物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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604話 合一の先

 敵の王は、こちらを強くにらみつけている。まるで、長年の宿敵かのように。魔力を練り込んでいて、空気が震えている。

 

 確かに魔力量は大きい。並大抵の魔法使いなら、絶望するほどだろう。それでも、俺たちにとっては恐れるほどのものじゃない。落ち着いたまま、魔力を練っていく。

 

「我が一撃を、受けるが良い! 五曜剣(チェインブレイド)!」

 

 こちらに向けて、魔力を押し込めた刃が飛んでくる。防御魔法で、俺とフィリスを守る。刃がこちらに当たる寸前で、押し込められた魔力が一気に解放されていく。

 

 とても勢い良く、爆発が起こった。俺たちの周囲、つまり敵たちを巻き込みながら。

 

「な、なんでこっちに……」

「ぎゃあああっ!」

 

 困惑した様子で、敵たちは弾け飛んでいく。王は、気にもとめていないようだった。それだけでも、器ではないのは明らか。皇帝と同じ、味方を犠牲にするだけの愚か者。

 

 こんなやつが王になっている限り、サジタリウス聖国だって救われやしない。絶対に、倒すべき。剣を握る手に、力が入っていく。少しだけ息をして、頭を冷やす。

 

 それでも、俺は震えそうなほどの怒りを感じていた。やはり、ろくでもない。

 

「ただ味方を巻き込んだだけ、か。やるか、フィリス」

「……一撃。それで、あなたは終わり。行く」

「我が極大の一撃に、消えるがいい! 五曜剣(チェインブレイド)!」

 

 もう一度、相手は魔法を撃ってくる。今度も、味方を気にした様子もなく。俺たちは、ただ魔力を集めた。同じところに向けて、自分ごと魔力を放つ。俺たちの魔力が、ぶつかりあって溶けていく。

 

 俺とフィリスの形が、再構築されていく。激しく甘い感情が、ずっと届いてきた。それに導かれるままに、俺たちはまっすぐに進む。それが、刃の軌跡となった。

 

五曜合一剣(カラミティブレイド)!」

「なっ、がっ……」

 

 魔法ごと、王は切り裂かれていった。それでも、まだ多くのエルフは残っている。今のところは、追撃を仕掛けられてはいない。一応、様子を見てみるか。

 

「これで、お前たちの王は倒れた。まだ、続けるか?」

「……明確。敵意は、少しも消えていない」

「ああ、そうだとも! 人間ごときに、我らの聖地を侵させてなるものか!」

「サジタリウス聖国に、真の栄光を! フィリスなど古いと、世に示すのだ!」

 

 敵が魔力を収束させているのが分かった。まとめて、こちらに攻撃してくるつもりだろう。全員ではないにしろ、それなりの人数が攻撃を仕掛けてきている様子。

 

 残りも、こちらに対する敵意を隠そうともしていない。つまり、同士討ちや相殺を避ける程度の人数で攻撃を仕掛けてくるということ。

 

 それにしても、フィリスなど古いと来たか。誰かは知らないが、王にしたいというのも嘘だったのだろうか。あるいは、エルフの内部で意見が別れているのだろうか。

 

 これまで出会った敵には、フィリスを尊きものと言って攻撃しないように気をつけていた相手もいた。上層部と実働部隊で伝わっている情報が違うみたいな話かもな。王の妻に収まったとか言って、名声だけ利用するつもりだったとか。

 

「なるほど、そういう感じか。なら、仕方ない。フィリス、行くぞ」

五曜合一剣(カラミティブレイド)!」

 

 もう一度、俺たちは混ざり合っていく。満たされたような気持ちになりながら、的に向けて魔力をぶつける。

 

 それなりに倒せた手応えはあるが、まだまだ多く残っているのも事実。今のままでは、何度も何度も繰り返すしかない。

 

「まだ、まだ! 我らの運命は、こんなところで終わらぬ!」

「世界を統べるべきは、我らなのだ! 人間ごときではない!」

「まだまだ、敵は減らないか。もう一度、やるか?」

「……合一。次は、もっと深く。限界まで、私たちを混ぜる」

 

