物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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603話 女神に愛されしもの

 聖都に向けて進んでいくと、目の前に魔法陣が現れた。そして、そこから大勢のエルフが出てくる。パッと見では数に当たりをつけられないほどで、とにかく多い。下手したら、1000とかいるんじゃないだろうか。

 

 そして、その誰もが五属性(ペンタギガ)。普通なら、絶望的な状況だ。だが、今の俺たちが負ける気はしない。ふたりでの合一があれば、どんな敵にだって勝てる。

 

 敵は、まだ動いてこない。その中心にいる豪勢なローブを着た男が、一歩前に出てくる。

 

「貴様は何者かなど問うまい。フィリスは、我にこそふさわしい」

「……国王。魔力が少ないと聞いていたけれど」

 

 なるほど。そもそも、王も俺たちの敵だったということか。フィリスを王にしたいというのが嘘だったのか、それとも別の理由で敵になったのか。

 

 いずれにせよ、俺たちの前に出てきた以上は容赦しない。降伏するというのであれば、話は別だが、まあ、ありえないよな。

 

「理由なんて、聞くまでもないよな。借り物の力で、ご苦労なことだ」

「この威光が分からぬとは、愚かなこと。力の差も分からぬか?」

 

 まあ、そこそこの魔力といったところか。皇帝より魔力を感じない。やはり、ミレアルによる調整が入っている可能性が高い。

 

 おそらく、敵が千人以上いることを前提に、それでも俺たちが勝てるようにバランスを整えている。まるで、クリアできないゲームは面白くないというかのように。

 

 となると、俺が女神の決めた主人公だったりするのだろうか。役割としては、近い気もする。そうなると、俺を殺そうとしていないことにも説明がつくからな。

 

 まあ、当たっていたら本当にとんでもない邪神だ。闇魔法の根源、スティルクルドよりもよほど。俺の人生を、物語として楽しんでいるようなもの。せめて、もう少しマシな理由であってほしいが。

 

 目の前の敵は、所詮は中ボス程度の扱いなのかもな。ラスボスは、誰だろうか。スティルクルドなのか、ミレアルなのか。はたまた、それ以外の何かか。

 

 いや、余計なことを考えても仕方ない。今は、ちゃんと集中しなければ。変に考え込んで隙を作るのは、良くない。

 

「その割に、ずいぶんな人数で囲んでくるじゃないか。自信がないのか?」

「王の力とは、しもべの力。生まれながらの王でなければ、分かるまいよ」

 

 腕を組みながら、見下すように語っている。なんというか、論理が破綻している。ミレアルの力を誇っている割に、しもべの力がどうとか言っているし。

 

 まあ、コンプレックスの塊みたいな存在なのは分かる。とりあえず、適当に煽って冷静さを削いでいくか。言葉をぶつけるだけで勝ちに近づくのなら、やらない理由がない。

 

「まるで周囲に認められていなかったそうじゃないか。よく自信満々でいられるものだ」

「我こそが、女神に選ばれし存在。小さき民など、気にとめる必要もない」

「……堕落。王としても魔法使いとしても、見るべきところはない」

「優れた子を生むための母体に、意思など必要ない。そういうことになろう」

 

 眉をひそめて、そんな事を言っている。フィリスに反論されたのが、よほど気に食わなかったらしい。小物過ぎて、少し面白くなってきたかもな。もう少しつついてやれば、良い感じに味方の足を引っ張ってくれそうだ。

 

「まったく、小さなことだ。少し軽んじられたくらいで、ムキになって」

「……同感。レックスとは、比べる価値もない。あらゆる意味で、無駄」

「後悔したところで、遅い。貴様らに未来などないのだ」

 

 にらみつけてくるものの、まるで圧を感じない。弱い犬ほどよく吠えるというのを、体現している。

 

 実際のところ、皇帝より魔力が少ない。まあ、この王だけなら適当に戦っても勝てるだろう。そんな油断をする気はないが。

 

 とにかく、馬鹿みたいに怒って味方を巻き込む魔法でも撃ってくれれば、かなり楽なんだが。そこまで誘導できないものだろうか。流石に無理か? まあ、試すだけ試してみよう。問答の隙に魔力をためているとか、そういう動きも見えないのだから。

 

 つまり、どれだけ挑発しても俺たちが得するだけ。もっともっと続けるべき。

 

「同じようなことを言ったやつがいたな。ミレアルの加護を得て、俺の足元にも及ばなかったやつが」

「……皇帝。レックスと一対一ですら、勝負にならなかった」

「そのようなものと我を同じにすると? 尊き血の何たるかを知らぬらしい。雑草らしいことよ」

「ずっとそう言われてきたのが、目に見えているぞ。自分が言われて嫌だったことを、人に言うだけか?」

「……単純。知性がなければ、的確に相手を傷つけることすらできない。哀れなもの」

「き、貴様ら……。知ったような口を効く、愚か者どもが!」

 

 プルプルと震えながら叫んでいた。よほど効果的だったみたいだな。舌戦すらも、経験が少ないのかもしれない。まあ、周囲から軽んじられていたそうだからな。理屈としては通る。

 

 さて、どれだけ追撃するか。もっともっと追い詰めた方が、俺達にとっては有利になりそうだ。

 

「図星か。思っていた以上に、小物だったな。これは、魔法の程度も知れるというもの」

「……同意。捨て駒だとも知らずに、ただ女神に甘えた末路」

「我は女神に選ばれしもの! 選ばれなかった貴様らが羨んでも、決して届かぬのだ!」

 

 それで、皇帝より少ない魔力だと。突きつけてやるのが良いか、はたまた適当に煽るべきか。

 

 いずれにせよ、女神に選ばれたという事実を否定するのは確実。なら、客観的な事実と一緒にぶつけた方が効果的だな。よし。

 

「選ばれて、皇帝よりも魔力が少ないのか。俺の方が、よほど神に愛されているらしい。なあ、フィリス」

「……共感。与えられた力の程度からして、さほど愛なんて感じない」

「実際、すぐに証明は終わりそうだな。魔力の使い方が、下手すぎる」

「……練度。私の研鑽の、足元にも及ばない。だから、あなた達は負ける」

 

 もはや、顔を真っ赤にしている。そろそろ戦いが始まりそうだな。いい加減、我慢の限界だろう。さて、メチャクチャな狙いをしてくれよ。雑な魔法を使ってくれれば、こちらが有利になるのだから。

 

 やはり、与えられた力に頼るだけの人間は、挑発に弱い。

 

「言わせておけば、小物どもが! もう良い! 我に選ばれる意味も知らぬ愚か者どもが!」

 

 魔力を収束させているのが見える。周囲の動きなど、目に入っていない様子。さて、どれだけの味方を巻き込んでくれるやら。

 

 味方同士で混乱でもしてくれれば、もっと都合が良い。さすがにそこまでは期待薄かもしれないが、とにかく怒りで冷静な判断はできない。まともな指揮はできないのが決まったようなもの。

 

「さて、来るみたいだぞ。いけるか、フィリス?」

「……無粋。聞かれるまでもないこと。分かるはず、レックス」

「ああ、そうだな! あっけなく、終わらせてやろう!」

 

 フィリスと俺は、敵に向かい合った。何も言わずとも、俺たちの気持ちは一つだった。

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