物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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67話 一歩近づくために

 とりあえず、残りの知り合いにも、俺の魔法を込めたアクセサリーを贈りたい。みんなに贈った分のアップデートも、おいおいこなすべきではあるが。

 

 今のところは、最新版を贈る相手は、学校もどきの関係者。とはいえ、あまり露骨にひいきしている姿を見せるのもな。明らかに特別な相手はいるが、できるだけ隠すべきだ。公然の秘密くらいには、なっているかもしれないが。それでもだ。

 

 体裁というのは大事だからな。形だけでも、生徒達全員を大切にしているのだという姿を見せるべきだろう。実際、大事ではあるが。顔を合わせる機会も多いし、情が湧いている部分はある。ジュリアやシュテルには、もっと強い感情を持っているだけで。

 

 ということで、いつも通りに2人と会っている時間に、アクセサリーを渡す。この流れも、何度目だろうな。

 

「ジュリア、シュテル、これをくれてやろう」

「チョーカー? レックス様、そういうのに興味あったんだ」

「あなたの色に染めてくれるってことですよね。ありがたく、いただきますね」

 

 とんでもない誤解をされているんだが。どう否定したものか。慌てて否定したら、図星みたいになる。それに、言い回しを失敗したら、また別の誤解をされかねない。例えば、2人で実験しているとか。流石に、そこまではないか?

 

 まあ、何に使うものかを説明すれば、自然と理解してもらえるだろう。あまり触れ回られると困ってしまうが、2人なら心配はいらないか。俺に対する配慮は感じるし、隠すべきことを隠すだけの知性もある。信頼していい相手だというのは、間違いない。

 

「とりあえず、お前達の魔力があれば、俺の魔法を使える。うまくやれ」

「そんなに凄いものなの? ありがとう、レックス様」

「レックス様。これから先も、ずっとあなたのために尽くしますね。このご恩を返すために」

 

 とりあえず、2人はチョーカーをつけてから、それを見せながら笑顔を向けてくれた。喜んでもらっているようで、ありがたい。いつも身につけていてもらえば、安心だからな。

 

 俺が自分の手で全員を守ることは、物理的に難しい。単純な話で、別々の場所にいる人間を同時には助けられないからだ。だからこそ、アクセサリーを渡すという手段を考えたのだからな。

 

 残りは、ラナとミルラだ。2人との時間を作るのは、簡単だ。学校もどきの運営について、よく話をしているからな。人員を増やすかどうかとか、生徒を増やすかどうかとか、色々と話はある。

 

 ということで、他の人間がいないので、安心して渡せる。まあ、ラナとミルラなら、人前で渡しても問題はない気もするが。俺が重用しているのは、見れば分かるだろうし。

 

「ラナ、ミルラ、受け取れ」

「これ……。あたしを妾にするって、決めたんですか?」

 

 チョーカーを首輪みたいに思っているって話か? 俺の意図としては、服で隠しやすいだろうと考えたのだが。何にせよ、ちょっと否定しないとまずいな。

 

 いくらなんでも、貴族の娘を妾にするのは大変なことじゃないか? インディゴ家との関係が、メチャクチャになりかねない。

 

「魔力を感じますね。何か、込めて頂けたのでしょうか」

「ミルラ、お前は手を出せ。そうだ。ほら、何も考えるな」

 

 ミルラのおかげで、話を正しい方向に引き戻せそうだ。ついでに、魔力での認証をするために、ミルラに俺の魔力を送っていく。そうすることで、他の誰かにはアクセサリーを使えなくなる。

 

 他の人間は、基本的に魔力を使えるからな。それに合わせて調整している。ミルラは魔力を持っていない。だから、別の対策が必要だった。

 

「これは、レックス様の魔力でありましょうか」

「そうだ。それがあれば、お前の道具を認証できる。そのチョーカーで、俺の魔法を使える訳だ」

「レックス様、ありがとうございます。あたし、大切にしますね」

「私も、大切にいたします。貴方様に、より一層仕えると約束いたします」

 

