物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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536話 大事な役割

 戦いが終わって、ひとまずは状況が落ち着いたと言えるだろう。問題が解決しきった訳では無いが、大きな壁は超えたといったところ。

 

 今回の戦いで参加してくれたみんなと一緒に、今は王宮に集まっている。ミーアとリーナは、みんなの前に立っていた。

 

「まずはみんなに言わせてほしいわ。手伝ってくれて、ありがとう」

 

 そう言って、まずミーアが頭を下げる。今回の戦いは、これまでの中でもトップクラスに大変だった。ちょっと、諦めが頭によぎったくらいだし。

 

 とはいえ、なんとか乗り越えられた。犠牲もあったにしろ、俺の大事な人はみんな無事。だから、少しでも今後に役立てていきたい。

 

 亡くなった人たちにとっては、たまったことではないのだろうが。だが、特に仲良くない死者のために時間を使えるものでもない。まっすぐ前を向くのが、俺のやるべきこと。そうでなければ、大切な人を大切にできないのだから。

 

「俺からも言わせてほしい。みんなのおかげで、俺たちは勝つことができた」

 

 俺も合わせて、みんなに頭を下げる。今回ばかりは、俺ひとりでは絶対に勝てなかった。あらためて、みんなと協力することの大事さを思い知らされた気分だ。

 

 まあ、俺が勝つんじゃなくてみんなで勝てば良い。それをちゃんと体感できたのは、大きな一歩だと言えるだろう。これまでは、俺が勝とうとしすぎていた。

 

「私たちの問題なんですから、レックスさんが言うにしても後でにしてくださいよ……」

 

 リーナは呆れたように額に手を当てている。ため息までついていた。ちょっとジトッとした目で見られて、目を逸らしそうになってしまう。

 

「ふふっ。そうかもね、リーナちゃん。でも、レックス君の気持ちは伝わったわ」

 

 ミーアも笑って同意していて、完全に俺が空気を読めていない人になってしまった。実際のところ、確かに立場というものはあるのだろうが。

 

 今のところは仲間での集まりなんだし、大目に見られると思いたい。そうであってくれ。

 

「いや、まあ……。順序的には、そうかもしれないが……」

「まったく、バカ弟は相変わらずよね。もう少し、機微というものを勉強しなさい」

 

 カミラにまで追撃されてしまう。もはや言い訳できないのかもしれない。

 

 まあ、前向きに考えよう。みんなの前で失敗できたのだから、これから気をつければ良い。もっと大事な場面で失敗するより、よほどマシなはずだ。

 

「でも、それがレックス君の良いところなんだって思うな。私は、だからレックス君が好きなんだよ」

「同感だね。私たちが大切にするレックス君は、そういうものじゃないかい?」

 

 ミュスカとセルフィは、穏やかな顔で俺のことをフォローしてくれる。一応、俺にも味方が居たみたいだ。

 

 なんだか甘やかされているような気もするが、今は気にしないでおこう。とりあえず、味方がいることを喜んでおけば良い。

 

 反省は後でするとして、当面は別の話になってくれれば。あまり追い詰められなくて済む。

 

「お兄様が好きなことなんて、当たり前なの! メアリのお兄様なんだから!」

「あらあら。レックスさんは、誰を選ぶのでしょう? 気になりますわね」

 

 メアリが元気いっぱいに宣言して、フェリシアは微笑みながら引っかき回してくる。俺が周囲を見回すと、楽しそうに笑みを深めるフェリシア。

 

 ちょっとだけ、冷え冷えとした空気を感じる。俺が何かを言うと、危険だ。そんな気配を感じた。

 

「ひとまず、両殿下のお言葉をですね……。わたくしめたちの、役割ですから」

 

 ハンナが軽く仲裁というか、話題をずらしてくれる。この流れに乗ってくれ。俺はできるだけ顔に出ないようにしながら祈っていた。

 

 ミーアは笑みを深める。これは、どっちだ? 緊張に息を呑むと、ミーアは明るい笑顔を浮かべた。

 

「ふふっ、さっきみたいな会話も、大事なことだわ。堅苦しい話ばかりじゃ、息が詰まっちゃうもの」

「ということで、パレードを予定しているんです。皆さんにも、参加していただこうかと」

 

