今回は3800文字くらいになります
雄英で過ごす壊理ちゃんは自然に笑うことも増えてきたようで、笑顔を見せてくれるようになった壊理ちゃんに、雄英の教師達も喜んでいたみたいだ。
休日に雄英高校に出向いて壊理ちゃんの部屋まで移動し、また今日も会いに来た私に笑った顔を見せてくれた壊理ちゃん。
個性を無効化できる私なら近くに居ても巻き戻してしまうことがないと安心してくれている壊理ちゃんは、考えていた様々なことを話してくれる。
それは、いつも美味しいアップルパイを持ってきてくれる私への感謝や、私以外の誰かを個性で巻き戻してしまうのではないかという恐怖を感じていることだった。
自身の個性で誰かに害を与えてしまうのではないかと考えることが出来ているのに、個性を暴走させてしまうことがあるのは、扱い方を知らないからだろう。
個性を使いこなせるようになる為には、何度も個性を使って、訓練をするしかない。
絶対に個性では巻き戻されず、個性がもし暴走しても止めることが出来る私に、壊理ちゃんを任せた根津校長の判断は正しいと言える。
それでも私は永遠に生きていける訳ではないので、壊理ちゃんよりも早く死ぬ筈だ。
まだまだ時間はあるが、私が生きている内に壊理ちゃんは自身の個性を使いこなせるようにならなければいけない。
一応私の方は、個性を使いこなす訓練の手伝いをする時間はあるので、あとは本人のやる気次第になるな。
まだ自分自身の個性を恐れている壊理ちゃんに、巻き戻しの個性は誰かを助けることも出来る個性であると伝えてみることにした。
「例えば、誰かが数分前や数十分前に怪我をしたとして、その時に壊理ちゃんが個性を使いこなせるようになっていれば、怪我をする前に巻き戻すことも可能でしょうね。上手く使えば誰かを助けることが出来る壊理ちゃんの個性は、そんな優しい使い方も出来る筈ですよ」
「わたしが、誰かを助けられる」
壊理ちゃんは、巻き戻しの個性が誰かを助けることが出来る個性であるとは考えてもいなかったようで、そう言われたことに驚いている様子だった。
「個性が暴走すれば、確かに誰かに害を与えてしまうかもしれません。ですがそれは個性の扱い方を訓練して学べば防げることになります」
「訓練すれば防げるの?」
もう暴走したくはないと思っているようで、訓練をすれば暴走を防げるのかを聞いてきた壊理ちゃん。
「何度も個性を使って訓練して扱い方を身に付ければ、暴走の危険性は確実に少なくなりますよ。個性とは身体機能、使う度に理解は深まるので、何が出来て何が出来ないのかを知ることも出来るでしょう」
「巻き戻しで、出来ること」
壊理ちゃんは自分の頭に生えた角を触り、巻き戻しの個性で何が出来るのかを考えているようだ。
「傷ついた誰かを助けることが出来るようになるまでは、時間がかかるかもしれませんが、私と一緒に個性の訓練を頑張ってみませんか」
「常無さんが一緒なら、頑張れそう。わたし、やってみる」
やる気になってくれた壊理ちゃんと個性の訓練を始めることになったが、生物を対象とする巻き戻しの個性を使いこなす為に、とりあえずまずはトカゲを捕まえることから始めた。
尻尾が切れても死ぬことがないトカゲの尻尾を、巻き戻しで元に戻すという個性の訓練を、壊理ちゃんと一緒に行っていく日々。
巻き戻しの個性を使いこなす為に行う訓練を繰り返して、壊理ちゃんの個性が暴走しそうになれば私の個性で無効化して止め、訓練を続ける。
幾度も個性の訓練を続けた結果、次第に巻き戻しの感覚を掴めるようになっていた壊理ちゃん。
最初はトカゲの尻尾だけで行っていた訓練も、少しずつ大きな生物に変わっていき、今では怪我をして骨折していた犬を巻き戻して、無傷に戻すことも出来るようになっていた。
熱心に訓練を続けることで、巻き戻しの感覚を完全に掴んだ壊理ちゃんは、数分から数十分、数時間から数週間、数ヶ月から数年単位で巻き戻すことも可能になったらしい。
定期的に壊理ちゃんが訓練した成果は根津校長に報告していたが、数年単位で安全に巻き戻せるようになったことを根津校長に報告すると、呼び出されることになった私と壊理ちゃんは校長室に向かう。
