魔法科高校でも俺の青春はまちがっている   作:Lチキ

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始めに言っときます。八幡の出番は少し休憩して、物語を進めていく方針にします。気になると言ってくださった方々、申し訳ありませんが八幡の事はもうしばらくお待ちください。






入学編33

それはある日突然の出来事だった。

 

『全校生徒の皆さん!僕たちは学内の差別撤廃を目指す勇士同盟です!』

 

授業の節目である休み時間に流された男子生徒と思わしき声がスピーカーを通じて教室中に響き渡る

 

「し、雫!これっていったい…?」

 

幼馴染であるほのかは突然の放送に相当驚いている模様で、クラスを見渡すとほのかのように驚いている人やなんのことか分からずただ単にポカーンとしてる人が大半でその多くが今の状況を理解していない。

 

斯く言う、私もあまり表情には出ていないと思うけど結構驚いているしこの放送が何かというほのかの質問にも当然答えられないでいる。

 

放送の続きを聞くと、どうやら生徒会や部活連に何かしらの不満があるらしく対等な立場で交渉することを要求するという脅迫をおこなっていた。

一体彼らがなんなのかは知らないけれどこういうやり方は、よくないと思う。道徳的な良し悪しの前にこの行動で導き出される結果が悪手か良手かと聞かれれば間違いなく悪手といえる。

 

放送をするにはもちろん放送室に行かなければならなし、放送室は教師の許可がなくては使用してはいけない。聞く限り正規の方法で放送しているわけじゃないようだし、そうすると無断でしている事になる。

 

それは間違いなく規則違反であり、罰せられる対象になる。その証拠に放送も不自然なタイミングで切れてしまったし、風紀委員に捕まったか回線を切られたのだろう

目的がなんであれ、その過程で違反をしてしまっては正しい事を言ったとしても相手にされない。

 

つまりは、悪手

導き出される可能性は最悪をさす

 

 

 

そこで、ふとある疑問が湧いた

 

この放送でおそらく、間違いなく風紀委員は何らかの関与をするはずだ。無断放送した生徒を取り締まるにしても騒ぎが大きくなる前に各教室に指示を出すにしてもやるのは風紀委員になるだろう。そうすると風紀委員に所属する生徒は召集されてしかるべきだ

 

 

 

 

 

ではなぜ、彼は今だこの教室にいるのだろうか?

 

 

 

 

私の目線の先にいるのは、同じクラスであり私が絶賛興味を抱いてる(恋愛的な意味合いではない)人物であり何より風紀委員である彼だ

 

時折巡回なんかをさぼっているという事を聞くが彼の性格からしてこのような大事な時には率先して…とまではいかなくとも顔くらいは出しに行くだろう。働くことに関して否定的な彼ではあるが一度受けた仕事には責任を持っているという印象を受ける

 

そんな彼が今だ教室にいるというのはいささか不自然だ。

 

 

小首をかしげるが、本人を目の前にして悩んでいるのも馬鹿らしいので彼にそのまま聞いてみる事にする

 

 

トコトコと八幡のいる席まで歩いていき、そのまま様子を観察しながら話しかける

 

 

「八幡、風紀委員いかなくても大丈夫なの?」

 

 

率直な疑問を述べる私に彼は、顔を上げ私の顔を覗き込む。そのまま一瞬硬直するがすぐに平静を取り戻す

 

 

「あー…そうだな、ちょっと考え事しててそこまで頭が回らなかった」

 

 

というが、私にはそれが嘘であることがすぐに分かった。八幡の頭の回転は正直私より早いと思う。それは、入学初日の時を見るように突然の事態なんかにも冷静に行動が行える。

この放送には驚きはするが、私でさえここまで冷静なのだから八幡ならなおの事だろう

 

何より、彼の態度がおかしい。基本的に人と話すのが得意ではないようだ。かくいう私もそこまで得意ではないので何とも言えないが、彼は人と話すとき初めは相手の顔を見て話すがすぐに目線を別の方向に向ける。それは目を見て話すのが苦手とか、人の視線に敏感だから起こる。ソースは私、私自身ほのかや友達、家族といった親しい間柄の人と話すときは極力目を合わせるが、正直苦手である

 

家柄上そういった態度は家族に迷惑がかかるので頑張っているけど、八幡はそういったことに直球で、特に異性相手に話してるときは初めから最後まで目を合わせ続けたためしがない

 

それなのに、今の彼は私とずっと目を合して話してる。あと心なしか腐った目もいつもに比べておかしい。どこがどうと詳しく言えないが目に光がないというか、どことなく虚ろというかそんな感じだ

 

あまりに不自然だが、一見すると対した問題ではないような微妙な違和感がのこる。

そんな私を一人置いて、八幡はじゃあなと教室を出ていく

 

 

「八幡‥‥‥?」

 

 

一体、どうしたのだろうか?

