物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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596話 敵の一手

 フィリスとともに、サジタリウス聖国へとやってきた。これまでにマーカーを付けた中で一番近い場所に転移して、そこから全力で飛んでいく。

 

 空から入ることも考えたのだが、どうにも上の方には結界のようなものが張られている様子だった。破ることはできなくもないが、それをしてしまえば聖国のすべてが敵に回るかもしれない。

 

 現状、なるべく犠牲が少なくなるように動いている。そもそも、流石に一国が丸ごと強化されていたら詰む。ということで、普通に森に侵入する形になった。

 

 どこもかしこも木だらけで、時折ある踏み歩いた跡を探しながら進んでいく。ある程度整理された道のようなものもたまにあるものの、それでも厳しい環境であることには変わりない。

 

 とにかく、迷わないように道を基準にして動いていく。一面木だらけなせいもあって、油断するとすぐにどちらに進めば良いかわからなくなってしまう。

 

 それどころか、木や足元の土が動きを阻んでくる。あらゆる意味で、環境が敵に回っていた。

 

 魔法で吹き飛ばしながら進めば楽なのだろうが、環境破壊にもほどがある。そもそも、善良な市民まで敵に回しかねない行為だ。

 

 結局のところ、闇の魔力で目印を作りながら進んでいくという形になった。それが、一番迷わずに済む形だったからな。

 

 とはいえ、かなり時間を取られてしまった。食料なんかは転移を使えばどうにかできるとはいえ、持ち運んでいる分がかなり減ってしまった。

 

「やはり、森というのは動きにくいな……」

「……同意。レックスの力があっても不便。慣れていない人は、むしろ邪魔になる」

 

 フィリスは淡々と語っているが、俺としてはうなだれたいくらいに大変だった。まあ、そんな士気が下がるようなことはできないが。

 

 実際のところ、話の内容は間違っていない。大人数で今の環境にいたらメチャクチャになっていたのが、容易に想像できる。

 

 フィリスはまだ慣れている様子だったが、完全な初心者が他にいたらどうなっていたか。想像するだけで恐ろしい。

 

「となると、ふたりで来たのは正解だったな。喜べるかは、怪しいが」

「……疑問。私とふたりは、喜ばしくない?」

 

 ちょっと首を傾げながら、そんなことを聞かれてしまう。一瞬騙されそうになったが、目を見てからかわれていると理解できた。少しも悲しそうに見えなかったからな。

 

 フィリスまでそういうことをしてくるようになると、もはや誰が相手でも安心できない。俺の心の聖域は、どこにあるのだろうか。

 

 まあ、たぶん気を軽くするために言ってくれているのだろう。うんざりするような状況だからな。

 

「分かっていて聞いているだろう……。普通に仲良くする分には、大歓迎だが」

「……期待。なら、また別の機会にする。私との関係にも、慣れてもらわないと」

「そういう冗談も……、闇の衣(グラトニーウェア)!」

 

 急に魔力を感じて、防御魔法を張る。すると、攻撃魔法が飛んできた。問題なく耐えられこそしたものの、気づかなかったら危なかったかもしれない。

 

 どこから飛んできたのかを探ってみると、かなり遠くだった。

 

「……狙撃。威力は大した事ないけれど、危険」

「だな。闇の刃(フェイタルブレイド)!」

 

 反撃を仕掛けていき、とりあえず撃ってきた相手は潰せた。まあ、それなり程度の魔法使いでしかない。今の俺が苦戦するレベルではないというのが実情。

 

 まあ、一対一ならの話ではあるのだが。

 

「……追撃。まだ、いる」

「我らの領域を侵す人間に、死を! 五重反発陣(ペンタマジック)!」

五重反発陣(ペンタマジック)! 愚かな人間に、裁きの鉄槌を!」

 

 一気に数人が躍りかかってくる。ただ五属性の魔法を飛ばしてくるだけだから、対処はまだ楽な方ではあるが。

 

