物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

672 / 672
671話 成果を出して

 魔道具の実証実験について、学校もどきの生徒であるサラとシュテルに話を通した。快諾されたので、ひとまずはミレアルの使徒が現れるのを待つことになる。

 話を終えたこともあり、とりあえず寝て英気を養うことにした。その頃には、もう暗かったからな。

 

 それで、次の日。目が覚めたら、俺の部屋に誰かがいた。

 

「レックス様、お目覚めになられましたか」

 

 俺に微笑みかけてくるのは、紫髪の凛とした女の子。察するに、シュテルみたいだ。隣を見ると、茶髪の人形みたいな女の子がいた。サラだ。

 

「シュテルに、サラ……? なにか、あったのか……?」

「私たちで、敵を撃退できた。だから、抱っことナデナデ」

 

 サラにへばりつかれたので、とりあえず抱きかかえて頭を撫でる。サラは目を細めて、満足気に息を吐いていた。

 

「ああ……。うん!?」

 

 なんか、敵を撃退できたとか言っていなかったか? ミレアルの使徒が、襲ってきたということか?

 今すぐに準備しないと。いや、撃退できたんだったか。状況はどうなっている? 被害は? というか、誰が倒した? ああ、サラが私たちだと言っていたな。

 

「レックス様、手が止まってる」

「もう、サラったら……。い、いえ。問題なく、魔道具の実証実験に成功しました!」

 

 ようやく、頭がスッキリしてきた。サラたちに頼んでおいたことを、俺が寝ている間にこなしてくれていたらしい。

 それで、おそらく魔道具だけで敵を倒しきることに成功したのだろう。なるほど。マリンたちの研究は、そこまでのものになっていたらしい。できるとは聞いていたが、本当になるとは。

 

 ひとまず、心配していたような問題は起きなかったということだろう。まあ、結果としては良かったのか。

 俺としては、いざという時にはサラやシュテルを援護できるようにしておきたかったのだが。

 

「なるほど……。起こしてくれても、良かったんだぞ?」

「まずい兆候が出れば、起こさせていただく予定ではありました。ですから、すぐここに来たんです」

「失敗したら、レックス様が困る。だから、最小限だけ」

 

 シュテルやサラも、俺の考えているようなことは考えていたということか。とはいえ、起こされて準備をすることも考えたら、やはり起きていた方が良かった気もするが。

 というか、ふたりはちゃんと寝ているのだろうか。顔を見る感じだと、そこまで眠そうではない。今のところは、徹夜をしたというわけではなさそうだ。

 

 そうなると、もともと夜中か朝早くに起きることになっていて、ちょうどミレアルの使徒がやってきたのだろうか。

 都合が良い気はするが、ミレアルは試練を与えているわけだからな。本気で乗り越える可能性がないことは、してこないらしい。

 

「そうか……。まあ、叩き起こしてくれた方が良かった気もするが……」

「ミレアルの使徒などという愚物に、レックス様の睡眠を邪魔させるものではありません!」

「一応、ジュリアも起きていた。だから、最低限の備えはあったはず」

 

 ああ、そういう話か。もともと、俺達は戦えるものでシフトを組んでいた。ジュリアも備えていたとなれば、連携はしっかり取れるだろう。なにせ、学校もどきの時代から仲良くしている三人だからな。

 俺の心配しすぎだったらしい。ちゃんと、いざという時のこともしっかり考えてくれていたみたいだ。

 

「そうか。なら、これ以上問い詰めるのも悪いな。よくやった、ふたりとも」

「ナデナデ、満足。シュテルもしてもらえば良い」

「そ、その……。レックス様……」

 

 シュテルはこちらを見ながらモジモジしている。相変わらず、遠慮しているのだろう。なんというか、俺を神みたいに扱いすぎて言いたいことも言えなくなっていそうだ。

 そのあたり、どうにかしたいんだが。ただ、言ってどうにかなるようなら、狂信者みたいになんてなっていないんだよな。

 

 ちょっとだけ頭を抱えたくはなるが、まあ諦めるしかない部分はある。

 

「もちろん、構わない。それにしても、よく勝てたものだな……」

「使徒は強い程度の五属性(ペンタギガ)。問題なく倒せる範囲」

「レックス様のお力の前では、チリも同然の存在でしょう!」

「そ、そうか……。まあ、勝てたとは思うが……」

「レックス様、なにか心配してる?」

 

 シュテルの頭を撫でていると、サラがこちらを見て首を傾げてきた。ナデナデと抱っこばかり言っているように見えて、なんだかんだで周囲が見えている子なんだよな。

 実際、研究組のソニアとクリスを雇えたのは、サラが仲良くなって誘ってくれたおかげなのだし。

 

 ここで隠しても意味がないから、話すだけ話してみるか。

 

「心配というか、ミレアルの意図が読めなくてな……」

「魔道具で勝てる程度の、弱い敵。前は、フィリス先生やエリナ先生が苦戦したのに」

 

 すぐに答えが返ってくる。これだけの才能がある子が、学校もどきを作らなければ飢えて死んでいたかもしれない。もっと言えば、魔法だけで評価されていては花開かなかったかもしれない。

 やはり、この世界のあり方については思うところはある。だが、それによる利益を得ている側面も否定できないからな。

 

 言ってしまえば、サラが不遇だったからこそ俺は慕われているのだから。まったく、困ったものだ。

 