 すぐに身に着けてくれているし、問題なく渡せたと思っていいだろう。一応、最低限の対策はできたな。残りの生徒達にも渡せる方が良いとはいえ、まだ踏ん切りがつかない。

 

 というのも、生徒達が襲われた件は、内部犯の仕業の可能性があるからな。下手な道具を渡せば、悪用されかねない。人間性をつかめているとは言えないから、今回は見送った。

 

 ただ、生徒達にも喜んでもらえる何かがしたい。だから、娯楽に使える道具を用意した。勉強の合間にでも、遊んでもらえれば良い。いま思えば、もっと早く用意しても良かったな。息抜きだって、大事なことだろうに。

 

「たまには、遊ぶのも良いだろう。ということで、道具を持ってきてやったぞ」

「これは、カードと玉と、あとは、駒?」

 

 トランプみたいな道具、球技の道具、後はボードゲームの道具だ。それぞれに好みがあるだろうし、人数も居るから、それぞれ複数セットを用意した。

 

「好きなもので遊んでおくと良い。息抜きも、お前達程度なら必要だろうさ」

「なら、レックス様。僕と遊んでよ! このボールで!」

「私も混ぜてください。レックス様となら、楽しいと思います」

「ジュリアもシュテルも、レックス様が大好きなんですよ。良いものも、貰いましたからね」

 

 ラナはチョーカーに触れている。かなり穏やかな表情をしているし、だいぶ気に入ってもらえたと考えて良いはずだ。一応、何を貰ったとは言っていないし、問題ないか? シュテルやジュリアのものとデザインは違うとはいえ、共通点に気づかれたら、ちょっとだけ困る。

 

「ラナ様、そんな物を付けて……」

「何か言いましたか、クロノ?」

「いえ、何でもないです。気にしないでください」

 

 なんとなく、クロノは暗い表情をしている気がする。心配ではあるが、俺は嫌われている気がするからな。あまり声掛けもできない。

 

「レックス様、早く来てよー!」

「あまり急かすんじゃないわよ。レックス様だって、ご自分のペースがあるんだから」

「お前達の戯れにも、たまには付き合ってやるさ」

「ありがとう、レックス様! このボール、何をすればいいの?」

「好きに使えばいいが、基本は互いに投げて受け取ってを繰り返すものだな」

 

 ということで、ジュリアはボールに目をつけたようだ。活発なイメージにピッタリだな。シュテルも、乗り気ではある様子だ。いつも2人は一緒だからな。基本的には、ペアで行動するのが当たり前なのだろう。俺には、そんな相手は居ない。良いことなのか、悪いことなのか。どちらにせよ、やるべきことに変わりはないが。

 

「じゃあ、レックス様! 全力で行くからね!」

「少しは遠慮しなさいよ……。まあ、私も参加したいけど……」

「シュテル、お前も混ざると良い。どうせ、俺の玉を取れはしないだろう」

「じゃあ、あたしが審判をしますね。せっかくだから、勝ち負けをつけましょう」

「私は、他の子供達の様子を見てきますね」

「任せたぞ、ミルラ。では、始めるか」

 

 ということで、キャッチボールみたいな遊びをしていく。グローブはないが、俺達の身体能力なら、大した問題ではない。それに、魔力もあるからな。直撃したところで、ちょっと痛いって程度がせいぜいだろう。

 

 ジュリアは玉が速くて、シュテルはコントロールが良い。全くイメージ通りって感じで、思わず笑いそうになってしまった。

 

 しばらく続けていたら、2人とも上達している様子だった。やはり、運動面の才能も、かなり高いな。

 

「いやー、楽しかった! レックス様の玉、本当に速くてびっくりしちゃったよ」

「そうね。レックス様の偉大さが、また伝わったわ」

 

 これから先も、また遊ぶ機会を作りたいものだ。やはり、親しい人と穏やかに過ごしている時間が一番楽しい。こんな生活を続けられるように、もっと努力を重ねていかないとな。

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