物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

683 / 683
682話 愛情の言葉

 やはり、敵の攻撃はだんだん苛烈になってきている。いよいよ、俺に本格的に試練を与えようとしているらしい。

 実際、夜なんかに襲いかかってくることはなくなった。明らかに、俺がいる時を狙い撃ちにしている。

 

 ということは、次の段階に進めということ。そんな予感を覚えつつ、まだ編み出せないままでいた。

 

雷闇合一剣(ディヴァインブレイド)!」

 

 カミラとの合一で、ひたすら敵を殺し続ける。空間内に入り込んだ敵を、一切合切斬り裂いて。

 魔力を振り絞りながら、どこまでも倒す。それで、今回の戦いは終わった。

 

 とはいえ、そろそろ合一だけでは足りなくなりそうだ。いい加減に次の手を出せという、ミレアルの催促なのだろうな。

 

「……かなり、手間取ったな……」

「さすがに、否定できないわね……。まったく、面倒なものよ」

 

 カミラは腰に手を当ててため息をついている。俺も合わせたいくらいだ。ミレアルは、毎回俺をかなり追い詰めようとしてくる。

 フィリスとの合一や、魔力を使わずに空間を斬る剣技。それらを編み出せなければ、あっけなく敗れていただろう。

 

 今回も、カミラやメアリと合一できなかったら危険だった。そして、もう足りなくなりそうになっている。

 

「ミレアルの試練は、ここから激しくなってきそうだな」

「ええ。あたしたちの技だけじゃ、そろそろ足りなくなりそうだもの」

 

 カミラも同じ結論なようだ。真剣な顔をしているし、本気で危機感を覚えているらしい。まあ、俺も同じ気持ちだ。

 万が一にも、仲間たちを失うわけにはいかないのだから。それだけは、絶対に許してたまるものか。

 

「そうなると、別の手段が必要になってくるな」

「あたしの新技じゃ、まだ足りなかったものね……」

 

 カミラの新技は、以前の試練なら完勝できていたほどの技だと思う。空間内の敵を即座に皆殺しにするような、圧倒的な技なのだから。

 まあ、魔法を封じられたら無力ではあるか。とはいえ、本来ならばフィリスにだって通用するほどの技だと思う。

 

 それこそ、以前までの俺なら手も足も出ずに負け続けていたはずだ。だからこそ、歯噛みしたくもなる。

 

「根本的には、ミレアルがその気になれば俺達は潰されるんだろうとは思う」

「ま、そうね。バカにされてるとしか思えないけど、都合もいいわ」

 

 カミラは鼻で笑っている。リアリスト的な思考だな。俺も見習いたいところだ。

 実際、バカにされていると怒ったところで、状況が改善するわけでもない。ミレアルが手加減しているという現状を、なるべく利用するのが正しいはず。

 

「実際、そのおかげで成長できている部分もあるからな。誰が最後の敵かを考えたら、自作自演じみてもいるが」

「だからって、やられっぱなしはシャクだもの。何をどうするかは、あたしが決めるわ」

 

 カミラは気炎を燃やしている様子。実際、正しい思想だろう。ただ相手に振り回され続けるだけじゃ、勝てるものも勝てない。

 最終的には、意志が物を言う。自分の手で未来を切り開くという決意がなければ、厳しい試練は乗り越えられないのだから。

 

 やはり、カミラは尊敬できる姉だ。言葉こそ悪いものの、きっと誰よりも強い信念を持っている。

 

「俺だって、諦めたりするつもりはない。姉さんと同じようにな」

「ナマイキよ、まったく。バカ弟は、それで良いんでしょうけど」

 

 呆れたような目で見てきた。まあ、肯定されてもいるのだろう。本気で嫌なことなら、もっと拒絶するのがカミラだからな。

 そういう意味では、かなり接しやすい。表向きのツンケンは、普通に親愛の証でもある。嫌いな相手には、そもそもまともに話もしないんだから。

 

 本人に言えば怒られそうだが、とても分かりやすいツンデレというか。

 

「褒め言葉として受け取っておくよ。しかし、どうしたものか……」

「何をするかで悩んでるわけじゃないんでしょ? だったら、答えはひとつよ」

 

 そうだな。どうやって魔法を使うかとか、いつまでに魔法を使うかとかの話だ。新しい魔法を身につけるということは、悩んでいない。

 なら、まっすぐ進むのが一番だな。結局のところ、為さねばならない。

 

「そうだな。なんとしても、俺は新しい魔法を身に着けてみせる」

「ようやくバカ弟らしくなってきたわね。それで? どんな魔法を考えてるわけ?」

「大きく分けて、ふたつだな。自動で動く魔法と、魔力を極限まで収束した魔法だ」

 

 ミルラたちの意見を参考にするのは、まあ間違っていないはず。というか、他にいい案も思いつかないんだよな。

 それに、なんだかんだで闇魔法以外にも応用できそうだし。結果的に、ブラック家やその仲間たちの強化につながるはず。

 

 総合的に考えて、身に付けられれば確実に良いことが重なるんだ。

 

「寝てる間もってなると、外部で何かを補わないと話にならないわよ」

「まあ、そうだよな。やはり魔道具に頼るのが正解か」

「分かっているのなら、後は実行するだけよね? ね、バカ弟」

 

 ちょっとあごを上げながら、優しい目で見てくる。こういう目をしてくれるから、心からカミラの愛情を信じられるんだ。

 前に俺を守ろうとしてくれたことが、最大の証明ではあるが。

 

