寒空の咎人   作:摩虎羅

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前回までのあらすじ

邪仙と呼ばれ忌み嫌われる火車仙人
迎仙儀式において帝君の死体と共に現れた火車仙人
ミステリアスに旅人の前に現れ邪仙との繋がりを疑われている旅人を導くシヘイ

仙人を怒らせた旅人の行く末は...?



仙人から見た彼

 

「…っていう風に岩王帝君を暗殺した仙人を探してた千岩軍に、そいつの協力者だと思われて追われてる最中なんだ」

 

少女達は語る...曰く火車が帝君を暗殺したと、曰く七星がそれを断定したと、曰く七星が異邦人にさえも帝君暗殺の罪を着せようとしたと...

 

だが、その中で一番に解せんことは...

 

「嘆かわしい。異国の旅人よ、身の程を弁え言葉を慎め。火車が帝君を暗殺しただと?無礼千万也...我が同志を愚弄するか?異国の旅人...恥を知れ...!!」

 

一番解せんことは...火車が帝君を暗殺したことを事実だとしていることだ...!

 

「あわわ...ど、どうするんだよ!?怒らせちゃったみたいだぞ!!」

「落ち着いて、何とかしてみるから」

 

「ごめん、勘違いしたまま話しちゃってたみたい。貴方を怒らせるつもりじゃなかった」

「そ、そうだぞ!オイラ達、焦って言い間違えちゃったんだ!」

 

明らかに今の方が焦っているが、まぁ良いだろう。

奴が俗世から爪弾きにされているのも重々承知している。

だが、これ以上の無礼が無いよう釘を刺しておくか。

 

「ふむ。今回は許そう、しかし二度はない。禁忌滅却の札を持っているのは貴様であって貴様の同行者ではない。それを留意して言葉を選ぶと良い」

「ええ!?お、オイラ、食べられちゃうかもってことか!?あばば...」

「落ち着いてパイモン、とにかく今は話を進めるしかない」

 

旅人はそう口に出しながらも先程より警戒心を高め、剣に手をかけている。

本来ならばそれも無礼に当たるが、今回は許すとしよう。

 

「君たち、随分遅いと思ったら...何でそんな一触即発なのかな...僕は日陰で待っていたかったのに」

 

目深に外套を纏い顔の見えず、姿からは少年とも少女とも判別のつかない者が現れる。

我は何故かその声に聴き覚えがあった気がした。

其奴はゆっくりとした足取りで我へ近付き少女達の半歩前で立ち止まった。

 

「僕の名前はシヘイ、粗方話は聞いてると思うから省略するけど、彼女は今千岩軍に追われていてね、僕は彼女を自由にしてあげたいんだ。それで今、凡人よりも七星への発言権の厚い仙人の力を借りようとしているんだよ。何か解決策はないかな」

 

ふむ。此奴が来たおかげで本題に入れたな、これならば先程脅す必要もなかったか。悪いことをしたな。

しかし容疑を向けられた少女を自由に、か。

出来ぬ事ではないが我一人で行えば要らぬ諍いを招きかねん。

 

「であれば、我に一つ案がある。しかし、我の判断では危うい。仙人達に知らせる必要があるだろう。その旅人の持つ『禁忌滅却の札』を持って我の言葉を伝えに行くとよい」

「理水畳山真君と留雲借風真君、他にもいるけど一先ずこの二人だね、ここにいるという話だけど居場所に心当たりはあるのかい?」

「確かにその二人はここにおるが、会えるかどうかは縁次第だ。流れに身を任せるがいい。それに、もう一人降魔大聖の護法夜叉がおる、彼の者は《望舒旅館》に行けば会えるだろう」

「うん、分かった。それじゃあ先に望舒旅館に行ってみるよ。伝言を教えて」

「ああ、こう伝えるのだ…」

 

そう言葉を紡ぎ、我は仮の者達への言伝を任せる。

我の言を伝えた後、踵を返し目的地へ向かおうとする者たちを引き止める。

 

「待て、言い忘れていたことがある」

「ん?何かな」

「貴様ではない、そちらの小さき者にだ」

「え?オイラ?お、オイラ、やっぱり食べられちゃうのか...?」

「そんなことはせん。我は謝罪をする為に引き止めたのだ」

「謝罪?」

「苛立っていたとはいえ無用な心配をさせて済まなかった。禁忌滅却の札は同行者にもその契約は有効だ。故に我も、他の仙人も、貴様に危害を加えることはない」

「え、えええ!?あ、あれ嘘だったのかよ!?じゃあオイラがあんなに怯える必要なかったんじゃないか!か〜〜!!ムカつく〜!!」

 

