物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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648話 見せる技術

 ひとまず、金属や魔力バッテリーなどの必要な素材は集まっていった。それと並行して、軽く転移を利用した調整も行っていく。ニッカが各地に魔力の侵食をしてくれたおかげで、だいぶ楽に実現できた。

 といっても、そこまで大掛かりなことはできなかったが。盟主という立場を、まだ表には出せなかった。今のところは、気の良い商売人くらいの認識かもしれない。自分で気の良いと表現するのはあれだが、感覚としては近いはずだ。一応、物資を支援しているわけだし。

 

 そういうことで、イルミナも動き出せている。今の段階では、獣人の多くを巻き込んだプロジェクトではない。イルミナの成果次第で、今後は変わるはずだ。

 

 俺は定期的に様子を確認しながら、ピリカたちと協力しながら連邦の安定も目指していく。

 

 今回もまた、イルミナのところへ向かっていった。

 

「どうだ、イルミナ? 順調に進んでいるか?」

「まだまだ、といったところじゃな。従来の剣よりも優れているが、それだけじゃ」

 

 それを平然と言えるあたりで、腕のほどが分かるというもの。実際、剣の質は良さそうに見える。魔力が込められているのは確からしい。

 とはいえ、イルミナ自身は不満そうだ。耳もペッタリしているし。そのあたり、分かりやすいタイプだな。

 

「わざわざ魔力を込めて設備を変えるだけの、飛躍的な効果は出ていないと」

「そういうことじゃな。無論、うちとてまだ止まるつもりはない」

 

 真剣な目で語っている。まあ、新しい概念だからな。そう簡単に成果が出る方がおかしい。マリンたち研究組の働きを考えると価値観が歪みそうだが、一生をかけてようやく1つの成果というのも、そもそも何も出ないというのも珍しいことではないはず。

 なんだかんだで、ひとつの発見だけでも教科書に載ったりするものだからな。もちろん、その裏には膨大な失敗があるのが前提だ。

 

 まあ、やる気に水をさす必要もない。研究熱心なのは見れば分かるので、任せておくのが正解だろう。

 

「やる気があるのなら、何よりだ。それで、なにか手伝えそうなことはあるか?」

「せっかくじゃ。お主の剣技を、見せてくれるか?」

 

 なるほど。剣ということを考えれば、剣技を参考にするのは納得できる。俺の剣技はかなり特殊だし、インスピレーションが湧くかもしれない。

 それに、息抜きとしても悪くないはず。いずれにせよ、損はないな。

 

「分かった。ここだと、設備を壊してしまうな……」

「なら、見せられる場所まで運んでくれ。うちも、なにか閃くかもしれん」

 

 ということで、壊しても良い町外れに向かう。工房からは遠い、また別の場所ではあるが。イルミナは少しワクワクしているようで、耳がピコピコしている。

 さあ、その期待に応えるだけのものを見せないとな。結果的に、成果につながるはずだ。

 

「とりあえず、まずは純粋な剣技だけを見せようか」

「純粋な剣技ではないものも、あるということじゃな」

 

 魔法を使った剣技も、イルミナの参考にはなるはずだ。これまで、純粋な剣技を前提とした剣を打ってきたはず。だからこそ、魔力の使い方を知るのは良い機会になってくれるだろう。

 俺としても、イルミナに手札を見せることに異論はない。少なくとも、信じていい相手のはずだ。

 

「ああ。まずは、よく見ていてくれ。空破断界(アブソリュートブレイド)!」

 

 ということで、まずは空間を斬り裂く剣技を放つ。これくらいなら、普通に出せるようになってきた。

 自分の成長に対する満足感も、かなりある。イルミナは、目を白黒とさせて口をパクパクさせている。

 

「は!? いや、何が起こった!? とんでもないことをしておらんかったか!?」

「簡単に言えば、空間を斬った」

「空間を斬った!? そんなもの、斬れるものなのか!? うちは何を見ておる!?」

 

