物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
カミラと一緒に戦った時にはかなりボロボロになったものの、魔道具で魔力を補充しながら闇魔法で回復していけば一晩でコンディションは整った。
あくまで緊急事態だからやっていることであって、エナジードリンクを飲むようなものだとは思うが。ただ、今は状況が状況だからな。すぐに戦場に戻れる方が大事。
そう思っていた通り、翌日には敵がやってきた。いま出られるのは、俺とメアリ。いざという時には転移で誰かを呼び寄せられるように意識しつつ、ひとまずは俺達で出ることにした。
「さて、メアリ。いけるか?」
「大丈夫なの! お兄様の敵、ちゃんとやっつけちゃうんだから!」
元気いっぱいに握りこぶしを作っている。杖を握りしめて、やる気は十分みたいだ。
メアリを巻き込むのに罪悪感は浮かばないでもないが、現状では頼らない方が害悪と言わざるを得ない。
結局のところ、メアリを温存していたら俺達が負ける。結果的に、メアリも犠牲になる。そんな未来が見えているのだから、やれるだけのことをやるしかない。
さっそく敵が現れたので、すぐに剣を振っていく。
「とりあえず、まずは俺から!
一気に敵を斬り裂くが、まだ当然次の敵が現れる。まあ、分かりきっていたこと。
「お兄様、すごい……! メアリだって!
メアリが竜巻で敵を飲み込んでいく。だが、竜巻という形の都合上、すべての敵を巻き込むことはできない。
仕方のないことではあるので、討ち漏らしを仕留めていく。
「俺も続く!
数が減っているので、ピンポイントにいくつかの場所を斬り裂くだけで済んだ。なんだかんだで、範囲攻撃とは言えターゲットを絞った方が当てやすい。
まあ当然と言えば当然なのだが、あらためて実感した。
「
メアリはギュッと杖を握りしめて、敵に何度も何度も竜巻を放つ。ひとりたりとも残さないというように。
だが、明らかにペースが早すぎる。撃破効率という面で、魔力の無駄遣いとしか言えない。
「メアリ!? 魔法を撃ちすぎだ!」
「でも、このままじゃ……」
メアリは厳しい目をしている。杖を持つ手も震えており、今にも駆け出しそうなくらいに見える。
確かに、敵を一掃できていない事実はある。だが、焦りすぎないでくれ。
そんな気持ちを込めて、全力で叫んだ。
「討ち漏らしたら、俺が代わりにやる!
「なんで、メアリはお兄様の力になれないの……!?」
メアリの討ち漏らしを殺すと、メアリはわなわなと震えだした。
「メアリ……」
「合一ができたら、こんな敵なんて……!」
それが、メアリの傷か。いま乗り越えられなければ、きっと後に引きずる。いや、もしかしたら今回の戦いで妙なことになってしまうかもしれない。
メアリを合一に導く手はあるか? ……ある。やれる。俺は、メアリと目を合わせた。その後ろで、しっかりと敵を斬り裂きながら。
「メアリ。俺を、信じてくれるか?」
「当たり前なの! お兄様だけは、疑わないの」
「いくぞ。俺の魔力に、身を委ねてくれ……。
メアリの全身に魔力を染み込ませて、個々の魔力にまで闇の魔力を侵食させていく。その上で、俺の手で操っていった。
「こうやって、魔力を動かせばいいの?」
「後は、俺が導く!
一気に魔力と合一していく。つながった魔力を通して、メアリに感覚が伝わるように。
「この感じ……。メアリも……!」
メアリは魔力に溶け込みだした。なら、後は仕上げだけ。さあ、結果をご覧じろ。
「いくぞ。俺達の……」
「
俺たちは竜巻となって、周囲を吹き飛ばしていく。竜巻である以上、当然討ち漏らしは出る。
だが、合一した今なら問題ない。風を広げて、刃を飛ばす。空間を斬り裂くように、好きなところに。
渦として周囲に風の斬撃を飛ばしながら、ただ敵を切り裂き続ける。
一瞬で敵が一掃できたが、まだ終わらないようだ。
「さて、増えてきたな……」
「お兄様となら、どんな敵だって!」
カミラの時と同じように、我慢比べを続けていく。魔力を振り絞り、引き出し、敵に向けて叩きつける。
お互いの魔力を共有しながら、全力で魔力を吐き出していった。
その成果もあって、すべての敵を倒しきることに成功する。合一を解くと、メアリはふわりと地面に降り立とうとする。それを、ゆっくりと抱きとめた。
メアリは、お姫様抱っこの姿勢のまま俺に抱きついてくる。
「終わったか。メアリ、自分で合一はできそうか?」
「試してみるの。
メアリはあっけなく、竜巻と一つになった。風があたっていないのに、空間が震えるのを感じるほど。
敵はいないから、まだハッキリとした威力の証明はできない。だが、もう合一には迷わないと確信できるだけの精度だった。
また、メアリは胸に飛び込んでくる。それを、優しく抱きしめた。
「ああ、もう使いこなしてるじゃないか。これなら、心配はいらなそうだな」
「お姉様とでも、苦戦したんでしょ? まだまだ、油断はできないの!」
メアリは、堂々と宣言している。ひとつの壁を超えたことで、精神的に余裕ができたみたいだ。
きっと、今のメアリなら冷静に敵を倒せる。そう思えるだけの何かがあった。
「はは、そうだな。だが、きっと俺達なら勝てるさ」
「もちろんなの! メアリとお兄様がそろえば、絶対に最強なんだから!」
「ああ。ミレアルにだって、負けはしないさ」
俺の宣言と同時に、メアリのお腹から小さな音がなる。メアリは、軽くお腹を抑えていた。
「もう、お腹ペコペコなの。メイドさんたちのご飯、楽しみなの」
「ウェスたちなら、作ってくれていそうだな。ふたりの料理は、絶品だぞ」
「お兄様と一緒のもの、食べたいな!」
明るく満面の笑みを浮かべている。本当に楽しそうで、こっちまで元気をもらえそうだ。
やはり、メアリは光り輝く太陽みたいな子だよな。その笑顔で、俺達を照らしてくれる。
だからこそ、その笑顔を続けるためにできることをしよう。
「ああ、俺もだ。メアリに俺の好きなものを知ってほしい」
「メアリも、お兄様に好きなものを知ってほしいの!」
「はは、おそろいだな。本当に、メアリは可愛い妹だよ」
「お兄様だって、最高のお兄様なの! 今回だって、属性を増やした時だって、ずっとお兄様のおかげなんだから!」
メアリの属性を増やす時には、闇魔法の侵食を使った。それで、メアリに魔力を植え付けた。俺を信じてくれなかったら、成立しなかったことだ。
ずっと昔から、迷わずに俺を信じてくれていた。どれだけありがたいことか。
「メアリが俺を信じてくれたからだ。前の時も、今回も。だから、メアリ自身がつかんだ成果なんだ」
「お兄様を信じるのなんて、当たり前なの! ずっと、大好きだもん!」
「俺も、メアリが大好きだ。これからも、よろしくな」
メアリは最高の笑顔で返してくれた。
この笑顔を見るためなら、どんなことだってできる。
だから、ミレアル。相応の覚悟をしておくことだな。