物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
やはり、敵の攻撃はだんだん苛烈になってきている。いよいよ、俺に本格的に試練を与えようとしているらしい。
実際、夜なんかに襲いかかってくることはなくなった。明らかに、俺がいる時を狙い撃ちにしている。
ということは、次の段階に進めということ。そんな予感を覚えつつ、まだ編み出せないままでいた。
「
カミラとの合一で、ひたすら敵を殺し続ける。空間内に入り込んだ敵を、一切合切斬り裂いて。
魔力を振り絞りながら、どこまでも倒す。それで、今回の戦いは終わった。
とはいえ、そろそろ合一だけでは足りなくなりそうだ。いい加減に次の手を出せという、ミレアルの催促なのだろうな。
「……かなり、手間取ったな……」
「さすがに、否定できないわね……。まったく、面倒なものよ」
カミラは腰に手を当ててため息をついている。俺も合わせたいくらいだ。ミレアルは、毎回俺をかなり追い詰めようとしてくる。
フィリスとの合一や、魔力を使わずに空間を斬る剣技。それらを編み出せなければ、あっけなく敗れていただろう。
今回も、カミラやメアリと合一できなかったら危険だった。そして、もう足りなくなりそうになっている。
「ミレアルの試練は、ここから激しくなってきそうだな」
「ええ。あたしたちの技だけじゃ、そろそろ足りなくなりそうだもの」
カミラも同じ結論なようだ。真剣な顔をしているし、本気で危機感を覚えているらしい。まあ、俺も同じ気持ちだ。
万が一にも、仲間たちを失うわけにはいかないのだから。それだけは、絶対に許してたまるものか。
「そうなると、別の手段が必要になってくるな」
「あたしの新技じゃ、まだ足りなかったものね……」
カミラの新技は、以前の試練なら完勝できていたほどの技だと思う。空間内の敵を即座に皆殺しにするような、圧倒的な技なのだから。
まあ、魔法を封じられたら無力ではあるか。とはいえ、本来ならばフィリスにだって通用するほどの技だと思う。
それこそ、以前までの俺なら手も足も出ずに負け続けていたはずだ。だからこそ、歯噛みしたくもなる。
「根本的には、ミレアルがその気になれば俺達は潰されるんだろうとは思う」
「ま、そうね。バカにされてるとしか思えないけど、都合もいいわ」
カミラは鼻で笑っている。リアリスト的な思考だな。俺も見習いたいところだ。
実際、バカにされていると怒ったところで、状況が改善するわけでもない。ミレアルが手加減しているという現状を、なるべく利用するのが正しいはず。
「実際、そのおかげで成長できている部分もあるからな。誰が最後の敵かを考えたら、自作自演じみてもいるが」
「だからって、やられっぱなしはシャクだもの。何をどうするかは、あたしが決めるわ」
カミラは気炎を燃やしている様子。実際、正しい思想だろう。ただ相手に振り回され続けるだけじゃ、勝てるものも勝てない。
最終的には、意志が物を言う。自分の手で未来を切り開くという決意がなければ、厳しい試練は乗り越えられないのだから。
やはり、カミラは尊敬できる姉だ。言葉こそ悪いものの、きっと誰よりも強い信念を持っている。
「俺だって、諦めたりするつもりはない。姉さんと同じようにな」
「ナマイキよ、まったく。バカ弟は、それで良いんでしょうけど」
呆れたような目で見てきた。まあ、肯定されてもいるのだろう。本気で嫌なことなら、もっと拒絶するのがカミラだからな。
そういう意味では、かなり接しやすい。表向きのツンケンは、普通に親愛の証でもある。嫌いな相手には、そもそもまともに話もしないんだから。
本人に言えば怒られそうだが、とても分かりやすいツンデレというか。
「褒め言葉として受け取っておくよ。しかし、どうしたものか……」
「何をするかで悩んでるわけじゃないんでしょ? だったら、答えはひとつよ」
そうだな。どうやって魔法を使うかとか、いつまでに魔法を使うかとかの話だ。新しい魔法を身につけるということは、悩んでいない。
なら、まっすぐ進むのが一番だな。結局のところ、為さねばならない。
「そうだな。なんとしても、俺は新しい魔法を身に着けてみせる」
「ようやくバカ弟らしくなってきたわね。それで? どんな魔法を考えてるわけ?」
「大きく分けて、ふたつだな。自動で動く魔法と、魔力を極限まで収束した魔法だ」
ミルラたちの意見を参考にするのは、まあ間違っていないはず。というか、他にいい案も思いつかないんだよな。
それに、なんだかんだで闇魔法以外にも応用できそうだし。結果的に、ブラック家やその仲間たちの強化につながるはず。
総合的に考えて、身に付けられれば確実に良いことが重なるんだ。
「寝てる間もってなると、外部で何かを補わないと話にならないわよ」
「まあ、そうだよな。やはり魔道具に頼るのが正解か」
「分かっているのなら、後は実行するだけよね? ね、バカ弟」
ちょっとあごを上げながら、優しい目で見てくる。こういう目をしてくれるから、心からカミラの愛情を信じられるんだ。
前に俺を守ろうとしてくれたことが、最大の証明ではあるが。
なんだかんだで、ずっと俺を愛してくれていた。そうだよな、カミラ。
「ああ。今度こそ、姉さんを傷つけさせたりしない」
「余計なお世話ってものよ。……でも、ありがとね」
「大好きな姉さんのためなんだから、当たり前だ」
「ほんと、ナマイキ。いつの間に、そんな言葉を覚えたのかしら……」
髪をいじって、そっぽを向いている。いつの間にというか、割とよく言っている気もするが。好意を口にするのは、ずっと意識してきたことなのだし。
それはそれとして、まあ口説くみたいな言葉でもあるな。そのあたりを言われているのだとすると、口をつぐむしかないが。
「まあ、割と昔か……? 父さんの機嫌を取るためには、言い回しが大事だったし」
「それを、女を落とすために利用してるってわけ。……ほんと、バカね……」
細い目で見られている。俺は目をそらすばかり。すると、もっとじっとりとした目で見られた。
完全に、俺が悪いとしか言いようがない。とはいえ、針のむしろな気もして悲しくもあるが。
「ま、まあ……否定は、できないが……」
「でも、良いわ。あんたがどれだけバカだろうと、あたしのすることは変わらない」
そっと、俺の頬に触れてきた。慈しむように、優しく。カミラの気持ちが、何よりも伝わるほどに。
「それって……」
「一度しか言わないから、よく聞いておきなさい」
まっすぐに、俺のことを見ている。決して、目を離さなかった。同じくまっすぐに、俺はカミラに向かい合う。
何を言われるのだとしても、最高に嬉しいに決まっている。だって、今のカミラはとてもきれいなのだから。
「もちろんだ。なんでも聞かせてくれ」
「……大好きよ、レックス」
ささやくように、告げられた。それだけで、生きていて良かったとすら思えた。
「もちろん、俺もだ。姉さんのことは、ずっと大好きなままだ。これまでも、これからも」
「……はあ。なんで、こんなバカなやつを……」
頬をかきながら、ため息をついている。それを見ながら、俺は笑顔になっていた気がする。
だから、絶対に新技を完成させてみせる。そんな決意が、あらためて深まっていった。