物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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602話 終わりに向けて

 俺たちは、聖都に向けて確かに足を進めていく。獣を狩ったり野草を採取したり野宿をしたりすることにも慣れてきて、これからは道具なしのキャンプも普通に楽しめそうな気すらする。

 

 フィリスに任せていることも多いが、俺が得意とすることも増えてきた。見た目で分からない毒草を見分けることとか、獣をほとんど動かさずに活け締めみたいにすることとか。

 

 少しずつ、料理の味も上がっていった。フィリスの調理がうまいのは当然のこととして、俺の採取もうまくなったこともあると思う。闇魔法を使って鮮度を保つようなことも、ある程度はできたからな。

 

 美容魔法を応用して、良い感じに美味しい状態にする。そんな技術も身に着けてしまった。

 

 そんな中で、ときおり襲いかかってくる敵もいた。急に転移で現れることばかりで、本気で気を抜ける瞬間がない。

 

 今回も、フィリスと合一することで敵を倒していった。

 

「これで、10回目くらいか? まあ、安定して倒せているが……」

「……布石。その可能性が高い。もう一段階進めそうなのは、助かる」

 

 ミレアルにも、何かしらの意図があるということ。おそらく、俺たちを殺すことそのものじゃない。そうしたいのなら、もうとっくにできているのだから。

 

 正確には分からないが、俺たちに何かの役割を求めていることだけは分かる。おそらく、もっと成長しろということなのだろう。

 

 成長した先に何があるのかまでは、想像すらできない。いや、候補こそ思い浮かぶものの、どれが正しいか判断するだけの材料がひとつもないという方が正しいか。

 

 誰かを倒させたいのか、あるいは単に俺たちの育成を楽しんでいるのか。他には、人の人生をもてあそんでいるだけという可能性も否定できない。

 

 原作では、良い女神として書かれていた。だが、少しも当てにならない。今の状況は、むしろ一般的な邪神としての行動に近い。帝国や聖国の犠牲を考えれば、ハッキリ言って大差ない。

 

 なんとなく、聖都で敵を倒しさえすれば一区切りな気はする。皇帝を倒してから、しばらく余裕ができていたように。希望的観測かもしれないが、なんとなく正しいと思えるんだよな。

 

「もうそろそろ聖都だし、間違いなく強い敵がいるよな」

「……同意。私たちの連携が問われる」

「あの合一にも、少しは慣れてきたからな。今なら、連発もできるかもな」

「……喜悦。あの感覚は、慣れない。どうしても」

 

 多幸感があるのは分かる。だから、妙な気分になるというか。フィリスも、似たような感覚を覚えているのだろう。

 

 ちょっとだけ口元を緩めているのが見えるから、基本的には良いものだと思っているはず。

 

「なんというか、特殊な感じがあるよな。まあ、別の人と混ざり合ってるんだから当然ではあるが」

「……合一。魔力と私だけでなく、私とレックスも」

「そういう言い方をすると、別の意味に聞こえてくるんだよな……」

「……年頃。レックスも、そういう事を気にする?」

 

 じっと俺のことを見てきている。これは、どういう反応なんだ。嫌な顔はされていないから、そこまで失言ではないと信じたいが。いや、下手をしたらセクハラか。

 

 俺は一度うなだれて、フィリスに頭を下げていく。

 

「話題に出した俺が悪かったから、あんまり突っ込まないでくれ……」

「……拒否。私たちの関係は、これから大きく変わる」

「まあ、ふたりで国まで変えようとするくらいだからな。良くも悪くも、変化は避けられないか」

「……臆病。やはり、レックスは本音を語ることを避けている」

 

 そんなことを言われてしまう。図星ではあるのだが、いま言われてもどうしようもない。

 

「その話は、前に結論が出たじゃないか……!」

「……冗談。レックスが本気にならないのなら、意味がない」

「それはつまり、冗談じゃないということだよな!?」

「……愉悦。いろんな顔を見ることは、とても満たされる」

 

 フィリスはくすくすと笑っていた。どこまで本気だったのだろうか。俺が好意をぶつければ返すというような態度に見えたが。

 

 信頼されているのは分かるし、恋愛かはともかく好かれているのもわかる。ふたりで合一したときに伝わってきた感情からして、相当大事にされているはずだ。

 

 とはいえ、今の表情を見る限りはからかっている部分も大きい。実際、どうせまだ答えは出せない。とりあえず、振り回されておけば良いか。

 

「まさか、フィリスにまでからかわれるとは……。俺の安息の地は、どこに……」

「……簡単。私の胸に来れば、いくらでも安心させてあげる」

 

 腕を広げて言われてしまう。これまでのフィリスなら、考えられなかったレベルの行動だ。まあ、きっかけは明らかなのだが。

 

 一緒にサジタリウス聖国での問題を乗り越えようとしていて、ふたりで合一までした。それで関係が変わらない方がおかしい。

 

 とはいえ、胸に飛び込むのは無理だ。誰も見ていなくても、そんなことできない。

 

「いや、むしろ少しも落ち着かないと思うが……。自分の魅力を、少しは理解してくれ……」

「……歓喜。レックスにとって、私は魅力的。とても、ありがたい」

「俺を確かに導いてくれて、ずっと支えてくれていたんだ。魅力的に決まっているだろう」

「……疑問。師匠としてだけ魅力的? 異性としては、どう?」

「言わせないでくれよ……! 分かっていて聞いているよな!?」

「……満足。これで、戦いに臨む気持ちは十分」

 

 言葉通りに、フィリスは満たされたように笑っていた。まあ、言わずとも伝わっているのは分かる。フィリスは美人だし、頼りになるし、ずっと一緒にいた。それで魅力的に感じないとか、ありえない。

 

 まあ、実際に恋人になれるかどうかは別として。種族の差とか年の差とか立場とか、壁が大きすぎる。仮に俺たちがお互いに望んでいたところで、結ばれることができるかどうか。

 

 結局のところ、今は誤魔化すしかないんだよな。まあ、言えることは言っておきたい気持ちもあるが。いつお互いがどうなるのかなんて、分かったものじゃないのだし。

 

「ああ、そうか……。負けたら、これで最後だものな……」

「……否定。私たちは、絶対に負けない。私たちなら」

「ああ、そうだな。俺とフィリスが合一までして、負けるわけないよな」

「……同意。そろそろ見えてきた。あれが、聖都」

 

 森に囲まれた、見るからに都市という場所が目に入る。そこからは、強い圧力が伝わってくる。どう考えても、普通じゃない。

 

 まあ、分かる。ミレアルの尖兵が、聖都には大勢いるのだろう。それを倒さないことには、始まらない。

 

「ここから見るだけでも、異常な魔力がただよっているな……」

「……必然。ミレアルは、本腰を入れているみたい。勝てば、大きな区切り」

 

 フィリスも俺と同様の見解らしい。少なくとも、完全に気分だけで運用しているような動きではない。まだ明確な意図は見えないにしろ。

 

 だから、希望を持って進むことができる。これは、ゴールのないマラソンではないのだと。

 

「確かにな。なんだかんだで、意思を持って敵を運用している」

「……試練。だからこそ、乗り越えられるように調整しているはず」

「なるほどな。ミレアルの目を、見開かせてやろうじゃないか」

 

 俺が試練を乗り越えられるかどうか。答えは決まっている。隣を見ると、頷かれる。

 

 さあ、ここからだ。誰が相手だろうと関係ない。俺は、フィリスとの未来を手に入れてみせる。

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