物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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597話 不自然な動き

 転移で現れた敵は、いかほどだろうか。少なくとも、一瞬で数えきることはできない。10は軽く超えていて、印象としては数十くらい。

 

 少数と言えば少数なのだが、問題は全員が五属性(ペンタギガ)であるということ。安定して殺せる技が魔力との合一だけなので、どうしても消耗してしまう。

 

 だからといって温存して討ちそこねてしまえば、こちらも危険になる。もっと言えば、消耗が増える結果にもつながる。的確なバランスを追求し続けるのが課題になるな。

 

「また、ずいぶんと大勢が現れたものだな!」

「……警戒。これで最後とは限らない。気を抜かないこと」

 

 本当に、それが最大の問題だ。いつ終わるのか分からないまま戦い続けること。邪神の眷属と戦った時を思い出す。

 

 さて、どれだけの人数がミレアルの加護を得ているのやら。ゴールの見えないマラソンは、とにかく苦しい。どうにかして、終わるタイミングを知りたいものだが。期待薄だな。

 

「分かっているさ! まずは、数を減らさないとな! 剣魔合一(トゥルーブレイド)!」

 

 言葉通りに、まずは合一から撃っていく。魔力を込めた剣を振って、その斬撃と一体化して一気に切り裂いていく。さっき森を切り開いたので、もうあまり被害を気にしなくて良い。見える敵だけを、一気に殺す。それだけ。

 

 とはいえ、一度で全員殺し切ることもできない。そして、おかわりもやってくる。完全に、良くない状況だ。

 

「後隙ができたな。女神の加護よあれ! 五重反発陣(ペンタマジック)!」

「我々も続け! 真に尊きものが何か、示すのだ!」

「闇に溺れる愚か者に、残酷な死を!」

 

 俺が合一から戻った隙に、一気に魔法を撃たれる。もう一度合一を使うためには、魔力の収束も必要だ。一瞬とは言え、遅れが出ている。

 

 邪神の眷属と戦った時より、明らかに厳しい。というより、敵が戦術的に行動してきているのが困ってしまう。合一は威力こそ高いものの、弱点も多い技だ。それでも、使わないと敵を殺しきれない。

 

 おそらく、使えば使うほど不利になるのだろうな。それでも、今は他に手がない。かなり、まずい未来が見えてくる。

 

無謬剣(カオスブレイド)。レックス、今のうちに」

 

 フィリスが五属性の魔力と合一して敵を吹き飛ばし、周囲での魔力結合も阻害していく。敵は魔法を撃とうとして、何も起こらないことに困惑している。

 

 だが、俺はもともとフィリスの技の性質を知っている。合わせて俺も追撃するだけ。

 

無音の闇刃(サイレントブレイド)! フィリス、助かった!」

 

 剣に魔力を込めて、振り抜く。そうすることで、防御が遅れた敵を切り裂いていく。ひとまず、それなりに人数を減らせた。

 

 だが、まだまだおかわりは続く。この調子なら、いずれ限界は訪れるだろう。

 

「おのれ、よくも……! 生きては帰さん……!」

「やめろ! 尊きお方まで巻き込むつもりか!」

 

 なんか、敵が言い争いをしている。フィリスにまで攻撃しようとしたやつがいて、それを止めようとしている様子。

 

 ハッキリ言って、フィリスが味方になる可能性なんてない。それでも、尊き血とやらは大事なのだろう。俺からすればバカバカしいが、いい感じに隙ができた。

 

「問答なら、あの世でしていろ! 剣魔合一(トゥルーブレイド)!」

 

 ひとまず、言い争っているやつらを中心に切り払っていく。少しでも敵の戦力を減らせたのなら、御の字だ。

 

 実際、敵の動きは少し乱れている。悪くない一手だったみたいだな。

 

「……課題。この流れだと、持久戦になる」

「やってやるさ、どれだけだってな! フィリス、お前はどうだ!?」

「……当然。どこまでも、レックスに付き合うだけ」

 

 フィリスは杖を構えて、前を見据える。俺も合わせて、魔力を集中させていく。何も言わずとも、どんな戦術を狙っているのかは分かった。

 

