今回は普段よりも長めになりました
日本国内に存在する数多のオールフォーワンのアジトを潰していく日々を過ごしていた私とレディ・ナガン。
人里離れた場所に存在していたオールフォーワンのアジトの1つに足を踏み入れると、隠れ潜むことなく堂々と姿を現したハイエンドと脳無の軍勢。
大広間の半分以上を扇状に埋め尽くす脳無達の体色は黒く、最低でも上位の脳無であることは確定であり、そんな脳無の軍勢の中心に立つハイエンドが、特別な存在であることは間違い無さそうだ。
得物を構えて警戒しながらも個性無効化範囲を前方に伸ばして、ハイエンドや脳無達の個性を無効化しておいたが、それでも油断をすることはない。
黒く大きな巨躯と言える身体を持つハイエンドが、親指を額に当てて人差し指で天を指差しながら口を開く。
「カイホウセヨ!」
ハイエンドがそう言うと、背後に控えていた脳無の軍勢が此方へと押し寄せて来ようとした。
「一刀、飛梅」
脳無達が足を1歩踏み出した瞬間に、牽制として複数の飛ぶ刺突を連続で放ち、先頭集団の脳無達の頭部を正確に貫いて破壊。
頭部が破壊されて動きが止まった先頭の脳無達を、後方の脳無が押し退けてくるまでの間に、レディ・ナガンに指示を出す。
「レディ・ナガン、私の背後へ」
個性が無効化される範囲ではレディ・ナガンもライフルの個性は使えない為、私の背後で待機してもらった方が守りやすい。
それをレディ・ナガンも理解しているようで「了解」と言ったレディ・ナガンは、素早く私の背後へ移動した。
レディ・ナガンの移動が完了したところで、頭部を破壊された先頭集団を押し退けて踏み潰しながら此方へと近付いてきた脳無達。
素の身体能力だけでオールマイト以上の力を持っている脳無の軍勢は、個性が無効化される範囲に入ろうと統率されていて、動きには淀みが無い。
武装色により黒く染まった合金棒と、歴戦を経て常時黒く染まっている黒警棒で脳無達の攻撃を受け止めながら、瞬時に反撃を叩き込んでいく。
頭部を破壊する一撃を叩き込まれて倒れようが次から次へと現れる脳無達は、少なくとも百体を超える数が揃っているようだ。
戦っている私の動きを観察していたハイエンドは、脳無の軍勢を指揮しながら、自らも前に出てきた。
マスキュラーを素材として作られたハイエンドよりも強靭で凄まじいパワーを持っている巨躯のハイエンド。
「ヨクアツデハナク!カイホウヲ!」
叫ぶようにそんなことを言いながら両拳で激しい連打を繰り出すハイエンドの攻撃。
放たれる一撃一撃を残らず衝撃を殺して受け止め、後方には僅かな衝撃や風圧も届かせることはない。
「キエウセロ!」
渾身の力が込められたハイエンドの拳撃、その威力を合金棒で受け流し、放つ技は二刀の技。
「二刀、双魚」
受け流した力は身体を通過して、黒警棒へと伝わり、私の力と敵の力が組合わさって強力なカウンターとなった一撃を、敵に放つ技こそが二刀の技である双魚。
黒警棒で放った双魚は、ハイエンドの頭部を叩き潰すだけではなく、身体すらも破壊した。
残った脳無の軍勢も全て片付けたところで、神奈川県横浜市神野区の街中にオールフォーワンが現れたという目撃情報がヒーロー公安委員会から届く。
レディ・ナガンを背負った私は、空を高速で走って神野区へと急行したが、到着した神野区の喫茶店のテラス席にオールフォーワンを発見。
見聞色を使う前に発見できてしまったオールフォーワンだが、本物であるかどうかはまだ分からない。
「やあ、早かったね。目撃情報が流れるようにしてから数分もしない内に此処を見つけるとは、流石に想定外だよ」
話しかけてきたオールフォーワンは、楽しげな笑みを浮かべていて、余裕に満ち溢れているようだ。
余裕の理由を知る為に見聞色でオールフォーワンの思考を読み取った私は、急いでレディ・ナガンに指示を出す。
「レディ・ナガン、ヒーローとして神野区の住民達に避難を呼びかけてください。これから神野区は戦場になります。こいつは本物のオールフォーワンではありません。個性、複製で作り出された複製です」