 

今の私にはその答えを導き出すすべはなく、ただ遠のく彼の背を見る事しかできなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

放送室前

 

 

今ここには多くの生徒が集まっている。といっても野次馬のような連中ではなく、放送で出てきた生徒会メンバー数人と部活連の十文字会頭

それに風紀委員長率いる風紀委員たちだ

 

風紀委員のメンバーは一歩引いたところで待機していたり、廊下の突き当たりで野次馬対策で道を遮っている

 

その中心の放送室前にいるのは渡辺委員長と十文字会頭、生徒会の市原会計らが陣取っている。

そこに少し遅れる形で司波 達也及び司波 深雪の2人が合流する

 

 

「遅いぞ!」

 

 

達也の上司にあたる渡辺委員長は一喝するが、達也はあくまで冷静沈着にあたりの状況を確認する。

 

 

「すいません。どんな状況ですか?」

 

 

「電源をカットしたためこれ以上の放送はできないようにしたが、連中は内側から鍵をかけて立てこもっている」

 

 

放送室には窓がなく出入り口は1つとなっている。そのため彼らは入り口を封鎖された時点で籠城(ろうじょう)したようだ。袋のネズミではあるが、逆にそれは唯一の入り口を閉じられこちら側も立ち入ることができないということだ

 

 

「外からは開けられないんですか?」

 

 

「やつらは事に当たる前にマスターキーを盗んでいる」

 

 

達也の問いに渡辺委員長は返す。基本的に学校などの公共施設の一室には専用の鍵とすべての鍵が開けられるマスターキーが常備されている。それゆえ例え鍵を閉められてもバリケードでもないかぎり外から扉を開ける事が可能なのだ

だが、そのマスターキーを盗まれてしまっては打つ手はなくなってしまう。というよりだ

 

 

「明らかな犯罪行為じゃないですか」

 

 

今までの放送もかなり危ないラインだがそれでも精々放送室の無断使用による校則違反になるだろう。しかし、マスターキーを盗み出したそれは、明らかな窃盗だ。

魔法科高校には郊外持ち出し禁止の重要なデータなどもあることから防犯意識はそこいらの企業より上だろう

 

それらにアクセスできる端末がある部屋にもマスターキーで入れるためこの窃盗は校則を越え犯罪として扱われてしかるべきである

 

 

「そのとおりです。だから私達もこれ以上彼らを暴発させんないように慎重に対応すべきでしょう」

 

 

と、市原先輩より現在の我々がとる行動の概要が述べられる。

彼らも最低16歳を超え、犯罪に対する認識も人並みには存在するだろう。そんな中で行われた犯罪行為とは、意識して行っているという事。

下手をすれば更なる犯罪行為に手を染める可能性が極めて高く、事情はどうあれ身内である彼ら(生徒)にそれをさせるわけにはいかないということだ

 

それ故、慎重であるべきというのが市原先輩の見解だ

 

 

「こちらが慎重になったからといって、それで向こうの聞き分けが良くなるかは期待薄だがな…多少強引でも短時間の解決を図るべきだ」

 

 

一方での渡辺委員長は、できる限りの早期終結を打診する。

犯罪の誘発には、本人の意思とは別に周りの状況でそうなってしまうケースがある。例えば立てこもりなんかがそうだ。

 

イメージしにくいなら人質がある立てこもりを想像するといい。

相手側は特定の要求をとうすため立てこもりをするが、いつまでたっても要求がとおらないとなっては、段々と冷静ではいられなくなり見せしめとして人質を殺害するという強硬に走るやからも少なくない

 

犯罪行為を現在進行形でしているという非日常、それにかかるプレッシャーと緊張感は容易に人を狂わせる

 

今は冷静な彼らも時が立つごとにどう変化するかまったく不明であり、それなら早いうちに解決したほうがリスクが軽減するという見解だろう

 

 

どちらの話も分かるが、このように上の人間が対立した見解を出した場合、下の者達が動くことができず延々と時間だけが過ぎてしまうだろう。

 

ならば、ここはもう一人の上の人間に見解を聞くのがいいだろう

 

 

「十文字会頭はどうお考えですか?」

 

 

部活連代表、十文字 克人

十士族、十文字家の次期頭首であり分厚い胸板と広い肩幅、制服越しでも分かるくっきりと隆起した筋肉の付いた体をしている

 

そこにいるだけで濃厚な存在感が肌に伝わる例えるならば巌のような人だ。

 

 

 




次回は皆さんお待ちかね、まともな男子?の登場です


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