物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
ミレアルから接触があり、ブラック家の仲間たちにも伝わっていた。ミレアルが敵であることなんて分かっていたから、混乱はないも同然ではあったのだが。
とりあえず被害確認をしながら状況をまとめていると、レプラコーン王国の王女姉妹から通話が来た。
何かあったのかもしれないし、すぐに出る。
「レックス君、久しぶりね! ミレアルとの話、聞いていたわよ!」
「まさか、伴侶としてレックスさんを求めているとは……。厄介極まりないですね」
ミーアとリーナの話によると、どうにも王女姉妹にもミレアルの話は伝わっていたようだ。
その割にはいつも通りにミーアは明るく、リーナは皮肉っぽく話しかけてくれる。落ち着いた様子でいるようで、かなりありがたい。
まあ、ミレアルが敵であることは、俺の仲間はみんな知っているからな。改めて混乱するほどではないのだろう。
とはいえ、伴侶として求めているという情報はリーナの言う通りに厄介極まりないが。困ったものだ。
「ああ。ミーアたちにも聞こえていたとなると、他もか? ちょっと、つなぐぞ」
ひとまず、それぞれの国の主に通話を飛ばしていく。状況が状況だからなのか、一瞬すら待つことはなかった。
「レックス様、見事な宣言でした……。我々は、ミレアルになど屈しませんから……」
「まあ、めんどーを通り越して最悪だけどー。どうせ、敵になりそうだもんねー」
スコルピオ帝国の騎士団長と宰相、ユフィとロニアは強い意志を示している。なんだかんだで、戦うものとしての誇りがあるのだろう。
まあ、今の状況にとっては都合が良い。心が屈しているようなら、考えることが増えていたからな。
「うふふ、レックス様を味方にしていたおかげですね~。リブラ教国は、大変そうです~」
サジタリウス聖国のニッカは、相変わらず余裕たっぷりといった様子。エルフたちをまとめる狡猾さあってのことなのか、とにかく落ち着いている。
まあ、平気で俺を利用して振り回してきた女だからな。ミレアルが敵であったとしても、その状況を利用するだけか。
なにせ、ニッカはミレアルが敵であることを今回の前に知っていた。だから、備えるだけの時間はあったはずだ。ニッカほどの策略家が、何もしていないはずがない。
「世界全部を敵に回すなんて、ミレアルもすごいもんだよ。私もびっくりさ」
アリエス連邦のピリカは、驚いているような口調の中に冷静さを感じる。まあ、ことさらに新情報を叩きつけられたわけでもないか。
普通の生活とは程遠くなってしまうだろうが、今は我慢してもらうしかない。
とにかく、ミレアルに勝たないことには俺達の平穏はないんだ。
「ひとまず、状況はどうだ? それが分からないと、対処は難しそうじゃないか?」
「まあ、混乱しているわよね。レックス君を排除しようだとか、むしろ信仰しようだとか」
「絶望している人もいるようです。すでに自殺者すら報告されている有様で」
本当に混乱しているというのが、よく分かる。一神教の神が世界を敵に回すと宣言したのだから、当然と言えば当然なのだが。
俺を排除しようというのは、まあ分かる。ミレアルの敵として、戦うことを示したわけだからな。
だが、信仰というのはどういう話だ? いや、ある意味では都合が良いんだが。そうでもないか? 親しくもないシュテルと考えれば、かなり困るかもしれない。
いずれにせよ、民衆にも影響が出ていることは間違いない。
「そんな状況でも連絡してきたということは、やはり今すぐ方針をまとめたいんだな?」
「私たちの方も、状況はよろしくありません……。ただ、レックス様への敵意は少ないですね……」
「まあ、怯えるような戦士がバカにされてたりとかー? 当たり前といえば当たり前だけどー」
帝国に関しては、やはり力がすべてということか。俺がミレアルに勝てるのなら、もっと支持されるのかもしれない。
ユフィとロニアは帝国では指折りの強者だし、そういう意味でも楽な方と言えるだろう。
まあ、だからといって問題は発生するもの。どこまで手を出せば良いものやら。
「そう簡単に価値観が変わるはずもないか……。やはり、人心掌握が必要か」
「サジタリウス聖国では、不穏分子はほとんど片付いていましたから~。現状は、安定していますね~」
ミレアルの使徒は排除したし、ニッカの政治的な敵もおそらく排除されている。となると、ニッカの支配は安定しているわけか。
味方でも油断できないし、敵になったら厄介極まりない。それでも、今は心強いことこの上ないな。
「ミレアルへの信仰が強いやつは、俺への刺客に使われたと。ある意味では幸運だったわけか」
「私たちも、そこは似たようなもんだね。妥当ってものさ」
ピリカもなんだかんだで立ち回りはえげつないからな。現状、一番厳しいのは王国というわけか。
そして、二番手が帝国。なら、優先順位は明らかだな。
「そうなると、まずは王国を安定させるのが最優先になりそうだな。帝国も並行すべきではあるが」
「いえ、私たちでできる限り対処してみます……。対応策は、ありますので……」
「これまでのめんどーが、今になって役に立ってきたねえ」
ふむ。ふたりができると判断したのならば、本当にできるのだろう。なんだかんだで、しっかりと成長していたのか。
こうしてふたりの活動を思うと、感慨深くもあるな。
「なら、ひとまずは王国を優先するということでいいな。もうひとつ、ある」
「私たちの技術を、どこまで解放するかということですね~」
「イルミナの剣は、私たちが技術を教えても限度があるってもんだけども」
やはり、ニッカは話が早い。ピリカもよく考えてくれている。そこが大きな問題だ。
魔道具は、大きく広めれば絶対に混乱を巻き起こす。銃以上のものになることは、間違いない。
イルミナの剣にしたって、魔法の常識を変えるようなものだからな。剣という立場に収まらないというか、下手したら兵器並みの結果を出しかねない。
だとしても、今は出し惜しみしている余裕なんてないだろう。
「ひとまず、ミレアルの試練を乗り越えられなければ話にならない。だから……」
「みなまで言わないでください、レックスさん~。霊樹も、尽きない範囲で限界まで出しますので~」
ニッカが協力してくれるのなら、かなりありがたい。霊樹を尽きさせないためにも、バランスは大事ではあるが。その範囲で全力を尽くすのは、共通の見解になってくれたようだ。
「私たちの魔力も、最大限に使うことになりそうね! 忙しくなるわ!」
「方針は決まったので、まずは現状の対応に移りますね。レックスさんも、頑張ってください」
ひとまず、見えてきた。ミレアルに勝つためにも、だからこそ一歩一歩足場を固めていかないとな。