「そういうことだ。まあ、考えて分かるものでもないのかもしれないが……」

「ミレアルの浅はかな考えなど、レックス様なら打ち破るに決まっています!」

「シュテル、真面目な話」

「サラが言うのなら……。ですが、時間に関係なく攻めることが関係しているのではないでしょうか?」

 

 真面目な話ができるのなら、最初からしていてくれよ! シュテルの言動に頭を抱えているのは、俺だけじゃないだろうに。

 まあ、今は真面目に話してくれているんだ。注意なんかをする場面じゃない。ひとまず、仮説のひとつとしては十分だと思う。

 

「それはありえそうだな。サラはどう思う?」

「ジュリアが狙われていたのも、関係あるかもしれない」

 

 サラの意見も分かる話だ。どれだと確信を持つことはできないにしろ、当たりをつけることはできる。それで成長につながるのなら、直接試練と関係なかったとしても悪くない。

 ひとまず、しっかりと検討する価値のある意見だ。

 

「なるほどな。魔力を封じられないことと言い、今回は魔法に関係する何かだろうか……」

「魔道具の可能性もある。他には、複数人の協力も」

「大勢での強い魔法なんかも、ありえそうよね……」

 

 すぐにポンポンと意見が出てきた。候補としては、この中のどれかである可能性は高いと思う。外れている可能性もあるが、その時は場当たり的に対処するしかない。

 できる準備としては、かなり進んでいるんじゃないだろうか。

 

「特定はできないにしろ、候補は見えてきたな。ありがとう、ふたりとも」

「レックス様のお役に立てるのが、私の喜びです!」

「抱っことナデナデ。ちゃんとしてくれればいい」

「サラはいつもそれよね……」

「シュテルこそ、いつも同じ」

「はは、仲良くしてくれよ……?」

 

 そう言うと、二人とも笑顔を見せてくれた。研究組も含めて、活躍に応えられる結果を出さないとな。

 俺にできることは、勝ってみんなを守ることだけ。なら、絶対にやり遂げるだけだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

バッドエンド後にやり直した人生で、初対面のクラスメイトからなぜか激重感情を向けられている(作者:水島紗鳥)(オリジナル現代/恋愛)

あの日死んだと思っていた俺の人生には彼女しか知らない続きがあったらしい▼高校卒業式の日、受験全落ちと失恋のダブルパンチでどん底だった主人公の忍野瑛人(おしのえいと)は、痴情のもつれが原因で刺されそうになっていた同級生の一色天音(いっしきあまね)を庇って命を落とす。▼だが、気付いた時には三年前である高校入学前の春休みに逆行していた。バッドエンドだった人生をやり…


総合評価:306/評価:7.67/連載:40話/更新日時:2026年08月10日(月) 12:21 小説情報

和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか?(作者:鬼怒藍落)(オリジナル現代/冒険・バトル)

一般和風好き転生者VS曇らせと理不尽と絶望▼ファイ!▼カクヨムにも出します


総合評価:4209/評価:7.97/連載:42話/更新日時:2026年05月07日(木) 07:10 小説情報

世界の為に推しとの恋愛を諦めようとしたらヤンデレ化された件(作者:赤坂緑語)(オリジナル現代/冒険・バトル)

この世界が前世でプレイしていた悪魔とエクソシストの殺し合いで年中ヒャッハーしている鬱エロゲームの世界であると気が付いたその日、僕は恋人になってくれた彼女に告げた。▼「ごめん……別れて欲しい」▼ 彼女はこの世界を主人公と共に救うメインヒロインだと知ってしまったから。あとは主人公と一緒に何とか世界を救ってほしいと願っていたんだが――▼「逃がさないよ。絶対に、絶対…


総合評価:19708/評価:8.75/連載:95話/更新日時:2026年08月09日(日) 23:00 小説情報

幼少期の頃に好感度が最大値な美少女たちと色んな約束を交わしている主人公は成長した末に最強に至る。ヤンデレヒロイン、現代異能剣戦ファンタジー(作者:三流木青二斎)(オリジナル現代/冒険・バトル)

病弱な肉体のまま不遇の死を迎え、次に目を覚ませば赤ちゃんになっていた。▼普通の世界とは違い、異能レベルの剣術を扱う斬人が存在する世界で、人を脅かす化物、祅霊や、刀を使い悪事を働く妖刀師を討伐する抜刀官を目指す。▼その際に師匠の娘や義理の妹と出会い、何時の間にか将来を約束し合う仲に……。▼転生した主人公は抜刀官を目指していく。▼米 他サイトにて転生抜刀官と言う…


総合評価:2857/評価:8.29/連載:38話/更新日時:2026年03月07日(土) 16:13 小説情報

貞操逆転世界で占い師(軍師)を務めていたら、貴族令嬢方に包囲され逃げられなくなった件について(作者:ペンギン3)(オリジナルファンタジー/戦記)

男女の役割が入れ替わった中世っぽい異世界で、ガリティア王国の女爵(男爵)家に転生した。▼軍事貴族の家柄に転生したことも相まって、勝手に憧れて軍略などを学んでいたが、この世界では男性が故に出征することもなく箱入り息子として育てられることに。▼だか、ある日にまさかの革命が起こり、王家と共に軍人だった母は戦死してしまう。▼慌てて隣国に亡命すると、そこには同じく革命…


総合評価:12968/評価:8.64/連載:57話/更新日時:2026年08月10日(月) 12:10 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>