物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
私とソニアとマリンさんで、新しい魔道具の運用を見つける。それが、今のブラック家で求められている仕事。
正確には、レックス様が求めたわけじゃないけれど。私たち自身が、必要なことだと判断したから。
きっと、レックス様は私たちを守るために集めたんだと思う。レックス様と親しい人から順番にって感じだったから。
結局、ブラック家の重要人物は全員集められた。だからこそ、私たちは頑張ろうって思ったんだよね。
サラちゃんたちに運用してもらうことにはなるけれど、私たちの活躍でもある。なんて、実績を誇る考えとかは、あんまりないんだけどね。
やっぱり、私たちは今の生活に満足しているから。たとえ、命の危険があるとしても。
「ジュリアちゃん、ちょっと羨ましいなー。なんて、言ってみたりして」
レックス様に守られるお姫様みたい。なんて思わなくもない。たぶん、私が同じ立場になったら同じことをしてくれる。それは自惚れでも過信でもなく、単なる事実。
もちろん、同時に複数人が狙われたりしたら、レックス様は困っちゃうんだろうけれど。優先順位をつけられる人じゃないからね。
レックス様にとって、身内と外の線引きははっきりしている。けれど、身内の中でどちらが大切かとか、そんな事を考えられない。
だから、私が一番になりたいという願いだけは、きっと叶わないんだろうね。ジュリアちゃんも私も、平等っていうか。
ちょっとだけ、ため息が出ちゃった。
「うーん、思ってたより本音みたいだよねー」
ジュリアちゃんみたいに助けられたいなんて、この年で妄想することじゃないよね。レックス様と違って、ハッキリと大人なんだから。
お姫様願望は、持ってなかったはずなんだけどな。私は、ずっと誰かから認められたいって思っていただけだったと思う。
それもこれも、レックス様に本気になっちゃったせい。ホントは恋愛なんてできる関係じゃない相手に。年齢でも、立場でも。
うーん、胸の中がもやもやしちゃうかも。ちょっと、深呼吸。
「良くない考えだってことは、分かってるつもりなんだけどなー」
というか、人に聞かれたら絶対に怒られるよ。私の気持ちは、誰からだって認められるものじゃない。レックス様以外の、誰からも。
そうなんだよね。レックス様にだけは、私は期待しちゃっている。私の汚い考えも含めて、受け入れてくれるんじゃないかって。まだ子供と言っていい相手に、それでも。
情けない話だけど、私は感情に振り回されてばかりだよ。
「本当に、恋って難しいなー」
もっと立派なオトナとして、レックス様に尊敬してもらいたかった。女の子として、本気で愛してもらいたかった。そんな矛盾を、同時に抱えてしまうくらい。頭も抱えちゃいそうだよ。
それもこれも、レックス様が私を認めてくれて、大事にしてくれて、ワガママも許してくれちゃったから。もっともっとって、求めちゃったんだよね。
ほんと、お菓子を食べ尽くしちゃう子供じゃないんだから。今ある分で満足するってことを、ちゃんと覚えないとダメだよ。
レックス様は優しいけど、怒ったりもする普通の人なんだから。なんて、ちょっとすごすぎるけどね。
「でも、だからこそ……。見てもらうために、できることがあるんだ-」
何もしないで見てもらいたいだなんて、贅沢な話。悪いことをして見てもらいたいだなんて、迷惑な話。
でも、ちゃんとレックス様のためになることをして見てもらう。そうできるように、頑張っていくんだ。
ちゃんと、道筋は見えているから。私だって、ズルい女の子なんだからね。
「もちろん、一番は魔道具をしっかりと作ること。それだけで、見てもらえるねー」
レックス様は、仕事をちゃんと評価してくれる人だから。良い案を出して、しっかりと完成させる。それだけで、もっと大事にされるはずだよ。
なんだかんだで、レックス様も実利を気にする人だからね。当たり前だけど。家の当主で、今では王様なんだから。
それはいつものことだけど、今回は活躍を形にする場面がある。ミレアルの使徒を倒せば、明確な結果になるから。
レックス様が困っているのに、悪い話なんだけどね。
「もうひとつ。今だからこそ、レックス様をからかうのが良いのかもー」
レックス様は、とても良い反応をしてくれる。照れたり、困ったり、ちょっと突っ込んできたり。でも、間違いなく笑顔の時間が多いんだ。
