物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
今回は、またフィリスを呼び出した。細かい情報を集めて、何より俺たちがどうするかを確かめるために。
結局のところ、フィリスの意思が一番大事なんだ。勝手に決めて動いてしまえば、それこそサジタリウス聖国のやつらと同じ。俺は、絶対にそうなるわけにはいかない。
通話をすると、呼び出しについては快諾してくれた。お互い、もう一度話をする必要があると思っていたのだろう。
今のところ、フィリスは無表情に近いまま。いつもと同じように見える。さて、実際はどんな事を考えているのだろうな。
「さて、フィリス。もう一度、細かい話を聞いても良いか?」
「……了解。サジタリウス聖国の王は、それほど魔法の才がないらしい」
この世界というのは、どこまでも魔法がすべてらしい。本当に、嫌になりそうだ。リーナは光属性を持っていなかったから軽んじられた。ミルラやマリンのような仲間は、強い魔法が使えないだけで見下され続けた。
無論、俺も利益を享受している側であることを忘れてはならない。ただ、個人的な感覚としては少しも好きになれない。
「ああ、なるほど。だからフィリスという……。くだらないな……」
「……同感。レックスと比べれば、アリの大きさを比べるようなもの」
フィリスも、そういう価値観に染まってはいるのだろうな。俺の師になってくれたのも、闇魔法が珍しいからだろうし。
とはいえ、そういう意味でもくだらないのは確か。フィリスが俺と比べてアリのような存在だとは思わないが、多少の実力差なんてないのと同じ。
正直に言ってしまえば、どんぐりの背比べ。そんなもので王を選ぶのだから、バカバカしい。
「俺の言いたいこととは違うが、まあ結論は同じか」
「……理解。レックスには、王はあまり向いていない」
フィリスも分かってくれたみたいだ。やはり、俺たちの価値観はそう遠くない。だからこそ、これほど仲良くできている。
魔法こそすべてという価値観を、最強の魔法使いとして知られているフィリスが持っていない。にもかかわらず、言ってしまえば有象無象ばかりが気にしているんだよな。
だから、余計にくだらないと感じてしまう。あきれて物が言えないレベルだ。
「そういうことだな。失礼な話かもしれないが、フィリスは一番いい王ではないだろう」
「……同意。私は、魔法の天才ではある。それ以外は、大した能力を持たない」
フィリスは無表情のまま頷く。そこまで言われると、否定したくなるが。少なくとも、教師としては最高だからな。大したことないとは、とても言えない。
俺が圧倒的な実力を手に入れたのは、フィリスのおかげだ。もちろん、エリナのおかげでもあるが。とにかく、自分でただ勉強をしていただけなら、きっともっと弱かった。
だからこそ、あんまり卑下してほしいとも思わない。フィリスは、最高の教師なんだから。
「教師としての能力は、広義では魔法の実力。そういう意味では、正しいかもな」
「……感謝。レックスは、私を正しく理解してくれている」
少しだけ、顔がほころんでいた。理解できているというのなら、嬉しい限りだ。尊敬する師匠の理解者でいられるなんて、素晴らしいこと。
俺はフィリスに間違いなく多くのものをもらった。だからこそ、少しでも返せるのなら最高だ。
「転じて、フィリスを持ち上げているやつらは違うと。まったく、バカバカしい」
「……共感。レックスの師として、一生を共にするつもり。その邪魔は、させない」
「俺も同じ気持ちだ。フィリスが望まないのなら、たとえ誰かを傷つけてでも……」
「……歓喜。私のために、手を汚すことまで選んでくれる」
拳を握っていたのが、見られていたみたいだ。目がそっちを追いかけていたからな。そのお陰でフィリスの笑顔が見られたのだと思うと、結果オーライか。
あんまり、負の感情を表に出したくはない。とはいえ、誰にも隠し通すというのも違う。少しくらいは、伝えても良いんだよな。
「当たり前だ。フィリスは、俺にとって人生の師なんだから。その感謝は、本物だ」
「……対応。しばらくしたら、また使者が来る。私は、また断る。その時に……」
「俺も同席するよ。フィリスは、サジタリウス聖国なんかに渡したりしない」
「……嫉妬。もしかして、そんな感情?」
ちょっと目を瞬かせながら、そんな事を言っていた。素直に認めるのは恥ずかしいが、まあ当たっている。男女の嫉妬かと言われれば、たぶん違う。ただ、俺だけの師匠であってほしいという気持ちは否定できない。
フィリスが他の生徒に俺より力を入れた教育をする。そんな想像をしたら、頭がおかしくなりそうなのだから。
「そうかもな。フィリスは、誰にも奪われたくない。違うと言えば、嘘になる」
「……期待。レックスが、どんな言葉を言うのか」
「愛の誓いみたいなことは、できないからな? さすがに、それは……」
「……許容。私にとって大切なのは、異性としての愛ではない」
まあ、フィリスが俺に恋愛感情を抱くこともないか。自意識過剰だったのかもしれない。少し頬をかきたくなるな。
普通に考えれば、俺なんて単なる子供にしか見えないだろう。フィリスほど人生経験が豊富なら、余計に。まったく、妙なことを言ってしまった。
「なら、安心だな。俺の尊敬する師匠は、聖国にはもったいない」
「……爽快。それが、今の気持ち。私も、遠慮なく断れる」
「問題は、使者が逆上でもした時だが。フィリスを狙うのなら、許しはしない」
「……同調。私も、レックスを狙うものには容赦しない」
まったく同じような意見が返ってくるのは、とても気分がいい。フィリスの言うように、爽快だ。やはり、俺にとっては最高の師。これからも、変わることはない。
「似た者同士だな、俺たちは。だが、悪くない。いや、良い気分だ」
「……感嘆。レックスと同じだというのなら、私にとっても素晴らしいこと」
「もし仮に、国一つが敵になったとしても。俺は、お前を決して手放しはしない」
「……感謝。私も、決して離れはしない。私たちの未来のために」
「ああ、俺たちの未来のために。どれほど強大な敵だろうとも、勝つだけだ」
俺たちは、手を握りあった。その誓いは、絶対に果たしてみせる。つないだ手の暖かさに、想いを込めた。