物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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647話 整える土台

 鍛冶について、エルフの協力を得ることには成功した。これで最低限の話は進んだのだが、各所に話を通しておいた方が都合が良い。

 というかむしろ、断られたらニッカの一人勝ちになりかねないから、どうにかして話を飲ませたいところだ。ニッカのことだから、そこまで計算していてもおかしくはないが。

 

 いずれにせよ、動き出した話を止めることは難しい。俺の都合で話を止めてしまえば、多くの人の信頼を失うからな。止めるにせよ、相応の大義が必要になってくる。そして俺は、その大義を持っていない。

 だから結局、鍛冶を成功させるのが一番いいんだよな。

 

 まずは、研究組に話を通しておく。そこが超えられれば、後はあれば嬉しいという程度に収まる。

 さっそく、マリンたちに通話を飛ばす。

 

「マリン、ソニア、クリス。魔力バッテリーを使いたいんだが、転移でいくつか運んでいいか?」

「了解なのです。レックス様が運べるように、外殻に闇の魔力を侵食させておくのです」

「使い道は、教えてもらっても良いのかな?」

「レックス様、実は悪いことに使ってたりしてー」

 

 マリンは快諾してくれて、ソニアは素直な疑問を表に出している。クリスはからかってきているが、声が楽しそうだ。もちろん本気でないことは分かる。

 ニッカも同じようなことを行ってくる時があるのだが、明らかに安心感が違う。ソニアやクリスがからかってきても、せいぜい照れたり反応に困ったりする程度。

 逆にニッカの場合、失敗から根こそぎ奪われかねない怖さを味わうことになる。

 

 なんというか、本気で慕ってくれているのはありがたいことだ。そう、心から思えた。

 

「今はまだ、外部には話さないでくれよ。魔力を込めた金属の鍛冶を研究したいんだ」

「ああ、なるほどです。レックス様は、アストラ連邦に向かったのでしたね」

「獣人には魔力がないから、魔力バッテリーで補おうってことだね」

「アストラ連邦なら、物理的に生産は難しいねー」

 

 魔力バッテリーがあれば、かなりの手間を削減できる。獣人にも個人だけで魔力を込めた金属を研究できるからな。

 少なくとも、今はイルミナだけに任せるつもりではある。だが、いずれは大きな事業になっていくはず。その時に、魔法が使えるエルフや人間の協力者が見つけられるかどうかで研究の進み具合に差が出るのは良くない。

 

 まあ、魔力バッテリーにしても金を持っているかどうかで差は生まれてしまうが。そこは投資なんかで賄うしかないだろう。どうしても投資すら受けられないなら、悲しいが諦めてもらうしかない。

 そして重要なのは、魔力バッテリーに込めるための魔力を獣人は持っていないということ。回収の際に金銭を支払うなどの対策を取れば、そこまで大きな問題にはなりづらいはずだ。

 

「ああ。だから、技術流出の危険性に関しては抑えられると思う」

「かしこまりました。では、準備しておくのです」

 

 ということで、技術者組の許可を取ることはできた。次は、王女姉妹だな。特に、ミーアの光魔法は大きな手札となるはず。

 当然、次は王女姉妹に通話を飛ばしていった。

 

「ミーア、俺が送る魔力バッテリーに、光の魔力を込めてもらっていいか?」

「もちろん構わないわ! レックス君の役に立てるのなら、嬉しいもの!」

「レックスさんってば、姉さんだけを頼りにするんですね」

「リーナちゃんってば、素直にならないんだから! そんなところも、可愛いけどね!」

 

 明るいミーアと少しツンケンしたリーナの掛け合いも、なんだか懐かしくてほっこりする。快く受けてもらえはしたものの、ちゃんと説明は必要だ。

 とりあえずは最低限度の話をして、後で会談なんかをするのが妥当か。王女姉妹なら、ある程度は察してくれるとは思うが。

 

「ああ、説明をさせてもらうよ。剣を作る研究をしているんだが、良いものができたら贈りたい」

「ありがとう! 大切にさせてもらうわね!」

「杖の方が嬉しくはありますけれど……。研究が進むとは限りませんからね」

 

 リーナの意見は、かなり大事になるかもしれない。金属そのものの研究でもある。俺が仲間たちに杖を送った時にも、魔力の侵食を研究していた。

 イルミナは獣人である都合上、別の誰かの協力は必要ではある。とはいえ、研究する価値はあるはずだ。当人が納得するかも大事ではあるが、ひとまず話だけはしたい。

 

「鍛冶屋が相手だから、もしかしたら杖の研究にも移行はするかもしれない。まあ、相手次第だ」

「魔力を伝えるのに、良い金属が生まれれば良いわね!」

「ああ。それで、魔力バッテリーも含めて一枚噛まないかと思ってな。ニッカにも、技術を提供して貰う予定だ」

「うふふ、腕がなるわね! 光属性が有効なら、私の存在が重要になるわ!」

「そうなれば、アストラ連邦は王国の意向を無視できなくなりますね。悪い話ではありません」

 

 やはり、理解が早いな。光属性の魔力を込めた武器が優秀であればあるほど、ミーアの価値は飛躍的に高まっていく。結果的に、レプラコーン王国が力をつけるきっかけになるはずだ。

 なんだかんだ言って、俺は王国民のつもりでいる。だから、王国が発展するのは歓迎したい。

 もちろん、他の国が搾取されるような事態は避けたいが。

 

「杖まで生産ができたのなら、逆に王国の貴族は連邦を軽んじることができなくなる」

「レックス君らしい理想よね! 私も、手伝わせてもらうわ!」

 

 ということで、王国の協力も得ることができた。残りは、帝国。とはいえ、軍馬の輸出や戦力の供出だけでは対価としては足りないかもしれない。

 おそらく、剣ができれば帝国が最大の顧客となる。それを含めても、まだ他の国との均衡を保つには足りないはず。

 

 そこで色々と考えて、少しだけ思い至ることがあった。ひとまず、ユフィとロニアに通話で相談していく。

 

「ユフィ、ロニア。確か帝国って、金属を連邦に輸出していたよな?」

「鉄ではありませんが、そうですね……」

「ミスリルやアダマンタイトは、あった記憶があるねえ」

 

 なるほど。ミスリルは王国でも生産していた記憶があるが、アダマンタイトはどうだったか。鉄の生産量が少ないことを考えても、魔力との親和性を考えても、そのあたりが武器になるはず。

 とりあえず、思いついたことをユフィたちに相談していく。

 

「なら、少し俺の方に融通することはできないか? 無理なら構わないが……」

「問題はありません……。レックス様の意思だと言えば、通るでしょう……」

「それに、あたしらのためでしょー? めんどーでも、ちゃんとやるよ」

「ありがとう。おかげで、準備が進みそうだ」

 

 とりあえず、土台は整えられたはずだ。どうなるかは、研究の結果次第ではある。とはいえ、今の段階で抑えるべきところは抑えた。

 後は、実際にどのようなものができるか。期待しながら、話を進めていくとするか。

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