物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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654話 中心にあるもの

 剣を贈る式典の準備は、順調に進んでいるようだった。ピリカは通話を使いこなして、またたく間に話をまとめてしまった。もはや、俺が口出しすることはほとんどないほど。

 まあ、俺の役割なんて少なければ少ないほど良い。ジャンやミルラみたいな軍師組の仕事を増やしすぎるのも良くないからな。

 

 その点、ピリカは安心して任せられる。集団の力を利用して押し切りつつも、要所を狙って元敵対派閥に手を差し伸べたりしているし。

 ピリカの策が恐ろしいのは、恨まれるのが苦しみから一抜けした元敵対派閥になるということ。ピリカ本人は、むしろどうやって媚を売るかを考える対象になっていたりする。

 立ち回りがうますぎて、もはや言うことは何もないレベル。恨みを買わないような動きが、あまりにも的確だ。

 

 その甲斐あって、国内は早急にまとまっていった。物資の振り分けなんかもピリカが采配していて、もう立派に連邦の中心になっている。

 なんというか、俺の周りには優秀な人が多すぎるな。戦闘能力を除けば俺は凡人でしかないと、あらためて思い知らされるというか。

 

 まあ、俺の強みはそういう優秀な相手との人脈を持っていることでもある。悲観することは、何もない。

 

 実際、式典に集まった豪華メンバーの中心は俺の知り合いばかりだからな。王国、帝国、聖国、連邦。それらの国の主に、直通で話ができる。それがどれほど大きいことか。

 

 行われる式典を見守りながら、俺は落ち着いた心地でいられた。国の主たちが、大勢の前で剣を受け取ろうとしているところを見ながら。

 

「この度は、私たちの新しい体制を支えていただき、ありがとうございます」

 

 まず、ピリカが丁寧に礼を言う。それでいて、自分が連邦の主だとしっかり主張している。やはり、立ち回りが強い。

 

「レプラコーン王国は、アリエス連邦が周囲と協調していく国になると信じます」

「スコルピオ帝国は、それぞれが得意な分野で手を取り合うことを望みます」

「サジタリウス聖国は、新しい未来に向けて進みたいと願います」

 

 ミーア、ユフィ、ニッカがそれぞれに言葉を送っている。ピリカを信じているような言葉遣いでありながら、しっかりと釘を差すような物言い。

 なんだかんだで、それぞれの言葉に意図が込められているのが分かる。ミーアは周囲に敵対するなと言っているし、ユフィは技術をよこせと言っているし、ニッカは旧体制を切り捨てろと言っている。

 

 そういうことが分かるようになってきたのも、俺の成長なのかもな。

 

「皆さんの思いを受け止める証として、そして友好の証として、贈り物があります」

 

 そう言って、ピリカは剣を持ち出す。まずはミーアが、丁寧に剣を受け取っていった。

 

「ありがとうございます。この剣は、王国だけでなく、様々な国の力になるでしょう」

「帝国の未来を切り開き、そして世界に平和を導くものになるでしょう」

「聖国も、素晴らしい技術に感心しております」

 

 3人とも受け取っているが、しっかりと言葉に裏があるのが分かってしまう。ミーアは独占は許さないと釘を差しているし、ユフィは争いは潰すと言っているし、ニッカは技術の元を忘れるなと言っている。

 このあたり、ピリカは間違いなく察しているんだよな。普通の生活をしていたらしいのに、どこにそんな能力があったのやら。

 

「今後とも、連邦は友好と輝かしい未来のために進んでいきましょう」

 

 ピリカもしっかりと政治家らしい物言いをして、受け渡しは終わる。そこからはスムーズに進み、宮殿で国の主以外の人も集めて会食をしていた。

 俺の知らない相手もいたが、順調に話は進んで会食も終わる。そして、プライベートのような時間になった。

 

 旅館みたいなところで、俺の知り合いばかりが集まっている。ピリカと式典の三人。そして王国のリーナと帝国のロニア。そしてイルミナも。

 全員が俺の方を見ていたので、まずは声をかけていく。

 

