寒空の咎人   作:摩虎羅

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文字数多くなっちゃった



異邦人から見た彼

 

「帝君が殺害された!この場を封鎖しろ!」

 

え?

 

私の頭の中には疑問符だけが生まれた。

白髪の人の号令ですぐに出口が塞がれ、周りの人達もどよめき出す。

パイモンが慌てふためいた後に口を開いた。

 

「い、一体なにがあったんだ!?

  今、『帝君が殺害された』って...

  まさか岩神が...し、死んだ!?」

 

取り乱すパイモンを見て心が落ち着いた。

彼女もひとしきり状況を整理できたのか辺りをキョロキョロと見回す。

 

「あっ、あれって『千岩軍』だぞ!現場近くの怪しいヤツを取り調べしてるみたいだ...」

 

見回すと至る所で取り調べが行われている。封鎖、見回り、取り調べの3班に分かれているらしい。

 

「こ、怖いな。犯人がこの近くにいるなんて...」

「あれ...?オイラ達もその現場近くにいた怪しい者ってことにならないか!?」

 

岩神は龍の姿で現れたから人の姿の時の容姿は分からない。

あの時の敵かもしれない。

相手の信者に囚われるわけにはいかない...

 

そう思い振り向いた時、背中に強い冷気を感じた。

気付けば後ろだけではなく、辺り一体が極寒のような寒さになる。

反射的に後ろを振り返り冷風の発信源を見つめる。

 

「うぅ...す、すごく寒いぞ...それになんだ?あの煙の中の人影...たしかあそこは岩王帝君が落ちてきた場所だよな?」

「分からない。でも...」

 

嫌な予感がする。

氷で出来た霧が晴れ、中にいた人物が顕になる。

コートのような外套で身体を包み、雪のように白い髪がフードの中に垣間見える。鬼の面を付けた少年が厳かで恐ろしい雰囲気を纏っている。

 

「その仮面は...邪仙!」

 

先程祭事を行っていた女の人がそう言い放つ。

『邪仙』...聞いたことがない。

ただ、良くないものなのは確かなんだろう。

パイモンもそれを察してか、いそいそと私の後ろへ隠れる。

 

「火車邪仙...貴方なのですか、岩王帝君を殺害したのは!」

 

氷風を纏う彼へ殺意が向けられる。

千岩軍もまた、彼の存在感に気圧されなかった一部が槍を構え彼を見据える。

 

「...」

 

鬼面の少年は何も喋らず、岩神の死体へ歩み寄り膝をついた。

何かを確かめるように岩神の身体に触れる。

 

「な、何をする気なんだアイツ...?」

 

少年は触れている手をどけて立ち上がり、再び氷風で身を包んだ。

氷風が勢いを増していき影も映さなくなった後、嘘のようにその場から風が去り、そこに少年の姿はなくなっていた。

少年が風を纏うなか数瞬だけ、こちらを見ていたような気がした。

 

目まぐるしく変わっていった状況に呆けていた女性が立ち上がり、声を張り上げ命令を下す。

 

「まだこの近くにいるはずよ!一部の兵を残し他は璃月港を捜索しなさい!ここは引き続き封鎖しなさい!邪仙はここで捕えるわ!」

 

命令を聞くのと同時に兵士が動き出す。

先程現れた仙人を捕らえようとして警備に回っていた人達が離れて行ったみたいだ。

 

「あばば...な、なんかすごいことになっちゃったぞ!どうするんだ!?」

「捜索に手を回してるから今は警備が手薄なはず。行こう、ここを離れないと」

「そ、そうだな。千岩軍もピリピリして殺気立ってるし、ただでさえ怪しいオイラ達は捕まったらひどい拷問される可能性も...うひぃ...」

 

パイモンは自分で想像して自分で怖がっている。

パイモンが言うような拷問はない可能性が高いけど尋問ぐらいならいくらでもあり得る。

誘導される可能性もあれば数時間繋ぎ止められる可能性もある。

今の非常時にそうなってしまえば次のアクシデントが起きた時に後手に回る可能性が高い。

 

ゆっくりと警備の兵士の視線をくぐり抜け、この場から抜け出そうと歩き出す。

思っていたよりも多くの人員を港に向かわせていたらしく、出口付近までは楽に移動できた。

そして引き続き進もうと立ち上がり歩を進めた時、靴から音が鳴ってしまい近くにいた兵士に気付かれた。

 

「奴らはあそこだぞ!捕まえろ!」

 

その言葉を聞くと同時に私とパイモンは走り出した。

階段を駆け下り、身体の体勢を崩しながらカーブを曲がる。

しかし先程の兵士の声が届いていたようで、正面から槍を持った兵士が現れ、追いついてきた兵士と共に挟まれ、両方向から槍を向けられる。

 

