物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

665 / 665
664話 強くなるために

 ひとまず、集められるだけの関係者をブラック家の屋敷に集めた。学校もどきの教育や研究組の研究も、ブラック家の中でできる範囲で実行してもらっている。

 おそらく、成果という意味では1割も出れば高い方だと思う。単純な効率という意味では、してもしなくてもそこまで変わらない。

 

 だが、こういう状況では日常と同じことを少しでも保つのが大事だ。もっと言えば、これからも活動を続けるという意思を示すのも。

 とにかく、現状では学校もどきや研究組に新しい成果を求めてはいない。ただ、決して見捨てないという誓いを、何よりもまず形にするというだけ。

 

 そんなこんなで、新しいブラック家での活動が始まっていた。そうしてすぐに、使徒の反応があった。

 

 もちろん、戦える者で向かう。どの程度の強さか知ってもらうのも、大事なことだ。

 ブラック家の敷地とはいえ、屋敷の内部ではない。それだけは、まだ救いだった。

 

「やはり、来たか。室内に転移してこないなんて、ミレアルも配慮してくるじゃないか!」

「ふん。さっさと片付けるわよ。くだらないことに、時間を使ってらんないわ」

「レックス様のために、頑張ってみせるよ!」

「メアリの邪魔なんて、誰にもさせないんだから!」

 

 今度の敵は、何も言わずに向かってくる。当然、反撃を仕掛ける。

 

「まずは、俺から! 空破絶界(アブソリュートキル)!」

 

 さっそく、空間を断つ斬撃を放って遠くの敵を切り刻んでいく。とはいえ、すぐに次が補充されていく。

 やはり、使徒の最大の脅威は数だな。いや、五属性使いが当たり前にいる時点で、普通の人にとっては絶望的な戦力ではあるのだが。

 

「バカ弟……! まったく、面白いじゃない! 電磁融解(ライトニングクリア)!」

 

 カミラが雷撃そのものとなって、敵を一気に切り刻む。一瞬というのにふさわしい時間で、カミラの射程にいた敵は切り裂かれていった。

 

「僕も続くよ! 拡散剣(カレッジブレイド)!」

 

 続いて補充された敵に、ジュリアが収束した魔力の解放をぶつけていく。爆発的に広がった魔力に、敵は叩き潰されていく。

 

「メアリだって、負けないの! 凝縮岩竜巻(ブラッドストーム)!」

 

 また現れた敵に、メアリは竜巻を放つ。岩と雷と炎が渦巻いて、敵を粉微塵にしていった。

 引き続き、何度か俺達は敵に技を放っていく。それだけで、追加の敵は現れなくなった。念のために気配を探っても、他の場所に現れた様子もない。

 

 ひとまず、剣を収めていく。

 

「あっさりと終わったものだな……。やはり、小手調べの段階か……」

「まったく、いつの間にあんな技を……。大したものね、ほんと」

 

 カミラは少しだけ穏やかな目で俺のことを見ている。感心するに足る技を見せられたというのなら、それは誇らしいことだ。

 とはいえ、カミラのことだから、すぐに抜かそうとするのだろうな。負けん気の強さは、よく知っているつもりだ。

 

 なにせ、雷の一属性しか使えないにもかかわらず、俺にも通るような技を生み出した本物だからな。合一をカミラが初めて使った時に、負けすらした。

 そんな人だからこそ、もっと強くなった俺を見せたいという気持ちがあるんだ。

 

「レックス様、本当にすごいよね。僕も負けてられないよ」

「メアリも、早く合一しないといけないの!」

 

 ジュリアは剣を握り直しているし、メアリは両手を胸の前で握りしめている。やる気いっぱいで、何よりだ。

 どうせ戦わなくちゃいけないのなら、成長につなげるくらいでちょうどいい。前のメアリじゃないが、そう思う。

 

 ただ、気になることもあるんだよな。油断できない状況なのは、相変わらずだ。

 

「今回は、明確にジュリアを狙っている感じだったか……? どうも、手応えがなさすぎたな」

「レックス様に守られなくて済むのなら、気は楽だけどね。レックス様は、そうはいかないか」

 

 ジュリアの気持ちも、確かに分かる。守られるというのは、なまじ力があるだけに苦しいんだよな。だからこそ、今回も一緒に戦ってもらっているのだし。

 もちろん、俺ひとりで解決できる状況じゃないこともあるのだが。きっと、今回も誰かに手を貸してもらわなければ勝てない。ミレアルの試練が本格化してきたら、必ずそうなる。

 

「狙いが分かっている方が、ある意味では楽なんだよな……。いや、ジュリアが狙われて嬉しいという意味ではないが」

「分かってるよ。いろんな場所に警戒するのは、厳しいもんね」

 

 こうして理解してくれるのは、本当にありがたい。誤解を招きかねない言い回しだったのは、自覚しているところだ。

 なんというか、俺は周囲にかなり気を使われているんだよな。そのあたりも、しっかりと感謝していかないと。

 

 俺が周囲との関係を喜べるのは、周りの人に助けられてばかりだからだ。よく、刻み込んでおくべきこと。

 

「あたしたちもいるんだから、そう簡単には負けないわよ。負けてたまるもんですか」

「メアリも、すぐに合一を完成させてみせるんだから!」

 

