物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
新技についての取っ掛かりを得て、考えることしばらく。いつも通りに使徒を倒しながら、日常を過ごしていた。
そんな中で敵を一度倒して、気配が消えて剣を収める。
瞬間、あらゆる場所に気配が現れだした。どう考えても、1ヶ所に集まっていない。それどころか、ブラック家の端から端まで使徒の気配を感じるという有様。
「これは……ブラック家の中に使徒が現れたのか!?」
ついに、ミレアルの試練が本格化したらしい。今こうしている間にも、おそらく敵は動いている。それだけ。
「いま、やるしかない。いくぞ」
ただ、敵の居場所だけに集中する。味方の様子は、あえて無視した。気を取られていたら、それこそ最悪の事態を招く。
どこに敵がいるか。それだけを感じて、魔力を集中させていく。
幸い、ブラック家のあらゆる場所に魔力は侵食させている。そこを通して魔力を送り込めば良い。
魔道具も、複数ある。魔法の効果が発動するように、魔力を送り込めば良い。
ただ、やり遂げるだけ。俺は刃の形にした魔力を、あらゆる敵に向けて飛ばしていった。
「
魔力の刃を操り、空間を斬り裂いていく。敵だけを殺せるように、わずかなブレすら許すことなく。
半分は魔道具に制御を委ね、残りの半分だけで刃を動かす。刃の形に、魔道具が魔力を成型していく。俺は、ただ魔力を振り回すだけでいい。
自動化まではいかなかったが、これならブラック家の中全体で刃を振り回していても集中は途切れない。
ただ剣の動きだけに集中するのは、シンプルに勢いだけを意識するだけでいいから。
後は、魔力が尽きる前に敵を一掃できれば勝ち。できなければ負け。それだけ。
だが、俺には魔力バッテリーに注ぎ込まれた魔力もある。そう簡単に終わると思うなよ。
「さあ、ミレアル。我慢比べといこうじゃないか。俺は、絶対に負けない」
敵味方の気配を探りながら、ひたすらに敵が現れたところに斬撃を放ち続ける。そうしているうちに、味方の動きも見えてくるようになった。
カミラたち戦闘要員も、使徒たちを倒しているらしい。なら、少しは魔力を調整できるかもしれない。
出し惜しみすぎて犠牲者が出るのは論外だが、消費が多すぎてもまずい。とにかく、カミソリ1枚分の調整が求められるな。
ひとまずは、連携する意志を見せるところからだ。
「姉さん、そっちはどうだ!?」
「問題ないわ。ひとまず、殺し続けるだけよ」
ジャンやミルラ、モニカを守りながら剣を振っているらしい。おそらくは、任せて問題ないだろう。
なんだかんだで、カミラも家族を大切に思っているみたいだ。安心できるな。
雷撃が広がっていくのを感じながら、俺は残りの気配を探っていく。
「メアリ、問題ないか?」
「大丈夫なの! メイドさんたちを、しっかり守ってあげるの!」
アリアやウェスだけでなく、他のメイドたちも守っているらしい。やはり、優しい子だ。
暴走する時もあったし、無邪気な残酷さを感じさせる瞬間もあった。それでも、誰かを守るということを知っている。
だから、きっともっと立派になっていくはずだ。
凝縮されて制御された竜巻が動くのが、遠くから伝わってきていた。
「ジュリア、まだいけるか?」
「僕の仲間たちは……傷つけさせたりしないから!」
ジュリアはサラやシュテル、そして学校もどきの仲間たちが魔道具を運用しているのを守っている様子。
戦力という意味でも、絆という意味でも、かなり良い配置のはずだ。
ジュリアが魔力を細かく制御しながら味方への影響を最低限に抑えているのが、よく分かる。
少ない敵には魔力を収束して切り裂き、まとまった敵には魔力を解放して吹き飛ばす。
それでいながら、サラたちの士気は乱れていない。今もまだ、俺の魔力を操作してくれているのだから。
「サラ、シュテル。魔道具の支援、感謝する」
