物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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591話 固い決意

 今回は、またフィリスを呼び出した。細かい情報を集めて、何より俺たちがどうするかを確かめるために。

 

 結局のところ、フィリスの意思が一番大事なんだ。勝手に決めて動いてしまえば、それこそサジタリウス聖国のやつらと同じ。俺は、絶対にそうなるわけにはいかない。

 

 通話をすると、呼び出しについては快諾してくれた。お互い、もう一度話をする必要があると思っていたのだろう。

 

 今のところ、フィリスは無表情に近いまま。いつもと同じように見える。さて、実際はどんな事を考えているのだろうな。

 

「さて、フィリス。もう一度、細かい話を聞いても良いか?」

「……了解。サジタリウス聖国の王は、それほど魔法の才がないらしい」

 

 この世界というのは、どこまでも魔法がすべてらしい。本当に、嫌になりそうだ。リーナは光属性を持っていなかったから軽んじられた。ミルラやマリンのような仲間は、強い魔法が使えないだけで見下され続けた。

 

 無論、俺も利益を享受している側であることを忘れてはならない。ただ、個人的な感覚としては少しも好きになれない。

 

「ああ、なるほど。だからフィリスという……。くだらないな……」

「……同感。レックスと比べれば、アリの大きさを比べるようなもの」

 

 フィリスも、そういう価値観に染まってはいるのだろうな。俺の師になってくれたのも、闇魔法が珍しいからだろうし。

 

 とはいえ、そういう意味でもくだらないのは確か。フィリスが俺と比べてアリのような存在だとは思わないが、多少の実力差なんてないのと同じ。一属性(モノデカ)三属性(トリキロ)どころか、並大抵の五属性(ペンタギガ)ですら、俺からすれば誤差程度の違いでしかない。

 

 正直に言ってしまえば、どんぐりの背比べ。そんなもので王を選ぶのだから、バカバカしい。

 

「俺の言いたいこととは違うが、まあ結論は同じか」

「……理解。レックスには、王はあまり向いていない」

 

 フィリスも分かってくれたみたいだ。やはり、俺たちの価値観はそう遠くない。だからこそ、これほど仲良くできている。

 

 魔法こそすべてという価値観を、最強の魔法使いとして知られているフィリスが持っていない。にもかかわらず、言ってしまえば有象無象ばかりが気にしているんだよな。

 

 だから、余計にくだらないと感じてしまう。あきれて物が言えないレベルだ。

 

「そういうことだな。失礼な話かもしれないが、フィリスは一番いい王ではないだろう」

「……同意。私は、魔法の天才ではある。それ以外は、大した能力を持たない」

 

 フィリスは無表情のまま頷く。そこまで言われると、否定したくなるが。少なくとも、教師としては最高だからな。大したことないとは、とても言えない。

 

 俺が圧倒的な実力を手に入れたのは、フィリスのおかげだ。もちろん、エリナのおかげでもあるが。とにかく、自分でただ勉強をしていただけなら、きっともっと弱かった。

 

 だからこそ、あんまり卑下してほしいとも思わない。フィリスは、最高の教師なんだから。

 

「教師としての能力は、広義では魔法の実力。そういう意味では、正しいかもな」

「……感謝。レックスは、私を正しく理解してくれている」

 

 少しだけ、顔がほころんでいた。理解できているというのなら、嬉しい限りだ。尊敬する師匠の理解者でいられるなんて、素晴らしいこと。

 

 俺はフィリスに間違いなく多くのものをもらった。だからこそ、少しでも返せるのなら最高だ。

 

「転じて、フィリスを持ち上げているやつらは違うと。まったく、バカバカしい」

「……共感。レックスの師として、一生を共にするつもり。その邪魔は、させない」

「俺も同じ気持ちだ。フィリスが望まないのなら、たとえ誰かを傷つけてでも……」

「……歓喜。私のために、手を汚すことまで選んでくれる」

 

 拳を握っていたのが、見られていたみたいだ。目がそっちを追いかけていたからな。そのお陰でフィリスの笑顔が見られたのだと思うと、結果オーライか。

 

 あんまり、負の感情を表に出したくはない。とはいえ、誰にも隠し通すというのも違う。少しくらいは、伝えても良いんだよな。

 

「当たり前だ。フィリスは、俺にとって人生の師なんだから。その感謝は、本物だ」

「……対応。しばらくしたら、また使者が来る。私は、また断る。その時に……」

「俺も同席するよ。フィリスは、サジタリウス聖国なんかに渡したりしない」

「……嫉妬。もしかして、そんな感情?」

 

 ちょっと目を瞬かせながら、そんな事を言っていた。素直に認めるのは恥ずかしいが、まあ当たっている。男女の嫉妬かと言われれば、たぶん違う。ただ、俺だけの師匠であってほしいという気持ちは否定できない。

 

 フィリスが他の生徒に俺より力を入れた教育をする。そんな想像をしたら、頭がおかしくなりそうなのだから。

 

「そうかもな。フィリスは、誰にも奪われたくない。違うと言えば、嘘になる」

「……期待。レックスが、どんな言葉を言うのか」

「愛の誓いみたいなことは、できないからな? さすがに、それは……」

「……許容。私にとって大切なのは、異性としての愛ではない」

 

 まあ、フィリスが俺に恋愛感情を抱くこともないか。自意識過剰だったのかもしれない。少し頬をかきたくなるな。

 

 普通に考えれば、俺なんて単なる子供にしか見えないだろう。フィリスほど人生経験が豊富なら、余計に。まったく、妙なことを言ってしまった。

 

「なら、安心だな。俺の尊敬する師匠は、聖国にはもったいない」

「……爽快。それが、今の気持ち。私も、遠慮なく断れる」

「問題は、使者が逆上でもした時だが。フィリスを狙うのなら、許しはしない」

「……同調。私も、レックスを狙うものには容赦しない」

 

 まったく同じような意見が返ってくるのは、とても気分がいい。フィリスの言うように、爽快だ。やはり、俺にとっては最高の師。これからも、変わることはない。

 

「似た者同士だな、俺たちは。だが、悪くない。いや、良い気分だ」

「……感嘆。レックスと同じだというのなら、私にとっても素晴らしいこと」

「もし仮に、国一つが敵になったとしても。俺は、お前を決して手放しはしない」

「……感謝。私も、決して離れはしない。私たちの未来のために」

「ああ、俺たちの未来のために。どれほど強大な敵だろうとも、勝つだけだ」

 

 俺たちは、手を握りあった。その誓いは、絶対に果たしてみせる。つないだ手の暖かさに、想いを込めた。

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