物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう   作:maricaみかん

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689話 家族の時間

 ブラック家の復旧に、王国との連携。そして技術共有。やるべきことは多いが、ひとつひとつこなしていくしかない。

 結局のところ、地道にこなしていくことが最短距離であることが多いんだよな。

 

 ということで、各所に相談しながら話を進めていく。そんな中で、モニカが軽い食事会のようなものを開いてくれることになった。

 まあ、状況が状況なので、家族で本当に軽いものになっているらしいのだが。

 

 それで用意された一室に向かうと、いつもより豪華な食事があった。といっても、そこまで贅沢なものでもないが。

 現状で用意できる範囲で、できる限り良いものを用意してくれたのだろう。

 

 みんなはこっちを向いて、視線を感じながら席につく。そして、ゆっくりと座っていった。

 

「レックス、こういう時ほど落ち着くことが大事ですわよ」

 

 モニカも、俺と似たようなことを考えていたらしい。それでも呼ばれるということは、焦りが出ていたのだろう。

 実際、焦りは本当に良くない。変な失敗につながることが多いからな。

 

 やはり、モニカは俺のことをよく見てくれているな。前に甘えさせてもらった時と同じだ。

 

「それで、家族みんなを集めたのか? ありがとう、モニカ」

「ま、たまには良いんじゃないの? バカ弟も、疲れたでしょうし」

「メアリはお兄様とお話できて嬉しいの! いろいろ、聞いてほしいな」

 

 カミラは相変わらずツンデレじみた対応だし、メアリは元気いっぱいに甘えてくる感じ。

 こういう日常の価値は、最近より強く感じているところだからな。やはり、モニカに誘ってもらえたのはありがたい限りだ。

 

 実際、カミラやメアリも過酷な戦いを続けていたからな。まあ、他のみんなも同じなんだが。

 意識してみんなが休める場を用意するのも、大事かもしれない。

 

 どの道、みんなが全力を出せないと負けるだろうからな。無理したところで、そこまでメリットはないか。

 

「みんなも休めるんなら、それも大事だからな。息が詰まるのは、大変だ」

「実際、仕事ばかりでは効率が下がりますからね。初期に検証したことです」

 

 そういえば、ブラック家の状況を改善するために、ジャンの意識を変えることを言った記憶があるな。

 確か、道具を使う時にちゃんと手入れするみたいな話だったか? だから、本当に人を道具と思うのなら酷使は論外だって感じだったような。

 

 なら、俺たち自身にも当てはまる話か。自分の言葉を、改めて突きつけられている。なんて言えば大げさか。

 

「お兄様、これおいしいの!」

 

 メアリは元気よくご飯を食べている。笑顔が満開という感じで、そういう顔が見られるだけでも嬉しい限りだ。

 とりあえず、俺も楽しんでいこう。

 

「だったら、俺も同じものをもらおうかな……」

「悪くないわね。問題の後にしては、かなりよくできているわ」

 

 そうなんだよな。食材にも設備にもダメージがある中で、豪華だと思えるレベルの食事が出てくるんだから。

 本当に、ありがたいことだ。ずっと、俺はみんなに支えられているな。

 

「メイドたちにも、感謝しないといけないな。しっかり休んでもらうのも大事だし」

「レックス。こういう時ばかりは考え事を捨てるのも必要ですわよ」

 

 まあ、それもそうか。ウェスやアリアなら、俺が楽しむことを喜んでくれるはず。難しいことを考えるより、後でしっかり恩返しするのが良い。

 とにかく今は楽しむ。それがみんなのためだ。

 

「ああ、悪い。せっかくの食事が、まずくなりかねないものな」

「気にすることはありませんわよ。反省も、楽しくありませんもの」

「ま、バカ弟がバカなのは今更よね」

 

 とりあえず、楽しむことで良さそうだ。カミラの言い回し的には、許してくれるって話だろうし。

 ツンデレだと分かっていると、かなり読み取りやすいよな。

 

「お兄様はとっても素敵なの! ね、お兄様」

 

 首を傾げて聞いてくるんだが、本当に困る。自分で肯定したら、もうナルシストじゃないか。

 

「俺本人に聞かれて、なんと返すのが正解なんだ……?」

「兄さんはよく追い詰められていますよね。同じ状況にはなりたくないものです」

「ジャンまで……!? 俺の味方はどこだ!?」

「もちろん、わたくしは味方ですわよ」

「ずるい! メアリだって、お兄様の味方だもん!」

 

 モニカはニマニマとしながら言っているし、分かっていてからかってきている。

 むしろ困るのが、純粋に慕ってくれるメアリの方だ。ただ俺が好きでいてくれるのは分かる。分かるが、だからこそ追い詰められている。

 純粋さが敵になると、こうも恐ろしいのか。震えてしまいそうだ。

 

「はいはい。好きに言ってればいいでしょ。あたしには関係ないわ」

「もしかして、姉さんだけが俺の味方だったりするか……?」

「兄さん、面白いですね。その解釈はありませんでした」

 

 ジャンまで本気でからかってくる有様。本当に、どうするのが正解なんだこれは?

 いや、たぶんリアクションを取っていれば良いんだが。そういうの、慣れていないぞ。

 

「それこそ、好きに思ってればいいわ」

「カミラも女ということですわね。ふふ、いいですわよ」

「お兄様、メアリのことは信じてくれないの?」

 

 メアリは目を揺らしながら俺のことを見てくる。ああ、失言だった。メアリは純粋に慕ってくれているんだから、それを否定するのはまずい。

 とはいえ、あの状況で肯定していたら、もっと追い詰められていた気がするんだよな……。

 

 もしかして、正解がそもそもないタイプの状況だったか?

 

「ちゃんと大好きだから、安心してくれ」

「レックスの意図が分かっていないうちは、まだまだですわね」

 

 モニカは余裕の笑みを浮かべている。理解してくれるのは嬉しいんだが、メアリを煽っていないか?

 いや、まあそこまで煽るような顔はしていないし、冗談ではあるのだろうが。

 

 昔が昔だったから、なんか怖いんだよな。全体的に。

 

「敵扱いされてたやつの言うことじゃないわよね……」

「あらあら、余裕ですこと。うふふ、強敵ですわね」

「メアリだって、負けないんだから!」

 

 かなり言葉をぶつけ合っているが、お互いにそこまで睨み合っている感じではない。

 昔だったら、きっともっとバチバチしていたはずだ。そういう意味では、かなり安心だな。

 

 とはいえ、エスカレートする前には抑えておきたいが。

 

「おいおい、仲良くしてくれよ?」

「ええ、それはもちろん。ねえ、みなさん?」

「お兄様を困らせたりはしないの!」

「あたしはいちいち面倒なことしたりしないわよ……」

 

 昔だったら、ここでみんなが引いてくれたりしなかった気がする。メアリが頬を膨らませたり、カミラが睨みつけながら皮肉を言ったり、そういう流れだった感じ。

 それが今はちょっと鞘当てする程度で済むんだから、助かる。

 

「らしいですよ、兄さん」

「まあ、安心できるか……。前はもっと胃が痛かったからな……」

「お兄様、今は大丈夫なの?」

「ああ、もちろんだ。だから、みんな仲良くしてくれると嬉しい」

「うふふ、努力いたしますわよ。可愛いレックスのために、ね」

 

 モニカが視線を向けて、みんなも頷いていた。

 この調子で、また家族で仲良くする時間を作れたら良いな。

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