物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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575話 任命した先で

 ユフィは大勢の前でスカウトしたが、ロニアにも話をかけることになった。とりあえず受けてもらえたので、必要な役割について説明していくところだ。まあ、ジャンとミルラが細かい説明をするんだが。

 

 俺の役割は、あくまでお飾りというか。力の象徴というか。俺の力を背景として、ジャンとミルラが考える支配をする。そんなところだ。

 

 そして、ユフィとロニアは俺の前でひざまずいている。俺の両隣にいるミルラとジャンは、ただ冷静にふたりを見ていた。

 

「将軍になる、ユフィです……。よろしくお願いします……」

「あたしは、宰相みたい。だりーけど、しかたないか」

 

 ユフィはちょっと疲れたような顔をしていて、ロニアは言葉通りに面倒くさそうな顔をしている。なんというか、分かりやすいふたりだ。

 

 まあ、表向きだけの可能性はある。裏に何かを抱えている場合も考えて、しっかりと仲良くしていかないとな。ミレアルがいつ動くか分からない以上、とにかく身内での不和だけは避けたい。

 

 ひとまず、ジャンとミルラの有能さを理解してもらいたいところ。従うことに納得してもらえば、話が早いからな。

 

「お前たちには、このふたりの提示した方針に従って行動してもらう。良いな?」

「兄さんの弟ですね。ジャンと言います。よろしくお願いしますね」

「レックス様の秘書を務めております、ミルラと申します。どうぞお見知りおきを」

 

 ふたりとも、淡々と頭を下げる。あんまり親しみは感じないが、これも役割か。ソニアやクリスみたいな人もいれば、やはり回りやすい。

 

 ただ、今の段階の帝国にソニアやクリスみたいな人の居場所はなさそうだ。本人たちが魔道具開発に専念していることを抜きにしても、帝国での役割は持たせられないな。

 

 ひとまず、ユフィとロニアは立ち上がって、ふたりの顔を見ていた。

 

「従ってればいいなら、楽かー。あたしに難しいことを考えさせないでよー」

「つまり、将軍という立場も……。分かりました……」

 

 二者二様という感じだ。ロニアはひたすらに面倒くさそうな態度で、ユフィは何かを察したような顔をしている。

 

 まあ、将軍も宰相も単なる操り人形だ。その実情が、分かったのだろう。名前ほど権限があるわけではないし、好き勝手もできない。

 

 ただ、だからといってユフィやロニアをとにかく抑え込みたいわけでもない。俺の方針にしっかりと従ってもらえるのなら、相応に配慮するつもりだ。

 

 まずは、しっかりと姿勢で示さないとな。独裁として強権を振るうつもりは、そこまでないと。あくまで最終手段であって、できる限り融和を軸としたい。

 

「気になることがあれば、俺に言ってくれ。できる限り、配慮しよう」

「人材を使い潰すような真似はしませんよ。兄さんの方針にも反しますからね」

「むしろ、最大限に役立っていただきます。レックス様が任じた以上、相応の活躍をしてもらいましょう」

 

 実際、かなり働いてもらう必要はある。帝国の惨状は、かなりのものだからな。人材を遊ばせておく余裕はない。

 

 実質的に操り人形だとしても、できることは多い。かなり、忙しくなるはずだ。

 

「まあ、無理はするなよ。踏ん張りどころはあるだろうが、常に全力を出すべきでもない」

「レックス様には、逆らいません……。そんな無駄なこと、しません……」

「勝てるわけねーもん。多少の横暴なら、覚悟してるしー」

 

 ユフィにもロニアにも、なんとなく諦めが見える。過去が分かるようで、少しだけ心苦しい。確実に安心できるとは言えないが、最低限の保証はしたいところだ。

 

 俺としては、ちゃんと信頼関係に基づいて仕事をしてもらうのが理想だからな。叶うとは限らないにしろ、努力だけは忘れたくない。

 

「約束するさ。お前たちの意に反して、無体な真似はしないと」

「実際、人材を使い捨てることほど無駄なこともありませんからね。兄さんは、よく分かっていますよ」

「ユフィにもロニアにも、期待している。お前たちなら、しっかりと仕事を果たしてくれると」

 

 こういうところで、ちゃんと言葉にするのは大事だよな。お互い初対面に近いのだから、言うべきことは多い。

 

 言わなくとも伝わる関係なんて、そうありはしない。家族や仲間とですら、完璧に分かりあえているとは言えないのだから。今のふたり相手なら、なおさらだ。

 

 とりあえず、ユフィとロニアの顔は少し穏やかになった。現状、最低限の信用は手に入れられたのかもしれない。

 

「それで安全が保証されるのなら……。私は全力で……」

「だりーけど、やることはやるよ。もっと面倒になることは、目に見えてるしー」

 

 ふたりとも、目に力が入っている。やる気はしっかりあるみたいだし、期待して良いだろう。戦闘能力は確かだし、頭も回るように見える。

 

 後は、実務経験を積んで成長してもらえればというところ。長い目で見たいが、状況が許してくれるかどうか。

 

「その意気だ。繰り返すようだが、無理はするなよ。お前たちに潰れられたら、俺が一番困るんだ」

「将軍も宰相も、重要な仕事でございますから。空席は、避けたいところです」

 

 ミルラの言う通りだ。とにかく、人に潰れられたら一気に崩壊するような状況だからな。自転車操業もビックリだ。

 

 個人に依存している仕事が多すぎて、組織としてはかなり弱い。代替要員がまるでいないということだからな。

 

 まずは、俺やミルラ、ジャンがいなくても成立する状況を作ること。そうできなければ、簡単に帝国は崩壊する。

 

「それで、方針というのは……」

「単純ですよ。帝国を、法の支配する国に変えること。それだけです」

「現状では、レックス様のお力のもとで。ただレックス様に従うことが、いずれ法の支配に変わるでしょう」

 

 力こそ全てという国のままでは、間違いなく安定なんてしない。文官軽視の国がどうなるかなんて、歴史の勉強をしていれば分かるのだから。

 

 農業も畜産業も、力で実行する仕事ではない。そこを軽んじるような国は、当たり前のように壊れる。食糧生産が死んでしまえば、国はもたないのだから。

 

「つまり、ほーりついはんを潰せば良いってこと。分かりやすくて、ありがたいなー」

「分かりました……。確かに、私の安全にも近づきそうです……」

 

 ロニアは力こぶを作るような動きを、ユフィはじっと手元を見るような動きをしていた。少なくとも言葉の上では、ちゃんと分かってくれたみたいだ。

 

 後は、うまく進むことを祈るだけ。まあ、俺がちゃんと確認すべきことも多いのだが。とはいえ、なるようにしかならない。

 

 俺はあくまで素人であって、ミルラとジャンが立てた方針に従うしかないからな。実質的に、帝国の支配者はミルラとジャンになる。私心を持たない配下を持つということは、あまりにもありがたすぎる。

 

 仮にミルラとジャンが裏切りを計画していたら、俺は当たり前のように詰むだろう。まあ、ありえないとはいえ。

 

「納得してくれたのなら、何よりだ。仕事のやる気にも関わるからな」

「確かに、やる気があった方がはかどるなー。良い皇帝じゃん、レックス様」

「そんなに単純じゃないと思うけど……。でも、思っていたよりは……」

「まあ、これからお互いについて知っていけば良い。どうせ、長い付き合いになる」

 

 その言葉に、ふたりは頷いてくれた。さて、少しでも仲良くできると良いが。それよりも大事なのは、帝国がどうなるかだ。

 

 ミレアルの動きにも、気をつけないといけない。考えることが多いが、負けていられないな。

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