物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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500話 重ねる段階

 王女姉妹との話がまとまってしばらく。俺は次にホワイト家に訪れていた。王家ともブラック家とも近い距離にあるということで、ミーアから行くように伝えられたところだ。

 

 転移をして向かうと、すでにお茶の準備がされていた。つまり、もともと俺が来るつもりで予定を進めていたのだろう。

 

 実際、ルースとその隣にいる右腕のスミアは微笑みながら頷いて迎えてくれた。

 

 ということで、さっそく本題に入っていく。そういうのが、ルースの好みでもあるだろうから。

 

「ルースも、今回の件に協力してくれるんだな」

「レックスさんが先に進むのを、黙ってみているあたくしではなくてよ」

「もちろん、レックスさんを手伝いたいってことでもありますよ!」

 

 不敵に笑うルースと、元気いっぱいな笑顔を浮かべるスミアが対称的に見えてくる。王女姉妹といい、一見反対みたいな人たちが仲良くしていることも多い気がするな。

 

 人間的な相性はよく分からないが、仲間としては頼りやすい部分もあるはず。なにせ、似ていない方が別の視点を持てるからな。

 

 そういう意味では、ルースの右腕がスミアになるのも必然だったのかもしれない。俺とジャンやミルラも、考え方が全然違うのだし。

 

 ルースはスミアをにらんでいる。そして、ちょっとだけしかめっ面で話していた。

 

「スミア、余計なことは言わなくてよろしくてよ。覚えておきなさい」

「ごめんなさい、ルース様! 自分で言いたかったですよね。奪っちゃいました!」

 

 スミアの言葉に、ルースは眉間を押さえてため息をつく。それでも本気で怒ったりしないあたり、間違いなくスミアは認められている。

 

 なんというか、スミアは道化みたいな態度を取ることが多いんだよな。その裏側に、拷問や殺人も辞さない冷徹な側面もあるのだが。ある意味では、暗殺者的というか。

 

 だが、だからこそ安心してルースを任せられるというもの。清廉なだけの人間には、貴族の右腕なんてこなせないのだから。

 

「良い関係を築けていそうで、何よりだ。冗談を言い合えるのは、仲の良い証だよな」

「うるさいこと、この上ないけれど。まあ、悪くはなくてよ。今回も、手伝ってもらうわ」

「奴隷に関する事業に関しては、ホワイト家も全面協力しちゃいます!」

 

 ということは、ホワイト家も奴隷を雇っていくのだろう。そして、魔力増幅具とでもいうべきものを作っていく。

 

 実際、程度にもよるとはいえ、強者ほど魔力増幅具は必要ないものになる。100の魔力を持つ人が10増えるのと、10000の人が10増えるのとではという話だ。

 

 だから、四属性使いの中でも相当上位に位置するルースにとっては、あんまり警戒しなくても済む道具ではある。

 

 それもあって、魔力増幅具の計画に関してはあまり反対しなかったんだよな。最悪の場合でも、対処はできるだろうと。

 

「ただ、それだけで収まるあたくしではなくてよ。せっかくの機会を、もっと利用しなくてはね」

 

 俺とルースが会うということは、ブラック家の当主とホワイト家の当主が会うということだからな。その機会に、いろんな話をしたいと思うのは当然だ。

 

 なんというか、政治家がいろんな相手と食事をする意味が理解できてきたというか。雑談をしながらでも、お互いの利益につながる話をしていく。そういう事ができる関係の人間を増やす。今なら、意図がある程度読み取れそうだ。

 

 まあ、今回の事業だけではない協力をしていこうという話だろうな。さて、具体的には何を考えているのだろうか。とりあえず、話をしてからだな。

 

「奴隷の運用に関しては、こちらの成果も伝えられるとは思うが。そういう話か?」

「遠からずといったところね。ねえ、レックスさん。人材交流に、興味はなくて?」

 

 好奇心がにじんだような顔をして、こちらを見ている。俺がどう反応するか、気になるんだろうな。

 

