魔法科高校でも俺の青春はまちがっている   作:Lチキ

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入学編37

その目が腐っている風紀委員とい人の事は一旦おいておこう。それより今はこの窮地をどう切り抜けるかだ。現状は最悪、先行していた3人はすでに倒されしばらくの間は起きる気配がない。

後方支援も期待薄、先ほど東郷さんが各自に指示をだし持ち場につかせたことによりこっちの方に来ることはまずないだろうし、私が通信をするとか大声を出せば来るかもだけど、目の前の彼がそれを許してくれるとは思えない

 

私自身は、得物がなくまともな戦闘をすることはまず無理

と言うより桐原君はなぜここにいつのだろうか?

私に会いに来たというが、十中八九この計画を阻止しに来たという事で間違いないだろう。でもそれなら、こんな話をしている間になにかしらの行動をしてこないのは少しおかしい気がする。

 

今の状況じゃあ、私の戦力なんて前の3人と同等かそれ以下。彼ほどの腕があれば倒すなり気絶させるなりすればいいのだし、話をするという行為自体がおかしい。

それこそ、こんな有事の最中なら一刻も早く事態の収束に尽力しその後に話なりなんなりすればいい

 

ではなぜ彼は私を攻撃してこないのか‥‥?

 

 

「‥‥‥それで、桐原君?私に何の用があるのかしら」

 

 

考えても答えが出ないので本人に聞くことにした。無論この問いに答えが返ってこない事も想定しているが、とにかく今はどうにかして現状を打破しなくてはいけない。

そのために、少しの隙かそうでなくとも何らかのきっかけが必要なのだ。この問いはそのための問いであり、まともな答えなんかには全く期待していない問答だ。

 

しかし、桐原君はこの問いに真っ当にただただ愚直に答えを返す。

 

 

「そんなの決まってんだろ?馬鹿やってるお前を止めに来た」

 

 

 

単純明快、そんな言葉が今の彼にはぴったりと当てはまる事だろう。学校を襲ったテロリストの排除?秘匿されてるこの国の最先端技術の保護?

そんな些細な事は彼の頭に存在しない。あるのはただ、自分の中に存在する壬生 沙耶香(大事なもの)を止めるそれだけだ。

 

難しい事も複雑な情勢もお構いなしにこの一大事に自分事を優先して一人の少女を止めに来た、それが桐原と言う男が今現在、ここにいる理由である。

 

端から見れば何とも不思議な光景だろう。仮にその少女が恋人とか家族というなら分からなくもないが彼と少女の間にそんな感情はなく、むしろ勧誘期間での一幕で溝‥‥とまでは行かないかもしれないがお互いがギクシャクとしていたことには違いない

 

そんな相手のために危険を犯し、学校や国と言う守るべきものを度外視してまで来たというのだ。これを不思議・・・むしろ随分おかしな行動と言われても仕方ない事だろう

 

だが、そんな行動を犯しているのだというのにその本人には戸惑いも後悔もありはしない。

 

その瞳は余計な感情が一切含まれず、真っ直ぐと一人の少女を映し出している。その表情は以前のようなイラつきをただぶつけるだけの不敵な笑みなど存在せず、まさに一振りの刃を思い起こせるまでにただただ真剣。その姿は一切の油断も隙もない、あの時は突然出現した司波 達也に目にもとまらぬ早業で制圧されたが、今の彼ならそんな事はまずできない

 

それほどまでに桐原 武明はこの場に全身全霊をかけ挑んでいる。

 

 

 

 

 

