物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

588 / 622
587話 今後の方針

 フィリスから伝えられた話は、とても大きな問題だ。最悪の場合、戦争にもつながる。

 

 とにかく今は、なるべく穏やかな解決をしたくはある。殺しが好きじゃないというのもあるが、王国や帝国の負担も大きいからな。せっかくみんなが頑張って手に入れた平和を、乱したくない。

 

 ただ、俺ひとりで実現できることでもない。まずは、ちゃんと策を練るところから。そのために、ジャンとミルラに相談をしているところだ。

 

「ジャン、ミルラ。フィリスを王にしようという動きには、どう対処するべきだと思う?」

「状況として厄介なのは、密偵を潜り込ませられないところですね」

「エルフの国でありますので、人間では簡単に気づかれてしまうと存じます」

 

 かなり大きな課題だということは、説明されなくても分かる。エルフがどういう動きを狙っているのかが分からなければ、対策も取れないからな。

 

 ひとまず現王派とフィリス派に分かれているということは分かる。ただし、どちらの勢力がどれだけ大きいのかは分からない。どんな手段を取ろうとしているのかも。

 

 フィリス派が平和的解決を望んでいるのなら、話は早いのだが。フィリスの話からするに、その可能性は低い。

 

 そうなってくると問題になるのが、現王派がどう動こうとしているのかだ。俺達と協力しようというのなら、単純な話になって、ある意味楽ではある。人間を敵視しているのなら、かなり厄介なことになるはずだ。

 

 とにかく、どういう行動をするかにも情報が少なすぎる。集めるのも、難しい。判断に悩むのは当然の状況と言える。

 

「ああ、そうなってしまうか。情報を集める手は、潰されるわけだ」

「密偵として育てていないエルフなら、ブラック家も抱えていますけれど」

 

 そんなただのメイドや使用人なんかを送り込んだところで、スパイとしては活躍できない。当たり前の話だ。高度な訓練を受けていてすら失敗することもある任務で、どうしてただの素人が活躍できるというのか。

 

 となると、エルフを密偵として使う案はない。かなり、初手からつまずいていると言わざるを得ない。

 

「まあ、無理だな。バレて妙なことになるのは、目に見えている」

「同感でございます。つまり、軍として攻め入るのも難しいでしょう」

 

 現地に侵入して倒すというのも、工作が難しいのなら打ちづらい手だ。少なくとも、軍勢を送り込む手段がない。

 

 エルフの国は森に囲まれているので、単純に侵入が難しいということもある。そして何より、どうあがいてもバレバレになるということが大きい。

 

「全面戦争になるか、あるいは国境で潰されるか。そのどちらかになるからだな」

「そういうことです。少なくとも、現状で取るべき選択ではありません」

「となると、どうしても後手に回りそうだな。難しい問題だ」

「ミレアルの影響もあるとなると、数に頼ったところで無意味でしょうからね」

 

 根本的に、こちらの打てる手が少なくなってくるな。戦うとしたら、今までと同じように少数精鋭しか道がない。だが、森での行動に慣れているとは言い難いからな。

 

 いくらなんでも、森ごと敵を吹き飛ばすというのには無理がある。仮に勝てたとしても、林業なんかに影響が出すぎる。国を預かるものとして、取れる選択ではない。

 

五属性(ペンタギガ)というだけで、並大抵の魔法使いは数を集めても勝てないからな」

「その通りでございます。まさに、問題山積といったところでしょうか」

 

 本当に、頭を抱えたいくらいだ。これまでの中で、一番ややこしい状況なんじゃないだろうか。

 

 とはいえ、だからといって立ち止まってもいられない。できることをやる。とにかく、一歩でも前に進まなくては。待っているだけでは、間違いなく状況は悪化するのだから。

 

「ひとつひとつ、課題をハッキリさせる。そして解決に向けて動く。それしかないだろうな」

「現状の課題は、大きく分けて3つです。情報の収集、戦力の輸送手段、戦後の活動ですね」

 

 まあ、そんなところか。根本的な原因としては、エルフの国に人間が入っていけないこと。だからこそ、外敵やら文化侵略やらから守られている国でもあったのだろう。

 

 実際に戦うことになれば、俺たちが外敵になって文化侵略をするわけだが。まったく介入しないというのは、おそらくない。俺が干渉しようとしなくても、周囲が許さないはずだ。

 

 とはいえ、未来のことを今から考えても仕方ない。目下対応すべきことは、相手の戦意を探ること。そして、戦う意志を持っていた場合には潰せるよう動くこと。それが最優先。

 

「転移のために魔力を侵食させようにも、民間人のフリはできない。エルフの国に、どこまで人間が干渉できるかも怪しい」

「それらを解決する手段でございますね。かなりの難題と、言わざるを得ません」

「兄さんには申し訳ないですけれど、かなり頼るかもしれませんね」

 

 本当に申し訳なさそうにしている。かなりの負担がかかるかもしれないな。まあ、普段は俺がジャンやミルラに頼りすぎているくらいだ。ここで頼られるくらい、どうということはない。

 

 むしろ、普段の恩返しには足りないだろう。しっかりとやらないとな。フィリスのためにも。

 

「まあ、そこは仕方がない。国が相手なんだから、大きく動くのは当然のことだ」

「ひとつだけ、方針はございます。大きな効果があるとは、保証できませんが……」

 

 ミルラは、少しだけ目を伏せている。自信がある案ではないのだろう。まあ、この状況で完璧な解決策が出てくる方がおかしい。むしろ、打つ手がないと言われないだけで優秀さが分かるというもの。

 

 勝たなければ話にならないというのは分かるが、やはりミルラは頼りになると思える。今後も、間違いなく右腕であり続ける。絶対にだ。

 

「とにかく聞かせてくれ。なにかすることがあるだけで、違うはずだ」

「サジタリウス聖国は、完全な自給自足をおこなう国家ではありません。輸出入があることは、存じております」

 

 つまり、それを売る商人は人間だということ。確かに、大きな効果があるとは言い切れないだろう。遠回りするような策ではあるからな。

 

 それでも、目の前に希望が見えてきたような気がする。ミルラを雇い入れたことは、誰がどう考えてもファインプレーだったと言えるだろう。紹介してくれたラナにも、感謝しないと。

 

「なるほど。情報を集めるにしろ、輸出入の締め上げを武器にするにしろ、取っ掛かりにはなるか」

「ただ、先ほどミルラさんも言った通り、劇的な改善策ではありません。あくまで、一歩というところでしょう」

「それでも、さっき言った通りにできることがあるだけで違う。とにかく、周囲に話を通してみよう」

「かしこまりました。まずは、ミーア様とリーナ様に会えるように準備を進めさせていただきます」

「帝国の内部からも、少しは手を打っておきますね。兄さんは、もっと大変でしょうけれど」

 

 大変だとしても、何もしなければフィリスは苦しむ。そして、きっとみんなも。だから、できることは全部するつもりだ。

 

 さて、言われた通りにミーアとリーナにも話を通しておかないとな。ジャンとミルラの知性は、本当に必要な場所に使わせたい。よし、やるか。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。