俺の強さは仲間の数が決めてくれる   作:MMO太郎

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お待たせしました。
やっぱり仕事の合間だけで書こうとすると時間がかかるね、反省反省。

正直こんな展開にする予定じゃなかったけど、書き終わっちゃったもんは仕方ないし、後の話は未来の自分に任せようそうしよう。


てことで本編どうぞ


2話.まだ始まって少しも経ってないんだけど

 しばらくの間、砂に包まれていた俺だが、ようやく砂が俺の周りから離れているような感覚を感じた。

 少しずつ、ほんの少しずつだが、視界から砂以外の輝きが目に入ってくるのがわかる。

 しばらくしてようやく、目の部分が外界に晒される。

 そこで俺の目に飛び込んできたのは……視界いっぱいの草木である。

 

「???」

 

 おかしいね。こういうのってだいたい最初の町からスタート、もしくは町の少し外側から始まるもんじゃ位の? 

 確かに一昔前はそういう系の小説だったりアニメだったりが流行ってたけどさ、今の俺にそんなものは求めてない。

 

 と、なんやかんやしてると、すべての砂が俺の体から離れたようだ。

 俺は体を軽く動かしながら、改めてあたりを見回す。

 

 ほんとに視界いっぱいの木々ばかりである。

 耳をすませば、なんらかの動物の鳴き声が聞こえてくるが、間違っても人間の話し声だけは聞こえてこない。

 

「あれ? チュートリアルもなしな感じか? これ場合によっては詰む可能性大か?」

 

 たくさんの疑問が頭をよぎるが、ありすぎて頭から抜けていく。

 そして俺は、

 

「まぁ、なんかやってたらなんとかなるだろ!」

 

 考えることを放棄した。

 

 というわけで、俺は今、森の中を絶賛散歩中だ。

 ちなみに迷子中でもある。

 

 え? 来た道を戻ればいいだろ、だって? 

 

 こんな同じような気が何本も生えてる中で来た道を戻れるわけないだろ! 

 それに一応このゲームにも、従来のMMORPGと同じような地図機能があるのだが、これはチュートリアルが終わらないと使えない。

 つまり、チュートリアルを始めてもない俺は当然、使えるはずもなく。

 

 歩き続けて、正直データ消去も考えたが、まぁ行動不能の詰み状態ってわけでもないので、いけるところまでいってみようの精神だ。

 

 ……そういえば歩いている途中、ステータスの存在を思い出したので、見てみた結果……、

 

 

 ★★★★★★★

 

 PN.スズ

 

 人間種(ヒューマン)

 

 役職:従魔士

 

 HP:5

 MP:30

 

 頑丈さ:2

 素早さ:5

 精神力:6

 幸運 :3

 

 スキル

 ・手懐ける

 ・従魔契約

 ・意思疎通

 

 ★★★★★★★

 

 

 と、こんな感じである。

 自分で作っといてまず思ったのは、弱い、だ。

 "頑丈さ"、"素早さ"、"精神力"、"幸運"。

 この3つの最大値は、原則として300だ。いいか、300である。決して100でもなければ10でもない。

 そして、基本的にこのゲームを始めたばっかりのプレイヤーの平均的な数値は、10から15、16程度だと、この世界に降り立つ(ログインする)前に、アナウンスから告げられた言葉である。

 

 まぁ、つまり何を言いたいのかというと、他の人よりも何倍も弱いということだ。

 

 おまけに"従魔士"という役職は、世間でいうところのハズレ役職である。

 理由は単純。

 この役職、シンプルに弱いのだ。

 どれだけ育てても攻撃系スキルは生えてこない、MPはそこそこあるのに、魔法系スキルは生えてこない。そして何よりの欠陥は、ステータス4つのうちの3つ、"頑丈さ"、"素早さ"、"精神力"の数値半減、というとんでもないデメリットだ。

 

 その代わりに、従魔士という名の通り、魔物を従えることができるという、この役職にしかできないことができるのだが、ぶっちゃけ始まりの街で従えることができる魔物といえば、精々が”スライム”*1とか”ベビーゴブリン”*2といった雑魚ばかり。

 もちろん、そんなのを従魔にしたところで焼け石に水、0に1をどれだけ足しても、大した戦力にならないのは明白だ。

 一応、魔物にはレベルの概念があるため、強くすることができるが、そんな面倒なことをするぐらいなら自分が強くなればいいと考えるのは必然。

 

 というわけで、従魔士は無事、ハズレ役職の一員に加わることとなり、よっぽどの物好きでない限り、この役職を選ぶことはない、という訳だ……なんか自分で言ってて悲しくなってきたな。

 

 ん? なんで俺がこの役職を選んだかって? 

