寒空の咎人   作:摩虎羅

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氷の夜叉は俗世の爪弾き

逸話は残れど誉れは非ず、されども世俗の元に生きながらえる

神に拒まれ故郷を去り、行き着く先に安寧はなし



俗世から見た彼

 

「今回ご歓談頂きますのは古くより語り継がれる邪仙のお話、護法夜叉に名を連ねながらも犯した悪行は数知れず。後世に伝わる業とその罰をこの一刻を持って皆様に語り聞かせましょう」

 

男は大きく手を振って語る、観客を巻き込み世界に引き入れるように、言葉を紡ぐ。

 


 

璃月を今尚見守る三眼五顕仙人。

その中でも位が高く高貴なる護法夜叉。

彼ら彼女らに名を連ねるその仙人の名は誰も知らず、伝聞には火車大将と記され、後に火車邪仙と蔑まれることとなるほどの数多くの悲劇を生みました。

 

彼が起こした悪逆のその最たるものは『同族殺し』でしょう。

火車大将は夜叉の仲間、その家族にも等しき者が戦いの果てに苦しみ叫ぶ様を見て嘲笑し、その者に決闘を挑んだ末に命を奪ったと言われています。

その心臓を貫いた際の彼の顔には笑みが浮かび、決闘が終わればその興味を失ったとばかりに亡骸をその場に残して去ったとされます。

 

悲劇は留まるところを知らず、次に記される悲劇は『魔神の惨殺』。

火車大将は、争いを好まず逃げ続ける塩の神とその民を僻地まで追い込み、その後彼女らが暮らす安住の地へ踏み込みその女神を惨殺したとされます。

魔神の死の余波により逃げ遅れた無辜の民達は呪いに侵されその場で命を落とし、火車大将はその呪いを受け一線から退きました。

 

 

岩王帝君は言いました。

「貴様のその様は見ていられない、契約は既に果たされた。何処へなりとも去るが良い」と。

帝君に見放され、璃月を去った火車大将のその後は様々伝わり、その一説を今回はお話し致しましょう。

 

彼は他国へ発ち、そこで平穏に生きようとしました。

しかし運命はそれを許さず彼は戦いの日々を強いられます。

そして魔神の呪いに蝕まれたままの彼は満足に戦うことも儘ならず、傷付き踠き安寧のない世界で苦しみ続けています。

 


 

「これで火車邪仙と呼ばれる仙人のお話は終わりです、ご清聴頂きありがとうございました。彼の末路は様々な説が飛び交い此度はその中で私が最も有力だと感じたものをお話ししました。文献を調べますと中々に解釈が難しく、皆様方も是非お調べになりご自分なりの解釈で後世へ語り聞かせて下さいませ」

 

講談者はそう言い放ち話を終わらせる。観客は邪仙の話を聞きそれを憂う者、我が事のように怒る者、無関心な者、興味深そうな者に分かれた。

 

それらは皆よい印象を抱いておらず、その光景を見る往生堂客郷は憂いの念を抱いていた。

 

「そうか...彼の物語はこのような形で紡がれるのだな...金華よ...君はこれを見てどう思うのだろうか...」

 

彼の呟きは誰の耳にも止まらず。氷柱に伝う水のように、喧騒の中を冷ややかに流されていった。

 


 

そのような感情を人々に抱かれ、疎まれ続けるその男は現在。

 

「あ〜つ〜い〜」

 

「室内でそれならこの村じゃもうどうしようもないよ」

 

絹のようにきめ細やかな短い髪を風に靡かせ、花にも宝石にも似つかない美しさを持った青い瞳を潤ませる。

女性と見紛う可憐な容姿をしながらも声は中世的であり、そのどちらとも見合わない怠け切った態度で、小さな村の家の中、川で冷やされた果実を食べ舌鼓を打ちながら寝転がり、隣人に甘えていた。

 





続くかも
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