「逃すか!」

 

宣告と共にこちらへ向かってくる兵士に対して剣を抜き、応戦しようとした時に後ろから気配を感じた。

 

「お嬢ちゃん、動かないで」

 

言葉の後に水元素を纏った矢が3本現れ、目の前の兵士を打ち抜いた。

後ろから現れた男が得物を弓から双剣へ持ち替える。

青い双剣を構えた男はそれを振るい、集まっていた千岩軍を無力化していく。

 

「おい!こっちだぞ!」

 

新しい兵士が来るようだ、一刻も早く逃げないといけない。

顎に手を据え逃げる方法を考えていると、またも後ろからやってくる気配がして振り返る。

 

空色の鶴が現れた。元素視覚で確認すればそれが氷元素で形作られた物であると分かる。

その鶴が私の後ろに立つ形で着地すると、鶴は私の股下に首を突っ込んだ。

 

「!?」

 

見た目に見合わぬ力で持ち上げられ、そのまま背に乗せられる。

鶴はそのまま翼を広げ羽ばたき、両足を使って先ほど現れた男の肩を鷲掴みにして飛び立つ。

 

「え?うわぁっ!?」

「ちょ、ちょっと待ってくれよぉ!」

 

乗り遅れそうになったパイモンに向かい手を伸ばし、パイモンがその手を取る。

鶴はそのまま上空を飛び、西へ向かい緑が生い茂る場所へ運ばれる。

男は鶴が地面に向かう前に、自分から落ちて地面へ着地した。

鶴が地面に降り立ったため、私も鶴から降りて辺りを見回す。

 

「初めまして、で良いのかな?何やら困ってそうだから手を貸したんだけど」

 

白髪碧眼の美少女がいた。

 

「僕のことはシヘイと呼んでくれ。さて、次は君たちの名前と何故逃げていたかが知りたいかな」

 

金属質な白い胸当てと籠手、スカートにもショートパンツにも見える腰当ての鎧を身に纏い、インナーとして腹部を黒い薄手の布で覆っていて腹部の形がクッキリと見える。また、籠手の下にも同じ素材のインナーがあり、手先が黒く映る。脚は白い厚手のタイツで覆っておりタイツと腰当ての間からチラリと肌色が見える。

モンドや璃月ではあまり見ない格好だ。

 

「オイラはパイモン!こっちは旅人だ!」

「俺はタルタリヤ。感謝するよ、助けてくれて」

 

パイモンに紹介されたので礼をした。

この人はタルタリヤって言うんだ。『助けた』と言っているけれど彼は元々追われていたわけではなく、私と千岩軍の間に割り込んできた身から何かある気がする。

しかし今するべきは先程の質問への返答だろう。

 

「実は...」

 


 

 

迎仙儀式が始まってから終わるまでの出来事を伝えた。

 

 


 

「なるほど、ふむ、大体は把握してる通りかな。僕の意識にあまり齟齬は無さそうだ」

 

彼女はウサギと戯れながら語っていく。

そのウサギもまた、鶴と同じで彼女が氷元素で生み出したものだった。

見た目がすごくフワフワで私も触りたい。

 

「さてと、君の質問に答えたんだからこっちからも質問したいんだけど...」

「別にお前は答えてないぞ...」

「ははっ、まぁ細かいことは気にしないで。それよりも聞きたいのは『何で君がこんなことをしたか』なんだよね、話に聞く限りじゃ君が目的なしにこんなことする奴には思えないからさ」

「んぁ?コイツのこと知ってるのか?」

「うーんと...まぁね」

 

「何故助けたか、か...確かに君は気になるだろうね。でもパイモンの言う通り、君はまだ何も答えていない。だから先に同じ質問に答えてもらおうか。何故、君は彼女を兵士から助けようとしたんだい?」

「なるほど、そう来るか...まぁ、言っても構わないよ。それは僕の身内が彼女に迷惑をかけたからさ」

 

「身内?」

「そう、君たちは『淑女』に会っただろう?俺はファデュイ執行官の『公子』だからね」

 

その言葉を聞き、私は剣に手をかける。

睨み付けていると彼は私の敵意など知らぬ顔で戯けた調子で話を続ける。

 

「お前、ファデュイの執行官だったのか!」

「ああ、そう怖い顔しないで。別に喧嘩を売りにきたわけじゃないんから」

 

そう言われても信用は出来ない、ファデュイとは組織ぐるみで悪どい存在だ。その中での執行官であれば尚更悪辣な可能性が高い。

 

「ふむ、どうやら『淑女』が君たちに与えた悪い印象は想像以上みたいだね。俺もあの女のことは好きじゃないんだよ。ひとまずあの女のしたことは忘れてくれ。俺は君たちを助けに来たんだよ、先に助けられちゃったけど」