 

 ──俺は戦うってのが苦手なんだよぉ! 

 同年代の友人たちは、剣を振るったり魔法ぶっ放したりっていうのが好きらしいが、俺はそういう生き物を傷つけるっていう行為が好きではない。

 でも【YGF】で遊びたい。

 この2つの気持ちを尊重した結果、生き物を傷つけないこの、"従魔士"という自分だけでは魔物を仲間にすることしかできないハズレ役職を選ぶことになったのだ。

 

 ちなみにこの役職、よくこういうゲームにある初心者武器なるものは持っていない。

 つまり、俺は今このどこともわからない森の中を丸腰で歩き回っているということだ。しかもどこにむかっているのかもわからずに、だ。

 

 まぁ死んでも特に重要な何かを持っているってわけでもないし、【YGF】には死んだらデスペナがあるらしいが、その効果が一定時間、全ステータス半減というもの。まぁこの役職の時点でステ半減されてるし、大したステもしてないので実質ノーダメージ。

 ただ歩く速さが遅くなるのは少しめんどくさいが、モーマンタイだ。

 

 ってことで俺は安心(?)して適当にほっつき歩くことができるのだ。

 

 

 

 ──────────────

 

 

 

 ──ってなわけで、適当に森を散策していた俺だったのだが、だいたいゲーム内時間1時間経ったぐらいだろうか。

 未だに村の一つどころか、人っ子一人見つけられていないこの状況に、ほんの少しだけ飽きを感じていたところ、とある区域を入ったあたりから、徐々にだが周囲が薄暗くなり始めていることに気が付いた。

 それになんだか、木々の間からたくさんの視線を感じるような……。

 

「な、なんだよ。急にホラー要素出してくるなんて……勘弁してくれよ……」

 

 俺は怖いこと全般が苦手だ。

 ホラー映画やそういうバラエティ番組はもちろん、俺が怖いと感じた場所には絶対に行かないといったことを徹底しているぐらいだ。

 そんな俺が急に、それも一人でそんな空間へ放り込まれたら……。

 

「……ッ」

 

 俺はゴクッとつばを飲み込む。

 振るえる足をなんとか奮い立たせ、少しずつ前へ進む。

 周りはより一層暗くなり、今の時間を把握していなければ夜なんじゃないかと勘違いしてしまうほどだ。

 

 ──どれくらい歩いただろうか。

 ある一定のラインを越えてから、暗くなるのは終わったが、今は俺の体に突き刺さる大量の視線に恐怖していた。

 っていうかこれ、なんか俺誘い込まれてる気がしてならないんだけど……。

 

 ──はい、あのあともう少し歩いたら、開けた場所に辿り着いたんだけども……。

 なんか視線が俺を囲むように見てる気が……いや、気がするじゃない。確実に俺を囲んでいるし、俺を見ている。

 まるで俺をここから逃がさないようにしているかのようだ。

 

 正直視線が怖くて仕方がないが、俺は脳まで恐怖に支配されないように必死に思考する。

 

 ──おそらくだがこれは、特殊イベントの一種なんじゃないかって考えている。

 っていうかそうじゃないとこの演出がどういう意図があるのか想像がつかない。というより特殊イベントであってほしい。これがイベントでも何でもない何かだったら、俺は恐怖でしばらくこのゲームを開けないかもしれない。

 

 あまりの恐怖にちょっとしたおふざけをしていると、急に前方の大量の視線が消え失せ、代わりに先ほどとは別の視線が一つ、俺を見てくる。

 

『ほう、貴様のような雑魚がこの闘技場に何用だ』

 

 その視線の主は、少しずつだが俺のほうへと近づきながら、話しかけてくる。

 

 雑魚。まぁ間違っちゃいない、だって俺まだこのゲーム初めて半日どころか2時間経ってないし。

 なんなら今初めてMOBと対峙してるからな、戦闘経験すらないし。

 