 なんというか、初めて見るタイプの反応だ。感心を通り越して、驚きに入っているというか。フィリスにしろエリナにしろ、満足げに褒めてくれるのが普通だったからな。

 後は、カミラみたいな競い合う関係の相手には鋭い目で見られたりとか。それくらいで、イルミナの反応はかなり珍しく思える。

 

 まあ、これだけ驚いてくれるのなら見せる甲斐がある。良い発想につながってくれれば、もっと助かる。

 

「もう一回見せた方が良いか……?」

「一回では足りぬぞ! 見せられるだけ、見せてくれ!」

「分かった。空破断界(アブソリュートブレイド)!」

 

 何度も何度も見せていると、イルミナは真剣な目で俺の剣技を観察していた。とても鋭く、何一つとして見逃さないようにという感じ。

 こういう姿勢を持っているからこそ、熱意を信じられるんだよな。やはり、当たりだと思える。

 

「ようやく、少し見えてきたのう。なるほど……」

「忘れていないか? まだ、魔法を使った剣を見せていないんだが」

「そうじゃった! 見せてくれ! どのようなことができるのじゃ!?」

 

 イルミナは目を輝かせているという言葉そのもの。そこまで興味を持たれると、ちょっと調子に乗ってしまいそうだ。

 とはいえ、見てもらうのは大事なこと。しっかりと気合いを入れないとな。

 

「とりあえず、まずはこれからだな。無音の闇刃(サイレントブレイド)!」

 

 魔力の刃を剣に込めて、一気に振り抜く。触れたものは、跡形も残らない。この技も、かなり頑張って覚えたものだったんだよな。

 エリナの剣とフィリスの魔法を融合する試みの、初めての成功例。懐かしいな。

 

「ふむ。魔力を剣に押し込めて……。じゃが、侵食そのものはしておらん……」

 

 今回は、普通の反応だったみたいだ。ただ、しっかりと分析している様子。というか、すでにかなり魔力の性質を理解できているみたいだな。魔法を使えなくて、魔力バッテリーに触れたのも最近だろうに。

 今の流れだけで、優秀さがまた伝わってくる。イルミナは、間違いなく本物だ。

 

 続けて、他の技も見せていく。

 

「よし、次はこれだ。剣魔合一(トゥルーブレイド)!」

 

 剣を振りながら、俺自身を魔力に溶け込ませる。そして、ひとつの斬撃となって放つ。空間を押しつぶすように、破壊が広がっていく。

 元通りになったら、イルミナが耳や尻尾を逆立てていた。

 

「何が起きた!? レックスが消えたと思ったら、とんでもない破壊が起きておったぞ!?」

「簡単に言えば、魔力に俺を溶け込ませた」

「溶け込ませた!? それは、どうやって元に戻っておるのじゃ!?」

「魔力を収束させながら、肉体の形を取り戻していく感じか……?」

「自分でもよく分かっておらぬことを!? レックス、恐るべしなのじゃ……」

 

 確かに、よく考えたら怖い話だ。理屈としては、合一とはどういうものなのかは正確には分かっていない。

 まあ、最先端の技術というのはそういうものな気もするが。実験結果が先で、後から理屈をつけていくというか。

 

「とりあえず、もう一度見るか?」

「うむ、見せてたも!」

 

 元気いっぱいに、尻尾をピコピコさせている。なんというか、かなり可愛らしい印象を持った。明らかに俺より歳上なんだがな。

 

「そして、これが最後だ。空破絶界(アブソリュートキル)!」

 

 魔力で複数の刃を生み出し、同時に空間を斬り裂いていく。イルミナは、目をこすっていた。

 

「なぜ、同時にいくつも斬れるのじゃ! おかしいじゃろ!」

「簡単に言えば、魔力で刃を生み出しているんだ」

「それで、同時に……。ふむ、ふむ……。そうじゃ、同時!」

 

 うつむいて考えていたのが、ぱっと顔を華やがせる。そして、俺に顔を向けてきた。

 

「良いことでも、思いついたのか?」

「複層構造にすれば良いのじゃ! 吸収と保存と放出を別の層で行えば! こうしてはおれん!」

 

 イルミナは工房に駆け出そうとしている。それに、遅れないようについて行った。

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