物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
今日も今日とて、ミレアルの使徒は襲撃してくる。こちらの都合など、気にすることもなく。今回は俺が出撃して、倒していく。
敵は弱いままで、聖国の時に魔力が足りなくなりそうだったり、連邦の時に魔法を封じられたりということは現状ない。
だからといって油断して良いはずもないのだが、不満のようなものがあるのも事実だった。
いつも通りに、一通り倒していく。以前までの技を使うだけで勝てる敵に。
「
追加の敵が現れないことを確認して、軽く息をつく。後ろから足音が聞こえたので、振り向く。そこにはカミラがいた。
カミラは俺の方を何度か叩いて、じっと見つめてくる。
「疲れた顔してないで、しっかりしなさい。次が来たら、あたしが代わるわ」
堂々と立っているカミラは、やはりカッコいい。姉として、本気で尊敬できる相手だ。だからこそ、俺がいない時に妙なことにはなってほしくない。
どうしても、24時間ずっと起きていることは不可能だからな。ミレアルの攻め方も、それを狙っているのは明らか。
笑顔を見せはするものの、正直に言えば不安だ。俺だけが戦えば良いことが、どれだけ楽か。だが、頼らないのは論外だ。俺が限界を迎えた瞬間に、みんなも倒れることになるのだから。
「ありがとう、姉さん。次も勝てるように、頑張るよ」
「はいはい。さ、行ってきなさい。まだ、他の話もあるんでしょ」
「ああ。とりあえず、もう少し話を詰めてくるよ」
俺がいない間にどう動くかは、しっかりと決めないといけない。そういう事も含めて、ミルラやジャンには多くを任せている。
ふたりがいなければ、俺の道はとっくに潰えていただろう。それほどの活躍に、報いられているかどうか。
とは言いつつ、これからも頼り続けるだろうが。ふたりのもとに向かったら、相変わらずの落ち着いた対応だった。
「ミルラ、ジャン。物資に関しては、足りているか?」
「問題ございません。魔道具の運用で、敷地内での生産も可能になりました」
「これが年単位になれば、話は別ですけど。それまでには、外部との連携も深める予定です」
とりあえず、今すぐに対処しないといけないことは無い様子。ブラック家の中で食料なんかの物資を十分に生産できるのなら、少なくとも飢え死にということはなさそうだ。
まあ、畜産物を生み出せるとは思えないし、完璧には程遠くはあるだろうが。とはいえ、戦時中のようなものだし、ある程度食べるものに制限が出るのは必然。
総じて、現状としては最大限の成果だと考えていいだろう。籠城にありがちな、外部の支援が切れる問題にも対処できそうだし。
「なら、今のところは安心して良さそうだな。ありがとう、ふたりとも」
「これが私どもの役目でありますれば。当然のことでございます」
「兄さんが全力を出せる環境を整えれば、結果的に僕たちも楽ができますからね」
まあ、ギブアンドテイクという意味ではジャンの言葉はよく分かる。ミルラやジャンは、構造上どうしても強い武力を持てない。
そこに対して俺がいることで、ミルラやジャンが運用できる強大な武力として成立しているということ。
だから、まるっきり何も返せていないということもないのか。ミルラやジャンにとって邪魔な相手には、俺の存在そのものが手札になるのだし。
それでも、ちゃんと恩返しはしていきたいが。ただ、金銭面では最大限の報酬を与えているし、これ以上のものがなかなか思いつかないんだよな。
平和になったのなら、いくらでも恩返しできそうな気もするが。それも、遠い話だ。
ひとまず話は終わったので、次に移る。今すぐに恩返しするのは、どう考えても不可能だからな。現実的には、優先順位を下げざるを得ない。
「サラ、シュテル。なにか不足があれば、言ってくれ」
「抱っことナデナデ。それさえあれば、問題ない」
「もう、サラったら……。ですが、同意します。必ずや、レックス様のお手をわずらわせはしません!」
サラもシュテルも相変わらずだ。顔色を見る感じだと、そこまで疲れはなさそうか。
とりあえず、今のところは問題なさそうに見える。本気で困っていたら、少なくともサラは報告してくるはずだ。
シュテルもたぶんいざという時には言うだろうが、どうにも強さもある。
「シュテルも、抱っことナデナデがほしい?」
「そういう話じゃないわよ! ……あっ。レックス様、その……」
モジモジしながら、シュテルはこちらを見てきた。抱っことナデナデは、いるんだな。慕われているという証でもあるし、それが報酬になるのなら構わないが。
「分かっている。少しだけなら、付き合えるぞ」
「ありがとう、ございます……」
ということで、サラとシュテルをナデナデしていく。サラは満足げに息を吐き出していて、シュテルは目をとろけさせていた。
なんだろうな。なでているだけなのに、なんか妙なことをしている気分になる。
それはそれとして、満足してくれたみたいなので次に移る。
「マリン、ソニア、クリス。俺が魔力を注ぎ込むべきものは、あるか?」
「現状では、余剰も出ているのです。レックス様に余裕があれば、助かりはしますが」
「それよりも、私たちとの時間も大事にしてほしいなー。なんて、ね」
「レックス様なら、どんな話でも良いんだよ? それこそ……ね?」
クリスは顔を近づけてくるし、ソニアは耳元でささやいてくる。
なんか、一気に話が別の方向にすっ飛んでいった。クリスもソニアも真面目な話がちゃんとできる人ではあるし、本当に余裕があるのだろう。
とりあえず魔力を注いでクリスたちから遠ざかりつつ、話を進めていく。
「ま、待て待て! 今のところは、疲れすぎたりもしていないんだな?」
「レックス様こそ。しっかり休んでね。膝枕とか、いる?」
「ふふ、サラちゃんとは逆に、こっちがナデナデしてあげよっかー」
ソニアもクリスも、なんか目が本気に見える。思わず、一歩下がってしまった。うなずけば、本気で実行されかねない。
いくらなんでも、ふたりに本気で膝枕やナデナデをされたら身が持たない。
「き、機会があればな! 大丈夫そうで、良かったよ……!」
「ゆっくりと、休んでくださいです」
頭を下げるマリンを見ながら、俺は逃げていった。一通りの用事を終えたので、自室に帰る。
「ふう、これで休めそうだな……」
「ご主人さま、軽いお食事を用意しておきましたよっ」
「お飲み物も、もちろん用意しています。ごゆっくりどうぞ」
ウェスとアリアが、食事をテーブルに並べていく。本当につまめそうなくらい軽い食事で、今の気分にはちょうど良かった。
やはり、メイドとしての技術がかなり高い。俺が落ち着ける空間を、かなり適切に用意してくれている。
「ウェス、アリア、ありがとう。ひとまず、のんびりさせてもらうよ」
「お食事が終わったら、しっかり寝てくださいねっ。すぐだと、お腹に悪いですけどっ」
「睡眠不足ではなさそうですが、よく寝てくださいね。疲れは、命取りですから」
ウェスもアリアも、優しく微笑んでくれる。このふたりがいると、日常って感じがするな。
「ああ。目が覚めたら、次の準備もしないとな……」
そう言いながら、食事を口に運んでいった。寝たら、また忙しくなるかもしれない。
しっかりと英気を養って、勝てるようにしないとな。