『……だんまりか。まぁ貴様のような雑魚がここに立てただけでも奇跡に等しい。それだけは誉めてやろう』

 

『だが、ここに立ってしまったということは、貴様か俺のどちらかが死ななければならない』

 

『さぁ、一瞬でケリがつくとは思うが、死合おう』

 

 視線の主はそう言いながら、暗がりから姿を現す。

 その姿は、この森の中ではあまり馴染みのない、全身鎧の格好をしていた。

 だが、ただの鎧じゃない。今の暗さの中でも、なお暗いと思えるぐらい、それこそ漆黒の名にふさわしいほど黒い鎧だ。

 そしてその腰には、2mあるかないかといった両刃剣が携えられている。その剣も鎧と同じく真っ黒だ。

 

 そんな漆黒の全身鎧……仮称"漆黒"は、腰の剣をゆっくりと抜き、切っ先を俺に向ける。

 

 ……あれ? これマジで闘うの? 

 俺まだこのゲームの戦闘システムすら把握できてないよ? 

 ていうか俺武器すら持ってないよ? 

 武器ないからなけなしのステータスで殴り掛かっても、絶対にダメージ入んないよね? 

 

『どうした。かかってこないのか? ……来ないのなら、こちらからいくぞっ!』

 

 そんな言葉とともに、"漆黒"は俺の視界から霞のように消え、そして……

 

「っ!! あっぶね!?」

 

『ほぅ、躱したか』

 

 背後から凄まじいプレッシャーを感じ、咄嗟に体を前へと飛ばすと、先ほど俺の首があった場所に向かって横薙ぎに剣を振るう"漆黒"の姿があった。

 

 "漆黒"は、仮面の奥で笑うような気配を滲ませる。

 

 冗談じゃない。確かに死んでもデメリットはあってないようなものだが、さすがにこんな理不尽な死に方はしたくない。

 

 そう思った俺は、そのあともプレッシャーを感じては体に汚れや傷を付けながら避け続けるのを繰り返す。

 しかし、相手はおそらく……というか確実に格上。

 この奇跡がいつまでもつのかわからない。

 

『くははは!! この俺の攻撃を1回だけに限らず、何回も避けるとは! 貴様の力は雑魚だが、この闘技場に選ばれることはある!』

 

 なんか"漆黒"が気になることを言ってるけど、今の俺はお前の攻撃を避けるのに必死だから何も聞こえないんだよ、ばぁーか!! 

 

 声には出せないが、なんとか心の中で罵倒する俺。

 てか今声出そうとしたら気が抜けて、一瞬でお陀仏しちゃうから喋れないっていう。

 

『条件を達成しました。スキル【回避】を取得しました』

 

「んぇ?」

 

 突然頭の中に響くアナウンスとはまた別の声。

 俺はその声に思わず、間の抜けた声を漏らしてしまい、気が抜けてしまう。

 

『隙あり!!』

 

 そんな隙を見逃してくれるはずもなく、"漆黒"は最小限の動きで俺に接近し、左脇腹から右肩に向かって逆袈裟斬りを放とうとしてくる。

 

「っ! か、【回避】!!」

 

 俺は咄嗟に、先ほど聞こえた言葉、【回避】を叫びながら言い放つ。

 すると、俺の体は自分の意志とは全然違うほうへと動き出し、刃が当たる、そのギリギリを掠めながら、なんとか避けることができた。

 

『ほぉ? これさえも避けるか……』

 

 "漆黒"は先ほどの戦闘狂のようなものとは違い、感心したような、もしくは何か考え事をしているような空気を醸し出し始める。

 そして、絶え間なく的確に振り回していた剣を地面に突き刺すと、手を顎にやり、本当に何か考え事を始めてしまったのだ。

 

 ──今の隙に逃げ……れそうにもないな。

 

 俺は顔を動かさずに周りを観察するが、周囲にある気配は相変わらず、隙間なく俺を取り囲んでいるようだ。

 

『それにしてもあの紋章、どこかで……』

 

 ──それになんだか、"漆黒"が俺の顔をじろじろ見てるような気が。

 

 俺は"漆黒"と周りの気配たちを警戒しながら、少しずつ後ずさる。しかし、いくら警戒したとて、360°すべての方向から見られている現状、そんなものに意味はない。

 