その言葉を裏付けるように、私が個性無効化範囲を広げると、個性で作り出された複製のオールフォーワンが笑みを浮かべたまま消え失せていった。
「わかった。ヒーロー公安委員会直々の命令ってことにして他のヒーローにも避難を手伝わせとく。任せたぞブレイドハート」
それだけ言って、神野区を巡回しているヒーロー達を捜しに行ったレディ・ナガン。
複製のオールフォーワンから読み取った思考は「守る相手が多い場所に、複製の僕で誘き寄せてから、進化するハイエンドに加えて、改造したマキアと共に本物の僕でブレイドハートを殺す」というものだった。
つまり既に神野区にはオールフォーワンの手が伸びていることになる。
見聞色の範囲を神野区全体に広げた私は、僅かな異常も即座に感知することが可能な状態にしたが、どうやら既にハイエンドとマキアとやらにオールフォーワンは神野区に居るようだ。
跳躍してから空中を疾走し、私が辿り着いた場所は廃工場に偽装された脳無の格納庫。
瞬時に個性無効化範囲を広げておき、脳無の格納庫である場所から半径1000メートルは個性が使えない状態にしてから、内部に侵入。
踏み込んだ脳無の格納庫には、白髪の大男と、多数のハイエンドに、大男の倍は大きい身体で髪を生やしたハイエンドが存在していた。
「おや、本物の僕の居場所も見つかってしまったみたいだね。では開戦だ。出番だよ、マキア」
白髪の大男、オールフォーワンが大きな身体を持つハイエンドに、そう言うと、マキアと呼ばれたハイエンドの身体が肥大化するようにいびつに巨大化していく。
個性無効化範囲内で、個性を用いることなく身体を巨大化させて巨人と化した相手により、偽装された廃工場の天井は破壊されて、巨人の姿が露になった神野区の街中。
明らかに危険な相手が居ても、ヒーローがどうにかしてくれると思っている住民達は多く、街中に巨人が現れても直ぐには逃げてくれない。
「ヒーローは、大変だね。守るものが沢山あって」
逃げようとしない住民を守ろうとする此方を嘲笑うオールフォーワンは、巨人とハイエンド達に命令を下す。
「暴れろマキア。他のハイエンドは街を破壊して、人を殺せ」
「シュノ、メイレイ!」
真正面に居る私へと振り下ろされた巨人の拳を、合金棒と黒警棒を交差して私が受け止めた瞬間、動き出したハイエンドの集団。
杭を打つように合金棒を巨人の手の甲に深く突き刺して、地面に巨人の手を縫い止め、一時的にでも動きを封じてから、私は動く。
地を蹴り、空を蹴り、瞬時に移動してハイエンド達の脳天に黒警棒を叩き込んで頭部を完全に破壊した私は住民達を守ったが、そんな私にドン引きしていた神野区の住民達。
脳無が死体であるという情報を知らない住民達には、躊躇いもなく人を殺したように見えたようだ。
私がハイエンドから人々を守っていた間に、巨人の手の甲に突き刺していた合金棒は引き抜かれ、巨大な手によってへし折られて原型も残らなかった。
「ハイエンドがやられたか、だが、マキアと僕は残っている」
ハイエンド達が全て倒されたとしても、余裕に満ちたオールフォーワンの顔からは、笑みが消えていない。
巨人以外のハイエンドを失ったとしても、此方に勝つ手段がオールフォーワンにはあるということだろう。
「あれを踏み潰せ、マキア」
まだ避難しておらず、観戦でもしているかのように立ち止まって見ていた住民達を指差して、巨人に命じたオールフォーワン。
「シュノ、ココロノママニ!」
命令に忠実に従って跳躍した巨人は、神野区の住民達を踏み潰そうとしていた。
頭上から降ってくる巨体を見て、ようやく逃げ出した住民達だったが、我先にと逃げる人々に押されて倒れてしまい、逃げ遅れた人が数名。
その数名を助ける為に巨人に突撃した私は、刃の無い武器でこそ放てる一刀の技を黒警棒で放つ。
「一刀、八鏡」
八鏡は、斬撃ではなく強烈な打撃を飛ばす技であり、飛ぶ打撃で相手を吹き飛ばす為の技だ。
