄様を感じるから。次は、魔力をちょうだい?」

「ああ。こんな感じでどうだ?」

 

 いつもより、しっかりと魔力を送り込んでいく。すると、少しだけ魔力を引っ張られるような感覚があった。

 

「ふふっ、お兄様の魔力、今ならちょっとだけ動かせるの」

「確かに、できているな。いずれ、俺の魔法も通じなくなったりしてな」

 

 おそらく、メアリは常に俺の魔力に触れていることで、動かし方を学んだのだろう。ずっとそばにあるものを意識し続けたはずだ。

 

 そして、俺の魔力に干渉できるのなら、理論上は俺の魔法に対策することも可能だろう。要するに、俺が魔法を使えないような形で干渉してくればいい。魔力を動かすのを妨害するみたいに。実際にできるかどうかはともかく、仮説としては面白いと思う。

 

 俺の言葉を聞いたメアリは、とても楽しそうに笑っていた。

 

「そうなったら、お兄様はメアリの言うことを聞くしかないの」

「ははっ、それは怖いな。どんな命令をされてしまうんだ?」

「今は内緒なの。できるようになったら、教えてあげるの」

 

 ちょっとだけ色気を感じるような笑みを浮かべて、メアリは言う。なにか思いついているみたいだ。まあ、悪いことではないだろう。実際に現実になったとしても、俺を傷つけるようなことはしない。それだけは、心から信じられる。

 

 だから俺は、素直に笑顔で返せた。

 

「じゃあ、楽しみにしているよ。メアリの成長を、これからも見守らせてくれ」

「うん! お兄様との未来のために、頑張っちゃうんだから!」

 

 俺にぎゅっと抱きつきながら、メアリは宣言した。きっと、メアリは立派なレディに育ってくれるだろう。そんな予感があった。

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