「抱っことナデナデ。それだけでいい」
「レックス様のためならば、どんな困難も乗り越えてみせます!」
サラもシュテルも、的確に指示を飛ばしている。まあ、タイミングよく支援が来るからというだけで、指揮の良さなど判別がつかないのだが。
とはいえ、俺の魔力を使ってうまく敵を妨害したり倒したりしてくれている。本当にありがたい。
おかげで、今のところはそこまで多くの負担がなくて済んでいる。
幸い、マリンたち研究組もうまく魔道具を使ってくれている様子だからな。ひとまず、状況は安定している。
「非戦闘員の避難、順調に進んでございます」
「兄さんも、これで狙いやすくなったんじゃないですか?」
「ミルラ、ジャン。本当に助かる。あとは、任せろ!」
とりあえず、することがない人は1ヶ所に集まっているようだ。つまり、俺は味方を巻き込まないように配慮しなくて済むということ。
もちろん屋敷や設備に対する配慮は必要なのだが、動かないだけでだいぶマシだ。
つまり、俺はもっと素早く敵を倒せるようになったということ。
「魔道具、もっと送るのです!」
「ここで全部吐き出すつもりで、やるからね」
「レックス様のために、全力で行くよー!」
「マリン、ソニア、クリス。お前たちがいなければ、今頃……」
俺の魔力を使って、転移を活用してくれている。魔道具を敵の居場所に送って、俺が楽をできるように。
今回だって、魔道具がなければ乗り越えられなかっただろう。きっと、すでに犠牲者が出ていたはずだ。
俺はただひたすらに、みんなの取りこぼしを狩り続ける。
「ご主人さま、帰ったら温かい食事が待ってますからねっ」
「皆さんにも、しっかりと休んでいただきましょう」
「危険な中で、本当にありがとう。だから、絶対に守り抜いてみせる!」
今も、できるだけ最小限の動きで食事を作っている様子。使徒を打ち破った先のためにも、大事な役割を果たしてくれている。
温かい食事が待っていると思えば、活力になるはず。
直接戦闘に関わらなかったとしても、こうして俺達の力になってくれている。やはり、みんな最高だ。
だから、俺はただ魔法を放ち続けるだけ。限界を迎えるまで、ずっと。
「レックス。あなたならば、できますわ。疲れた時には、甘えにいらっしゃい」
「ああ。モニカが支えてくれたおかげで、今があるんだ」
今もまた、みんなに頼り続けている。家族はカミラに任せ、メイドたちはメアリに、生徒たちはジュリアに。
魔道具の運用ではサラやシュテルが。実際に作ったのはマリンやクリスやソニア。
そして、ミルラやジャンが俺の戦いやすい環境を作ってくれている。
アリアやウェスは、俺の日常を守り続けてくれている。
任せるべきところは任せて良いんだと、モニカこそが教えてくれた。
だから、残りの全部を俺がやる。やってみせる。魔力を振り絞りながら、もっともっと収束していく。
根幹を断てば、きっと終わる。そう信じて、どこまでも魔力を収束していく。
空間が歪むのを感じた。俺はただ、その先に斬撃を放っていく。正解だと、心の奥底から確信できていた。
「さあ、限界を超えろ! これが、
使徒が送られる根源、リブラ教国。その首都に、斬撃が叩き込まれる感覚があった。
同時に、使徒たちは現れなくなっていく。俺達の、勝ちだ。
もう一度敵の気配を確認して、何もいないのを確認する。
その瞬間、爆発的な気配が目の前を中心に広がっていく。圧倒的な魔力に、世界そのものが震えるのを感じた。
「よくぞ、我が試練をここまで乗り越えました。我が愛し子、レックス」
ただ、声だけが届く。顕現してもいないのに、恐ろしく強大な魔力を感じる。宇宙そのものが凝縮したかとすら感じるような、途方もない膨大さ。
そんな空前絶後の力を、声の先に感じていた。
「お前は……!」
女神ミレアル。俺に試練を与え続けた宿敵が、ついに直接干渉してきたらしい。