私が放った八鏡の一撃で吹き飛ばされた巨人が、偽装廃工場の跡地に突っ込み、重量級な身体が地に落ちたことで大きく揺れた地面。
悲鳴を上げて怯える人々へ「今の内に逃げてください」と言った私は、油断なくオールフォーワンと巨人を見据えて、敵の一挙一動を見逃さないようにしながら黒警棒を構えた。
すると地に倒れている巨人が起き上がる前に、オールフォーワンが親指を弾き、空気を指弾として連続で打ち出してくる。
黒警棒を振るい、全て打ち消したが、放たれた空気の指弾の威力は巨人やハイエンドのパンチよりも強力で、並みの人間に直撃すれば確実に一撃で死亡する威力であるのは間違いない。
個性無効化範囲内で、そんな攻撃が可能なオールフォーワンの肉体にも改造が施されているようで、素の身体能力が凄まじく強化されているみたいだ。
「完成した僕を相手に、よく戦えるね。流石はヒーロー、ブレイドハート。だけど、僕は一人じゃないのさ。いつまで寝ている、起きて戦え、マキア」
「シュノ、オオセノトオリニ!」
指示を待っていたかのように、倒れていた状態から立ち上がった巨人が両腕を振るうだけで、巻き起こる暴風と凄まじい衝撃波。
それら全てを黒警棒で斬り裂きながら巨人に接近した私は、巨人を断つ為に一刀の技を繰り出す。
「一刀、野晒」
武装色を纏わせて強力な飛ぶ斬撃を放ち、巨大なものを一振りで斬る為に使う一刀の技である野晒。
その斬撃によって、巨大な斧で断ち斬られたかのように頭頂部から真っ二つに両断された巨人の身体。
「これで、あとは貴方一人ですね」
構えた黒警棒の先端を敵に向けて言った私へ、オールフォーワンは笑顔のまま、拍手をしてくる。
「おめでとう、人々を狙うヴィラン達を倒したきみは間違いなくヒーローだよブレイドハート」
「ヴィラン達の親玉である貴方が残っていますので、お褒めの言葉は必要ありませんよ」
「いやいや、きみは僕にとってもヒーローだぜ。簡単な個性じゃないと扱えない愚図の殺処分を代わりに行ってくれて僕は大助かりだ」
「もしかして私を怒らせようとしていますか?」
「そうだとしたらきみは、どうするんだい」
更に笑みを深めたオールフォーワンは、楽しそうな顔を崩すことはなかった。
「まあ、私は貴方に怒っていない訳ではないんですよ」
「そうなのかい、とてもそうは見えないね」
煽るような言葉を止めることがないオールフォーワンは、言葉で此方の神経を逆撫でしようとしているようだ。
だが、そんなことには、もう意味はない。
何故なら私は、既に、これ以上ないほどに怒っているからだ。
見聞色で読み取ったオールフォーワンの思考から、他者を利用して全てを奪うことを考え、誰かの未来を阻む為に生きていることが理解できた。
嫌なことの方がずうっと覚えているから、人の未来を阻むという身勝手な考えを持つオールフォーワン。
個性が無くとも強靭な身体を持ち、他者を害して個性や命を奪うことに躊躇いがないオールフォーワンという悪は、倒すのではなく殺す必要がある相手だろう。
笑顔のまま迫り来るオールフォーワンの拳の一撃を黒警棒で受け止めた瞬間、周囲の物体が強烈な風圧と衝撃波で弾け飛んだ。
放たれ続ける高威力な拳の弾幕を圧倒するほどの速度で黒警棒を振るい、試しに打撃をオールフォーワンの腹部に叩き込んでみた。
黒警棒で打ってみた感触からすると、オールフォーワンは凄まじく強度の高い身体を持っているらしい。
黒警棒だけでは威力不足かと判断し、伸ばしていた黒警棒を縮めて懐に納め、腰の帯に差していたサポートアイテムを引き抜いて構える。
頑丈な合金で、竹刀の形を模して作られたサポートアイテムは、そのままなら単なる打撃武器だ。
「このサポートアイテムには、一つだけギミックがあります」
そう言いながら、私が一定の速度を超える速さでサポートアイテムを振るった瞬間、金属で竹刀を模して作られた刀身が潰れて、刃を剥く。
一振りの刀と化したサポートアイテムは、武装色の覇気で黒く染まって一時的に黒刀と化し、私の全力でも折れることはない。