 

~~~~~回想~~~~~~

 

 

 

それは、まだクラブ勧誘期間が終わりすぐの時だ

俺、桐原 武明はついこの間まで謹慎処分を食らっていたが今日からそれが解け1週間ぶりに学校にやってきた。まず職員室に行き手続きと謝罪を行い、ちょっとしたお叱りを受け謹慎中に書いた反省文の提出を行った

 

その後は、自分のクラスに行きそのまま普通に授業を受け放課後に部活。んで、そのまま帰宅と言うありふれた日常を送っている。

謹慎が解けてからしばらくはクラスの連中によくからかわれたりもしたがしばらく経ったらそれも収まり、普段となんら変わらなくなった

 

でも、俺の心中は穏やかじゃない。それは一年生の2科生にコテンパンにやられたため‥‥ではない。一応言っとくが、俺も俺なりにあの日の事は反省しているし逆恨みで司波のやつを恨むつもりもない。それに俺的に人の評価で重要な事は、1科生とか2科生とかいう事ではない。そんなもん所詮は、入学前の成績だしそれも主に魔法だけの成績だ

 

大事な物は『強さ』これに限る。親父が海軍所属の軍人という事もあり、昔から色んな強い人を見る機会があったし、俺自身いろいろと鍛えられそれなりの実力があることを自負している。その俺から見ても司波の実力は相当なものと伺える

 

単純な体術なら俺なんて足元にも及ばないほどだろう。なんせ逆上してたとはいえ、目の前に現れるまで気がつかづ、認識したらしたで何もできないまま抑えられた。その後も剣術部の連中をことごとくあしらい続け登校してきたときに聞いた噂では、並み居る運動部を連覇した謎の1年風紀委員とか言われていた。

 

1科生にいても大した実力のない連中に比べると2科生だろうと実力のある者は例外なく尊敬している。

もちろん司波もそれに含まれている、本人には絶対言わないがな。俺にも2年としてのプライドがあるんでな

 

じゃあ、何が原因でこうも不機嫌なのかと言うとそれは壬生の事だ。

 

俺が初めて壬生の事を知ったのは中学時代のころ大会で見たのが初めだ。その時見た壬生の剣技に俺は魅せられどうしようもなくきれいだと思った。

 

だが、いつのころからかあいつの剣は変わってしまった。人を斬る俺の剣とは違う、強さを技として昇華しようとしていた剣道が今では、ただただ強さを求めるためだけの物になり代わっている。

確かに中学時代に、去年の壬生と比べればその実力は断然上がっている。それは間違いない

実際に手合せした感覚では、純粋な剣技だけなら俺より断然格上と言えるだろう。

 

それでもだ‥‥以前のあいつの剣の方が俺は好きだった

 

だからこそ無性に腹が立つ、今のあいつの剣は曇っている。

いったい何があったのかなんて知らないし、どういう心境なのかも分からん。だが、これだけは確証を持って言える。

 

今の壬生は中学までの自分の剣技を否定している。技を競い合う剣道からは逸脱した力を求め、相手を斬る剣。それは剣術に近しい物だが決定的に別物だ

剣道とも剣術ともならないどうしようもなく曇った剣技

 

あのきれいな剣が、輝いていた壬生がそんなものに身を染める事に怒りすら覚える

自分を見失い過ちに気が付かない壬生にも、そんなアイツに対して餓鬼のように癇癪を起して喧嘩を売った自分が腹立たしくてしょうがない

 

 

隠しきれないやるせなさで、ついついドアを乱暴に占めてしまい、バンッという大きな音が誰もいない廊下に木霊する

 

 

「桐原先輩、少しいいですか?」

 

 

そんな時だ、誰もいないと思っていたら後ろから声をかけられた。内心相当驚いていたが、顔には出さず後ろを振り向くと一人の男子生徒がいた

 

 

「…誰だお前」

 

 

身長は俺と大体同じか少し低いくらいの中肉中背、顔に見覚えはないが腕にある腕章から風紀委員であると伺える

 

雰囲気的にあまり強そうとは思えないが、声をかけられるまで気が付かなかったことからそれなりの実力があるのではと予想できる。少なくとも気配けしに至っては司波レベルはあるだろう。

 

そして何より印象的だったのはそいつの目だ。なんと言い表したらいいか分からんがこう・・・ドロー、グワーみたいな‥…そう、例えるなら腐った目をしている

 

 

「俺は1年A組の比企谷です。先輩にちょっとお話があるんですが」

 

 

それが俺と目が腐っている風紀委員との初めての対面だった

 

 

 




次回、久しぶりに主人公登場!ただし回想です

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