物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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492話 どこまでも先へ

 模擬戦をすることになって、俺たちは戦える場所へと移動した。剣を手にとって、戦う準備はできたと言える。

 

 ということで、近衛騎士たちを見回していく。

 

「さて、誰からやる? 俺は、いつでも良いぞ」

「じゃあ、あたしに譲ってもらうわ。もう、戦えなくなるかもしれないけど?」

 

 こちらに剣を突きつけながら、カミラは口を釣り上げていた。一回負けた時には、雷で大きな火傷をしたからな。回復する手段はあるとはいえ、あり得る話だ。

 

 とはいえ、簡単にやられるつもりはない。俺も、剣を突きつけ返した。

 

「ふふっ、楽しませてもらうよ。レックスなら、大丈夫さ」

「ここで反対すれば、野暮でありますな。では、見せていただきましょう」

 

 エリナは落ち着いた笑みを浮かべて、ハンナは優しく頷いている。ふたりとも賛成ということで、俺とカミラは戦いの準備を始めた。といっても、少し離れて剣を構えるだけなのだが。

 

 しばらく向かい合って、まずはカミラが動き始めた。

 

「じゃあ、いくわよ。電磁融解(ライトニングクリア)!」

 

 当たり前のように、初手から魔法と合一した雷の斬撃を叩き込んでくる。避けることは難しいし、防御魔法は吹き飛ばされることは実証済み。そうなれば、迎え撃つしかない。

 

 ということで、俺も同じような魔法を使っていく。

 

剣魔合一(トゥルーブレイド)……まさか!」

 

 ぶつかり合う直前に、ふと魔法の反応が消えた。そして後ろに気配を感じる。カミラは元の姿に戻っていて、そこからもう一度同じ魔法で攻撃してくる。

 

 俺は全力で魔力を高めて、なんとかしのぎきった。

 

「へえ、これで終わりはしないか。なら、続きよ!」

 

 カミラは魔法との合一を完全に使いこなしているようだ。連発も解除も自在にしながら、俺を振り回してくる。ただ同じ技を使っているだけでは、後手に回る。そう判断して、別の手を打つことに決めた。

 

「緩急だけで、終わると思うな! 闇の刃(フェイタルブレイド)!」

 

 カミラの合一が解除された瞬間を狙って、魔力の刃を飛ばしていく。そのまま当たるようなら、話が早い。だが、そうはならないだろう。

 

 収束した魔力の刃を、開放して爆発させていく。何も対策しなければ、飲み込まれていくはずだ。さて、どうだ。

 

電磁融解(ライトニングクリア)! そう簡単に、当たらないわよ!」

 

 魔法と合一して、今度は俺の魔法を受け流したようだ。実体を持っていないからこそ、単純な攻撃だけでは限界があるということ。

 

 ならば、どうにか魔法との合一を引き剥がしたい。それができるのは、魔力の密度を高めて切り裂く技だよな。

 

無音の闇刃(サイレントブレイド)! そう何度も、合一できるか!?」

 

 全力で、魔法を俺の剣に込める。そして、魔力と合一しているカミラに斬りかかる。どうにか、合一を解除できたようだ。

 

 これで、少しはカミラに負担を押し付けられたはず。そう考えて、カミラの方を見る。苛立ったような顔をしていた。

 

「ちっ、面倒ね。なら、長引かせないわ! 電磁融解(ライトニングクリア)!」

剣魔合一(トゥルーブレイド)!」

 

 カミラは全力で魔力を込めて、魔法と合一していく。俺も同じように、全力でぶつかっていく。

 

 その瞬間、また合一が解除されそうな気配を感じた。そこに、先回りして俺自身を叩きつける。カミラは剣で受けて、遠くまで吹き飛んでいった。

 

 様子を見ると、片膝をついている。模擬戦なら、ここで終わりだろうな。いったん、俺は剣を収める。

 

「レックスの、勝ちか。思った以上に、見ごたえがあったな。さて、変わってもらおうか」

「ちっ、バカ弟なんかに……。ま、良いわ。エリナこそ、つまらないものを見せるんじゃないわよ」

「ふたりとも、頑張って下さい。わたくしめも、負けていられませんな」

 

 今度は、エリナと向かい合っている。静かな空気が流れて、しばらく。今度も、エリナの方から動き出した。

 

「さて、行くぞ。追いつけるか?」

 

 目にも止まらぬ速さで、エリナはこちらを切り裂いてくる。魔法を撃っても、切り捨てられる。防御魔法も、叩き切られる。

 

 何よりも恐ろしいのは、ずっと目で追うことも難しい速さのまま、俺の魔法を切り続けていることだ。それは、つまり。

 

「まさか、エリナ……!」

「そうだ。もはや私にとって、音無し(サイレントキル)は奥義ではない」

 

 やはり、そうか。エリナの音無し(サイレントキル)は、俺が初めて教わった技。無音の闇刃(サイレントブレイド)の原型でもある。

 