 どちらも、目に圧がある。カミラもメアリも、やはり姉妹なんだなと感じるところ。鋭い目のカミラと人形みたいなメアリ。ツンケンしているカミラと甘えてくるメアリ。パッと見の印象は遠いが、同じ熱量と執念が伝わるというか。

 

 戦いに挑むことを考えると、良いことではあるのだろうな。邪魔をしないのも、大事なことだ。

 

「みんななら、すぐにもっと強くなるんだろうな。俺も、もっと強くならないと」

「まったく、調子に乗ってくれちゃって。目にもの見せてやんないと、ね」

「レックス様が驚くくらいには、強くなりたいよね」

「フィリスさんには、負けないんだから!」

「メアリも、合一だけで満足するには早いわよ。どうせ、バカ弟のことだもの……」

「うん。剣技で魔法みたいなことができるんだから、僕たちも似たようなことをしないとね」

 

 こうしていると、切磋琢磨の価値を感じるところだ。みんながそれぞれに近しい相手から学び競い合うことで、俺達は強くなれた。

 フィリスやエリナを師として、大勢の仲間達と戦って、負けたり勝ったりして。その時間がなければ、今だって簡単に負けていたはず。

 

 そんな仲間たちのためにも、絶対にミレアルの試練は乗り越えなければならない。その先にしか、未来はないのだから。

 

「似たようなことじゃ、足りないわ。分かっているんでしょう、ジュリア」

「そう、なの。メアリも、お兄様の一番になるんだから」

「誰が一番になるかは、結果が決めるでしょうよ」

「僕も、できれば一番にはなりたいからね……」

 

 目に情念がこもっているのが、見ているだけで分かる。こういう空気への対処法は、未だに分からない。

 ハッキリ誰かを選んで、それで解決するのだろうか。略奪愛に発展しないかという怖さが、少しだけある。

 

「は、はは……」

「相変わらず、バカ弟はバカ弟ね。ま、良いわ。見ていなさいよ」

「そうだよね。僕たちがちゃんと見てもらえるように、頑張らないと」

「お兄様が見てくれるのなら、メアリはもっと強くなれるの!」

 

 今回は、みんな引いてくれたみたいだ。かなり助かった。軽く息を吐いてしまう。

 

「もちろん、みんなを見るつもりだ。大事な人達なんだからな」

 

 だから、みんなと未来を紡いでみせる。それだけが、俺の望みなんだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

楽しい銃社会の生き抜き方(作者:WEVE)(原作:ブルーアーカイブ)

ミレニアムサイエンススクールに所属するキヴォトス唯一の男子生徒『居待(イマチ) ウツキ』がなんやかんやありながら学園生活を満喫(?)する話▼今後必須以外タグ追加の可能性があるので苦手な方はブラウザバックを推奨してます▼大体許せるよって方は是非読んでいってください!


総合評価:469/評価:7.06/連載:44話/更新日時:2026年08月02日(日) 15:30 小説情報

鬱ゲーの全滅イベントで年上ヒロイン達を庇ったら【暴食の魔人】になって生き残った。――「理性が消える前に殺して」と頼んでも、曇った彼女たちが許してくれない。(作者:菊池 快晴)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

ダークウェブソウル通称【DWS】』▼最悪の鬱ゲーにして最高の泣きゲーと名高い、狂気のダークファンタジー。 ▼その世界に、モブ・雑用係のレイとして転生した俺は、ゲーム知識を駆使して最愛の年上ヒロイン」たちと家族のような絆を育んでいた。▼しかし、このゲームには回避不可能な「全滅イベント」が存在する。 ▼シナリオ通りなら、俺の師匠も、先生も、聖女も、みんな魔人に殺…


総合評価:6776/評価:8.76/連載:27話/更新日時:2026年03月07日(土) 10:02 小説情報

世界樹と星空の女神 ~無自覚美少女は最強魔法剣士。彼女の愛が重すぎるが、それでも俺は冒険者!~(作者:Soularti)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 剣と魔法の世界で、冒険者として暮らす主人公アルス。▼ 彼は戦う力こそ平凡だが、支援魔法を使いこなす、世界で唯一の回復魔法の使い手だ。▼ ある日、アルスは夢の中で星空の女神に告げられる。▼「お兄ちゃん、世界樹を目指して」▼ その声に導かれたアルスは、世界を巡る大冒険を始める。▼ アルスに付き従うのは、彼にべた惚れの美少女ルナリア。▼ 金糸の髪を揺らす彼女は、…


総合評価:33/評価:-.--/完結:115話/更新日時:2026年07月01日(水) 08:28 小説情報

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。(作者:白波 鷹)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。▼王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。▼物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。▼そして、そんなゲームの物語開始前に…


総合評価:783/評価:6.94/連載:46話/更新日時:2026年02月20日(金) 12:26 小説情報

自由自在に反転できる男(作者:鬼猫 優真)(原作:ブルーアーカイブ)

転生してから反転できる何でもありな男がキヴォトスで生きる話▼尚、元の世界でもチートだった模様


総合評価:381/評価:5.69/連載:24話/更新日時:2026年07月27日(月) 12:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>