ノーダメ縛りの男、神ゲーに挑む   作:ハンター

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第2話

 

 

 

『──グギャ……ギャ…!?』

 

飛び出してきたゴブリンに矢を一撃。

 

「ふぅー、なるほど。こりゃ神ゲーだ」

 

ログインしてから既に1時間。

動きの確認も一通り終え、レベルもこの短時間で1から8まで上がった。

 

現実と遜色ない動きの実現。

モンスターの動きにラグもなく、タイミングがズレるなんてことも無いためここまでノーダメは余裕だった。

 

とはいえ──

 

「武器の耐久値がなあ……」

 

──弓を使う事に減っていく耐久値。

恐らく0になれば破損。もう使えなくなるんだろう。0になる前に修繕なりなんなりして長持ちさせることが前提。

 

もしくはいくつかの武器を併用して使い分けるなんて感じだろうか。思ったよりお金を消費することになりそうだが、まあそれはドロップアイテムを売ればなんとでもなる。

 

だが、ここで弓使いとしての弊害が出てくる。

それが矢の枯渇。まさかの基本矢は無限じゃない模様。なんてこった。

 

だが、まあ、モンスターからドロップした武器を矢にして打てることも分かったし何とかしよう。最悪矢を1本片手に突撃でなんとでもなる。

 

「ひとまずどこに行くか」

 

出身地、彷徨う者を選んだため、初期リスポーン位置がランダム。まだ街とかに行ってはいない。

インベントリに素材も溜まってきた。初期の"STR(筋力)"の値が低いからインベントリのアイテム量が溜まりすぎると動けなくなる。実際動きも鈍足みを帯びてきた。

 

一旦ここは街に帰って体勢を整えるのがいいんだろうが……、

 

「ファステイアよりもセカンディルの方が近いな」

 

初めの街、ファステイア(1st)よりも次の街、セカンディル(2nd)の方が近い。

確実にエリアボスが待ち構えてるんだろうが、楽をしたいならこのまま突っ切るに限る。だが、負ければ下手に時間がかかることになるし。何よりも──

 

「──負け星つけたくねー」

 

こちとらノーダメ男。

回復のポーションが無くなって負け、の考えは初めから無い。矢が無くなって攻撃の手が無くなった時が痛いのだ。

となれば、

 

矢が無くなった(攻撃できないから負け確)

殺されてリスポーン

 

という時間短縮ができない。

とはいえは、このまま引き返して初めの町に行くのもぶっちゃけ面倒い。

 

矢は既に残り8本。

ゴブリンたちの武器も矢にできると入っても、ドロップ武器は全部合わせて17本。

 

「しかも手斧とか、ナマクラもナマクラだしなあ。せめて矢にするなら──」

 

そこまで言った途端、近くの茂みがガサリと揺れた。

そこから飛び込んでくるひとつの影。それに向けて矢を片手に振り下ろす。

そのまま地面へとつき立てればそれは一匹うさぎのようなモンスター。

 

「お前の武器で最低限なんだよなあ」

 

そういうとポリゴン片へと弾けるうさぎ。

ヴォーパルバニー。

 

動きも素早くこちらの急所、特に首目掛けて一直線に跳んでくるモンスター。おそらくは初心者殺しのレアエネミー。

だがしかし、色んなゲームになれたゲーマーになれば直線的にしか飛んでこない単調なモンスターだ。対処は容易い。

 

こいつがドロップする"致命の包丁(ヴォーパルチョッパー)"。駆け出しのエリアにしては攻撃も高く、耐久値も中々な物。

 

「……はあああ、レアエネミーだけど矢の代わりに集めるかぁ」

 

そんなことを独りごちりながらドロップした短剣を拾う。

さっきみたいに矢を直で刺せば節約はできる。時たまゴブリンの手斧を矢にしてインベントリ内のアイテム料も調節しながらレベルアップがてら兎狩りと洒落込むか。

 

手を組み背中を伸ばして弓を片手に俺は歩き出した。

 

 

▷▷▷▷▷

 

 

「さぁて、ようやく準備が整った」

 

歩く俺の目の前に見えてきたのはひとつの吊り橋。

そしてそれの前に鎮座する巨大な大蛇。

 

 

【貪食の大蛇】

エリアボス:推奨レベル10/推奨人数3人

 

 

マルチ向けボスをソロ討伐か。まあ、その程度のことは慣れたもんだし問題は無いか。

蛇のモンスター。攻撃手段は噛みつき、巻き付き、尻尾……あとは毒とか?珍しさだと丸呑みとかもあるか。

 

純粋な矢は減らずに温存していたから8本。

ゴブリンの手斧は3本、致命の包丁は14本。

合計して弾数は25か。

 

レベルも既に15。推奨レベルは余裕で超した。

 

「──問題なし。さ、張り切っていこうか」

 

手始めに放つのはゴブリンの手斧。

この武器は威力はそこまでない、使い道なんてヘイト稼ぎくらいなもの。

 

弓で放ったその斧は蛇の眉間へとヒット。直後こちらを敵と認識したそいつは噛み付こうと口を開き突進してきた。

まずは避け……ずに致命の包丁を"2本"セットする。

 

弦を引き、狙い済ますのは両目。

突進してくる、つまり顔は常にこちらを向いた状態。ねらうにはベストなタイミング。

 

だが、

 

「思ったより口デッカ…」

 

開いた口が邪魔で正面からだと目が狙いづらい。

 

──となれば…!

