物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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565話 フィリスの願い

 私はレックスの敵を倒している最中に、違和感に気がついた。その中で生まれた仮説は、とても危険なもの。うっかり話せば、異端認定されてもおかしくはない。

 

 ただ、荒唐無稽な話ではない。少なくとも、何の根拠もない与太話だとは思っていない。ゼロに限りなく近いではなく、本当にあり得る可能性としての領域。

 

 女神ミレアルは、魔法の根源。話に聞いた限りでは、五属性と光属性をつかさどっている。邪神が本当に闇を操っていた以上、ただの妄想ではない。根拠としては、最低限度はある。

 

 他の可能性も、もちろんある。ただ、最悪の事態として想定しなくてはならないのは、女神の話。精霊や環境の異常等であれば、十分に対応は可能な範囲だから。

 

 女神が本当に動いているとなると、私ですら力不足になりかねない。ただの疑い過ぎであれば、一番いいのだけれど。

 

 私は、ひとりになって思索にふけっていた。何か、打てる手はないかと。

 

「……問題。ミレアルの干渉が事実だとして、どこまでできるか」

 

 物理的に打ち破ることはできるのか。機嫌をうかがって頼み込むしかないのか。それとも、狙われた時点で詰むのか。

 

 最後の可能性については、考えるだけ無駄。そうなってしまうのならば、私たちは終わり。できる限り抗う手段を考えるのが、今の私のするべきこと。

 

 ただ、良い案は出てこない。当たり前のことではあるけれど、胸が重かった。

 

「……懸念。邪神が闇魔法に干渉できるように、属性魔法に……」

 

 その可能性が正しいのであれば、私の武器はすべて失われるということ。他の手段を取るにも、魔法以外の技術を磨いてきた経験なんてない。

 

 であるならば、私にできることは。少しでも魔法が通じるように、何らかの手を打つこと。

 

 ミレアルの権能がどの程度かも、きちんと調べる必要がある。神話がどこまで正しいのか、歴史的見地から探るような手順が必要かもしれない。

 

 私一人では、おそらく限界がある。協力者が、必要になる。

 

「……対策。手段を考えないと、何もできなくなる」

 

 レックスなら、邪神の眷属に魔力に干渉された経験があるかもしれない。その話を聞くことも、きっと必要。もしかしたら、何も出てこないかもしれないけれど。

 

 今は、あらゆる可能性を切り捨てずに考慮すべき段階。何が本当に必要になるのか、検討もつかないから。方針を立てて間違っていたら、その時点で終わり。現段階では、情報を集めないと話にならない。

 

 これまでの人生で、想像もしてこなかったこと。創生の神と、敵として戦うかもしれない。私は、どうするべきか。この世界の創造主に、従うべきなのか。私の心は、決まっている。

 

「……心情。神を殺せば解決するのなら、殺せる」

 

 手段が思いつくのかとは別軸で、女神と戦う覚悟があるのかという問題もある。私は、気にしない。レックスとの未来を奪われるくらいならば、共に戦って共に死んでも構わない。少なくとも、私自身とレックスは裏切らずに済む。

 

 ただ、もちろん生きるために全力を尽くすべき。レックスだって、誰かが死ぬことは望まないはず。私が死ぬことも、当然のように望まない。

 

 だからこそ、本気で対策を考えないといけない。どこまでの手段を選べるのかも。

 

「……民衆。レックスの敵になる可能性も、否定できない」

 

 民衆を殺すことに抵抗はないけれど、世界が敵になるのは他ならぬレックスが困ること。だから、できるだけ避ける努力はするべき。

 

 もしレックスが異端として認定するのなら、教国を滅ぼしてでも止めたい。けれど、国を滅ぼすほどの暴虐は、好まれないだろう。分かっているのなら、事前に潰すことこそが理想。

 

 ミレアルがどう動くかで、私たちの取るべき行動は変わる。しっかりと、検討しなければ。

 

「……課題。ミレアルが本当に動いているかを、まず確かめるべき」

 

 ただの思い過ごしなら、私だって安心できる。ミレアルを敵に回すのは、危険が大きい。私ですら、足手まといになりかねない。

 

 分かっているからこそ、全力で対応するべき。どこまで私にできるのか。どこまで人の手を借りるべきなのか。真剣に考えて、最善の答えを出さなければ。

 

「……検討。どうすれば、ミレアルの活動を確認できるか」

 