『ふむ……、よし。決めたぞ。貴様、今から俺が放つ攻撃を避けてみろ。それが避けれたら、貴様の勝ちでいい』

 

 いつの間に考え事をやめていたのか、"漆黒"は俺をじっと見つめながら、そんなことを言う。

 すると、周りにいた気配が一斉に大きく、恐ろしいものに変貌する。

 まるで、"漆黒"に対して怒り狂っているように。

 しかし、"漆黒"はそんなものどこ吹く風と言わんばかりに無視し、剣を構えながら俺に話しかけてくる。

 

『さぁ、貴様も構えろ』

 

 "漆黒"は剣を地面と水平に構え、姿勢を深く沈める。

 正直その構えからどんな攻撃が来るかわからない。だが避けれなければ死、あるのみだ。

 

 俺もどうにか避けようとどんな構えがいいか考えるが、結局は自然体が一番だという考えに至り、棒立ち……いや、少しだけ前屈みになっておく。

 

 ……あたりは嫌というぐらいに静かだ。

 さっきまで騒がしかった気配も、まるで最初からそこにいなかったんじゃないかってぐらいに静寂を保っている。

 

「……」

 

『……』

 

 どれくらいの時間が経ったか。

 1分? 10分? いや、優に1時間は経っていたのかもしれない。

 

 ふとした瞬間、奴は視界から消え失せた。

 

「ッッ!! くぅっ!?」

 

 俺は条件反射でそこから地面に飛び込むように、いや、実際に飛び込み攻撃を避けようとした。

 だがまぁ、初心者の飛び込みだ。このゲームを長らくやっている者にとってはどんくさいと言われざるを得ないだろう。

 実際、俺の動きが遅かったせいだろう。

 致命傷はどうにか避けられたが、立とうとするが足が地面につかない。不思議に思って足のほうへと目を向けてみれば、両足の膝から下がどこにもなかった。

 

 俺はその場で寝転がり、なんとか仰向けになると、俺を見下ろす"漆黒"の姿があった。

 

『俺の最速の攻撃を受けて生きている者は、貴様が初めてだ』

 

「だが勝負は俺の負けだよ。これ見ろよ、避け損ねて俺の両足が吹っ飛んじまったよ」

 

 俺は自嘲気味に笑う。

 

 そう、生き残れば俺の勝ち、ではない。

 攻撃を避けれたら俺の勝ち、のルールだった。

 そして俺は避けきれずに両足を斬り飛ばされた。

 つまり俺は、試合にも勝負にも負けた、ということだ。

 

『そう落ち込むことではない。確かに貴様は弱いが、俺が戦ってきた生物の中で、一瞬とはいえ、誰よりも俺を本気にさせたのだ。むしろ誇るべきだ』

 

 そう言う"漆黒"は、本当に嬉しそうな雰囲気を放っている。

 

『くはは。最初はこの闘技場のルールに則って、貴様を殺そうとしたが、こうまで俺を楽しませると、殺すのが惜しくなってきたな』

 

 "漆黒"はまた考え事をし始めたのか、またもや剣を地面に突き刺し、手を顎に当て明後日のほうへと目を向ける。

 俺は正直、ここから一歩も動きたくない気分だったため、黙ってその様子を見守る。

 

 ──そんなに時間は経たなかった。

 "漆黒"は、再び剣を手に取ると、しゃがみこんでくる。

 俺と"漆黒"の顔の距離が近くなる。

 

『貴様、名を何と言う』

 

「……スズ」

 

『スズ。……ふぅむ、スズか。女子(おなご)みたいな名だな』

 

「ほっとけ」

 

『ふむ。決めたぞ、スズよ』

 

「何をだよ」

 

 "漆黒"の顔は、フルフェイスの兜で見えないのにもかかわらず、何故だかすんごい笑顔を浮かべているような感じがする。

 

『俺は、今からお前についていくことに決めたぞ!』

 

 うん、なんで?

*1
ファンタジー定番の雑魚モンスター

*2
文字通りゴブリンの赤ちゃん。大した攻撃もせず、これといった防御もしない雑魚




中途半端なところで終わっていいものか迷いましたが、なんだかこれ以上書くと一万超えそうだったので、2話はここで打ち止めです。
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