物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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502話 スミアの役割

 レックス様とルース様が会合するために、私もいろいろとルース様を手伝いました。場を整えるために、いくつも手を打っていたんです。

 

 その甲斐あって、レックス様とルース様は大きな事業で協力できるようになりました。人材交流も含めて、関係は深まっていくでしょう。私とルース様が狙った通りに。

 

「レックス様とルース様、仲良しそうで何よりです!」

 

 会合の時にも、穏やかな空気が流れていましたからね。お互いの利益を追求しながら、それでも和やかに譲り合うことができていました。

 

 本来、敵同士だった家。それでも、仲良くしている。胸がうずくのを、感じましたね。

 

 まるで、物語みたいな恋。それが見られるワクワクは、とっても大きいんです。個人的な趣味としては、もっともっと見ていたいですね。

 

 もちろん、仕事だってちゃんとするつもりですけど。ルース様は、仕事に趣味を混ぜることは許してくれます。けれど、趣味を優先した時点で切り捨てられるでしょうから。大切な役割は、しっかりと果たさないといけません。

 

 とはいえ、私の仕事と趣味はほとんど同じなんですけど。ホワイト家を発展させて、ルース様の利益を拡大する。その先に、レックス様との未来が待っているんですから。力が入るというものです。

 

「この調子で、もっと仲を深めるお手伝いをしちゃいますよ!」

 

 私ができることを、できる限り。基本的には、ルース様を支えるだけではありますけれど。単純で、とても難しい仕事ですよね。

 

 ルース様が求めることを、できれば求める前に実行する。それが理想ではあります。指示されてから動いていては、遅いこともありますから。

 

 確かに、ルース様は優秀です。大人になれば、大器になると思えるんです。でも、まだ経験の浅い部分はありますからね。私がしっかりと支えるのは、とても大切なこと。

 

 あるいは、視点の違いなのかもしれないですけれど。ルース様は、方針に基づいて行動する。私は、現状から策を立てる。どちらも必要なことですからね。

 

 結局、私のすることは変わりません。ルース様の立てた方針が現実になるように、全力を尽くすだけ。

 

「ブラック家についても、他の貴族についても、いっぱい探っちゃいます」

 

 ブラック家が隠していることも、調査しちゃいます。アカデミーと連携しているのは分かるので、そこから情報を集めれば、ある程度は推測できました。

 

 ミーア様と協力している内容から考えても、魔法に関する道具を作っているのは間違いないでしょう。そして、どこから何を買っているかを調べれば、少なくとも必要なものは分かるんです。

 

 結果として、ブラック家の弱点を握る形にもなりましたね。どこを攻めれば効果的なのかは、分かりますから。

 

 もちろん、それだけではありませんけれど。ブラック家は、味方になる相手ですから。

 

「レックス様の好みを知っていけば、良い未来につながるはずですからね」

 

 分かりやすいところで言うと、身内を大切にする傾向でしょうか。後は、目の前で困っている誰かに手を貸そうとしてしまう特性もあります。

 

 つまり、気を引きたければ目の前で事件を起こしてしまえば良いんですよ。その被害者として、レックス様の懐に潜り込ませる。そんな手を使えば、ブラック家から効率的に情報を引き出すこともできるでしょう。

 

 まだ、そこまではしていません。しいて言うのなら、あぶれた奴隷の中に、私の息がかかった人間を送り込んだことくらいでしょうか。

 

 おかげで、ルース様がレックス様と結ばれやすくするための策を立てることができました。レックス様が作っているものに、当たりをつけられたから。

 

 ホワイト家が多く採掘している金属が役立つと見込めたのは、情報のおかげですからね。だから、ブラック家に尽くしてから距離を縮めるという形にまとめられたんです。

 

 最終的には、ブラック家もホワイト家も得をする。レックス様も、好きな形ですよね。

 

 私がただの良い子じゃないって、レックス様は知っているはずです。だから、許してくれるんじゃないでしょうか。

 

「敵になりそうな相手にも、しっかりと目星をつけちゃいましょう」

 

 ホワイト家を邪魔だと思う人。ブラック家を憎む人。2つの家が協力すると困る人。いろんな人が居ます。それらの中で、本当に行動を起こしそうな人が見つかるように。

 

 私の息がかかった人を使うこともします。私自身が、潜り込むこともあります。とにかく、ひたすらに情報を集めていくんです。殺すべき場面で、しっかりと殺せるように。

 

 武力だけが手段ではありません。産業を潰しても良い。食料を奪っても良い。土地を汚しても良い。反乱を誘発することも、ひとつの手でしょう。

 

 もちろん、権力で抑えるという手もあります。民心を手に入れるという手もあります。清濁併せ呑んで、効率の良い手段を追求していきましょう。

 

「最後の手段ですけど、暗殺だってできるように」

 

