物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
魔道具の開発者として、私はレックス様に守られる対象となったようなのです。正確に言えば、親しい間柄ということもあるでしょうけれど。
レックス様は、大掛かりな設備が消えて成果が出ないのではないかと考えていたようです。実際、ブラック家の発展につながるという意味では正しいでしょう。
ですが、もともと私は個人で魔道具を作っていました。大掛かりな設備ではなく、一室を確保すれば十分な設備で。
そもそもの話、大掛かりな設備は量産のための仕組みだったのです。魔法を使えば、個人で開発する分には大きな影響はありません。
私は
むしろ、量産を考えなくて良いというのが大きいのです。一点ものとして作ってもいいし、安く済ませようとせずともいい。
レックス様が思うほど、私たちは不自由ではないというのが実情でした。
もはや逆というのが正確なところですね。量産を考えると、どうしても人の動きを考えないといけませんでしたから。いわば、バカでもどうにかなるように頭を使うのが面倒だったのです。
クリスさんやソニアさんとは、そこまで気を使わなくても話ができます。ジャンさんやミルラさんも。そして、もちろんレックス様も。
ですから、私としては本命の研究が進みやすいくらいだったのです。
「今こそ、レックス様のために力を尽くすべき局面なのです」
レックス様は、女神ミレアルによって試練を与えられている。それは、ブラック家の中心人物は知っていること。レックス様本人に、伝えられました。
おそらく、広めすぎれば不安を招くでしょう。もっと言えば、離反も。研究者で言えば、私やソニアさん、クリスさんが限界でしょう。それ以上に広げれば、危険ですね。
それでも、私たちには伝えられた。信頼の証であると同時に、逃げてもいいという優しさでもあったのでしょう。
無論、最後までお供するつもりです。私の居場所は、レックス様のそばなのですから。
そして、女神の試練は魔道具の成果を確かめられる場でもあります。レックス様のためと言いつつ、私の知的好奇心を満たしている側面は否定できません。
なにせ、ちょうどいい実験材料が転がっているのですから。殺しても構わない的が。
その愉悦も、あると言えます。唇が歪む瞬間も、あります。やはり、私はろくでもない。研究のためには、多くを犠牲にできてしまうのでしょう。
ですが、その性質こそがレックス様の役に立つ。ならば、構いません。私がどれほど汚れた存在であろうと、レックス様は受け入れてくれるのですから。
「
私の研究は、その領域にまで達しました。もはや、魔道具さえあれば
多くの人に知られれば、革命が起きるかもしれません。それほどの技術を、私たちは生み出したのです。
魔力の扱いに関して、研究し続けてきた成果。それもこれも、レックス様がひたすらに私たちを支援してくださったおかげ。
ですから、存分にミレアルの使徒を殺しましょう。実証実験を兼ねつつ、レックス様のために。
「いえ、むしろ
私たちは、レックス様の魔力を受けられるだけの魔道具を作ってきました。それほどの容量があれば、多くのことに使えるからです。
魔力バッテリーの仕組みも、何度も何度も改良を重ねました。大気中にある魔力だけでも、それなりの仕事は果たせるように。
だからこそ、今この状況で優位に働いている。まさしく、研究の成果なのです。
「魔力を吸収できるのなら、敵の魔力が多いほど便利ということなのです」
しっかりと、魔力を吸収する機構を作っていますからね。レックス様の莫大な魔力ですら余るだけのものを。
並大抵の魔力では、壊すことはできません。壊れるほどに注がれる前に、敵に反撃もできます。
レックス様のお役に立つ上で、十分な道具と言えるでしょう。
「研究が、しっかりと進んでいる証なのです」
私がかつて目標としていた領域は、とっくに超えていると言っても過言ではありません。魔法の才能に依存しない仕組みは、すでに完成しているのですから。
うまく使いさえすれば、
ですが、まだ満足するには早いですね。もっともっと先が見えています。レックス様と同じように、私たちも成長し続けましょう。
「少しでもレックス様のお力になれるのなら、恩返しになるはずです」
レックス様が戦わずに休む時間を捻出できるだけで、現状では十分に価値があるでしょう。
私の魔道具がその一助となるのなら、十分に嬉しいこと。
「今の魔道具であれば、誰からも必要とされるでしょうが……」
おそらく、王国からでも重用されるでしょうね。ミーア様やリーナ様の存在を抜きにしても、圧倒的な価値を持っていますから。
手土産さえあれば、誰でも私を求めるでしょう。
「いえ、考えるまでもないのです。手のひらを返すような人は、都合が悪くなればまた手のひらを返すのです」
おそらく、期待する成果が出ないだけで。それこそ、王になるという野望を持った誰かが私を重用したとして、王になれないという事実すら私のせいにするのが関の山。
であるならば、レックス様以外に仕える意味などどこにもありません。もちろん、レックス様が好ましいという気持ちもあります。それも重要ですが、実利面を考えてもレックス様以外はありえないと思えます。
素晴らしいことですね。私の感情すべてが、レックス様に仕えることに向かうのですから。それだけ、研究に熱中できるということです。
ただ成果を出すだけでいい。それだけのことが、どれほどありがたいか。
もっと言えば、失敗すらも受け止めてくれるのです。他の場所なんて、比較する価値すらないのです。
「やはり、レックス様に選んでいただいたことは幸運だったのです」
どれほど私が大事にされているか、よく分かるつもりです。余計な口出しもせず、しかし私たちの言葉に耳を傾けて、必要であれば案も出す。その上で、自分の案を否定されることにも納得してくださる。
他の誰に言っても、これほどの高待遇だと信じられはしないでしょう。ブラック家の評判を抜きにしても、あまりにも都合が良いのですから。
「私の研究の危険性を知っていて、それでも守ろうとしてくださる」
極端な話、魔道具があればレックス様を傷つけることも可能でしょう。それだけのものを作ったという自負はあります。
だからこそ、信頼の価値も分かるのです。悪用すると思われていれば、すでに消されていてもおかしくはありませんから。
にもかかわらず、私たちを守ると心から誓ってくださった。どれほど、幸せなことか。
「ただ力に溺れるだけの愚か者でもない。恐怖に負けるだけの弱い人でもない」
私たちの価値も危険性も最大限に理解した上で、ほとんどの権限を預けてくださる。どんな言葉よりも雄弁に、レックス様の気持ちは伝わってくるのです。
間違いなく、愛されています。恋愛感情かはともかく、大切な存在として。
「アカデミーで花開いたとしても、研究を奪われるか排除されたかなのでしょう」
「むしろ、うっかり認められずに済んで良かったのです」
そのおかげで、レックス様と出会えたのですから。国から重宝されるより、よほど素晴らしい環境にいる。それは、私の環境を知る誰もが肯定するでしょう。
ですから、これまでの不遇にはむしろ感謝したいくらいですね。
「当時の私に聞かせれば、笑われそうではありますけど……」
くすぶっていたのは、事実ですから。見返してやろうと、必死でしたから。ですが、そんな感情は消えてしまいました。
私はただ、レックス様に仕え続けるだけ。それで、良いのです。
「理解者を得るということがどれほどの幸福かなんて、知ってしまえば戻れないのです」
レックス様を失った未来では、私は何をしても満たされることはないでしょう。それが分かってしまうからこそ、笑えてきます。
きっと、私はとっくにレックス様がいなければ生きていけなくなっていた。
「まったく、ひどい人なのです」
私は、すべてをかけてあなたに仕えます。ですから、ずっと私を見ていてくださいね。
それが、レックス様の責任なのです。