物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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688話 試練に向けて

 ミレアルから接触があり、ブラック家の仲間たちにも伝わっていた。ミレアルが敵であることなんて分かっていたから、混乱はないも同然ではあったのだが。

 とりあえず被害確認をしながら状況をまとめていると、レプラコーン王国の王女姉妹から通話が来た。

 

 何かあったのかもしれないし、すぐに出る。

 

「レックス君、久しぶりね! ミレアルとの話、聞いていたわよ!」

「まさか、伴侶としてレックスさんを求めているとは……。厄介極まりないですね」

 

 ミーアとリーナの話によると、どうにも王女姉妹にもミレアルの話は伝わっていたようだ。

 その割にはいつも通りにミーアは明るく、リーナは皮肉っぽく話しかけてくれる。落ち着いた様子でいるようで、かなりありがたい。

 まあ、ミレアルが敵であることは、俺の仲間はみんな知っているからな。改めて混乱するほどではないのだろう。

 

 とはいえ、伴侶として求めているという情報はリーナの言う通りに厄介極まりないが。困ったものだ。

 

「ああ。ミーアたちにも聞こえていたとなると、他もか? ちょっと、つなぐぞ」

 

 ひとまず、それぞれの国の主に通話を飛ばしていく。状況が状況だからなのか、一瞬すら待つことはなかった。

 

「レックス様、見事な宣言でした……。我々は、ミレアルになど屈しませんから……」

「まあ、めんどーを通り越して最悪だけどー。どうせ、敵になりそうだもんねー」

 

 スコルピオ帝国の騎士団長と宰相、ユフィとロニアは強い意志を示している。なんだかんだで、戦うものとしての誇りがあるのだろう。

 まあ、今の状況にとっては都合が良い。心が屈しているようなら、考えることが増えていたからな。

 

「うふふ、レックス様を味方にしていたおかげですね~。リブラ教国は、大変そうです~」

 

 サジタリウス聖国のニッカは、相変わらず余裕たっぷりといった様子。エルフたちをまとめる狡猾さあってのことなのか、とにかく落ち着いている。

 まあ、平気で俺を利用して振り回してきた女だからな。ミレアルが敵であったとしても、その状況を利用するだけか。

 

 なにせ、ニッカはミレアルが敵であることを今回の前に知っていた。だから、備えるだけの時間はあったはずだ。ニッカほどの策略家が、何もしていないはずがない。

 

「世界全部を敵に回すなんて、ミレアルもすごいもんだよ。私もびっくりさ」

 

 アリエス連邦のピリカは、驚いているような口調の中に冷静さを感じる。まあ、ことさらに新情報を叩きつけられたわけでもないか。

 普通の生活とは程遠くなってしまうだろうが、今は我慢してもらうしかない。

 

 とにかく、ミレアルに勝たないことには俺達の平穏はないんだ。

 

「ひとまず、状況はどうだ? それが分からないと、対処は難しそうじゃないか?」

「まあ、混乱しているわよね。レックス君を排除しようだとか、むしろ信仰しようだとか」

「絶望している人もいるようです。すでに自殺者すら報告されている有様で」

 

 本当に混乱しているというのが、よく分かる。一神教の神が世界を敵に回すと宣言したのだから、当然と言えば当然なのだが。

 俺を排除しようというのは、まあ分かる。ミレアルの敵として、戦うことを示したわけだからな。

 

 だが、信仰というのはどういう話だ? いや、ある意味では都合が良いんだが。そうでもないか? 親しくもないシュテルと考えれば、かなり困るかもしれない。

 

 いずれにせよ、民衆にも影響が出ていることは間違いない。

 

「そんな状況でも連絡してきたということは、やはり今すぐ方針をまとめたいんだな?」

「私たちの方も、状況はよろしくありません……。ただ、レックス様への敵意は少ないですね……」

「まあ、怯えるような戦士がバカにされてたりとかー? 当たり前といえば当たり前だけどー」

 

 帝国に関しては、やはり力がすべてということか。俺がミレアルに勝てるのなら、もっと支持されるのかもしれない。

 ユフィとロニアは帝国では指折りの強者だし、そういう意味でも楽な方と言えるだろう。

 

 まあ、だからといって問題は発生するもの。どこまで手を出せば良いものやら。

 

「そう簡単に価値観が変わるはずもないか……。やはり、人心掌握が必要か」

「サジタリウス聖国では、不穏分子はほとんど片付いていましたから~。現状は、安定していますね~」

 

 ミレアルの使徒は排除したし、ニッカの政治的な敵もおそらく排除されている。となると、ニッカの支配は安定しているわけか。

 味方でも油断できないし、敵になったら厄介極まりない。それでも、今は心強いことこの上ないな。

 

「ミレアルへの信仰が強いやつは、俺への刺客に使われたと。ある意味では幸運だったわけか」

「私たちも、そこは似たようなもんだね。妥当ってものさ」

 

 ピリカもなんだかんだで立ち回りはえげつないからな。現状、一番厳しいのは王国というわけか。

 そして、二番手が帝国。なら、優先順位は明らかだな。

 

「そうなると、まずは王国を安定させるのが最優先になりそうだな。帝国も並行すべきではあるが」

「いえ、私たちでできる限り対処してみます……。対応策は、ありますので……」

「これまでのめんどーが、今になって役に立ってきたねえ」

 

 ふむ。ふたりができると判断したのならば、本当にできるのだろう。なんだかんだで、しっかりと成長していたのか。

 こうしてふたりの活動を思うと、感慨深くもあるな。

 

「なら、ひとまずは王国を優先するということでいいな。もうひとつ、ある」

「私たちの技術を、どこまで解放するかということですね~」

「イルミナの剣は、私たちが技術を教えても限度があるってもんだけども」

 

 やはり、ニッカは話が早い。ピリカもよく考えてくれている。そこが大きな問題だ。

 魔道具は、大きく広めれば絶対に混乱を巻き起こす。銃以上のものになることは、間違いない。

 イルミナの剣にしたって、魔法の常識を変えるようなものだからな。剣という立場に収まらないというか、下手したら兵器並みの結果を出しかねない。

 

 だとしても、今は出し惜しみしている余裕なんてないだろう。

 

「ひとまず、ミレアルの試練を乗り越えられなければ話にならない。だから……」

「みなまで言わないでください、レックスさん~。霊樹も、尽きない範囲で限界まで出しますので~」

 

 ニッカが協力してくれるのなら、かなりありがたい。霊樹を尽きさせないためにも、バランスは大事ではあるが。その範囲で全力を尽くすのは、共通の見解になってくれたようだ。

 

「私たちの魔力も、最大限に使うことになりそうね! 忙しくなるわ!」

「方針は決まったので、まずは現状の対応に移りますね。レックスさんも、頑張ってください」

 

 ひとまず、見えてきた。ミレアルに勝つためにも、だからこそ一歩一歩足場を固めていかないとな。

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