物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
魔道具の実証実験について、学校もどきの生徒であるサラとシュテルに話を通した。快諾されたので、ひとまずはミレアルの使徒が現れるのを待つことになる。
話を終えたこともあり、とりあえず寝て英気を養うことにした。その頃には、もう暗かったからな。
それで、次の日。目が覚めたら、俺の部屋に誰かがいた。
「レックス様、お目覚めになられましたか」
俺に微笑みかけてくるのは、紫髪の凛とした女の子。察するに、シュテルみたいだ。隣を見ると、茶髪の人形みたいな女の子がいた。サラだ。
「シュテルに、サラ……? なにか、あったのか……?」
「私たちで、敵を撃退できた。だから、抱っことナデナデ」
サラにへばりつかれたので、とりあえず抱きかかえて頭を撫でる。サラは目を細めて、満足気に息を吐いていた。
「ああ……。うん!?」
なんか、敵を撃退できたとか言っていなかったか? ミレアルの使徒が、襲ってきたということか?
今すぐに準備しないと。いや、撃退できたんだったか。状況はどうなっている? 被害は? というか、誰が倒した? ああ、サラが私たちだと言っていたな。
「レックス様、手が止まってる」
「もう、サラったら……。い、いえ。問題なく、魔道具の実証実験に成功しました!」
ようやく、頭がスッキリしてきた。サラたちに頼んでおいたことを、俺が寝ている間にこなしてくれていたらしい。
それで、おそらく魔道具だけで敵を倒しきることに成功したのだろう。なるほど。マリンたちの研究は、そこまでのものになっていたらしい。できるとは聞いていたが、本当になるとは。
ひとまず、心配していたような問題は起きなかったということだろう。まあ、結果としては良かったのか。
俺としては、いざという時にはサラやシュテルを援護できるようにしておきたかったのだが。
「なるほど……。起こしてくれても、良かったんだぞ?」
「まずい兆候が出れば、起こさせていただく予定ではありました。ですから、すぐここに来たんです」
「失敗したら、レックス様が困る。だから、最小限だけ」
シュテルやサラも、俺の考えているようなことは考えていたということか。とはいえ、起こされて準備をすることも考えたら、やはり起きていた方が良かった気もするが。
というか、ふたりはちゃんと寝ているのだろうか。顔を見る感じだと、そこまで眠そうではない。今のところは、徹夜をしたというわけではなさそうだ。
そうなると、もともと夜中か朝早くに起きることになっていて、ちょうどミレアルの使徒がやってきたのだろうか。
都合が良い気はするが、ミレアルは試練を与えているわけだからな。本気で乗り越える可能性がないことは、してこないらしい。
「そうか……。まあ、叩き起こしてくれた方が良かった気もするが……」
「ミレアルの使徒などという愚物に、レックス様の睡眠を邪魔させるものではありません!」
「一応、ジュリアも起きていた。だから、最低限の備えはあったはず」
ああ、そういう話か。もともと、俺達は戦えるものでシフトを組んでいた。ジュリアも備えていたとなれば、連携はしっかり取れるだろう。なにせ、学校もどきの時代から仲良くしている三人だからな。
俺の心配しすぎだったらしい。ちゃんと、いざという時のこともしっかり考えてくれていたみたいだ。
「そうか。なら、これ以上問い詰めるのも悪いな。よくやった、ふたりとも」
「ナデナデ、満足。シュテルもしてもらえば良い」
「そ、その……。レックス様……」
シュテルはこちらを見ながらモジモジしている。相変わらず、遠慮しているのだろう。なんというか、俺を神みたいに扱いすぎて言いたいことも言えなくなっていそうだ。
そのあたり、どうにかしたいんだが。ただ、言ってどうにかなるようなら、狂信者みたいになんてなっていないんだよな。
ちょっとだけ頭を抱えたくはなるが、まあ諦めるしかない部分はある。
「もちろん、構わない。それにしても、よく勝てたものだな……」
「使徒は強い程度の
「レックス様のお力の前では、チリも同然の存在でしょう!」
「そ、そうか……。まあ、勝てたとは思うが……」
「レックス様、なにか心配してる?」
シュテルの頭を撫でていると、サラがこちらを見て首を傾げてきた。ナデナデと抱っこばかり言っているように見えて、なんだかんだで周囲が見えている子なんだよな。
実際、研究組のソニアとクリスを雇えたのは、サラが仲良くなって誘ってくれたおかげなのだし。
ここで隠しても意味がないから、話すだけ話してみるか。
「心配というか、ミレアルの意図が読めなくてな……」
「魔道具で勝てる程度の、弱い敵。前は、フィリス先生やエリナ先生が苦戦したのに」
すぐに答えが返ってくる。これだけの才能がある子が、学校もどきを作らなければ飢えて死んでいたかもしれない。もっと言えば、魔法だけで評価されていては花開かなかったかもしれない。
やはり、この世界のあり方については思うところはある。だが、それによる利益を得ている側面も否定できないからな。
言ってしまえば、サラが不遇だったからこそ俺は慕われているのだから。まったく、困ったものだ。
「そういうことだ。まあ、考えて分かるものでもないのかもしれないが……」
「ミレアルの浅はかな考えなど、レックス様なら打ち破るに決まっています!」
「シュテル、真面目な話」
「サラが言うのなら……。ですが、時間に関係なく攻めることが関係しているのではないでしょうか?」
真面目な話ができるのなら、最初からしていてくれよ! シュテルの言動に頭を抱えているのは、俺だけじゃないだろうに。
まあ、今は真面目に話してくれているんだ。注意なんかをする場面じゃない。ひとまず、仮説のひとつとしては十分だと思う。
「それはありえそうだな。サラはどう思う?」
「ジュリアが狙われていたのも、関係あるかもしれない」
サラの意見も分かる話だ。どれだと確信を持つことはできないにしろ、当たりをつけることはできる。それで成長につながるのなら、直接試練と関係なかったとしても悪くない。
ひとまず、しっかりと検討する価値のある意見だ。
「なるほどな。魔力を封じられないことと言い、今回は魔法に関係する何かだろうか……」
「魔道具の可能性もある。他には、複数人の協力も」
「大勢での強い魔法なんかも、ありえそうよね……」
すぐにポンポンと意見が出てきた。候補としては、この中のどれかである可能性は高いと思う。外れている可能性もあるが、その時は場当たり的に対処するしかない。
できる準備としては、かなり進んでいるんじゃないだろうか。
「特定はできないにしろ、候補は見えてきたな。ありがとう、ふたりとも」
「レックス様のお役に立てるのが、私の喜びです!」
「抱っことナデナデ。ちゃんとしてくれればいい」
「サラはいつもそれよね……」
「シュテルこそ、いつも同じ」
「はは、仲良くしてくれよ……?」
そう言うと、二人とも笑顔を見せてくれた。研究組も含めて、活躍に応えられる結果を出さないとな。
俺にできることは、勝ってみんなを守ることだけ。なら、絶対にやり遂げるだけだ。