 リブラ教国に接触するのは、危険もともなう。優先的に実行すべき手段かは怪しい。藪をつついて蛇を出すことになる可能性も、十分にあるから。

 

 他の手段となると、邪神の眷属のような何かがいる可能性。いわば使徒とでも呼ぶべき存在。あくまで仮説ではあるけれど、検証する価値はある。

 

 あるいは、帝国の敵こそが使徒そのものなのかもしれない。これも、要検討。

 

「……仮説。現状の魔法に、なにか影響が出ている可能性もある」

 

 今の私にできることとしては、最も優先度が高いこと。私以上に魔法に詳しい人類は、どこにもいない。だからこそ、魔法に影響が出ているのならば、気づくのは私を置いてありえない。

 

 どこまで細かく検証するかで、時間が変わってくる。ミレアルが本格的に動き出す前に、間に合うのかどうか。単に魔法を使うだけで分かる領域ではない。必然的に、手間はかかる。

 

「……結末。レックスが奪われることだけは、絶対に避けなくては」

 

 ミレアルがどう動くかなんて、極論としてはどうでもいい。レックスと私の未来さえ無事であるのならば。

 

 ただ、平穏無事に終わる可能性は少ない。だから、ミレアルの動きは気にし続けなければならない。確実に可能性をゼロにするまで、ずっと。

 

「……誘惑。私の子宮に取り込んでしまえば、少なくとも時間を稼げる」

 

 レックスに直接手を出されることは、避けられる。そもそも、レックスが狙いなのかという問題もあるけれど。

 

 ただ、動き出した時期が時期。私が狙いである可能性はゼロに等しい。他にしても、光属性も無属性も珍しくない。後は、邪神やミュスカも考えられる。

 

 確定するまでは、避けたい。ただ、手遅れになってからでは遅い。禁術が使える状況でレックスがそばにいるとは限らないのだから。

 

「……確信。レックスは、私の行動を受け入れる。けれど、喜ばない」

 

 レックスを守るためだというのなら、悲しみながらでも抵抗はしないはず。ただ、親しい相手と遠ざかることになるし、何も見えない子宮でまどろみ続けることにもなる。レックスの精神には、大きな影響があるはず。

 

 避けたい。それが本音。けれど、腹を撫でている私も居る。笑みを浮かべている私も居る。

 

 一度首を振って、私は別の手段を考え始めた。

 

「……協力。ミュスカとも、接触する必要があるかもしれない」

 

 ミュスカには、間違いなく邪神の影響がある。レックスを大事にしていることも、間違いないけれど。

 

 どこまで信じて良いのかは、分からない。けれど、有効な手段であることも事実。

 

「……提案。レックスをミレアルから守るために、お互いに手段を練る」

 

 ミュスカも、レックスが失われることだけは望まない。それは分かりきっている。だからこそ、手を取り合える。

 

 最低限の共通点だけは、持っている。レックスへの執着は、お互いに同じ。それだけのこと。

 

「……妥協。仮に邪神の影響があるとしても、本質さえ歪まなければ」

 

 レックスに、ミュスカや邪神が干渉するのかもしれない。けれど、レックスの肉体と人格が失われないのなら、構わない。私と子供を作る未来で、笑い合えるのならば。

 

 どんな魔法が見られるのかも、もちろん楽しみ。ハーフエルフの可能性も、追求したい。それよりも何よりも、今はレックスと結ばれたい。それが、私のいちばん大事なこと。

 

「……同盟。エリナとも、師匠としてのつながりがある。気持ちは、最低限は通じる」

 

 私たちは、これまでに何度も協力し合ってきた。レックスの成長を、最大限のものにするために。同じように、レックスの未来を切り開くために力を合わせるだけ。

 

 エリナは魔法を使えない。だからこそ、魔力への干渉に対する切り札になりうる。ここに来て、レックスの選択が活きてきた。

 

「……共鳴。レックスを守るために、できること。覚悟は、ある」

 

 私自身が、最大限の妥協をする。その先で、レックスの笑顔が待っているのなら。それで良い。

 

「……最終。レックスを子宮に取り込むのは、本当に最後の手段」

 

 欲望に、震える瞬間もあるけれど。交配という楽しみもあるのだから、わざわざ捨てたくはない。

 

 だから、勝って。レックスさえ勝つのならば、私は欲しい未来を手に入れられるから。

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