 俺は、技としてひとつひとつ撃っていくことしかできていない。今のままでは、いずれエリナの剣が届くだろう。

 

 だったら、俺のやるべきことは決まっている。少しでも追いつくために、全力を尽くすだけ。

 

「なら、俺だって……! 無音の闇刃(サイレントブレイド)!」

 

 魔力で動きを補助しつつ、同じようにずっと技を使い続けることを目指す。

 

 結局、常に完全な技として使うことはできない。ただ、エリナの剣は、魔法を込められていない剣。全力で魔法を込めた俺の剣なら、相手の剣を叩き切ることも可能だ。

 

 それを相手も分かっているので、エリナは打ち合いを避けてくる。そのおかげで、なんとか拮抗できていた。

 

「良いぞ、レックス! もっと私をたぎらせてくれ!」

「お望み通りに! 剣魔合一(トゥルーブレイド)!」

 

 高揚しているエリナに向けて、俺は魔法との合一による剣を放つ。まともに受ければ、そもそも剣が持たないだろう。だからこそ、俺の勝機になる。

 

「見えたぞ、レックス!」

 

 エリナは、魔力の流れにそって魔法を切り裂こうとしてくる。このままでは、俺も大きなダメージを受けるだろう。

 

 ならば、さっきカミラに学んだことを応用するだけ。そうだよな。

 

「まだだ! 無音の闇刃(サイレントブレイド)!」

 

 剣だけを実体化して、剣魔合一(トゥルーブレイド)と同時に放つ。さすがのエリナといえども、ふたつの技を同時に切り裂くことはできないようだった。

 

 まともに俺の剣を受け、相手の剣は砕け散っていく。

 

「バカ弟、魔法と合一しながら……!」

「まったく、凄まじい成長速度だ。最強の剣士という称号は、もはや私のものではないな」

 

 エリナは、感心したように頷いている。代わりの剣を、贈っておこう。得物が強くなれば、エリナの剣技はもっと鋭くなるはずだ。その姿を、見たい気持ちが強い。

 

「では、次はわたくしめが。お願いします、レックス殿」

 

 今度は、俺はハンナと向かい合う。そのまま、すぐにハンナは動き出した。

 

「行きますよ! 四重剣(エレメンタルバースト)! 閃剣(テンペストブレイド)! 崩剣(アルティメットブレイド)!」

 

 手に持つ剣に4属性の魔力を込めて、俺を切り裂こうとしてくる。同時に、魔力を固めた多くの剣が降り注いでくる。さらに、多くの剣をすべて押し固めた強い剣も襲いかかってくる。ハンナの技すべてが、大盤振る舞いで飛んできている。

 

「やるな……! そこまで同時に魔法を使えるとは! なら、俺もだ! 剣魔合一(トゥルーブレイド)! 闇の刃(フェイタルブレイド)!」

 

 ハンナが持つ剣には、魔力と合一した剣で対抗する。魔力を押し固めた剣には、まずは俺も魔力の刃を飛ばして、一番凝縮された剣に叩きつける。押しあった段階で、魔力を一気に開放して爆発を引き起こす。

 

 魔力を固めた剣は、多くが吹き飛んでいった。だが、まだいくつかが飛んでくる。

 

「それだけですか! まだ、わたくしめには届きませんよ!」

 

 叫びながら、先ほどと同様に複数の魔法を使ってくる。今度は、魔力を固めた剣の数が増えている。さっきと同じことをすれば、負けるだろうな。

 

「まだ、あるさ! 闇の衣(グラトニーウェア)! 剣魔合一(トゥルーブレイド)! 無音の闇刃(サイレントブレイド)!」

 

 俺は防御魔法で弱い剣を受け、魔力と合一して強い剣を吹き飛ばす。その勢いのまま、ハンナが手に持つ剣に、俺の剣を叩き込んでいく。

 

 しばらく剣同士がつばぜり合いのような形になり、やがてハンナが吹き飛んでいった。

 

「まったく、バカげた数を同時に使うじゃない。生意気なのよ、まったく」

「だが、それでこそレックスだ。うかうかしていると、突き放されるだけだな」

 

 そう言いながら、カミラもエリナもどこか満足気にしていた。何かしら、手応えはあったのだろう。ひとまず、今回もみんなの成長が感じられた。そして、俺自身も新しい境地が見えてきた。

 

 なら、また突き進むだけだよな。どこまでいっても、慢心なんてできやしない。それが、どうにも嬉しく感じる。思わず、何度も頷いてしまった。

 

「そうでありますな。けれど、決してレックス殿をひとりにはしませんよ」

 

 ハンナの言葉に合わせて、カミラやエリナも俺の方をじっと見ている。

 

 これからも、俺たちは切磋琢磨を繰り返すのだろう。みんなが居る限り、俺は努力し続けられる。それを、あらためて確信していた。

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