 暗殺というのは、あまり良い手ではありません。お互いに暗殺を手段として使うようになれば、結局は誰もが損をしますから。

 

 他にも、当主などの重要人物を暗殺なんてしてしまえば、必ずその領は乱れるんです。例外と言えば、個人に依存しない仕組みを完璧に近い形で作れているところでしょうか。事実的には、存在しないですね。

 

 ただし、それでも必要なら実行すべきこと。頼りすぎるべきではありませんが、絶対に避けるべき手段でもありません。

 

「ルース様の敵は、しっかりと排除しなくちゃいけませんからね」

 

 それだけは、絶対に守るべきことです。もちろん、利益が競合する程度の話ではありませんけれど。ルース様に悪意を抱いて攻撃しようというのなら、必ず殺すというだけです。

 

 レックス様は、そこはよく分かっていますね。命を狙うような相手を見逃せば、同じような手を打つ相手が増えるだけですから。

 

 だから、ちゃんとさらし者にすることも大事なんですよ。甘く見た罪を、どう償うかと。

 

 それを分かっているからこそ、レックス様は私を認めてくれたんでしょうね。ルース様は、もともと清濁併せ呑む方でしたけれど。父を殺すという手段を、必要だから実行した人なんですから。

 

「ふふっ、居心地が良い職場です。能力を評価されて、受け入れられて」

 

 無理難題を押し付けられた挙げ句、失敗を責められることもない。非道なおこないをするからと、人間未満の扱いを受けることもない。

 

 正しく私を評価して、必要としてくれる。私という存在を、肯定してくれる。どれだけ嬉しかったかなんて、レックス様には絶対に分からないと思います。ルース様は、私と近いところもあったんですけれど。

 

「汚れ仕事をする人間を大事にしてくれるのは、良いですよね」

 

 暗殺をする人間って、化け物みたいに見られることも多いんです。人でなしだと言われることも。利用している人に限って、余計にあたりが強いものでした。

 

 だからこそ、今の環境は最高に近い。私を適切に運用してくれる主に仕えられているんですから。

 

「表向きの私を、変な目で見られないのも」

 

 私が汚れ仕事をしていると知っている人は、表の笑顔や明るさを嫌います。気持ち悪いものを見るような目をします。

 

 だけど、汚れ仕事をするからこそ、必要な仮面なんです。いかにも残酷そうな顔をしていては、スキが作れませんから。

 

 そのあたりを、ルース様もレックス様も、しっかりと理解してくれているんですよね。

 

「だから、ルース様とレックス様には幸せになってほしいんです」

 

 ふたりが結ばれるのは、とっても大事なことです。私は、ルース様の恋を叶えます。そうすれば、ふたりとも幸せになれるでしょう。

 

 ルース様は、絶対にレックス様を大切にします。レックス様は、結婚しても変わらないでしょう。だから、大丈夫。何も心配することはないんですよ。

 

「そのためには、どんなことでもしますから。私の技術を、全力で使いますよ」

 

 敵の情報を丸裸にして、あらゆる形で弱点をついていきましょう。弱みを全力で利用するのが、影というものです。

 

 だから、私はどれだけだって残酷になれます。穏やかな光を、守るために。

 

「私を愛してくれた二人のために。それで、良いんです」

 

 私自身の夢なんて、必要ない。違いますね。ふたりの幸せこそが、私の夢なんです。大切な人たちが幸せであることは、間違いなく幸せなことなんですから。

 

 だから、私は未来だけを見ていれば良いんです。

 

「そう。私はスミアとして生きるんですよ。ルース様の右腕であることが、私の価値ですから」

 

 過去なんて、どうでもいいです。大事なのは、覚えた技術をどう使うか。そして、ルース様とレックス様の未来を守ること。

 

 どうして出会ったのかなんて、墓に持っていけば良いんです。明かしたって、誰も幸せになんてなれませんから。そう、忘れてしまいましょう。スミアじゃなかった過去なんて。

 

「レックス様だって、当たり前みたいに私を認めてくれますから」

 

 だから、レックス様にも報われてほしい。笑顔を見せてほしいんです。ルース様だけに向けられるとなると、ちょっとだけ胸が苦しいですけれど。

 

 きっと、私のすべてを知った上で女の子と扱ってくれる人なんて、レックス様くらいですから。

 

「ルース様に、おこぼれとかもらえたら……。なんて、欲張りすぎですかね」

 

 首を振って、考えを振り払おうとします。だけど、レックス様の笑顔は消えてくれない。

 

 本当は、自分でもどんな感情を持っているかは分かっているんです。捨て去るのが、正しいんですけれど。

 

「でも、できれば私も……。もちろん、ルース様を優先しますけど」

 

 私は、恩人の幸福を優先します。それこそが、私の役割ですから。

 

 ルース様。それで良いんですよね?

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