それが意味することは、私たちとの時間を大切に思ってくれているってこと。なら、きっと効果的だよ。
「うん。戦いで、きっと疲れているはずだもんねー」
そんな瞬間だからこそ、笑ったり声を出したりってことが役に立つはず。レックス様に、私といる時に楽しいって思ってもらえればいい。
自分の気持ちを押し付けるだけが、恋愛じゃない。相手に選んでもらえるように、十全に手を打つ。それが、私の愛だから。
やっぱり、私は頭を使う方が得意だよ。レックス様が好む立ち回りを、しっかりと演じれば良いんだから。
なんて、素の私に近いものを見せるだけでいいんだけどね。レックス様は、恋愛感情じゃないとしても私を好きでいてくれているんだから。
そうだよね。どう考えても、他の人なんかじゃ妥協できないよ。
「変なからかい方は、やめた方が良いとは思うけどー」
戦いの時に空気が読めていないと思われるようなやり方は、私もレックス様も困るだけだからね。真面目な話だけは、遮らないようにしないと。
うん。本題が終わった瞬間に私のからかいを仕込むのが良いかな。内容に関しては、普段通りの私なら問題ないか。
戦いを思い出させるような言い回しに気をつけるくらいで、後は普通で良さそうかも。
「体が触れ合うくらいなら、むしろ効果的だったりしてー」
なんだかんだで、レックス様は照れているだけで嫌がってはいないからね。女の子には、ちゃんと興味を持っているみたい。
だから、そういう意味でも効果的なはずだよ。癒やしてあげることが、きっとできる。
「たぶん、本当に苦しい瞬間もあるから。戦ってない私ですら、そうなんだから」
レックス様は、これまでずっと戦ってきた。傷ついたことも、ある。怖いって気持ちだって、間違いなく。
私だって、レックス様の助けが間に合わなかったらどうしようって気持ちはある。だから、きっと分かってあげられるはず。
大好きな人と接していれば、きっと暖かい気持ちになるから。レックス様が私を大好きだってことは、少しだって疑わなくて良い。幸せなことだよね。
「レックス様を笑顔にできれば、それこそお互いにお得だよねー」
レックス様が、いつも言っていることだよね。私も実践するのは、レックス様の部下として当たり前のことかな。
私だって、レックス様に見てもらえれば幸せだから。お互いが笑顔になれるのなら、しない方が損だよ。
「私はレックス様に意識してもらえて、レックス様は少しだけ落ち着けるはずだよー」
私は、本気なんだよ。レックス様への気持ちも、今回の計画も。全部、伝わるようにしてみせるよ。私には分かるから。レックス様は、私たちの気づかいが伝わるだけでも嬉しい人なんだって。
なら、全力で実行するだけ。裏にある感情が伝わっても、むしろ良いことだから。恋愛的な本気を分かってもらえるのなら、助かるよね。
「うん。レックス様との接し方は、いつも通りで良いかなー」
変に意識するより、普段通りの方が強い。戦いという非日常だからこそ、日常の価値が高まってくるってことなんだから。
それに、私が無理しているって思わせたら、心配させちゃうからね。だから、レックス様が好きでいてくれる私でいよう。
「結婚してなんて言うのは、みんなの前だと危なそうだけどねー」
レックス様の家族も、みんな大好きみたいだから。警戒されるのは、あんまり良くない。結婚してほしいのは本心だけれど、叶う可能性は相当低いんだし。
なら、今は収まるところに収まることを重視しよう。レックス様が、いつか私を求めてくれるように。
「でも、たぶん好意的な言葉が大事になってくるはずだよー」
レックス様は、私の好意を喜んでくれるはず。ちょっと困っている瞬間もあったみたいだけど、状況が悪かったのもあるからね。
ギスギスしたりするのは、苦手みたいだから。つまり、うまく押せば良いってこと。
「なるほど。もしかしたら、サラちゃんも……」
レックス様に抱っこやナデナデを求めているのは、純粋だからかなと思っていた。けれど、あれでちゃっかりしている子だからね。
私たちをレックス様が雇えるように、うまく立ち回っていたりとか。
そういう打算があるとすると、レックス様との距離を縮める手段なのかも。
「ふふ、強敵だね。でも、今だけは協力できるよねー」
レックス様の役に立ちたいって気持ちも、元気になってほしいって気持ちも、同じだから。
そうだよね、サラちゃん。