物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
また、ミレアルの使徒が襲いかかってきた。今回は、ジュリアと一緒に出る。
気合い十分といった感じで、まずはジュリアが先行した。
「
魔力を剣に収束させて、一気に解き放つ。その爆発が、敵を飲み込んでいった。正確無比なコントロールによって、敵以外には被害を出していない。
同時に、1000体近くいそうな敵を一瞬で薙ぎ払っていた。やはり、単純な威力では無属性の右に出るものはいなさそうだな。
「ずいぶんと、威力が上がったんじゃないか? 俺も、負けていられないな」
「レックス様は、なるべく見てて!
今度は剣に魔力を収束させたまま、足や背中から魔力を放出して高速移動。
魔力を込めた剣の大きさもあって、敵をまとめて切り裂いていく。複数の技で、一気に敵を倒しているみたいだ。
無属性の特性である、単純な出力。それを放出にも使っているということ。
カミラ並みの速度で、まともな手段では目で追うこともできない。やはり、強い。
「さすがはジュリア。しっかりと応用できて………うん?」
何かが頭によぎったような気がした。とはいえ、それについて考えている余裕はない。ひとまず魔力を集中しながら、ジュリアの様子を見る。
今はまだ、問題なく敵を倒せていそうだ。
「まだまだいくよ!
ジュリアが敵を消し飛ばしたら、次の敵は現れてこなかった。念のために周囲を探っても、それらしい気配はない。
「……もう終わりみたいだな。今回は、だいぶ軽めだったらしい」
「レックス様、なんか変な顔してたよね。なにかあった?」
首を傾げながら、ジュリアは問いかけてくる。そういえば、もう戦いが終わったんだから考えて良いんだよな。
ジュリアも気にしているみたいだし、素直に答えていいか。
「いや、何かが思いつきそうな感覚があってな」
「なるほどね。レックス様の考えを、邪魔させたくなかったのかな?」
最近攻撃が激しくなってきた割には、今回は手ぬるいくらいだった。戦力が尽きたとは考えづらい。たぶん、無限だと思うくらいでちょうどいいはず。
そうなってくると、ジュリアの考えが正しいと言えそうだ。
「つまり、おそらく次の襲撃あたりが……」
「レックス様の新技を試す機会になるかも、なんて」
逆に言えば、その時までに新技を生み出せていないとまずい。現場で生み出すこともあり得るだろうが、博打は避けたいからな。
とはいえ、ミレアルは意図的にギリギリのタイミングを狙ってきそうな気はする。フィリスとの合一の時と言い、空間を斬る一撃と言い、とにかく技を編み出さなければ危険だった。
いずれにせよ、ここからが正念場ということ。本気を出すべき局面だ。
「まあ、その可能性は高そうだよな……」
「レックス様は、どんなことを考えてるの? 聞かせてよ」
「うまく言葉にできないんだが……。なんか、収束と放出の差が気になった感じだ」
「ああ、集めた魔力を一気に解き放つ感じのこと?」
ジュリアの言う感じは近いとは思うのだが、まだ喉元に何かが引っかかったような感覚がある。
この感じを言葉にできれば、一気に正解に近づけそう。そんな予感があるのだが。
ひとまず、思いつくことから順番に言葉にしていこう。
「それで言うと、たぶん収束したまま放出できないかみたいな……」
「
なるほど。斬撃を飛ばすことはあったが、別のアプローチだな。魔力の刃そのものを飛ばすのは、フィリスから学んだ俺の初めての魔法。
遠隔で制御することを考えると、遠くから何本も撃つとか?
なんか、しっくりこない。
「大体合っている気はするんだが、ちょっと違う気もするんだよな……」
「その疑問が解決したら、新しい技につながるんだよね」
「まあ、何も成果が出ない可能性もあるが。ただ、ミレアルの動きからして……」
「わざわざ不正解に誘導する感じじゃなさそうだよね。僕も同感だよ」
そこまでミレアルの性格が悪いのなら、もっと早い段階でいくらでも俺を詰ませられた。俺を殺したいだけなら、他にいくらでも手段がある。
もっと言えば、ただ同時に全員を襲うだけでいい。それだけで、俺の心を折ることはできる。
だからこそ、ミレアルの試練からは意図を感じるということ。今回も、同じなのだろうな。
「となると、もうちょっと突き詰めるべきだな」
「うん。魔力を飛ばすだけじゃダメってことは、飛ばした先で動かすとか?」
ああ、遠くでしっかりと刃を動かすのは、ミルラたちに提案されたことそのもの。遠隔で魔法を制御するという発想の根本だ。
困った時には、基礎に立ち返る。そういう観点からしても、深堀りすべきだろう。
「それは確かに良いな。
「レックス様みたいに、僕も空間を斬ってみたいよね。
「確かに、遠くからでも空間を斬れたら便利だな……。いや、そうか!」
遠隔で魔法を制御するというのなら、遠くでも俺が戦うのと同じことができるのが強み。そういうこと。
俺の持っている手札は、転移と通話と魔道具。そう。魔道具を基準点にできる。魔道具に勝手に魔力を動かさせつつ、俺の魔力を吸い上げさせる。
そうすることで、最低限の自動化はできる。同時に、もっと高度な制御も楽になるはずだ。スポーツで機械が制限されている理由そのもの。人間が本来できること以上ができるからだ。
「なにか思いついたの?」
「ああ! これなら、もっと強い技として撃てるかもしれない」
「良かった。レックス様のお役に立てたのなら、何よりだよ」
ジュリアは柔らかく微笑んでいる。俺の役に立てたのが、本当に嬉しいらしい。そこまで慕われているのは、ありがたいこと。
これまでだって、ずっと慕ってくれていた。その分、しっかりと感謝を示さないとな。
「ありがとう、ジュリア。お前のおかげだ」
「どういたしまして。なんて、ただ話を聞いていただけだけど」
頬をかきながら返してくる。褒められるのには、そこまで慣れていないのかもしれない。だったら、慣れるまで褒め続けてやらないとな。
俺がどれだけジュリアのことを大事に思っているか、すごいと思っているか。全力で伝えてやる。
「色々と案も出してくれたじゃないか。本当に感謝している」
「そっか……。ふふ、いいね。こういうの、嬉しいかも」
ジュリアは両手を胸の前で握って、そっとはにかんでいる。とてもきれいに見えた。
「今回も、ミレアルを打ち破ってみせるさ。ジュリアと紡いだ技で」
「僕も負けていられないや。すぐに追いついてみせるからね、レックス様」
絶対に、新しい技を完成させてみせる。ジュリアのために、みんなのために。