物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
ミレアルの使徒たちは、すでに何度も襲いかかってきていた。強さ自体はそれほどでもないものの、昼夜を問わずに出てくる。
そこで俺達は、睡眠時間をずらして対応することになった。出れる人が出るという形にして、それぞれで敵を倒す。
ジュリアに関して心配なのもあり、決して個人では出ないという形になった。今のところは、勝てている。
だが、いずれ限界は訪れるだろう。睡眠を妨害されていることもあり、確実に士気に響く。
それでも、有効な対策があるとは言えない。そんな状況の中、マリンたち研究組から呼び出されることになった。
俺達の状況を分かっていて、それでも呼び出す。つまり、相当重要な案件だろう。しっかりと深呼吸をしてから、マリンたちとの話に向かった。
「レックス様、魔道具の運用方法がまとまったのです」
マリンはそう言っていた。かなり大事な話ではあるが、魔道具の運用方法というだけでは緊急性は低い。
おそらく、まだ何かが隠れているのだろうな。それがどんなものかは分からないが。
「それは助かる。あまり良い環境とは言えないだろうに、よくやってくれた」
「レックス様の転移があるから、いっぱい持ってこれたからね」
「単体では弱い魔道具でも、組み合わせで強くできたよー」
「遠隔から操作できるようにして、それで敵を倒せそうなんだ」
ソニアとクリスの話を聞いて、納得がいった。なるほど。まさに俺達が求めていたものだ。それは、この忙しい中で話を聞く価値があるだけのもの。
やはり、マリンたちはしっかりと期待に応えてくれる。本当に、アカデミーはよくもここまでの人材を軽視していたものだ。おかげでマリンたちを味方にできたのだから、感謝もしているが。
単体では弱い魔道具の組み合わせということは、たぶん相乗効果を狙っているんだろうな。さて、どんな内容か。
「なるほど。足止めと火力を別々に出すみたいな感じか?」
「そうだねー。結界で動きを止めて、中で威力を反射させるみたいな感じだよー」
「他にも複数の組み合わせがあるのです。どれかが通用すれば、レックス様のためになるはずなのです」
クリスから聞いた案だけでも、有効性は分かる。単体の威力としては五属性に通用しないとしても、結界の内部で反射させて増幅することによって防御を抜くという発想。
やはり、研究組は本物の天才だ。ひとつだけでなく、複数の組み合わせまで用意しているのだから。そして、自分の研究を過信してもいない。どれかが通用すればという言葉が、その証。
仮に一度で通用しなかったとしても、必ず改善してくれる。それだけの信頼を、俺はマリンたちに抱いているんだ。
「つまり、後は設置さえできればというところだな。さて、どうしたものか」
「そうしてしまえば、遠隔で操作するのは簡単なんだよ。誰でもできると思う」
「私は、サラちゃんとシュテルちゃんに任せるのが良いって思うなー」
「お前たちが操作しない理由は……。ああ、結果をもとに改良なんかも必要か」
研究組が研究に専念できるというだけで、かなり価値は高いと思う。サラやシュテルもそうだし、学校もどきの生徒たちに任せられるのなら助かる。
無理にやらせても、失敗の原因になりかねないとは思う。だから、志願制に近い形にはなるだろう。話しぶりからして、そこまで多くの人数が必要な設計ではなさそうだし。
とりあえず、実際に戦果が出るのなら複数の問題を解決できる。学校もどきの中には、ただ守られているだけの状況を嫌う子もいるからな。サラやシュテルがその筆頭で、だからこそ良い配置だと思う。
なんだかんだで、学校もどきでは人の動かし方や連携を取った仕事を教えているからな。能力面でも、かなり合っているはずだ。
「分かってくださって、嬉しいのです。結果的には、良い役割分担になるはずなのです」
「それなら、後はふたりに話を通さないとな。設置だけなら、転移を活用すればできそうではある」
「うん。設置も危ないとは思っていたから、レックス様ができるなら助かるよ」
「だねー。私たちがどうにかすることも、考えてはいたけどー」
ソニアもクリスも、かなり真剣な目をしている。命がけの任務だとしても、ためらわずに実行するだろうと思えるほど。
きっと、サラやシュテルも同じなのだろう。だからこそ、あまり無理はさせられない。
仲間に傷ついてほしくないという感情を無視しても、俺になら簡単にできること程度で人員を消耗するリスクを犯すのはバカバカしい。
だったら、俺が実行するのが手っ取り早いよな。
「敵がいつどこで出現するか分からないことを考えると、あまり無理はさせられないからな」
「レックス様は、私たちが危ない目にあっても助けてくれる?」
「もちろん、全力で助けに行くさ。相手が相手だから、絶対とまでは言い切れないが……」
「それで十分だよー。目を見れば、どれだけ大切にしてくれているかは分かるんだー」
クリスだけでなく、ソニアの顔もほころんでいる。ひとまず、二人の期待に応える言葉は言えたみたいだ。
実際、命をかけてでも助けに行くつもりではある。能力を抜きにしても、大事な仲間で大切な人なのだから。
たかが女神の試練なんかで、傷ついて良いような人じゃない。傷つけさせたりさせるものか。
「レックス様がお望みならば、どんな危険なことでもするのです」
「必要になる状況も、あるかもしれないんだよな……」
「そうだね。どれだけ難しい状況かは、私たちにも分かるよ」
「でも、後悔はしてないよー。レックス様のおかげで、今は幸せだからー」
ソニアもクリスも、俺の手を取ってくれる。それだけ慕ってくれる相手を、見捨てられるはずもない。どれだけの敵が待っていようと、必ず守りきってみせる。
合一も剣技も使い尽くして、限界を超えてやるさ。それで、みんなが守れるなら。
「なら、これからも幸せが続くようにしないとな。魔道具の力も借りて、勝ってみせるさ」
「私たちも、全力を尽くすのです。使徒にも通じる魔道具を、もっと作ってみせるのです」
「戦いが終わったら、広まらないように気をつけないとな……」
使徒に通じる魔道具となれば、最悪核兵器くらいの威力を出しかねない。少なくとも、爆弾並みの兵器となることは間違いない。
それを、魔法使いでなくとも使える。いずれは世界が変わるのだろうが、俺達の生きている間だけでも。
「そうだね。でも、今は全力でぶつけていくよ。レックス様のためにも」
「だねー。私たちも、今を失いたくないからー」
もちろん、それで良い。未来の危険はあるにしろ、今は仲間たちを守るべき場面なのだから。マリンたちの安全が買えるのなら、いくらでも使ってくれれば良い。
とはいえ、後々考えなければならないことは増えるだろうが。頭は痛くなりそうだが、やるしかない。
「ああ。未来のために、今の安全を捨てろとは言わないさ。だから、一緒に勝とう」
マリンもソニアもクリスも、最高の笑顔で頷いてくれた。みんなの期待に応えるためにも、最大限に魔道具を活躍させないとな。
その上で、俺自身も新しい力を身に着けて試練を乗り越えてみせる。
ミレアルの狙いに乗るのは気に食わないが、みんなのためだ。構うものか。なあ、ミレアル。