 話は変わったと安心したいが、これはこれで重要な話だな。確かに、大きな戦いが終わったと宣言することは必要かもしれない。その形として、パレードを実行するのだろう。

 

 同時に、おそらくではあるが公共事業のような役割を果たすのだとも思う。パレードの準備で発注して雇用を生んだり、パレードそのものの経済効果に期待したり。

 

 まあ、良いと思う。たぶん、俺はミーアたちと一緒に参加する側になるのだが。少し恥ずかしいくらいで、大きな問題はない。

 

「……同意。お祭り騒ぎは、苦しいことの後にこそ必要」

「でも、僕たちはあんまり騒げないかもね。手を振りながら歩くんでしょ?」

 

 フィリスは理論で肯定して、ジュリアはちょっと困った顔をしている。まあ、分かる話だ。もっと言えば、ずっと笑顔を続ける必要があるはずだ。

 

 パレードで表情筋と両腕が筋肉痛になりそうなイメージが、浮かんでしまう。

 

「レックス様がなでなでと抱っこをしてくれるのなら、やる」

「もう、サラったら。レックス様が何をお望みかなんて、分かるでしょう?」

「そうですね。あたしとしても、ちゃんと手伝いたいところです」

 

 サラとシュテルは、まあいつも通り。ラナも真面目に手伝ってくれそうだ。とりあえず、協力という面では心強いメンバーだな。確実に仕事をこなしてくれるという信頼感がある。

 

 とはいえ、後での対価がちょっと怖くはあるが。まあ、必要経費だと言えるだろう。

 

「私たち、近衛騎士の威信を示す機会でもある。大仕事になりそうだな」

 

 エリナは腕を組んで、堂々と頷いている。近衛騎士が居れば安心だと思われれば、王女姉妹の勝ちでもある。そういう意味でも、大事な場となるはずだ。

 

 やはり、ちょっと緊張するな。戦いよりも、手に汗握りそうなくらいに思える。

 

「あたくしも、手伝って差し上げましてよ。ちょうど良い機会ですもの」

 

 ルースは胸を張りながら宣言している。公爵家の当主としては、大きな意味を持つ場だよな。王家との関係も、影響力も示せる。

 

 ここで大仕事をこなせれば、今後につながっていくはずだ。そういう意味では、俺にとっても大事な場所だな。

 

「手順の設計は、私にお任せいただければと存じます。必ずや、最適な経路を導き出しましょう」

「僕たちも、王家にツテを作っておきたいですからね。本当に、良い機会です」

 

 ミルラとジャンが、乗り気になっている。なら、うまくいくのだろう。俺としては、任せておけば大丈夫だろうな。むしろ、変な口出しをしない方が良いくらい。

 

 となると、俺の言うべきことはもう無いか。そこまで疑問を抱いても居ないし。

 

「なら、決まりだな。ミーアたちは、忙しくなりそうだが」

「何を言っているの? レックス君は、今回の功労者なのよ? 見ているだけなんて、ダメよ」

「私たちが普段している苦労を、少しでも味わってもらいましょうか。嫌だと言っても、遅いですよ」

 

 ミーアは指差しながら言ってきて、リーナは半笑いで告げてくる。

 

 つまり、俺は大勢の前でパレードの主役に近い役割を果たすことになるわけか。いや、分かるが。功労者を称えることは、王家としても大事な役割だものな。戦果に対して報酬があると、内外に示すことになるのだから。

 

 となると、俺は断れない。いや、最初から断る気はなかったが。引くと、みんなに迷惑がかかる。

 

「お、おう。そうだな。前向きな話をするのは、大事だものな」

「さ、そうと決まれば動き出さないとね! 大変だと思うけど、いっぱい動いてもらうわよ!」

「姉さんが言い出したら、もう何も聞きませんよ。残念でしたね、レックスさん」

 

 元気よく宣言するミーアを見ながら、リーナは薄く笑みを浮かべていた。

 

 さて、ここからも大変になりそうだ。だが、悪くない。戦いより、よほど良い仕事だと言える。

 

 緊張こそあるものの、俺は前向きに考えることができていた。

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