今回は4000文字くらいになりますね
オールフォーワンに狙われていたが、ヒーロー達の尽力により、個性を奪われることなく保護された壊理という女の子。
現在は雄英で預かっている壊理ちゃんの個性は、巻き戻しというものであるが、万が一巻き戻しの個性が暴走すれば、人間を生まれる前の姿にまで戻してしまう可能性もあるようだ。
その為、個性を抹消して暴走を止めることができる相澤さんが中心となって、壊理ちゃんの面倒を見ている雄英の教師達。
生物にしか効果がないとしても強力な巻き戻しの個性は、エネルギーを蓄積して使用する個性であるようで、壊理ちゃんの頭に生えている角が大きくなると、それだけ大きく巻き戻すことが可能となるらしい。
そんな壊理ちゃんに関する詳細な情報を雄英の最高責任者である根津校長から電話で話されたが、壊理ちゃん関係で私に協力してほしいことがあるみたいだった。
休日に雄英高校にまで出向き、ロボットに案内されて教員の寮にまで移動すると、待っていた雄英教師達と一緒に壊理ちゃんの部屋に向かう。
壊理ちゃんと初めて対面することになったが身長差が凄まじいので、私は床に片膝をついて身体を小さく屈め、壊理ちゃんと目線を合わせて挨拶した。
「はじめまして、私は常無剣心と申しますが、よろしくお願いします壊理ちゃん」
オールマイトさんのおかげで身長が大きな相手にも慣れていたのか、私をあまり怖がることはなかった壊理ちゃん。
そんな壊理ちゃんに持ってきていたお土産を渡すことにした私は、雄英高校に来るまでの間に買っておいたアップルパイを紙袋から取り出す。
「壊理ちゃんはリンゴが好きと聞いていましたので、今日はアップルパイを持ってきていますよ」
「アップルパイ?」
社会と切り離されて閉鎖された場所で過ごしていた壊理ちゃんは、アップルパイが何かを知らないようだった。
壊理ちゃんを道具のように扱っていた治崎に対する凄まじい怒りがこみ上げてきたが、それは一切表に出すことなく、アップルパイについて簡単な説明をしておくことにする。
「アップルパイは、リンゴを使った甘いお菓子ですが、更に甘くしたリンゴをサクサクとしたもので包んでいるお菓子ですね」
「更に甘く」
リンゴを更に甘くしたお菓子であるアップルパイに興味を持った様子の壊理ちゃんの目線は、私が持つアップルパイに釘付けだ。
「食べてみますか?」
「うん、食べる」
迷うことなく頷いた壊理ちゃんにアップルパイを手渡して「さあ、どうぞ」と言っておくと、アップルパイを食べ始めた壊理ちゃんは夢中になって食べていたな。
初めて食べたアップルパイを、とても気に入っているみたいだった壊理ちゃん。
それでも笑顔を見せることがない壊理ちゃんは、まだ素直に感情を表に出せていなかった。
笑いたくないという訳ではないとするなら、もしかすると壊理ちゃんは笑い方を知らないのかもしれない。
笑うこともできない環境で壊理ちゃんを過ごさせていた治崎に対する怒りが止まらないが、それは決して表に出さずに、私は壊理ちゃんに笑顔だけを見せておく。
今日は顔合わせといったところなので、壊理ちゃんにお別れの言葉を伝えてから部屋を出た私は、根津校長が待つ校長室まで移動し、詳しい話を聞くことにした。
「直接会うのは久しぶりなのさ。常無くん」
椅子に座りながら片手を上げて、にこやかに挨拶してきた根津校長。
「お久しぶりです根津校長。相変わらずいい毛並みですね」
此方も挨拶を返しておき、根津校長の白い毛並みを褒めておく。
「いい睡眠と健全な食生活で維持している自慢の毛並みさ。毛並みについて語るのも悪くはないけれど、本題に入ろうか。壊理ちゃんの様子は、きみから見てどうだったかな?」
真剣な顔で問いかけてくる根津校長は、私から見た壊理ちゃんの様子が知りたいみたいだ。
「個性を暴走させるようなことは今のところはないように見えます。味覚にも異常はないようですが、喜びの感情を素直に表現することができなくなっているのかもしれませんね。あの子は、笑えていませんでした」
根津校長からの問いには、短い間でも壊理ちゃんと接してみて、私なりに理解できたことを答えておくと、納得したように頷いていた根津校長が口を開いた。
「雄英で壊理ちゃんを預かることになってから、彼女は1度も笑ったことがないみたいなのさ。これまで笑えるような環境で生きていなかったあの子は、きっと笑い方を知らないんだ」
根津校長が言ったことは恐らく正しくて、社会と切り離された環境で治崎に道具のように扱われて傷ついた壊理ちゃんの心は、まだ癒されていないということなのだろう。
身体の傷は癒えても、傷を負った心は、そう簡単には癒されない。
「それは大問題ですね。余計なお世話かもしれませんが、壊理ちゃんには笑えるようになってもらいたいと私は思います」
笑い方を知らない壊理ちゃんに対して、純粋に思った気持ちを私は言葉にした。
「大問題だと思うのさ。だからあの子に笑ってもらう為に、あの子の個性を無効化できる常無くんには協力してほしい」
「勿論協力はしますが、具体的には何をすればいいんでしょうか」
「まずは壊理ちゃんに常無くんがどんな人か理解してもらうところから始めよう。これから定期的に雄英に来て、壊理ちゃんと接してくれればいいのさ」
「わかりました。そうしましょう」
最初の方針が決まったところで会話を終わらせて、校長室を出た私は、休日のスケジュールを確認しておく。
とりあえず確認した休日のスケジュールには問題が無かったので、休みの日は必ず1回は雄英高校に来て、壊理ちゃんと接することに決めた。
普段は中学校で教師として働き、生徒達に担当科目を教えたり、担任教師の仕事をしてから、ヒーローを目指す教え子に協力していく日々を過ごす。