 なんだかんだで、ずっと俺を愛してくれていた。そうだよな、カミラ。

 

「ああ。今度こそ、姉さんを傷つけさせたりしない」

「余計なお世話ってものよ。……でも、ありがとね」

「大好きな姉さんのためなんだから、当たり前だ」

「ほんと、ナマイキ。いつの間に、そんな言葉を覚えたのかしら……」

 

 髪をいじって、そっぽを向いている。いつの間にというか、割とよく言っている気もするが。好意を口にするのは、ずっと意識してきたことなのだし。

 それはそれとして、まあ口説くみたいな言葉でもあるな。そのあたりを言われているのだとすると、口をつぐむしかないが。

 

「まあ、割と昔か……? 父さんの機嫌を取るためには、言い回しが大事だったし」

「それを、女を落とすために利用してるってわけ。……ほんと、バカね……」

 

 細い目で見られている。俺は目をそらすばかり。すると、もっとじっとりとした目で見られた。

 完全に、俺が悪いとしか言いようがない。とはいえ、針のむしろな気もして悲しくもあるが。

 

「ま、まあ……否定は、できないが……」

「でも、良いわ。あんたがどれだけバカだろうと、あたしのすることは変わらない」

 

 そっと、俺の頬に触れてきた。慈しむように、優しく。カミラの気持ちが、何よりも伝わるほどに。

 

「それって……」

「一度しか言わないから、よく聞いておきなさい」

 

 まっすぐに、俺のことを見ている。決して、目を離さなかった。同じくまっすぐに、俺はカミラに向かい合う。

 何を言われるのだとしても、最高に嬉しいに決まっている。だって、今のカミラはとてもきれいなのだから。

 

「もちろんだ。なんでも聞かせてくれ」

「……大好きよ、レックス」

 

 ささやくように、告げられた。それだけで、生きていて良かったとすら思えた。

 

「もちろん、俺もだ。姉さんのことは、ずっと大好きなままだ。これまでも、これからも」

「……はあ。なんで、こんなバカなやつを……」

 

 頬をかきながら、ため息をついている。それを見ながら、俺は笑顔になっていた気がする。

 

 だから、絶対に新技を完成させてみせる。そんな決意が、あらためて深まっていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

幼少期の頃に好感度が最大値な美少女たちと色んな約束を交わしている主人公は成長した末に最強に至る。ヤンデレヒロイン、現代異能剣戦ファンタジー(作者:三流木青二斎)(オリジナル現代/冒険・バトル)

病弱な肉体のまま不遇の死を迎え、次に目を覚ませば赤ちゃんになっていた。▼普通の世界とは違い、異能レベルの剣術を扱う斬人が存在する世界で、人を脅かす化物、祅霊や、刀を使い悪事を働く妖刀師を討伐する抜刀官を目指す。▼その際に師匠の娘や義理の妹と出会い、何時の間にか将来を約束し合う仲に……。▼転生した主人公は抜刀官を目指していく。▼米 他サイトにて転生抜刀官と言う…


総合評価:2860/評価:8.29/連載:38話/更新日時:2026年03月07日(土) 16:13 小説情報

死に別れENDばかりのゲームに転生しました。(作者:超高校級の切望)(オリジナルSF/冒険・バトル)

前世で大好きだったゲームに転生したよ。大好きだけどさ………この世界に転生したいとは思わないのよ。人死にすぎるだろこの世界。せめてチートくれチート。


総合評価:11811/評価:8.43/連載:42話/更新日時:2025年01月03日(金) 18:00 小説情報

世界の為に推しとの恋愛を諦めようとしたらヤンデレ化された件(作者:赤坂緑語)(オリジナル現代/冒険・バトル)

この世界が前世でプレイしていた悪魔とエクソシストの殺し合いで年中ヒャッハーしている鬱エロゲームの世界であると気が付いたその日、僕は恋人になってくれた彼女に告げた。▼「ごめん……別れて欲しい」▼ 彼女はこの世界を主人公と共に救うメインヒロインだと知ってしまったから。あとは主人公と一緒に何とか世界を救ってほしいと願っていたんだが――▼「逃がさないよ。絶対に、絶対…


総合評価:19744/評価:8.76/連載:96話/更新日時:2026年08月16日(日) 22:00 小説情報

夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~(作者:サッドライプ)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

或いは異世界転移して閉じ込められた遺跡ダンジョンで意味深に封印されていた眠り姫を勝手に脳内彼女にしていちゃこらする妄想電波を毎日垂れ流していたら実は意識があったので全部聞かれていた話。▼「はい♪あなた様が言っていた恋人同士の睦み合い、全部ぜーんぶやりましょうね!!」「え゛」▼脱出不可能なダンジョンに放り出されてモンスターとバトるか可愛い美少女を眺めるかしかや…


総合評価:6076/評価:8.75/連載:52話/更新日時:2026年08月19日(水) 06:31 小説情報

和風陰陽師漫画の終盤で死ぬ親友枠に転生した俺はどうすりゃいいですか?(作者:鬼怒藍落)(オリジナル現代/冒険・バトル)

一般和風好き転生者VS曇らせと理不尽と絶望▼ファイ!▼カクヨムにも出します


総合評価:4267/評価:7.98/連載:42話/更新日時:2026年05月07日(木) 07:10 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>