 仮に皇帝レベルの存在が量産できるとすると、かなり困ったことになるのだが。今のところは、そういう感じではなさそうだ。

 

 ということで、まだ切り札は使わずに普通の技だけで状況を打開していく。

 

「よくもまあ、俺ばかり狙ってくるものだ! 闇の刃(フェイタルブレイド)!」

「……加護。誰も彼も、五属性(ペンタギガ)。私も、手伝う。五曜剣(チェインブレイド)

 

 フィリスも協力して魔力の刃を飛ばしてくれる。今のところは、切り裂くだけで済んでいる。

 

 とはいえ、爆発も必要になるかもしれない。森を更地にするのは、できれば避けたくはあるが。先々のことを考えすぎていま負けるわけにはいかない。とにかく、バランスを取らないとな。

 

「なぜ、尊きお方が人間などと! おのれ! 五重反発陣(ペンタマジック)!」

無音の闇刃(サイレントブレイド)! よくもまあ、これだけの数が隠れていたものだな!」

 

 今度は近づいていって切り捨てる。とりあえず、今のところは敵の防御を十分に貫くことができている。次々と敵が現れてくるものの、まあ対処できる範囲だと言える。

 

 ただ、いくら森とはいえ、そうも隠れられるものなのかという疑問もある。地面に隠れていたという感じでもないし、何らかの隠蔽魔術みたいなものを使ったのだろうか。

 

「……調査。私たちの索敵をすり抜けてきた原因を、探るべき」

「そうだな! まったく、敵を前に戦うことばかり考えていられないなんてな!」

「森を汚すものに、死あれ! 我らの未来に、祝福あれ! 五重反発陣(ペンタマジック)!」

 

 さっきまでより、魔力の圧力が上がった気がする。二人で同時に攻撃された時よりも強く感じるくらいだ。まともに当たれば、木々なんて簡単に吹き飛ぶだろう。

 

 まだ、合一は使わなくても倒せる。とはいえ、この調子で強くなるようなら厳しい。相手の限界は、どこにある。

 

闇の刃(フェイタルブレイド)! なんかこいつら、後になるほど強くなってないか!?」

「……仮説。最初に出てきたのが、捨て駒。あるいは、加護がだんだん高まっているか」

「どちらにしても、厄介なものだな! だが、どれだけいる!?」

「人間などに、我等の地を汚させはせん! 五重反発陣(ペンタマジック)!」

「我らの尊きお方を、返してもらおう! 五重反発陣(ペンタマジック)!」

 

 また出てきた。そして、また強くなった魔法を撃ってくる。今度は、ただ防御魔法で受けていたら厳しいかもしれない。

 

 今のうちなら、なんとかなる。初手で、できるだけ終わらせるか。

 

五曜剣(チェインブレイド)。確かに、きりがない。この調子だと、困る」

「まったく、仕方ない! 一度、森ごと吹き飛ばすぞ!」

「させるものか! 五重反発陣(ペンタマジック)!」

「塵も残さず、消えるが良い! 五重反発陣(ペンタマジック)!」

 

 敵が一度に魔法を使ってくる。それに合わせて、俺は魔力を込めた剣を振り、そこに溶け込んでいく。自分自身を斬撃とした一撃が、飛んでいく。

 

 あっけなく、森ごと敵たちは切り裂かれていった。周囲を探るが、気配は感じない。

 

剣魔合一(トゥルーブレイド)! さて、生き残りは見つからないが……」

「……同意。探る限り、敵は見当たらない」

 

 そうフィリスが言った瞬間、魔力が周囲にあふれてくるのを感じた。いろんなところで、魔力が感知に引っかかる。まるで、急に現れたかのように。

 

「いや、待て。この魔力の感じ、まさか!」

「……転移。それで、立て続けに敵が襲いかかってきたということ」

 

 その言葉通り、周囲は敵に囲まれていた。

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