物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう 作:maricaみかん
王女である私は、レックス君たちと協力しながらレプラコーン王国の復興に動き出すことになったわ。もちろん、レックス君の手を借りる以前からは動いていたのだけれど。
ただ、被害が多くて調べるための人員すら死んでいたりもしたのよね。多くの貴族が死んだことで、機能不全を起こしているところは多かった。
敵が死んだことで指揮系統を大きく一本化できたのは大きいけれど、味方という態度を取っているから良いかと言われればそうでもないわ。
特に厄介なのが、見栄を張るために報告をごまかすような人ね。正確な状況がつかめなければ、正しい指示はできない。
裸の王様にならないためにも、私たちは適切になるように調査を進めていたわ。
リーナちゃんにも手伝ってもらって、かなり正確に現状はつかめたと思う。逆恨みも覚悟して、私たちの手で多くの問題を解決もしたりね。
少数派とは言え、塵も積もれば山となる。面子を潰した相手は、そこそこの数になったわ。敵対するようなら徹底的に殺すつもりではあったけれど、今のところは動いていない様子。
結果としては、やっぱり一番頼れる仲間はレックス君ということになってしまうわね。
「今の状況は、私にとっては悪くないのよね」
あくまで、私個人としては。どれだけ多く見積もっても、私の友達にとっては。レプラコーン王国にとっては、必ずしも良いとは言えない状況でしょう。
むしろ、多くの混乱が起きていると言ってもいい。多くの悲劇が起きていると言ってもいい。
けれど、私の心は痛んだりしない。王族として生きると決めた時から、誰に犠牲を押し付けるかを選ぶと覚悟していたのだもの。
幸いにも、国民の不幸に対処する手段はある。明確な問題は、王族によって解消できる。
むしろ、何の問題もなく平穏であるよりも都合が良いとすら言えるの。だって、民が問題を認識して、私たちがそれを劇的に解決できるのだもの。
民衆というのは、愚かなもの。本当に良き政治を行われているのならば、その良さを正しく認識できない。自分が栄達できないことを、王や領主のせいとして生きていく存在。
例えば、他国の脅威。盗賊の出現。大規模な自然災害。そこからの手配によって救われて、初めて政府の必要性を認識する民は珍しくもなんともないわ。
もっと言えば、不可避の災害まで領主や王族のせいにする愚か者もいる。さらにひどいところだと、適切な解決策を妨害する民までいる。これまでの自分を崩したくないと、ただの怠惰で。
だからこそ、民というのは支配者が管理しないといけないの。民に自分の意志なんて、過分なのよ。
ただ、私たちが手のひらで転がす。そうあるべきなのよ。
「レックス君の影響力が高まったおかげで、結婚はむしろ求められているのだもの」
民意というものは、厄介なものよ。無視すれば、うねりとなって広がっていく。やがて、王の立場すらも危ぶませるもの。
適切に情報を操作して、思考を制御し続けなければいけない存在。
ただ、逆に有用な場面もある。貴族の論理を、民意という力で押し通すこともできるのだもの。バカとハサミというのは、本当に使いようよね。
私たちが結婚することは、民の望みとなっている。だからこそ、従うしかないのよ。
「だからこそ、レックス君と協力するだけで政治的立ち回りにもなるわ」
順調に、距離を縮めていると。世界に大きな影響力を与えられると。そう示すことができる。実際に、他国とも協力して発展させていくのだもの。
新たな技術、新たな力。多くの革新が待っている。民の生活は、確実に進歩していく。
「この状況で足を引っ張ろうとするものは、もはや周囲が許さない」
ミレアルの動きもあって、私はミレアルの使徒が何をしたかを噂として流した。ひたすらに暴虐を働いて、周囲を皆殺しにしようとしたと。
