物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
学校もどきが、ミレアルの使徒によって狙われているらしい。転移をすれば、ミレアルによって妨害される可能性もある。それどころか、転移がめちゃくちゃになって変なところに飛ばされかねない。最悪、火山の奥深くに飛ばされたりとか。
それでも、俺は迷わなかった。転移を使わなければ、きっと間に合わない。そう理解できていたから。
学校もどきに侵食させておいた魔力をたどって、空間を移動していく。妨害される感覚は、なかった。
転移に成功して、学校もどきの様子を見る。みんな、建物に避難しているらしい。少なくとも、外にはジュリアしか見えない。
そして、ジュリアは何者かに囲まれている様子。状況からして、使徒で間違いない。
すぐに、俺はジュリアの下へと向かった。
「ここがブラック家の領域だと、分かっているのだろうな?」
「レックス様……! 助けに来てくれたんだね……!」
ジュリアは剣を構えたまま、俺に感謝を告げる。だが、敵からは目をそらしていない。油断できない程度の魔力が込められているのは、俺にも分かる。
だが、だからどうした。これまでフィリスを守ってきたように、今度はジュリアを守るだけ。どうということはない。
「もちろんだ。俺の大切な仲間を、見捨てるはずないだろう?」
「女神の御心を理解せん小娘だ。ミレアル様の御子として選ばれた栄誉を……」
使徒の代表らしい男が、前に出てくる。ジュリアに目をつけてきたということが、よく分かる。
御子と来たか。原作では、確かにジュリアはミレアルに選ばれていた。加護のようなものを受け、邪神と戦っていたはずだ。
そうなると、原作と同じように選ぶつもりなのか。そうだとして、邪神を討とうとするのだろうか。
いずれにせよ、今のミレアルにジュリアを任せることなんて、できるはずもない。それだけの信用なんて、ない。
「くだらない。僕はレックス様のものだよ。髪の毛一本に至るまで、全部」
そして何より、ジュリア本人が望んでいない。そんなことを、させるはずがない。どれだけの敵が襲ってこようと、絶対にだ。
俺は
「道理をわきまえん小娘には、痛みが必要か……」
「そっちこそ、女神の意図を理解できていないんじゃないのか? 女神が望んだ相手を、勝手な判断で傷つけようとは」
「私はミレアル様に信任をいただいておるのだ! 貴様ごとき有象無象と、比べるまでもない!」
この程度の言葉で揺れるのか。なら、もっと攻めてやるのが効果的だな。敵の心が乱れてくれるのなら、それだけ殺しやすくなる。
さて、どこまで冷静さを失ってくれることやら。無駄にプライドが高そうだし、いくらでも揺さぶれるはずだ。
「だが、お前は御子に選ばれなかった。可哀想なものだよ。信仰する女神から、ただの捨て石とされるのは」
「私は力を授かったのだ! そんな小娘とは、わけが違う!」
声を荒らげている。よほど図星だったようだ。さて、この調子なら、もっと揺さぶれそうだ。限界まで心を押しつぶしてやろう。
少しでも動きが乱れてくれるのなら、より殺しやすくなる。今でも苦労はしない程度の魔力に見えるが、隙があるのなら突くまでだ。
「ただの
「どちらが特別で、どちらが選ばれたのか。もはや論ずるまでもないだろう」
「この……! 下手に出ていれば、つけあがりおって!」
ジュリアも合わせてくれたおかげで、敵は顔を真っ赤にしている。さて、これで俺を狙ってくれるのなら楽なんだが。
あまりジュリアを狙われると、少しは困る。顔に出さないようにしつつ、もっと悪意をぶつけていくか。俺が憎くなるくらい、徹底的に。
「下手という言葉の意味も分からないらしい。これを使徒にする女神の程度も、知れたものだな」
「あはは、確かに。見る目ないよね」
敵が打ち震えると同時に、使徒が転移してきた。といっても、さほどの数ではないが。魔力自体も、そこまで多くはない。
やはり、現段階では俺の様子を見ているのだろう。つまり、こいつらは本気で捨て石なんだよな。可哀想なことだ。
ミレアルにとって、使徒などいくらでも生み出せる存在に過ぎない。それを選ばれた証と勘違いして、俺に殺されるだけ。まったく、残酷なものだ。
まあ、ミレアルの名前を自分の都合のいいように利用するだけの存在に見えるし、ミレアルの立場で愛せるはずもないか。
結局のところ、捨て石にされるだけの小物という結論になる。
まあ、敵は天を仰いで感激といった顔をしているが。あまりにも道化すぎて、いっそ笑いそうになってきてしまう。
「おお……。女神様は援軍を送ってくださった! これぞ、信任の証!」
「実力を信頼されていないだけの間違いだろう? お前だけでは、事足りないとさ」
「僕だけでも勝てそうに見えるけど……。ああ、本気で捨て駒なんだ……」
「何を憐れんでいる! ただの小娘ごときが、知ったような口を! その大罪、覚えておけ!」
ジュリアを睨んでいるな。このままだと、あまり良くない。さて、適当に誘導してやるか。これだけ単純な相手なら、どうとでも転がせそうだ。
「ミレアルの命令すら、覚えておけないとはな。御子に選ばれたという意味すら、理解できないのか?」
「僕の方が、よっぽど女神にとっては重要みたいだね。まあ、興味ないけど」
「ミレアル様……。どうしてこのような者共を……!」
また天を仰いで嘆いている。ミレアルに対する信仰も、揺らいでいるのかもな。まあ、敵がどれほど苦しもうが知ったことではない。
とにかく、少しでも俺が楽をできるようになってくれれば。ジュリアを守りやすくなってくれれば。
「まったく、くだらない。ミレアルの意図すら説明されない意味が、分からないんだからな」
「所詮は使い走りってことだよね。意図を説明する価値すらない存在」
「黙れ……! ミレアル様に選ばれた私に……! ここで朽ち果てろ……!」
ジュリアに向けて、魔力を向けようとしている。誘導は失敗したか。少し、ジュリアが挑発しすぎたらしい。
だが、なら全力で守り抜くだけだ。敵がどれほどの切り札を隠していようと、上から叩き潰してやる。
「信仰すら捨てる程度らしい。やはり、捨て石か。ジュリア……やれるか?」
「もちろん! レックス様のお力になるために、今日まで鍛えてきたんだから!」
ジュリアも剣を構えて、魔力を集中させていく。さて、余裕がある限りはジュリアの力を見せてもらおう。守り抜くつもりではあるが、本人が強くなるのも大事なこと。
「なら、背中は任せたぞ。俺達なら、どんな敵でも勝てるさ」
「うん! 強くなった僕のこと、頼りにしてくれて良いんだよ!」
俺達は、一気に敵に向けて駆け出した。