「みんな、お疲れ様。ひとまずは、悪くない場になったと思う」

「レックス君から渡された方が、物語みたいだったんだけどね!」

「姉さん、当人がいる場所で……。すみません、お花畑な姉で」

 

 完全に敬語を捨て去っていて、和やかな雰囲気ではある。とはいえ、この言い回しはピリカを軽んじているようなことだったりしないだろうか。

 ピリカを見ると、落ち着いた顔をしていた。

 

「気にしていないわ。私だって、レックス様に渡された方が助かるもの」

「うちの剣を役立ててくれるのなら、何も気にせんぞ」

 

 イルミナは耳をピコピコさせながら俺の方を見ている。その様子を、ニッカはニコニコと見守っていた。

 

「あらあら~。やっぱり、レックスさんは女を落とすんですね~」

 

 また、何かしらの手を打ってきたらしい。イルミナとの関係を探ろうとしているのか、気まずくさせようとしているのか。

 イルミナは気にした様子もなく、満面の笑みで俺を見ていた。ニッカも笑顔だが、いったい何を考えていることやら。

 

「レックス様は、偉大な方ですから……。必然でしょう……」

「奪い合いは、めんどーだけどね。ねえ?」

 

 ユフィは平気で乗ってくるし、ロニアもニッカの言葉を否定していない。それどころか、俺に目を向けてくる始末。

 いや、どうしろと言うんだ。正解がないことだけが分かる話をするのは、かなりしんどいぞ。

 

「できれば、仲良くしてほしくはあるな……。国同士だから、友達付き合いのようには行かないだろうが……」

「ふふ、レックス君を慕う女の子が多いのは事実よ! だけど、だからこそできることがあるわ!」

「囲い込みと連帯、ですよね。私たちの輪に入っていない国が、ひとつありますから」

 

 ミーアが元気いっぱいに宣言して、リーナが周囲を見回しながら補足する。やはり、そういう話になってくるか。

 みんな国の主なんだから、どうやって国益を手に入れるかの話になるのは必然だ。

 

 最後の国は、リブラ教国。ミレアル教の総本山。俺たちにとっては、間違いなく共通の敵。あらゆる国の混乱を招いたミレアルが、裏にいるのだから。

 

「うふふ、包囲網ですね~。レックスさんも、罪な方です~」

「いざとなれば、国外の手を借りられる。私たちは、相互に立場を保証し合うわけだね」

「うちの剣が、その証になると。剣は振られてこそとは思うが、悪くない」

 

 国の主どうしが、協力することを宣言する。流れとしては、良い感じだ。無論、ただ手を取り合うだけでもないだろうが。ニッカは言質を取らせないように立ち回っているようだし。

 

「援助という形を取れば、お互いに恩を売ることができるでしょう……」

「結果として、外国の助けを得られる優秀な王様になるってことだよねえ」

 

 お互いに協力して、自国での立場を固める。これもまた、お互いに利益のある取引といったところか。外国の助けを得られる窓口は、今の王が握っている。そうなれば、うかつに敵対できなくなってしまう。

 打算にまみれた連帯ではあるものの、俺たちの関係としては理想に近いんじゃないだろうか。

 

「ある意味では、一つの国に近づくというわけか。もちろん、線引きは必要だろうが」

「うふふ、レックスさんが頂点ということですね~。さすがは、男の人です~」

「私たちは、みんなレックス様の力を借りているもの。そこは、わきまえようじゃない」

 

 ニッカは俺に胸を押し付けてくるし、ピリカは尻尾を軽く絡めてくるし。どういう状況だ、これは。

 たぶん、ニッカもピリカも俺に恋愛的な好意はなくて、打算だとは思うのだが。まあ、それは構わない。どんな目的であれ、味方になってくれるのなら。

 実際、ニッカやピリカがそれぞれの国をまとめてくれる方が、俺は助かる。力を貸すくらいなら、しようじゃないか。

 

「そうですね……。お互い、敵は多いみたいですし……」

「王様だって侍らせちゃう気分、素敵じゃない? ねえ、レックス君」

 

 ユフィは真っ直ぐに見てきて、ミーアが流し目で見てきた。この関係は、俺が中心になってできたもの。しっかりとつながるように、今後も頑張っていかないとな。

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