「まあ、こんな風に刀となるんですよ。それでは私の一刀の奥義を二つ、貴方に見せてあげましょう」
黒刀と化した刀を構え、間合いに踏み込んだ私は、オールフォーワンの全身から、ハリネズミの針のように突き出てきた骨の刃達を、一刀の奥義の一つで微塵に斬り裂いた。
「一刀、奥義、天鎖斬月」
神速すらも超える速さで無数の斬撃を繰り出す一刀の奥義である天鎖斬月で、骨の刃を微塵に斬り裂かれて無防備となったオールフォーワンへと、破壊力が最も高い一刀の奥義を放つ。
構えた黒刀から黒い雷が迸るように見えるほど力強く、一刀に宿った武装色と覇王色の覇気。
「一刀、奥義、残火の太刀」
刀一本に集約して纏わせた全力の流桜と覇王色によって、細胞単位での内部破壊まで引き起こす一刀の技で、最も破壊力と殺傷力がある奥義が、残火の太刀。
覇気を使えぬ者には受け止めることは不可能な斬撃が、オールフォーワンへと叩き込まれた瞬間。
黒刀の刃が通り過ぎた部位から、まるで崩壊するかのように内部破壊が始まり、完全に消滅したオールフォーワンの身体。
「これは、後片付けの方が手間取りそうですね」
ハイエンドや巨人の身体が転がる周囲の惨状を見ながら、私はそう呟いた。
その後、ハイエンド達の残骸を掃除することになったが、巨人の身体をどうやって運ぶかに困っていたヒーロー公安委員会の面々。
とりあえず運ぶのは手伝っておいたが、頑丈な身体をしていたハイエンド達は、処理するのも一苦労だろう。
「処理にも手伝いが必要なら呼んでください」とは言っておいたが、特に連絡は来ないので、無事に処理できたのかもしれない。
こうして神野区での戦いは終わり、レディ・ナガンとのチームアップも終了したかと思っていたが、また私の家にまでやって来たレディ・ナガン。
「今度は何のご用でしょうか」
「やり残したことがあったと思ってな。ちょっと屈んでくれるか、剣心は身長が高いから、このままだと届かない」
そんなことを言いながら近付いてきたレディ・ナガンこと筒美さんの要望に応じて、身体を屈めると不意に口に触れる柔らかな感触。
筒美さんにキスされていることに気付いた私は、今生のファーストキスが奪われてしまったな、と考えながらも、そういえば勝利の祝福のキスを筒美さんはしたいと言っていたな、と思い出す。
ちょっと長くないですかね、と思う程度には長いキスが続いていると、自宅の玄関前でキスをしている私と筒美さんを目撃した人物が叫んだ。
「寝取られやんけ~!寝取られとか絶対許せんでござるよぉ!」
どうやら目撃者は忍野さんだったらしい。
「覚えときな、スナイパーは獲物を逃さない」
キスを終えて、そんなことを言いながら笑った筒美さんが、とても嬉しそうな顔をしていたから、筒美さんが嬉しいなら良いか、と私も思えた。
まあ、とりあえず今は、忍野さんから逃げるとしよう。
私は筒美さんを抱えて走り出し、忍野さんから逃げ出しておいたが、凄まじい速度で追いかけてくる忍野さんは目が血走っているようだ。
今の忍野さんには、捕まらないように気を付けた方が良いだろうな。
今回現れたハイエンドの中でも強力な個体はリ・デストロとギガントマキアを素材として作られていました
ちなみに忍野さんは先生に追いついたら凄いことをしようと考えていたようですが、先生には全く追いつけなかったようです
見たい番外編があれば選んでください
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志村菜奈世代に転生
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オールマイト世代に転生
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緑谷くん世代に転生
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最終話の続き