「やれ! 汚れし者を討てば、褒美は思うがままだぞ!」

「人間ごときに、我々が敗れるものか! 五重反発陣(ペンタマジック)!」

「……邪魔。無謬剣(カオスブレイド)。レックス」

無音の闇刃(サイレントブレイド)!」

 

 敵の攻撃に合わせて、フィリスが魔力との合一で周囲の魔力の結合を阻害していく。合わせて、俺が近くにいる敵を切り裂いていく。

 

 剣の中に魔力を押し留めておけば、比較的楽に魔力を集中できる。もちろん、強く圧縮するような感じでやれば外でも使えるのだが。さて、敵はどうするだろうな。

 

「あの技を使われると、魔法が使えなくなる! 下がれ!」

「……ちっ、なら! 闇の刃(フェイタルブレイド)!」

「その程度の技、通じぬ! 滅ぶが良い! 五重反発陣(ペンタマジック)!」

 

 遠距離攻撃は、敵の反撃で半分くらい相殺されていく。被害を与えることには成功したものの、十分な成果とは言えない。

 

 そろそろ、敵が明確に俺たちの戦術に対応してきた感じがある。となると、この一手も厳しいかもしれない。だが、他に手はない。やるだけだ。

 

「仕方ない……! 剣魔合一(トゥルーブレイド)!」

「今だ! 全力で魔法を打て! 五重反発陣(ペンタマジック)!」

 

 俺が合一を使ったタイミングで、敵が一気に魔法を撃ってくる。狙いは、何となく分かる。明確に、合一に対策を仕掛けてきたといったところか。

 

「……危険。敵は、魔力を分散させようとしている。レックス、問題ない?」

「問題ないように、するだけだ! 剣魔合一(トゥルーブレイド)!」

 

 少しでも魔力の結合を高めながら、自分を魔力に溶かし込んでいく。敵がどれほど魔力を叩きつけてこようとも、乗り越えるために。

 

 魔力に溶け込んでいる都合上、完全に散乱してしまえば元には戻れない。分かっていて、敵は対処してきた。なら、こちらも限界まで対応するだけだ。

 

 どの道、逃げるという手はない。王国や帝国まで巻き込むことは分かりきっている。そもそも、敵も転移を使ってくるんだ。俺の転移を潰されたところで、なんの不思議もない。

 

 なら、目の前の敵を全力で叩き潰すだけ。それだけだ。

 

「まだまだ続けよ! 少しでも、汚れし者を消耗させるのだ!」

「我こそが、真に選ばれしもの! 消えよ! 五重反発陣(ペンタマジック)!」

 

 どんどん敵が現れて、魔法を放ってくる。ただ受けていては、厳しい。先程までのように、反撃を繰り返していく。

 

「その程度で、負けるはずないだろう! 剣魔合一(トゥルーブレイド)!」

「……同調。行く。無謬剣(カオスブレイド)

 

 俺とフィリスは、別方向に合一の技を叩きつけていく。万が一にもお互いが混ざったりしないように、慎重に。

 

 どうなってしまうのか、正直に言って想像がつかない。だから、安全マージンを取っていた。

 

「隙間があるぞ! そこに潜り込め!」

「なら、俺がまとめて仕留めるまでだ! 剣魔合一(トゥルーブレイド)!」

 

 敵が俺たちの攻撃に対策を打ってきたので、今度は俺ひとりの全力を叩きつける。それで、敵は真っ二つになっていく。

 

 そろそろ、俺の手も尽きてきた。これ以上は厳しい状況で、次の敵は現れない。そこで、目の前にいる敵を狩り尽くしていく。終わっても、まだ敵は出てこなかった。

 

「……消失。転移の反応は、消えた」

「こっちが限界に近くなった途端にか……。意図を感じざるを得ないな……」

「……仮説。レックスを殺す気がないのなら、好材料。ただ……」

「別の目的のために生かしている可能性も、否定できないと。生贄とか、ありそうか?」

「……肯定。レックス、今後も気をつけて」

 

 ミレアルの狙いが何なのか。分からないことには、対策も取れない。せめて少しでも休めるように、一度座り込んだ。

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