魔法科高校でも俺の青春はまちがっている   作:Lチキ

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入学編17

ただ今俺は、1-Aの教室でタブレット型の端末を操作しながら物思いにふっけていた。

やたらラスボス臭を漂わす角刈りメガネ、司 甲剣道部の主将で三年生の2科生

 

 

3年間特に問題も起こさず、部活の主将をするほど真面目な生徒

これだけ見ると、至って普通のやつみたいだな…あの時感じた変な視線の正体につながるものはないか……

 

 

「難しい顔してどうしたの?」

 

 

「ん?雫か、別にただ風紀員関係でちょっとな」

 

 

雫は顔を覗き込むように屈んでいる。それは意図せず上目遣いとなり、ついつい顔をそむける。

 

それが気に食わなかったのかちょっと、ムっとした顔をするがスルーする。こういう話題は自分から振ると墓穴だし、相手から振られるとそれも墓穴になるのでスル―が一番いい。

 

 

「忙しい?」

 

 

「まあ、それなりに‥‥どうしたなんか用か?」

 

 

そこでようやく、雫がなにかしらの用事があるという事に気が付く。風紀員になってから、雫は何かと気を使ってくれてるらしく、休み時間や放課後なんかに話しかけるのを避けている。

 

肉体労働が基本の風紀員は、俺にとってハードワーク以外のなにものでもなく、休み時間はとにかく疲れてなにもやる気がせず机に突っ伏してるし、放課後も集まりとかで忙しいのでなぜか恒例になりつつあった一緒に下校もできない。それを察しての事だろう。

 

 

本当に雫さんには頭があがらないです。

 

それに比べ、どこぞの森何とかときたら自分が引いてまで風紀員になったのだからもっとシャキッとしろだの、風紀員は一体どうだのとやたら話しかけやがって…

 

 

こっちは疲れてるんだよ!察しろよ!!

 

終いの果てにはどんなに話しかけられても寝たふりを決め込んでたのに、体を揺するは、耳元で大声出すは‥‥ほんとあいつは駄目だわ、もう何回あいつに対して殺意を抱いたか分からねーよ、マジで

 

森何とか…もう森でいいやこれからあいつの呼び名は森で統一するから

 

まあいいや、森の事などほっておいて今は雫だ。

 

 

「うん…あれ」

 

 

雫が指をさしたのは廊下の窓だった。そこには窓の外を眺め顔をひきつらせている光井がいる。俺も窓際までいき、覗き込むとそこには、新入生は誰一人として逃がさないという意気込みを放つ先輩方の長蛇の列があった。

 

 

それは玄関から校門まで数十メートルにわたりできており、上からみると隙間なくびっしりと人が詰まっていた

 

 

「あれだな…まるで人がゴミのようだ…だな」

 

 

「何言ってるの?」

 

 

俺が日本アニメ界の不朽の名作に出てくる、有名なセリフをいったら何言ってんだ?見たいな顔で見られた。つーか実際言われた。

 

光井もきょとんとしてるし…もしかしてお前らジブリ知らねーの?え、マジで?

そりゃあ何十年も前のアニメだけど、今でもたまに土曜とか金曜にやってるのに知らねーの?

 

まさかこんなことで、一般人と魔法科高校との差を知ることになるとは思わなんだ‥‥

 

 

「どうやって帰ろうかって今話してて…」

 

 

「忙しいなら無理は言わないけど、できたら手伝ってほしくて」

 

 

ジブリを知らないというあまりのギャップに呆然としていたが、2人の声で我に返る。

そういやこの2人はバイアスロン部に入部することが決まっているし、迷惑な勧誘がただの迷惑になってるわけか

 

そこで、風紀員の俺に白羽の矢を立てたというわけだ。

 

 

「別に無理じゃないが…ちと難しいな」

 

 

風紀員は強引な勧誘に対しては指導することができるが、勧誘そのものに対して何かをいう権限はない。また、すでに入るクラブが決まっていても正式な入部は勧誘期間が終わった後になるので、心変わりなんかを狙って勧誘する連中もいる。

 

つまりこの2人をつれて、あの群れに突っ込んでも俺では勧誘の嵐から2人を守ることはできないのだ。

 

仮に職権を乱用しこの2人に対する勧誘をしないようにしたら、部活連より風紀員に苦情が来るだろうし、ほかのもう入るところが決まっている1年生から文句が殺到する事は安易に想像できる

 

 

そうすると俺はもちろん雫と光井にも周りから異質な目で見られる恐れがあるので、することはできない

ここは断る事が最良だろう

 

 

「そっか…ごめん。ありがとう自分たちでなんとかする」

 

 

「比企谷さんも風紀員頑張ってくださいね」

 

 

雫はシュンという効果音をさらしながら、どうにかするので気にするなと言い

光井もやや残念そうだが逆にこちらに大変だけれど頑張ってという……

 

 

まったくこいつらは…わざとやっているのか疑いたくなるな‥‥

 

生憎俺はこんな顔をする知り合いをそのまま放っておけるほどの根性がないのだ。直接助けることは頭を貸すことぐらいはできるのだ。

 

 

「はぁ…‥あーあれだ、光井って確か光関係の魔法が得意なんだよな」

 

 

「はい、そうですけど?」

 

 

光井は俺が何を言いたいのが分からないようで疑問系で答える

 

 

「じゃあ、意識をそらしたり姿を隠したりする術式とか使えるのか?」

 

 

「ほのかは得意だよ。でも魔法を勝手に使うのはルール違反」

 

 

雫は意図に気が付いたらしいが、それでも違反行為に他ならないので疑問を出す

だが、そこはほら違反行為を取り正すのが俺だし問題はない。これも立派な職権乱用に他ならないが

 

 

「今更だろ?校内限定だが今はあちらこちらで魔法が飛び交ってんだ。それにこれも一種の自衛だろ」

 

 

「えー…でも、そういうのって」

 

 

「なるほど、一理ある」

 

 

「えっ」

 

 

光井は気が引けるらしいが雫は乗り気だ。流石はなしが早い

 

 

「喧嘩しようってんじゃないんだし」

 

 

「攻撃魔法でもないから」

 

 

「虎穴に入らづん場虎児を得ずとも言うし」

 

 

「蛇の道は蛇ともいう」

 

 

「「だから、問題なし」」

 

 

俺と雫は同時に親指を立て、OKサインを作り光井に向ける

 

 

「2人ともなんでこういう時ばっかり息がぴったりなんですか!?」


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