物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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17章 奪われたくないもの
585話 帝国の未来


 ひとまず、帝国はそこそこ安定していると言って良い状況になってきた。まだ課題はあるものの、今すぐに必ず解決しなければいけない問題は少ない。

 

 まだ、帝国を変えられたとは言い切れない。それでも、周囲に戦争を振りまく国ではなくなったはずだ。火種が起こるたびに、消しているのもあるが。

 

 ユフィとロニアも、よく仕事をしてくれている。将軍と宰相としては、適切かどうかは怪しい部分もあるが。実質的には、ジャンとミルラがその役割を担っていると言っていい。今後の課題だな。

 

「レックス様、鎮圧が終わりました……」

「今回は、楽だったー。いっつもこの調子だと、いーんだけど」

 

 ユフィたちは、いつも通りの仕事をしてくれている。もう、ふたりはかなり慣れている。ある程度は、自分の裁量で仕事をこなせるようだ。

 

 まあ、普通に武将の仕事みたいになっていることは、問題でもあるのだが。ただ、配下を指揮する技術は転用できる気もする。采配自体は悪くないみたいだから、やる気次第なのかもしれない。

 

 ところどころ、反抗勢力が出てきたりする。それが、結果的にはふたりの経験になってくれたな。

 

「ありがとう、ユフィ、ロニア。ふたりには、もっと権限を与えても良いかもな」

「信頼の証だと、受け取らせていただきます……」

「いーのー? レックス様に、反乱しちゃったりとかあるじゃん」

 

 ユフィは静かに受け入れ、ロニアは半笑いで言ってくる。冗談が言える程度の信頼関係を築けていると思えば、そう悪くない。

 

 身内や民に被害が出ないのなら、別に皇帝の座を奪われても構わないのだが。とはいえ、口にするのも良くない。さて、どんな内容で話すべきか。

 

 まあ、基本的には素直な気持ちを伝えるのが無難だろう。あまり本音を隠しすぎる会話も、時には必要なのだろうが。ユフィとロニアには、そこまで隠さなくてもいい。

 

「お前たちに、色々と任せたくてな。いずれは俺の手を離れるくらいで、ちょうどいい」

「レックス様ってー、謙虚だよねえ。あたしなら、もっとちょーしに乗りそうかも」

「そんな方だからこそ、私たちは十分に戦えているのだと……」

 

 なんだかんだで、ふたりが皇帝になったところで独裁にはならなさそうな気がするが。むしろ、俺の方が民に方針を押し付けているくらいだろう。

 

 帝国の方針に合わないところは、お互いあるにしろ。俺は外来種のようなものだからな。闇魔法以外でも侵食しているということ。歴史家が見れば、大批判しているかもしれない。

 

 まあ、そんな未来のことは知ったことじゃない。今の俺がやるべきことは、仲間を幸せにすることだからな。

 

「もっと、書類仕事なんかも任せたいが……。まあ、回っているのだから無理にとは言わないが」

「戦いってめんどーだと思ってたけど、頭使うのもめんどーだよねえ」

「どうにも、適性が無いようで……。申し訳ありません……」

 

 ロニアは頭をかいていて、ユフィは静かに頭を下げる。まあ、戦いで選出した人間に書類仕事の適性があるわけない。仕方ないことではあるんだよな。

 

 ただ、ある程度は文官も選出できている。俺の功績というよりは、ジャンとミルラの功績だが。

 

 頭がお飾りというのも、必ずしも悪いことではない。むしろ、人徳があるとうまく回る感触がある。そのあたりの能力は、ユフィもロニアも高そうなんだよな。

 

「まあ、俺も向いているやつに任せているからな。そういう人材が揃えば十分ではある」

「ミルラ様もジャン様も、ゆーしゅーだよねえ。言われた通りにしてるだけで、どうにかなるし」

「だからこそ、依存が怖くもあるが。帝国から離れる局面もあるだろう」

「それで、私たちですか……。必要性は、理解できますけれど……」

 

 あごに手を当てて、ユフィは考え込んでいる。俺の代理で指揮をできる人間は、いたほうが良い。闇魔法の侵食もしているし、いざという時には対応策を持てるはず。

 

 並大抵の敵なら、まあ倒せるだろう。もともと、ユフィもロニアも強いからな。そう簡単に、負けはしない。

 

「あのふたりほど優秀にならなくてもいい。とはいえ、できればもっと任せたい。だめか?」

「レックス様のお気持ちは、伝わります……。努力は、します……」

「後で困るのも、めんどーだよねえ。仕方ないかー」

 

 ひとまず、前向きに考えてくれているようだ。この調子で、順調に成長してくれると良いのだが。

 

 今すぐに必要とは思わないが、いずれ必ず役に立つ。そのためにも、前向きなのは助かる。

 

「まあ、俺が言っても説得力がないんだが……。ふたりに任せっきりだからな」

「弟と秘書だし、とーぜんだと思うけどねえ」

「レックス様個人の関係であるのなら、帝国そのものの力ではないと……」

 

 理解が早いあたり、素質はあるように見える。やる気の問題なのかもしれない。案外、俺が離れたら開花したりしてな。なんて、そんな状況にならないに越したことはないが。危機的状況というのは、精神的にはよろしくない。

 

 ただ、ミレアルの意図が読めないからな。いつ動き出してくるのかも分からない。帝国が安定するまで平和だったのが、むしろおかしいくらいだ。

 

 そうなってくると、早めに成長してもらいたくはある。だからといって負担をかけすぎたら、ふたりが潰れる。本当に難しい問題だ。ミレアルは、何を考えているのやら。

 

「今回みたいな例がまたあったら、そっちに動くわけだからな。さすがにないとは思うが……」

「王国の貴族が、皇帝だもんねえ。ないとは、言い切れないかー」

「レックス様がいなくなってしまえば、大変でしょうね……」

 

 俺の力を背景にして命令を聞かせている側面も、あるだろうからな。とはいえ、それだけで従うほど人間というのは単純じゃない。もし慕われていないのなら、俺に媚を売ってふたりを排除しようとする人も出てきたはずだ。

 

 つまり、ちゃんとやれているはず。当人が思うほど、能力が低いわけではない。

 

「お前たちを慕う配下も、居るみたいじゃないか。案外、うまく回ったりしてな」

「レックス様がいなくても回るとしても、あたしは居てほしーけど」

「そうですね……。いざという時に頼れる方が居るだけで、違いますから……」

 

 こうして頼られている限りは、力になりたいとは思うんだよな。帝国を運営する中で、仲良くなってきたはずだし。

 

 ふたりにも、しっかりと幸せになってほしい。そう願える程度には、信じているんだ。

 

「まあ、よほどのことがない限りは放り投げたりしないさ」

「レックス様が皇帝になってる時点で、よほどのことだよねえ」

「はい……。何事もないと、良いのですが……」

「同感だな……。面倒事は、ないに限る」

 

 ため息をつく俺に、ふたりは苦笑いしていた。そんなこんなで用事は済んだので、解散する。

 

 すると、様子を見計らったかのように通話が飛んできた。出ると、深刻そうな声が聞こえてきた。

 

「……質問。レックス、今は空いている? 大事な話がある」

 

 フィリスの声には、かなり力が入っていた。相当、面倒なことらしい。頭を抱えたい気持ちがあったが、深呼吸する。

 

 さて、どんな話なのだろうか。世間話ということは、ないだろうな。

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