そして休日には雄英高校に出向き、壊理ちゃんと接していったが、どうやら今の私は「アップルパイの常無さん」として覚えられているらしい。
そんなに印象に残るほどにアップルパイが美味しかったなら、アップルパイの人として、またアップルパイを持ってくるのも悪くはないなと思えた。
今度はどんなアップルパイを持ってくるかを考えておき、試しに他にはどんな人が居るのかを壊理ちゃんに聞いてみる。
どうやら「綿菓子の人」も居るみたいで、そんな「綿菓子の人」が誰かと思えばオールマイトさんだったようだ。
「わーたーがーし機だ!」とか言いながら綿菓子機を持ってきて、作った綿菓子を壊理ちゃんに渡してくれたオールマイトさん。
だから壊理ちゃんにとってオールマイトさんは、ナンバーワンヒーローオールマイトではなく「綿菓子の人」だった。
再び訪れた休日、雄英高校に向かう途中のパン屋でカスタードクリームが入っている四角いタイプのアップルパイを購入。
壊理ちゃんからの呼び名が「アップルパイの常無さん」な私は、買ってきたアップルパイを壊理ちゃんに渡してみた。
「今回のアップルパイはカスタードクリームが、たっぷり入っている四角いタイプのアップルパイですね」
私の説明を聞きながら四角い長方形のアップルパイを一口かじり、目を輝かせていた壊理ちゃん。
「甘くて美味しい!」
接していく内に少しずつ感情を表現できるようになってきていた壊理ちゃんだったが、それでもまだ笑えてはいない。
ちょっと今までとは違うことをしてみようかと考えた私は、根津校長に許可を取ってから、壊理ちゃんを抱えたまま、スピードをかなり控えめにした状態で低空を駆ける。
「飛んでる!」
実際には空を走っているので飛んでいる訳ではないが、壊理ちゃんが空を飛んでいるように感じているなら、それを否定しない方が良さそうだ。
「一緒に飛んでみた気分はどうでしょうか」
「びっくりしたけど、凄かった」
低空でも空を移動したことに驚いたみたいだが、怖さはあまり感じていない様子の壊理ちゃん。
私に対して安心感を感じてくれるようになっているみたいで、壊理ちゃんに私が危害を加えるようなことはないと信じてもらえているらしい。
それからしばらく日々が過ぎ去り、やって来た休日に、普段とはちょっと違うアップルパイを買っていこうと考えて、様々なアップルパイが売られている場所を探してみる。
根気よく探してようやく発見したアップルパイ専門店に入ってみると、客足が絶えることのないこの専門店が、かなりの人気店であるのは間違いなかった。
アップルパイ専門店である為、様々なアップルパイが売られており、どれも美味しそうだ。
何を買おうか迷っていると「お悩みのようですな青年」と話しかけてきた男性。
「オススメは、チェダーチーズアップルパイ。チーズのないアップルパイなんて、抱擁のないキスのようなものだ、という言葉もあり、つまりチーズの塩味がリンゴの甘味をより引き立てるのだよ」
ちょっとした知識も語りながらチェダーチーズアップルパイに対して語り出した髭を生やした男性は、私よりもアップルパイには詳しそうだった。
「なるほど、そんな言葉もあるんですね。教えてくれてありがとうございます。ちなみに貴方は店員さんでしょうか」
「只の通りすがりのアップルパイ好きさ。チェダーチーズアップルパイの良さを布教することに喜びを感じるので布教を」
「そうですか、嘘を言っている訳ではないようですね」
世の中には本当に様々な人が居るな、としみじみと思いながら、一応オススメされたチェダーチーズアップルパイを試しに買ってみた私は店外に出て味見をしてみる。
チェダーチーズの塩味とアップルパイの甘味が絶妙に組合わさった味わいなチェダーチーズアップルパイ。
確かに美味しいアップルパイではあったので、今回のお土産は、これに決めることにした。
店内に戻って再びチェダーチーズアップルパイを購入した私に、満足気に頷くアップルパイ好きの男性は、布教が成功したことに喜んでいたみたいだ。
そんなこともありながら雄英高校に向かい、到着した壊理ちゃんの部屋。
「アップルパイの常無さんが、今日もアップルパイを持ってきましたよ」
そう言いながらアップルパイの入った紙袋を見せた私に「アップルパイの常無さん!」と近付いてきた壊理ちゃん。
さっそくチェダーチーズアップルパイを壊理ちゃんに食べてもらうと「んん!」と入っているチェダーチーズに戸惑っていたりもした。
それでも「しょっぱくて甘くて美味しい!」と言った壊理ちゃんの顔は、自然に嬉しそうな笑顔になっていて、やっと笑った壊理ちゃんを見れた私の顔にも笑みが浮かぶ。
笑い方を知らなかった壊理ちゃんが、今こうして笑ってくれたことが嬉しくて仕方がない。
まあ、アップルパイ専門店で出会った名前も知らない男性にも、再び会うことがあれば、感謝しておくとしよう。
綿菓子の人と呼ばれていたオールマイトは、綿菓子機で綿菓子を作る技術を向上させて、花のような綿菓子を作ることもできるようになっていたりします
ちなみにアップルパイ専門店で先生が出会った髭を生やした男性は、オフの日の弾性紳士ヒーロー、ジェントル・クリミナルですね
見たい番外編があれば選んでください
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志村菜奈世代に転生
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オールマイト世代に転生
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緑谷くん世代に転生
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最終話の続き