魔法科高校でも俺の青春はまちがっている   作:Lチキ

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入学編14

俺と司波は一通りの説明を受け委員会本部から廊下に出る

これからやりたくもない仕事をしなければいけないが、その前にどうしても確かめておかなきゃいけないことがある。

 

 

「おい司波、どういうことだよ」

 

 

「またその質問か、これで2回目だぞ」

 

 

廊下に出てすぐ、俺は司波にやや苛立ちが入った声で言う。

それに対する司波は軽くため息を吐く。以前生徒会室で行った質問と同じという事に対してのため息なのだろうが俺からすると、そのため息は白々しいにもほどがある

 

俺の質問の意図は当に分かっているだろうし、その答えも経緯もすべて知っているであろうことは、もはや明白だ。

 

 

それなのにここまで、自分は関与していない風な態度ができるとかどんだけ顔の皮が厚いんだよ

むしろ、感情があるのか疑うレベルだ。

 

 

「一応聞くがなんのことだ」

 

 

「森崎の事だ。付き合いなんて同じクラスってだけでそこまで詳しくねーけどそんな俺でもあいつの性格は大体わかる」

 

 

森崎のやつは、1科生と2科生の差別意識を強く持つ。その根幹にはやたら強い自尊心がある。

 

森崎という家の本家にいて、幼いころから魔法に携わり今この時1科生になり、自分の他人より少し優秀であるということを勘違いしたかわいそうな男だ

 

そのプライドや思い込みの強さが以前の騒ぎを起こした原因と言っていい

そんな勘違い野郎が自ら風紀員を下りたというのには違和感を感じる

 

 

事前に聞いた話では大事に至らなかったが、問題を起こした責任とか言っているそうだがあいつに限ってそんな殊勝な心がけを持つわけがない

 

 

むしろあいつなら、問題を全て司波や2科生のやつのせいだと思い込みふてぶてしく風紀員に入り、恩がある司波に対し暴言を吐くくらい普通にしそうだ

 

 

「あいつが自分から名誉(風紀員)を捨てるなんてありえん」

 

 

「風紀員は成績に影響しないはずだが」

 

 

俺の言い回しに疑問を思ったのか司波が聞いてくる。しかし、そういうことではないのだ。いくら成績に関係しないからと言っても、風紀員とは一つの象徴かまたはブランドと言っていい

 

 

「生徒を取締り、CADの携帯を許されてるそういう特別って響きがあいつにとっては名誉や名声になんだよ。それに風紀員での経験はあいつの家の仕事にそのまま役立てる言わば、疑似体験で実戦ができるちょうどいい練習だ」

 

 

それなのにあいつが自ら断るなんてことはありえない

なにかしらの第三者による介入があって初めて自分から辞退するという決断をするだろう

 

 

「それでなぜそれを俺に聞く?俺はただの2科生だ。森崎をどうこうする権利も権限もないぞ」

 

 

「権限がなくとも約束ならあるだろう」

 

 

そう、それはあの事件の最後に森崎の言った

 

『受けた恩は必ず返す。司波 達也なにかあったら相談してくれ力になる』

 

という一言。

プライドが高く自意識過剰なあいつの性格を考えればこの約束は必ず守るはずだ

それもその相手が自分を助け、なおかつ見下してる相手に自分から言った約束ならなおさらだ

 

そして、森崎を排除した後の根回しも不自然なくらいスムーズだ

教師の推薦枠なのに渡辺先輩に相談するってのもまあおかしいが、それ以上に渡辺先輩が俺を推薦するなんてありえるのか?

 

答えは否だ。なにせ俺と渡辺先輩の絡みなんかほとんどない上、俺の実力も魔法も先輩は知らない

 

つまり、渡辺先輩に助言した者がいる事になる。可能性のあるのは俺の魔法を知ってる雫、光井、レオ、エリカ、美月、司波兄妹

 

このなかで風紀員または生徒会に関係があるのは司波兄妹

 

妹の方は兄が風紀員になれた事により満足しているはずだ、これ以上の口出し手出しをこの件に関してはしないだろう。

 

 

そうなると必然的に残るは司波 達也お前だけになる。そもそも俺に厄介ごとを押し付けたこいつ意外に下手人がいるとも思えん

 

 

つまり、流れを予想するとこういうことだ

1、司波風紀委員に就任

 

2、森崎と接触、風紀員辞退を促す

 

3、推薦枠が空き先生が風紀委員に相談

 

4、渡辺先輩に俺の事を話し推薦するよう促す

 

5、なぜか先輩が承諾、先生に推薦

 

6、俺が風紀員に就任

 

とまあ、こんな流れで事が運んだのだろう

 

 

司波は俺に目を合わせることなく澄ました面で明後日を方向を見る

 

 

「森崎にいったい何を言って、どうやって先輩をけしかけ、なんでそこまで俺を巻き込みたがる?納得のいく説明をしてもらおうか」

 

 

フンと鼻を鳴らし、腕を組み問いかける俺に対し観念したのか司波は少しの間を開け重い口を開ける

 

 

「別に大したことはしていない。森崎には生徒会での一件を話、比企谷が随分落ち込んでいたどうにかならないかと話をしただけだし」

 

 

誰が落ち込んでいただ、むしろあの時ガッツポーズして喜んだだろうが

 

                   ・・・・

「先輩は先生方から相談されてるところにたまたま遭遇してそれとなくお前の事を言っただけだ」

 

 

今、たまたまのニュアンスがおかしかったぞ

絶対確信犯だろコラ!

 

 

「それと最後の質問は昨日の仕返しだ」

 

 

「最後の最後で直球だなおい」

 

 

 

言い終えるやいなや司波は先ほどから背けていた目を俺に向け何を考えてるのか分からない目を向ける。

分からんと言っても多分これ怒ってるんだろうがな

 

 

「仕返しも何も最初に厄介ごと押し付けたのはお前だろ」

 

 

「俺と副会長の模擬戦を誘導したことでそれはチャラだろ?」

 

 

本当にふてぶてしい態度でそう答える。いや、確かにそうかもだがだからといってまたお前からやり返すってどうなんだよ

 

司波の話を聞くかぎり、そんなに怒られるようなことをした覚えはないはずなのだがこの司波の怒りようはなんだ

わざわざ森崎や先輩に根回ししてまでやるレベルか?

服部との模擬戦もふたを開ければ圧勝だったし怪我の一つもしてないし、なぜここまでめんどい事をやったんだよ

 

 

そんな事を思っていた俺の答えは目の前にいる司波からすぐ聞かされるのだが

その内容がもはや呆れるレベルだ

 

正直こいつに対する認識が間違っていたのは間違いない

 

 

「お前はそれに加え、あの時深雪を利用したな?そのことに対する報復だ」

 

 

その目からもう二度とするなという無言の圧力が放たれ、なんか殺気みたいなのがビシバシ叩きつけられてくる

俺はそんなこいつに気おされ今までの態度から一変し委縮する

その中で俺は

 

本当に呆れるレベルのシスコンだな‥‥

 

と、内心思っていたがもちろん口には出さない。もし出そうものならなんかもう言葉で表せないくらいの恐怖が襲ってきそうだ

 

それと、もう絶対に司波を怒らせないようにと心に誓った

 

怒れるシスコン恐ろしや‥‥‥


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