 まあ、ルースなら信じて良いと思う。俺の情報だけ抜いて、後はおさらばとはならないはずだ。とはいえ、何か仕込みをするくらいならおかしくはないとも思うが。

 

 ルースだって、なんだかんだでしたたかだからな。俺の信頼を裏切らない範囲で、自己利益を追求してくるかもしれない。

 

 まあ、お互い様ではある。俺が何も狙わずとも、ジャンやミルラが仕込むはずだ。

 

 お互いが友人だからといって、利益が相反する機会はある。その時のためにも、備えは必要なんだろう。今は、素直に協力して良いと思うが。

 

「なるほどな。お互い協力するのなら、悪くない。技術や知見を、共有もできるからな」

「ええ。幸い、あたくしたちは領土を奪い合う関係にはなくてよ。というか、遠くて手出しが難しいもの」

「ブラック家を攻めようとしたら、もはや遠征になっちゃいますからね! そんなの、しませんよね!」

 

 いわゆる遠交近攻的な考え方か。隣同士だと攻め込むことが現実的になるが、遠くなら難しい。だから、遠くの相手と積極的に協力していくという話。

 

 俺にとって、フェリシアのヴァイオレット家やラナのインディゴ家は近くではある。だから、その考えに従うつもりはない。近くだからと攻撃するなんて、あり得ないからな。

 

 とはいえ、悪くない。いざという時の備えというのは、お互いに大事だ。無条件の信頼は、友人だからこそ避けた方がいいということ。敵対できないように準備しておくのは、必要なことだろう。

 

「俺たちの代で終わるかどうかが気になるところだ。転移があれば、楽に派遣できるが」

「まずは運用してから、考えることではなくて? あまりに長期的な展望は、叶わなくてよ」

 

 ルースの言う事は、確かに正しい。初期だけ転移で交流して、後で移動手段を確保するという手もあるんだ。

 

 とにかく、どうやって形にするのかを詰めていく必要もある。具体的に、どんな内容で交流をするのかとか。

 

「それもそうか。実験的に、少人数で交流するところからだよな」

「ええ。移動手段に関しては、お互いが協力して開発できるかもしれなくてよ」

「そうなれば、レックス様とも気軽に会えちゃいますね! 私も、そうなってほしいです!」

 

 魔道具を応用すれば、転移装置が作れてもおかしくはない。そうなってしまえば、かなり大きな影響を各所に与えるだろうが。

 

 そうでなくとも、車や電車に近いもの、もっと単純に自転車レベルでも大きな差がある。考える価値は、十分にある。

 

「なるほどな。確かに、可能そうな技術はある。ルースの方は、どうだ?」

「こちらで出せるのは、金属加工の技術でしてよ。悪くないのではなくて?」

 

 魔道具の材料にも、金属はある。だから、金属の加工が進めば、もっと細かいものを作ることもできるはずだ。

 

 理想を言えば、お互いに工業化まで進めてしまうところではあるが。まあ、まだ考えるには早い。まずは小さいところから。それを忘れないように。

 

「なるほど。確かに、俺たちが求めるところではある。俺が出すのは、魔道具で良いんだよな?」

「ええ。ミーア様たちと進める計画の技術を、こちらでも求めているもの」

「教育に関しても、良い案だと思いますよ! 人の育て方は、すっごく大事になりますから!」

 

 俺が出そうとしていた奴隷運用とか、あるいは学校もどきもだな。その辺の技術を交換できれば、お互いにとって利益がある。

 

 ホワイト家にしても、技術者を生むノウハウだって持っているはずだ。ひとまず、乗っておくのもいい。

 

「なら、まずはその辺から始めてみるか。とはいえ、今日明日にできることでもないだろう」

「ええ。今は、考えておいてもらえれば十分よ。人材選定だって、基準が必要ですもの」

「レックス様のお邪魔にならない人を、ちゃんと選んでみせますからね!」

 

 ということで、俺たちの間でできる話はまとまった。後は、ジャンやミルラと相談しつつ細かいところをまとめていかないとな。

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