 

突進に合わせてサイドに身体を回転させながら回避行動をとる。

直後、通り抜ける大蛇。に向けてすぐさま体勢低く致命の包丁を放つ。

 

飛翔するそれは吸い込まれるように片目へと直撃。のたうち回る蛇の体へと矢の1本を突き立てる。

それを足場にジャンプ。蛇の反対側に回り込み、そのまま空から致命の包丁を放ち残ったもう片目へ。

 

「ふぅー、にしても体が軽いな。さすが神ゲー。やりたいことをストレスフリーでできる」

 

そんなことを言いながら着地すれば後ろではダメージに体を暴れさせる大蛇さんが。

両目に刺さる致命の包丁。目が見えないそれにゴブリンの手斧を適当に放ち、当たるとこっちを認識。しっぽによるなぎ払いが飛んできた。

 

それを屈んでよけつつ、矢を1本差し上げる。

ダメージはそこまで。だが矢が刺さった場所に矢は残りっぱなしになる。これが弓の強みでもある。

 

抜かない限り常に一定のダメージが入る仕様。つまりスリップダメージが入る。大蛇さんに手はないので抜けないわけで。

ただ、致命の包丁は矢じゃない。いずれはポリゴン片になる使い捨て。勿体なく思うがしょうがない。ぶっちゃけ貫通力は矢以上。初撃の目への攻撃でかなりのダメージを稼げてるはず。

 

あとは武器が消えて目が回復する前に叩き潰す。

 

狙いは既に矢が刺さってる箇所、もしくは目。もしくは噛みつきのタイミングで口の中。

 

「……そういやスキルがあったっけな」

 

せっかくだし使っておこう。

矢を弓につがえ、狙いを済ませてスキル発動。

 

【チャージショット】

 

安直だがまあ始めたてだ。

効果は弓を引き絞ってる間が長いほどに矢の威力が上がるという単純なもの。

 

狙うは頭、その眉間。

そこに向けて矢を向け──

 

「……!……ぶねぇ」

 

──こちらに向けた尻尾の先からどろりとした液体が飛んできた。

間一髪で避け、溜めたスキルはその発射口へ。

 

地面を見れば毒々しい色がしたそれ。

十中八九毒だ。

 

警戒していてよかった。

 

「と、片目が復活したか」

 

気がつけば初撃の致命の包丁が消え、目も治っている。

治っためでこっちを睨みつける大蛇さん。

 

ガパリと口を広げ、その体をくねらせ突進してくる。それを見てこちらも足を踏み出し、前へと駆け出した。

 

そして、そのままその大きな口で食われそうになろうとしたその瞬間に発動。

 

【櫓越え】

 

上空への跳躍回避スキル。

 

大蛇の動きとタイミングを合わせ、頭上をとる。

そのまま弓に致命の包丁をつがえ、1発、2発と上から下へ重力の加速と共に攻撃を加える。

 

最後に自身の落下とともに手にした矢を復活した目へと向け突き立てるように頭に着地。

 

「……ま、こんなもんか」

 

頭から降りて地面へ着地すれば大蛇さんはポリゴン片となって霧散した。

 

思ったよりも矢と致命の包丁が残った。残った武器は売りに出して矢を大量買いするか。それよりも弓の耐久値がギリギリだ。

これは後の事を考えて予備弓を3つ4つくらい常備しとくか?いや、そんなに金あるかな。まあ、街行ってからじゃないと分からんか。

 

「ひとまずドロップアイテムの確保だな。レベルも上がったし、やっぱりソロ安定だな」

 

そんなことを言いつつ、何となくで目に着けたアクセサリーの目隠しを外してみた。すると、

 

「……………」

 

………もう一度つけてみる。

 

「……………」

 

上げて、付けて、上げて、付けて…………。

 

……うっわぁ、このアクセつけてる間視界不良だったのか。マジかよ。なんで俺は知らず知らずのうちに難易度上げてんだよ。

 

てか、外して見るとめっちゃ綺麗な世界だな。グラフィックしゅげー。

とりあえず、この目隠しはヘアバンドのようにデコに着けとこう。うん、そうしよう。なんか知り合いっぽいヤツいたら目に着けとけば何とか。

 

 

 

 

 

半裸の男が1人吊り橋の前であわあわする構図が出来上がった。




スキルとかはモンハン参考にしてる。
あと、矢が残って武器が消えるのは独自解釈。まあ大丈夫でしょう。
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