物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
ブラック家の復旧に、王国との連携。そして技術共有。やるべきことは多いが、ひとつひとつこなしていくしかない。
結局のところ、地道にこなしていくことが最短距離であることが多いんだよな。
ということで、各所に相談しながら話を進めていく。そんな中で、モニカが軽い食事会のようなものを開いてくれることになった。
まあ、状況が状況なので、家族で本当に軽いものになっているらしいのだが。
それで用意された一室に向かうと、いつもより豪華な食事があった。といっても、そこまで贅沢なものでもないが。
現状で用意できる範囲で、できる限り良いものを用意してくれたのだろう。
みんなはこっちを向いて、視線を感じながら席につく。そして、ゆっくりと座っていった。
「レックス、こういう時ほど落ち着くことが大事ですわよ」
モニカも、俺と似たようなことを考えていたらしい。それでも呼ばれるということは、焦りが出ていたのだろう。
実際、焦りは本当に良くない。変な失敗につながることが多いからな。
やはり、モニカは俺のことをよく見てくれているな。前に甘えさせてもらった時と同じだ。
「それで、家族みんなを集めたのか? ありがとう、モニカ」
「ま、たまには良いんじゃないの? バカ弟も、疲れたでしょうし」
「メアリはお兄様とお話できて嬉しいの! いろいろ、聞いてほしいな」
カミラは相変わらずツンデレじみた対応だし、メアリは元気いっぱいに甘えてくる感じ。
こういう日常の価値は、最近より強く感じているところだからな。やはり、モニカに誘ってもらえたのはありがたい限りだ。
実際、カミラやメアリも過酷な戦いを続けていたからな。まあ、他のみんなも同じなんだが。
意識してみんなが休める場を用意するのも、大事かもしれない。
どの道、みんなが全力を出せないと負けるだろうからな。無理したところで、そこまでメリットはないか。
「みんなも休めるんなら、それも大事だからな。息が詰まるのは、大変だ」
「実際、仕事ばかりでは効率が下がりますからね。初期に検証したことです」
そういえば、ブラック家の状況を改善するために、ジャンの意識を変えることを言った記憶があるな。
確か、道具を使う時にちゃんと手入れするみたいな話だったか? だから、本当に人を道具と思うのなら酷使は論外だって感じだったような。
なら、俺たち自身にも当てはまる話か。自分の言葉を、改めて突きつけられている。なんて言えば大げさか。
「お兄様、これおいしいの!」
メアリは元気よくご飯を食べている。笑顔が満開という感じで、そういう顔が見られるだけでも嬉しい限りだ。
とりあえず、俺も楽しんでいこう。
「だったら、俺も同じものをもらおうかな……」
「悪くないわね。問題の後にしては、かなりよくできているわ」
そうなんだよな。食材にも設備にもダメージがある中で、豪華だと思えるレベルの食事が出てくるんだから。
本当に、ありがたいことだ。ずっと、俺はみんなに支えられているな。
「メイドたちにも、感謝しないといけないな。しっかり休んでもらうのも大事だし」
「レックス。こういう時ばかりは考え事を捨てるのも必要ですわよ」
まあ、それもそうか。ウェスやアリアなら、俺が楽しむことを喜んでくれるはず。難しいことを考えるより、後でしっかり恩返しするのが良い。
とにかく今は楽しむ。それがみんなのためだ。
「ああ、悪い。せっかくの食事が、まずくなりかねないものな」
「気にすることはありませんわよ。反省も、楽しくありませんもの」
「ま、バカ弟がバカなのは今更よね」
とりあえず、楽しむことで良さそうだ。カミラの言い回し的には、許してくれるって話だろうし。
ツンデレだと分かっていると、かなり読み取りやすいよな。
「お兄様はとっても素敵なの! ね、お兄様」
首を傾げて聞いてくるんだが、本当に困る。自分で肯定したら、もうナルシストじゃないか。
「俺本人に聞かれて、なんと返すのが正解なんだ……?」
「兄さんはよく追い詰められていますよね。同じ状況にはなりたくないものです」
「ジャンまで……!? 俺の味方はどこだ!?」
「もちろん、わたくしは味方ですわよ」
「ずるい! メアリだって、お兄様の味方だもん!」
モニカはニマニマとしながら言っているし、分かっていてからかってきている。
むしろ困るのが、純粋に慕ってくれるメアリの方だ。ただ俺が好きでいてくれるのは分かる。分かるが、だからこそ追い詰められている。
純粋さが敵になると、こうも恐ろしいのか。震えてしまいそうだ。
「はいはい。好きに言ってればいいでしょ。あたしには関係ないわ」
「もしかして、姉さんだけが俺の味方だったりするか……?」
「兄さん、面白いですね。その解釈はありませんでした」
ジャンまで本気でからかってくる有様。本当に、どうするのが正解なんだこれは?
いや、たぶんリアクションを取っていれば良いんだが。そういうの、慣れていないぞ。
「それこそ、好きに思ってればいいわ」
「カミラも女ということですわね。ふふ、いいですわよ」
「お兄様、メアリのことは信じてくれないの?」
メアリは目を揺らしながら俺のことを見てくる。ああ、失言だった。メアリは純粋に慕ってくれているんだから、それを否定するのはまずい。
とはいえ、あの状況で肯定していたら、もっと追い詰められていた気がするんだよな……。
もしかして、正解がそもそもないタイプの状況だったか?
「ちゃんと大好きだから、安心してくれ」
「レックスの意図が分かっていないうちは、まだまだですわね」
モニカは余裕の笑みを浮かべている。理解してくれるのは嬉しいんだが、メアリを煽っていないか?
いや、まあそこまで煽るような顔はしていないし、冗談ではあるのだろうが。
昔が昔だったから、なんか怖いんだよな。全体的に。
「敵扱いされてたやつの言うことじゃないわよね……」
「あらあら、余裕ですこと。うふふ、強敵ですわね」
「メアリだって、負けないんだから!」
かなり言葉をぶつけ合っているが、お互いにそこまで睨み合っている感じではない。
昔だったら、きっともっとバチバチしていたはずだ。そういう意味では、かなり安心だな。
とはいえ、エスカレートする前には抑えておきたいが。
「おいおい、仲良くしてくれよ?」
「ええ、それはもちろん。ねえ、みなさん?」
「お兄様を困らせたりはしないの!」
「あたしはいちいち面倒なことしたりしないわよ……」
昔だったら、ここでみんなが引いてくれたりしなかった気がする。メアリが頬を膨らませたり、カミラが睨みつけながら皮肉を言ったり、そういう流れだった感じ。
それが今はちょっと鞘当てする程度で済むんだから、助かる。
「らしいですよ、兄さん」
「まあ、安心できるか……。前はもっと胃が痛かったからな……」
「お兄様、今は大丈夫なの?」
「ああ、もちろんだ。だから、みんな仲良くしてくれると嬉しい」
「うふふ、努力いたしますわよ。可愛いレックスのために、ね」
モニカが視線を向けて、みんなも頷いていた。
この調子で、また家族で仲良くする時間を作れたら良いな。