 フィリスの語る言葉には、確かに自信を感じた。つまり、できると思っている。なら、付き合うだけだ。どの道、同じ作戦を繰り返していては対策を討たれる可能性が高い。

 

「そうだな! 俺たちなら、絶対にやれる!」

 

 俺とフィリスは、同じ場所に向けて魔力に溶け込んで混ざり合っていく。以前はフィリスに誘導されるままに編み込まれていたが、今回はもっと深い。

 

 言うなれば、前回は分子同士を並べ合う感じ。今回は、原子が結合して分子になる感じ。俺とフィリスがお互いに近づきあって、何もかもが溶け合っていくよう。

 

 俺の中にフィリスがいて、フィリスの中に俺がいる。お互いの心が、感情としてぶつかりあう。言葉もないまま、ただ相手を想う気持ちでいっぱいになっているような。

 

 とても温かいもので、心が満たされている。眠っている時よりも、美味しいものを食べている時よりも、ずっと。そんな感覚に浸っていると、だんだん力が高まっていくのが分かる。

 

 お互いを想う心を、一気に解放する。それと同時に、爆発的に魔力の斬撃が広がっていった。

 

五曜合一剣(カラミティブレイド)!」

 

 俺たちの前にあるものは、敵も、空間も、何もかもが切り裂かれていく。それでいて、切りたくないものは切っていない。森にある木々も、敵の後ろにある街も。

 

 ただハッキリしていたのは、すべての敵は真っ二つになったということ。それが、すべてだった。

 

 少しして、俺たちは体を取り戻す。お互いの顔が、とても近かった。

 

「……終結。気配は消えた。私を誘った相手も、ちゃんと倒れた」

「なら、ミレアルの試練は一区切りかもな。さて、どうする? このまま帰るか?」

「……否定。一度、残ったエルフたちと話をする必要がある。アリアの件もある」

 

 今回の王は、かなりろくでもない存在だった。もしかしたら、圧政とか敷かれていたのかもしれない。そういうことを確認するためにも、必要なことか。

 

 それに、アリアの紹介してくれた相手も気になる。それっぽい相手は敵にはいなかったが、一応確認しておきたいところ。仲良くできそうだとは言われていたので、何も無いなら会いたいよな。

 

「確かにな。ちゃんと、無事なら無事と伝えてやらないといけないか」

「……肯定。それに、もう過激派は消えていった。今は、本当の穏健派が残っているはず」

「そうなると、交渉もできるかもしれないと。警戒は、されるだろうな」

「……価値。たとえ手間がかかっても、今後のためになる」

「ああ。エルフとの関係が良くできるのなら、いずれ同盟も組めるかもしれない」

「……平和。レックスの望むものが、少しは近づくはず」

「なるほどな。ありがとう、フィリス。俺のために提案してくれたんだな」

「……等価。私の気持ちと、レックスの気持ち。両方を満たすため」

 

 フィリスは、サジタリウス聖国との関係を良くすれば俺たちの未来につながると考えているのだろう。実際のところ、今回みたいなことが二度と起こらないようにできるだけでも大きい。

 

 もしエルフと融和できるのなら、もう少し大手を振って仲良くできるかもしれないし。今までだって自由に仲良くしていたとはいえ、立場に困らされることもあった。

 

 これからフィリスとの時間を増やせるきっかけになるのなら、ぜひともうまく進めたいものだ。

 

「ああ、そうだな。俺たちは、未来についても考えないとな」

「……期待。それに、レックスの反応が気になる。アリアの紹介した相手」

 

 なんか、またからかわれているのが分かる。俺が驚くような女性らしいエルフだと言われていた。たぶん見た目の話だし、そういうことだよな。

 

 いや、本当にどういう反応をすれば良いんだよ。何をしても不正解だとしか思えない。

 

「その話は、まだ続いていたのか!? いや、困ったな……」

「……疑問。女性らしい相手は、苦手?」

「苦手というか、あんまり話題に出すのも問題だろうに……」

「……結論。きっと、私たちの未来につながる。まずは、その一歩」

 

 フィリスの答えは、とても単純で、それでいてとても大事なものだった。

 

 うん、あまり考えすぎてもダメだ。俺たちの未来につながるようにということを忘れないこと。それだけを刻んでおこう。

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