我が告げた言葉に小さき少女は地団駄を踏み、残った二人の少女は顔を綻ばせ笑顔を作った。

少女達が歩き出し、小さき少女は怒り心頭のままに飛びながらそれを追従する。

 


 

ふむ、何やら削月のいる辺りが騒がしいな。

少し様子を見に行くとするか。

 

翡翠の翼を広げを舞い上がり、騒ぎのある方角へ向かう。

しかし宙に舞うこと数十秒後、騒ぎのある地の手前に見知った空気を放つ者を見つけ、方向を転換しその者の元へ降り立った。

久しく合わなかったその者は目を見開き驚嘆した後、途端に目を泳がせ始めた。

 

「久しぶりだな、金華よ」

「き、金華?誰のことかなぁ...僕は名も知れぬ凡人だよー、仙人様と間違えられるような人間じゃないよー」

「ほう?では何故『金華』が仙人の名であると知っている?その名を知るのは彼に親しき仙人達のみだが?」

「ギクッ!」

「語るの落ちているな。まったく...金華よ、妾を欺こうとしたのだ、覚悟は出来ておろうな?

「な、なんだよぉ...怖い顔しないでよ...護法夜叉に向かって失礼だぞぉ...それに今はシヘイって名乗ってるんだからそっちでは呼ばないでよぉ...」

「ふんっ、昔は名前で呼ぶように懇願する可愛い幼子であったのにな、その『シヘイ』という名も大方は好物の『四方平和』から取ったのであろう?」

「うぅ...悪いかい?僕だって、良い名前が思い付いたらそうしてたさ」

 

涙目になった時に出来た水を目尻に溜めたまま、少年は抗議の眼差しをこちらへ向ける。

その姿が数千年前の光景、妾と甘雨が買い出しから帰った時に見た、その日入れ違いで奥蔵山へ遊びに来て、日が暮れるまで山の中で寂しく待っていた金華の抗議の瞳と重なり、くすりと笑みが漏れる。

 

「な、なにさ、そんなに僕がおかしいかい」

「いや、お前は変わらぬと思ってな」

「な、僕だって変わったさ。友達だっていっぱい出来たし、その子に色々俗世のことを教えてもらってるんだ」

「ほう、それは良かったな。あの甘雨と会えない日は部屋の隅で愚図っていた時とは大違いだ」

「ぐ、愚図ってない!というか見てたの!?」

 

甘雨が大きくなってきたが故、その戦闘技術を鍛えるため降魔大聖に預けていた日に丁度やってきて、そして甘雨がいないと知るや否や地面で丸まりそのまま部屋までコロコロ転がって向かって行ったのだから見物もするだろう。

「何故自分ではなく降魔大聖なのか」という旨の愚痴を溢していたが、甘雨に甘く感覚派の天才型な金華より、同じく感覚派でも努力型で厳しくも出来る降魔大聖の方が向いていたのだ。

本人に伝えるとまた愚図り始めるため言わないが。

 

「それよりも金華、いやシヘイと呼んだ方が良いのか?」

「むぅ、もう何でも良いよ2人の時は。ただし、他の人の前ではシヘイで通してよね」

「わかった、して金華よ、何故削月の元へ訪れたのだ?直接会うわけでもないのであろう?」

「うーん、事情がややこしいんだよね。後で留雲のところにも行くからその時に説明するよ、とにかく今は同行者の旅人を助けるために仙人達の元に向かってるんだよ」

「はぁ、やはり厄介事か。毎度毎度トラブルの渦中にいるな」

「そんな人をトラブルメーカーみたいに言わないでくれるかな」

「しかし、よいのか?その同行者の旅人は何やら削月を怒らせているようだが」

「え?うわ本当だ、何で!?まぁいいや、とにかく僕は行くよ」

「なんだもう行くのか。それでは、奥蔵山で待っているぞ」

「うん、また後でね留雲!」

 

金華はそうして去り際のセリフを吐き、山道を駆け上がる。

やはり彼奴は活発な笑顔が似合うな。

 





急いで書いたから後で書き直すかも
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