「ファデュイの助けはいらない。どっか行って」

「冷たいな。俺は別に悪い奴じゃな...いや、悪いやつか。まぁいい、とにかく君たちと敵対したいわけじゃないから『とりあえずコイツを倒す』って思考は隅に置いといてくれないかな?」

 

タルタリヤの弁明の一考し構えを解く。

信用したわけじゃない。聞く価値はあると判断した。

 

「ははっ、サンキューな騎士さん。君のモンドでの噂は知っていたからね。さっきの儀式中少し君を観察していた。だから君が怪しくないことは俺が保証出来る。邪仙と繋がっている線は薄いだろう。とは言っても俺はファデュイだから俺の発言は信用してもらえないどころかむしろ君たちを怪しませてしまうだろうね、七星は常に俺たちを疑惑の眼差しで見てくる」

「それはファデュイが悪いと思うけど」

「はははっ!それは否定した方が良いのかな?」

 

この執行官は口がよく回るらしい。

小さい子供に話しかけるように言葉に抑揚を付けながら常に明るく接してくる。

 

「なるほど、タルタリヤ君のことはある程度分かったよ。さて、僕に言われた質問の答えだが...まぁ先ほど言ったことが全てだよ。強いて言うのならば、僕があの状況で助けず、無実の君達が苦しんだとしたら、僕は『自分のせいで君たちが苦しんだ』と思ってしまうからだね」

「なるほど、存外お人好しなんだね」

 

柔和な苦笑を浮かべるシヘイと、先程見たのと全く同じ笑みを浮かべる公子。

公子に向かい懐疑的な視線を送っていると声が聞こえてくる。

 

「確かこっちの方角だったよな」

「俺は右から回って探す、お前は左から回れ、残ったお前は待機だ」

「分かった、何か見つかったら報告する」

 

どうやら先の千岩軍がここを捜索しに来たようだ。私たちは中腹に位置する場所にいるため比較的すぐ見つかるだろう。

 

「さてどうする?また追いかけっこをするのかい?」

「いや?ここはこの子たちに任せよう」

 

そう言い放った彼女は地面を蹴るように踏み付ける。

その衝撃に呼応するように地面から氷元素で形作られた空色の蛇と鼠が現れる。

彼女は出てきた動物達の身体を一撫でして先程の千岩軍の元へ向かわせる。

 

「殺すの?」

「いいや?眠ってもらうだけだよ。後でお腹は壊すかもね」

 

「も、もうオイラ何がなんだか分からなくなってきたぞ...」

 

私もそう思う、結局この人達は動機は教えてくれたけど何をしようとしているか、何をこっちにさせたいかは一切言っていない。

 

「ふふっ、そうだね。回りくどい説明は抜きにして結論から話そう。君たち2人...いや、1人と1匹?には僕と一緒に絶雲の間に行って仙人と会ってもらうよ」

 

「せ、仙人?」

「そう、仙人。必要な物はタルタリヤ君が持ってるはずでしょ?君も彼女達に同じことさせようとしてたんだから」

 

シヘイが横目に公子を見遣ると公子は一瞬驚いた顔をして、すぐに元の笑みを取り戻す。鼻息を吐きながらポケットへ手を伸ばし懐から一枚の紙を取り出した。

 

「はいはい。全く、見せ場をとことん潰してくれるね」

「早い方が良いからね。ほら、それを彼女に渡して」

「分かってるよ、はいこれ」

 

何かが書かれた札のようだ、内容は読み解けない。

 

「この札は?」

「これは俺の伝手で入手した物でね、『禁忌滅却の札』と言って三眼五顕仙人が君達に危害を加えなくなるっていう札だよ」

「それがあればいくら不敬をしても許されるってわけだね。まぁあんまり怒らせると友達とかに危害が及ぶ可能性もあるけど」

「おい!それだと意味がないじゃないかっ!」

「ははっ、あの子が言ったのは極端な例だよ。基本は問題ないさ」

 

禁忌滅却の札を使えば仙人に会える、でも何のために?

 

「色々聞きたいことはあるだろうけど、それは道中話すよ。まぁ中には言えないこともあるだろうけどね。とりあえず絶雲の間へ急ごう。タルタリヤ君はお留守番して七星の相手をしてね」

「はいはい、分かってるよ」

 

彼女は歩き出す、後ろ姿のまま手を挙げ、人差し指を動かして彼女に付いて行くよう促してくる。

話を進めるためにも私は彼女に付いて行くことにした。

 


 

「火車が帝君を暗殺しただと?無礼千万也...我が同志を愚弄するか異国の旅人...恥を知れ...!!」

 

私は今、仙人の怒りを買っていた。





書き溜めてた分はなくなった。
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