物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
転移で現れた敵は、いかほどだろうか。少なくとも、一瞬で数えきることはできない。10は軽く超えていて、印象としては数十くらい。
少数と言えば少数なのだが、問題は全員が
だからといって温存して討ちそこねてしまえば、こちらも危険になる。もっと言えば、消耗が増える結果にもつながる。的確なバランスを追求し続けるのが課題になるな。
「また、ずいぶんと大勢が現れたものだな!」
「……警戒。これで最後とは限らない。気を抜かないこと」
本当に、それが最大の問題だ。いつ終わるのか分からないまま戦い続けること。邪神の眷属と戦った時を思い出す。
さて、どれだけの人数がミレアルの加護を得ているのやら。ゴールの見えないマラソンは、とにかく苦しい。どうにかして、終わるタイミングを知りたいものだが。期待薄だな。
「分かっているさ! まずは、数を減らさないとな!
言葉通りに、まずは合一から撃っていく。魔力を込めた剣を振って、その斬撃と一体化して一気に切り裂いていく。さっき森を切り開いたので、もうあまり被害を気にしなくて良い。見える敵だけを、一気に殺す。それだけ。
とはいえ、一度で全員殺し切ることもできない。そして、おかわりもやってくる。完全に、良くない状況だ。
「後隙ができたな。女神の加護よあれ!
「我々も続け! 真に尊きものが何か、示すのだ!」
「闇に溺れる愚か者に、残酷な死を!」
俺が合一から戻った隙に、一気に魔法を撃たれる。もう一度合一を使うためには、魔力の収束も必要だ。一瞬とは言え、遅れが出ている。
邪神の眷属と戦った時より、明らかに厳しい。というより、敵が戦術的に行動してきているのが困ってしまう。合一は威力こそ高いものの、弱点も多い技だ。それでも、使わないと敵を殺しきれない。
おそらく、使えば使うほど不利になるのだろうな。それでも、今は他に手がない。かなり、まずい未来が見えてくる。
「
フィリスが五属性の魔力と合一して敵を吹き飛ばし、周囲での魔力結合も阻害していく。敵は魔法を撃とうとして、何も起こらないことに困惑している。
だが、俺はもともとフィリスの技の性質を知っている。合わせて俺も追撃するだけ。
「
剣に魔力を込めて、振り抜く。そうすることで、防御が遅れた敵を切り裂いていく。ひとまず、それなりに人数を減らせた。
だが、まだまだおかわりは続く。この調子なら、いずれ限界は訪れるだろう。
「おのれ、よくも……! 生きては帰さん……!」
「やめろ! 尊きお方まで巻き込むつもりか!」
なんか、敵が言い争いをしている。フィリスにまで攻撃しようとしたやつがいて、それを止めようとしている様子。
ハッキリ言って、フィリスが味方になる可能性なんてない。それでも、尊き血とやらは大事なのだろう。俺からすればバカバカしいが、いい感じに隙ができた。
「問答なら、あの世でしていろ!
ひとまず、言い争っているやつらを中心に切り払っていく。少しでも敵の戦力を減らせたのなら、御の字だ。
実際、敵の動きは少し乱れている。悪くない一手だったみたいだな。
「……課題。この流れだと、持久戦になる」
「やってやるさ、どれだけだってな! フィリス、お前はどうだ!?」
「……当然。どこまでも、レックスに付き合うだけ」
フィリスは杖を構えて、前を見据える。俺も合わせて、魔力を集中させていく。何も言わずとも、どんな戦術を狙っているのかは分かった。
「やれ! 汚れし者を討てば、褒美は思うがままだぞ!」
「人間ごときに、我々が敗れるものか!
「……邪魔。
「
敵の攻撃に合わせて、フィリスが魔力との合一で周囲の魔力の結合を阻害していく。合わせて、俺が近くにいる敵を切り裂いていく。
剣の中に魔力を押し留めておけば、比較的楽に魔力を集中できる。もちろん、強く圧縮するような感じでやれば外でも使えるのだが。さて、敵はどうするだろうな。
「あの技を使われると、魔法が使えなくなる! 下がれ!」
「……ちっ、なら!
「その程度の技、通じぬ! 滅ぶが良い!
遠距離攻撃は、敵の反撃で半分くらい相殺されていく。被害を与えることには成功したものの、十分な成果とは言えない。
そろそろ、敵が明確に俺たちの戦術に対応してきた感じがある。となると、この一手も厳しいかもしれない。だが、他に手はない。やるだけだ。
「仕方ない……!
「今だ! 全力で魔法を打て!
俺が合一を使ったタイミングで、敵が一気に魔法を撃ってくる。狙いは、何となく分かる。明確に、合一に対策を仕掛けてきたといったところか。
「……危険。敵は、魔力を分散させようとしている。レックス、問題ない?」
「問題ないように、するだけだ!
少しでも魔力の結合を高めながら、自分を魔力に溶かし込んでいく。敵がどれほど魔力を叩きつけてこようとも、乗り越えるために。
魔力に溶け込んでいる都合上、完全に散乱してしまえば元には戻れない。分かっていて、敵は対処してきた。なら、こちらも限界まで対応するだけだ。
どの道、逃げるという手はない。王国や帝国まで巻き込むことは分かりきっている。そもそも、敵も転移を使ってくるんだ。俺の転移を潰されたところで、なんの不思議もない。
なら、目の前の敵を全力で叩き潰すだけ。それだけだ。
「まだまだ続けよ! 少しでも、汚れし者を消耗させるのだ!」
「我こそが、真に選ばれしもの! 消えよ!
どんどん敵が現れて、魔法を放ってくる。ただ受けていては、厳しい。先程までのように、反撃を繰り返していく。
「その程度で、負けるはずないだろう!
「……同調。行く。
俺とフィリスは、別方向に合一の技を叩きつけていく。万が一にもお互いが混ざったりしないように、慎重に。
どうなってしまうのか、正直に言って想像がつかない。だから、安全マージンを取っていた。
「隙間があるぞ! そこに潜り込め!」
「なら、俺がまとめて仕留めるまでだ!
敵が俺たちの攻撃に対策を打ってきたので、今度は俺ひとりの全力を叩きつける。それで、敵は真っ二つになっていく。
そろそろ、俺の手も尽きてきた。これ以上は厳しい状況で、次の敵は現れない。そこで、目の前にいる敵を狩り尽くしていく。終わっても、まだ敵は出てこなかった。
「……消失。転移の反応は、消えた」
「こっちが限界に近くなった途端にか……。意図を感じざるを得ないな……」
「……仮説。レックスを殺す気がないのなら、好材料。ただ……」
「別の目的のために生かしている可能性も、否定できないと。生贄とか、ありそうか?」
「……肯定。レックス、今後も気をつけて」
ミレアルの狙いが何なのか。分からないことには、対策も取れない。せめて少しでも休めるように、一度座り込んだ。