物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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663話 せめてマシな道を

 ジュリアが狙われていると分かった以上、今すぐにでも対策が必要だ。ミレアルの狙いが何だとしても、とにかく早く動かなければまずい。

 急げば間違えるという問題は、今は無視して良い。とにかく、悩んで正解を出してしまえば、その頃には手遅れになっているのだから。

 

 ということで、できるだけマシな動きをするために、家族みんなで相談することに決めた。

 ブラック家に転移して、みんなを集める。そして、今おかれている状況を説明した。みんな、理解してくれた様子。

 

 さて、ここからどうするべきか。とりあえず、意見を聞いてみないとな。

 

「ひとまず、今後の方針を今すぐにでも決めたい。みんな、良いか?」

「教国を攻められれば、話は早いんでしょうけど……。ジュリアが狙われているのなら、危険よね」

 

 カミラの意見は、俺も悩んでいたところだ。ジュリアを置いていけば、確実にブラック家が狙われる。連れて行くにしても、転移ですぐに移動できない以上はすぐに決着を付けられない。その間にブラック家が危険に陥ったら、俺達は帰る場所を失ってしまう。

 

「ジュリアちゃんを狙われちゃっても、助けられないもん。それは、お兄様も困るよね」

「一緒に攻め込むという手もあるが……。ジュリアだけが狙いとも限らないんだよな」

 

 例えば、ミルラやジャン。学校もどきや研究組。そこが狙われる可能性も否定できない。他の国は、状況からして可能性は薄そうだが。

 とにかく、ミレアルの狙いを絞りきれないのがな。それでも、今すぐにでも動く必要がある。困ったものだ。

 

「方針は、大きく分けてふたつでしょう。攻め込むか、守るか」

「攻めるのであれば、空いたブラック家をどうするのかという問題もあります」

「無論、私どもで全力を尽くしますが……。武力には、どうしても限界がございます」

 

 そこが最大の問題だ。武力が全部出払えば、そもそもミレアルに関係の無い敵にすら負けかねない。空き巣狙いの他貴族がいる可能性はあるのだから。

 だからこそ、どういう手を打つのかが悩ましいんだよな。

 

「守るのであれば、周囲の手を借りるという手もありますわね」

「ミーアたちに代わりに攻めさせるのも、悪くない手なんじゃないの?」

 

 カミラの案は、悪くないどころか良い発想だと思う。もちろん俺への試練という性質を考えれば、俺は出なければならないだろう。それでも、ブラック家の守りは固められるからな。

 

「ひとまず、連絡は必要か。とりあえず、重要人物に情報だけ飛ばしてくる」

 

 ということで、各国の首脳に報告だけしておいた。一方的に情報を送る形になったが、とにかく今はブラック家の方針を固めないと。

 周囲との連携も必要ではあるが、優先順位としては2番手以降のはず。

 

 だから、ひとまずは家族との会議に戻っていった。

 

「さあ、議題に戻りましょう。攻め込むにしても、各所との連携は必要になります。兄さんを送り込む手順が必要ですから」

 

 教国に直接転移をすることはできない。近くに転移してから、普通に移動する必要がある。そして、その近くに俺が転移すると、ミレアルから襲われかねない。

 つまり、一度平和になった地域にまた争いを引き起こすきっかけになりかねないんだよな。

 

 ということで、かなり各所に気を配らなければならない。少なくとも、俺達だけで勝手にどうにかできる問題ではない。

 

「転移が使えない以上は、いったん移動するしかないからな」

「その部隊にジュリア様を入れるかどうかが、また選択肢となると存じます」

 

 一応、選択肢としてはブラック家を含めた仲間に守ってもらうというものもある。だが、試練の性質からして、俺が参加しないのはまずい気がするんだよな。

 ということで、ジュリアと一緒にいることはほぼ確定でいいとは思う。後は、攻めるか守るかだな。

 

「守る時には、いつ終わるかが分かんないの」

「ただし、守るべきものを1ヶ所にまとめることはできます。どちらにも、長所と短所がありますね」

 

 本当に、いつ終わるか分からないのが最大の問題だ。少なくとも、教国に攻め入る方は終わりが見えている。

 だが、ミレアルが盤面をひっくり返してくればすべてが終わる。今は力を蓄えるべき時なのか、攻め込んでも良い時なのか。そのふたつが、答えの鍵になるのかもしれない。

 

「でしたら、お互いの妥協点を取るのはいかがでしょうか。体制を整えるまでの間は、専守防衛に徹するなど」

「わたくしは構いませんわよ。ブラック家の屋敷は、まだまだ人が収容できますもの」

 

 ミルラの案に、モニカが同意する。確かに、状況の変化に一番対応しやすい案ではあるか。どの道、完璧な手段などありはしない。妥協点としては、悪くないはず。

 守りを固めている間にミレアルの意図を読み切れれば、守りに徹するか攻めに転じるかを変えられる。

 

 ミレアルの定めたゲームだということを考えれば、一般的な戦争の効率ばかりを考えていても仕方ない。

 やはり、ゲームの勝利条件を見定めるのが大事になってくるはずだ。

 

 そういう観点でも、ミルラの案は良案に思える。

 

「物資という面でも、現状では備えもあります。兄さんの転移と魔道具があれば、軽減することもできるでしょう」

「ああ、魔力を侵食させた物資を呼び寄せるのか。確かに良い案だ」

「じゃあ、ひとまず動きましょう。悩む時間が、一番の無駄よ」

 

 カミラの言う通りだな。もう方針が決まった以上、一刻も早く動かないと。これが正しいのかどうかで悩んでいる時間は、本当に無駄でしかない。

 うまくいくにしろ失敗するにしろ、俺達は行動するしかないんだ。

 

「学校もどきの仲間と研究組だな。その間の作業が停止するのは痛いが……」

「背に腹は変えられません。ここで人員に損失が出るのが、最大の痛手ですから」

 

 そうだな。最悪、設備は建て直せば済む。学校もどきの仲間や研究組ほどの才能は、二度と取り戻せない。そもそも、親しい人を失ってまで勝ちたいだなんて思わない。

 なら、みんなを守りやすい道を選ぶのが俺であるべき。そうだよな。

 

「ああ。なら、連絡して最低限の準備だけしてもらう。それから、呼び寄せよう」

「方針は決まりましたわね。では、わたくしはメイドたちに準備をさせておきましょう」

「敵が来たら、叩き潰してやらないとね。あたしの邪魔は、させないわ」

「ジュリアちゃんたちが来るのなら、ちょっと楽しそうなの!」

 

 メアリは前向きに物事を考えていて、救われるな。そうだ。少しでも、今の苦境に楽しみを見出していこう。

 どうせ戦わなければならないのなら、せめて前向きに。良いことを教わった。

 

「ああ、確かに滅多に無い機会になるだろうな。どうせなら、少しでも楽しむか」

 

 みんなと会えるのなら、それは大切な時間になるだろう。だから、ミレアルなんかに奪わせてたまるものか。絶対に、誰ひとりとして傷つけさせはしない。

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