物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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568話 ずっと前を見て

 これから、俺たちは皇帝を討ちに向かう。最後の仕上げとして、みんなで集まっているところだ。俺の知り合いなら、居ないのはモニカくらいのものじゃないだろうか。

 

 本当にみんなの総力を集めた戦いになるということが分かる。仮にミレアルが出てきても、何もできずに負けるということはない。

 

 まあ、意識をよそに向けすぎて皇帝に負けるのも良くない。とにかく、目の前のことに集中しないとな。大局的な戦術を考えるのは、今の俺がやるべきことじゃない。

 

 みんなの前には王女姉妹が立っていて、まさに号令の準備をしているという感じ。まずはミーアが息を吸って、言葉を発していく。

 

「これが、帝国との一大決戦になるわ。頑張ってね、みんな」

「私たちにできる準備は済ませておきました。後は、任せます」

 

 ミーアもリーナも、ここまで来たら帰りを待つだけ。いろいろと戦略を練ってくれたのだろうが、もう俺たちに託すしかない。

 

 自分で戦える力も持っているのに、王家としての役割があるから戦えない。俺が同じ立場なら、相当歯がゆく思うだろう。

 

 実際、王女姉妹が戦ってくれたら、かなりの戦力になる。それが必要な状況ということは、つまり王家としての指揮権を投げ捨てなければならないほどの状況でもあるのだが。

 

 現国王の代わりに、実質的に王としての仕事をしているようなものだからな。まあ、仕方なくはある。

 

「ああ。必ず、勝ってみせるさ」

「こっちでも、頑張った。なでなでをもらえないなら、大損」

「帝都にも、支援を送っています。レックス様の輝く姿が見られないのが、残念です」

「私も、たくさん仕事をさせてもらったよ。レックス君の役に立てるのなら、安いものさ」

 

 サラとシュテル、セルフィの後方支援組も応援してくれている。というか、サラはもはや遠慮しすぎの領域に居ないだろうか。なでなでと抱っこ程度で仕事をしているとか、ひどい搾取な気すらする。

 

 シュテルも半分以上信仰みたいな感情で仕事をしている気がするし、ブラック家がブラック企業化しかねない。どんなギャグだ。まったく笑えないぞ。

 

 セルフィに関しては、俺の管轄ではないから口出しも何もあったものではないが。本人なりに良い環境で仕事をできていることを祈るだけ。

 

 全体的に、裏方として見えないところで働いてくれたのだろう。できる限り、お礼をしないとな。

 

「お前たちも、ありがとう。もちろん、帰ってくるさ」

「レックス様、ご武運を。戦後処理は、私たちにお任せいただければと存じます」

「僕たちにできることも、最大限に。それが、総力戦というものです」

 

 ミルラとジャンの存在は、本当にありがたい。前から分かっていたが、戦いに勝ってもそれが終わりじゃない。とにかく、戦後にはある程度の混乱が起きるもの。どうにか抑えるという役割は絶対に必要なんだ。

 

 俺なんて、戦うばかりで楽をしているまである。同じ立場なら、過労死していてもおかしくない。本当に、気を配ってやらないと。

 

「助かる。さすがに、戦い以外は難しいからな」

「魔道具に関しても、必要な支援を行っているのです。かなり、楽ができるはずなのです」

「皇帝も、うまく弱くなってくれればいいなって。いろいろ、試しておいたよ」

「レックス様のために、いっぱい働いたからねー」

 

 マリンとソニア、クリスの研究者組の仕事は、かなり幅が広くなっている。というか、魔道具の可能性が広すぎるというか。

 

 国家の存亡をかけた戦いで使わないのはあり得ないというくらいに、有用な道具ばかりだものな。本当に、ミルラとサラには感謝しても全然足りない。

 

 ひとまず、しっかりと研究の役に立ちたいものだ。勝つことが最優先ではあるが。

 

「効果が実感できれば、もっと研究が進みそうだな。余裕があれば、確かめておく」

「ふふっ、本当にみんなの力よね。私たちの、全力よ」

「実際の戦いは、皆さんに任せることになりますけど。王族というのも、不便なものです」

 

 戦うというのも、実際に戦闘するメンバーの働きばかりではないんだよな。王女姉妹が指揮してくれたり、サラたちが工作活動をしてくれたり、ミルラたちのように政治的な立ち回りもしてくれたり、研究者組みたいに道具で手助けしてくれたり。

 

 だからこそ、俺たちは後顧の憂いなく戦うことができる。本当に、助けられてばかりだ。

 

「露払いってのがシャクだけど。ま、さっさと片付けるだけよ」

「お兄様を助けられるように、準備しておくの!」

「必要なら、頼ってほしいな。レックス君のためなら、気合いを入れちゃうからね」

 

 カミラは相変わらずの態度で腕を組んでいる。メアリは元気いっぱいに張り切っている様子だ。そしてミュスカは、穏やかに微笑んでいる。

 

 今回は一大決戦だということもあって、戦力の温存はほとんどしていない。王女姉妹は戦わないものの、不可抗力だし。

 

 メアリやミュスカほどの戦力を遊ばせておくと、いざという時に困る。もしミレアルが出てきたら、王女姉妹も呼ぶのだろうが。

 

「レックスに余裕を持たせられるように、横槍は潰させてもらう」

「……同意。必ず、勝って。無事で居てくれるのなら、それで良い」

 

 エリナもフィリスも、真剣な顔をしている。このふたりが本気を出す以上、まず邪魔はされないだろうな。

 

 とにかく、俺は皇帝を倒すことだけに集中すれば良い。単純で、楽なものだ。

 

「まあ、ミレアルが本気を出さないことを祈るしかないが。分の良い賭けではあるはずだ」

「神を殺せるというのなら、それは楽しいことでしょうけれど。わたくしには、まだ早いですわね」

「というか、あたしたちが勝てるかは怪しくないですか? たぶん、勝負に出られるのは……」

「僕とレックス様。それにミュスカさんくらい。きっと、そういうことだよね」

 

 フェリシアは微笑んでいるが、まあラナとジュリアの言う通りだとは思う。邪神の性質を考えると、ミレアル相手でも特別な力は必要になってくるはずだ。

 

 ミーアも可能性はあると思うし、だから呼び出すつもりではあるのだが。ただ、本当に分からないんだよな。何が通じて何が通じないのか。原作知識がないと、俺の発想はもろいと思い知らされる。

 

 だが、それが普通なんだ。まっすぐに生き抜くしかない。みんなと同じように。

 

「直接戦えずとも、わたくしめ達にもできることはあるはずです」

「警戒してもしなくても、相手の動きは同じでしてよ。気にしすぎても、仕方ないわ」

 

 ハンナの発想も、悪くないと思う。そもそも魔力を奪われるレベルのことをされないのなら、できることはあるはずだ。

 

 それに、ルースの言う通りでもあるんだよな。事前に打てる対策はもう打った。後は出たとこ勝負でしかない。なるようにしかならないし、警戒して縮こまっても負ける可能性が高まるだけ。

 

 なら、全力で突き進むしかない。それだけだ。

 

「まあ、そうだな。どの道、戦いに行くしかないんだ」

「皇帝に勝ったら、お祝いのパーティでもしましょう! 豪華な料理を、用意するわ!」

「息抜きも、大事ですからね。私たちにできることとしては、大事なことでしょう」

「ああ、楽しみだな。じゃあ、みんな。勝って帰るぞ!」

 

 ミーアの用意してくれるパーティのためにも、なるべく良い勝ち方をしてみせる。

 

 みんなを鼓舞するための言葉にも、より力が入るような気がした。

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