そう。うかつに怪しい行動をすれば、民を殺そうとしているとみなされるように。国への裏切りとみなされるように。
私たちが支配を深めるための条件を、だんだん深めていくだけ。それだけよ。
「レックス君には悪いけれど、ミレアルに感謝してしまいそうなほどよ」
私にとっては、本当に都合が良い状況だから。私の願いに一歩一歩近づけているという手応えがあるから。
レックス君と幸せな結婚をする未来は、確かに目の前に広がっているの。
「ただ、まだ終わりじゃない。油断なんてできる状況じゃないわ」
そもそも、ミレアルに負けてしまえば終わり。確実にレックス君は奪われてしまう。愛し子だなんだと、伴侶だなんだという狂った女神に。
だから、絶対にミレアルには勝たないといけないわ。たとえどんな手段を使おうと、絶対によ。
「レックス君との幸せな未来のためにも、レプラコーン王国は大事にしないとね」
生産力としても、外堀としても。魔道具もあれば、戦力にもつながるもの。単に魔力が補給できる装置があるだけで、ミレアルとの戦いでは役に立つ。
だから、私の民は大事に大事にしてあげないといけないわ。しっかりと幸福を与えてあげないとね。私の手で踊るという幸福を。
「今のところは、素直に効率的な手段を選ぶだけでいいけれど」
ミレアルに勝つために、全力を尽くしていけば良い。女神の宣戦布告は、誰もが聞いていたのだから。
今だけは、世界にとって共通の敵がいる。足を引っ張り合う余裕なんて、ないほどに。きっと、それでも敵は出てくるのでしょうけれど。ミレアルに従おうとする愚か者や、ミレアルの脅威を軽んじる愚か者が。
でも、今は強硬手段に出ても民意はむしろ熱を持つ。最大の好機でもあるわ。
「ミレアルとの戦いが終わった後には、また敵も現れるでしょう」
自分の立場を高めようとするもの。利益を求めるもの。そして、現状に不満を持つもの。他国を敵とするのが難しくなる世界で、舵取りは同様に難しくなるわ。
だからこそ、今のうちにできることはしておかないとね。
「その時のために、初動で潰す手段も整えておける」
レックス君の手も借りて、未来のために。
「ルースちゃんが作った監視網は、私にとっても有効だもの」
闇魔法の通信を使って、監視と始末を実行する。まだそこまで広くないけれど、ミュスカちゃんの手も借りて同様の措置を進めているわ。
私に逆らうものは、許さない。許してあげない。そうでないものには、相応の幸福を与えましょう。
民という資源は、適切に使わなければ腐るだけ。だから、ちゃんと手入れをしないとね。
「魔道具を求める人が増えれば増えるほど、私の支配は完成していくの」
魔道具によって、利便性を手放せなくなる。その結果として、侵食された闇の魔力も広がっていく。私たちがいかようにでもできる環境が、段々と広がっていくのよ。
そう。魔道具を武力として求めるのならば、その魔道具そのものが裏切るのだから。もはや、反乱の準備ですら私たちの手の上。
完璧な支配が、やがて完成するはずよ。
「そのためにも、しっかりと魔道具を作っていかないといけないわ」
孤児たちには、よく報酬を与えましょう。幸せな生活ができるように、こまめに。熱心に働いてくれさえすれば、もっと幸せにしてあげましょう。
その結果として、私たちの幸福も広がっていくのよ。
「王国の誰も、私に逆らえない。そうなるように、努力していかないとね」
もちろん、魔道具に頼るだけでは弱いわよね。あらゆる手段を使って、支持を高めていかないといけないわ。
民に与える情報を適度に管理して、適度に愚かでいてもらいましょう。
「できるだけきれいな理想を掲げて、輝いた私を見せましょう」
民が私を求めるように、しっかりとね。
「その先にこそ、本当の幸せが待っているんだわ」
レックス君と結ばれて、私たちが隣で笑い合う。そして、私に従順な民を増やしていくのよ。
「リーナちゃんも、同じよね。ふふ、楽しみね」
だから、待っていてね。
ねえ、レックス君。