到着した校長室には根津校長だけではなくオールマイトさんまで居て、詳しい話を聞いてみると、どうやらオールマイトさんが6年前に負った怪我を壊理ちゃんの巻き戻しで治してほしいようだ。
傷により半壊した呼吸器官と全て摘出された胃袋すらも、巻き戻しが成功すれば元に戻せるかもしれないな。
壊理ちゃんの角は充分に伸びているので、6年以上巻き戻す為のエネルギーは、しっかりと蓄積されている。
根津校長と私が見守る前で、オールマイトさんに触れた壊理ちゃんの頭に生えた角が輝き、発動した巻き戻しの個性。
オールマイトさんの肉体だけが巻き戻されていき「6年と6ヶ月巻き戻したよ」と巻き戻しを止めた壊理ちゃん。
「呼吸がしやすい。そして胃袋が確かにある。ありがとう壊理ちゃん。きみのおかげで、わたしは健康な身体を取り戻せた」
巻き戻しによって健康な身体を取り戻せた様子のオールマイトさんは、壊理ちゃんに深々と頭を下げて感謝をしていた。
「綿菓子のお礼」
そう言って笑っていた壊理ちゃんに「誰かを助けることが出来るその個性で、わたしは助けられた。本当にありがとう」とオールマイトさんも笑顔を返す。
「壊理ちゃんが自分の力を使いこなせるようになったことは、この目で確認できたのさ」
そう言って頷く根津校長は、個性の扱い方をしっかりと学んだ今の壊理ちゃんなら、巻き戻しの個性を暴走させるようなことが無いと理解してくれたようだ。
「これで、私の役目も終わりですかね」
「終わりなんて寂しいことは言わないで、常無くんには壊理ちゃんと楽しい思い出を沢山作ってほしいのさ」
「楽しい思い出ですか。巻き戻しの個性が狙われる可能性が高いので、壊理ちゃんの外出許可は、まだ出ていないんですよね。となると雄英の中だけで可能なことになりそうですが」
「1ヶ月後に雄英高校では雄英文化祭というイベントがあるのさ。今年は外部参加を基本的には許可していないけれど、常無くんと壊理ちゃんの2人を捩じ込んでおくことくらいは問題ない」
「それは問題ないんでしょうか」
「校長として恥じることはしてないのさ。それはそれとして文化祭当日に人が多いところにいきなり行くと壊理ちゃんもびっくりしてしまうだろうし、今日は文化祭を準備している生徒達の様子を一緒に見に行ってくるといいよ」
根津校長に勧められて壊理ちゃんと一緒に雄英高校の内部を移動した私は、雄英の生徒達が文化祭の準備を行っている場所に到着。
雄英文化祭は、ヒーロー科が中心だった雄英体育祭とは違って、他科が主役の場を与えられている為、張り切っている面々も多いそうだ。
「ブレイドハートだ」
「ヒーローコスじゃなくて普通にスーツ着てる」
「子連れだ」
「子持ちだったのか」
「あっ、脳が破壊される」
「脳が壊れる音が聞こえるよ」
文化祭の準備をしていた雄英の生徒達が此方を見て、そんなことを言っている声が聞こえたりもした。
一緒に行動している壊理ちゃんを私の子どもだと考えている生徒達も少なくはないようだったな。
1年A組はバンドとダンスを見せるつもりのようで、練習を行っている真っ最中だったが、此方を発見した忍野さんが凄まじい速度で近寄ってくる姿が見える。
とりあえず忍野さんの言動は壊理ちゃんには悪影響になりそうだと判断して、忍野さんが此方に到着する前に、両手で壊理ちゃんの耳を素早く塞いでおいた。
「こ、こ、子ども!子どもでござる!先生の子どもでござるか!せっかく回復した拙者の脳が再びの強烈な寝取られで破壊されるでござるよ!」
やはりそんなことを言い出した忍野さんは物凄く動揺していたが、壊理ちゃんを私の子どもだと勘違いしている忍野さんは、膝がとてつもなく震えるほどの衝撃を受けているらしい。
まるで強烈なパンチがクリーンヒットしたかのように膝の震えが止まらない忍野さん。
私は特に何もしていないのに、壊理ちゃんを私の子どもと勘違いした忍野さんは、今にも倒れそうな状態となっていた。
そんな忍野さんを心配して壊理ちゃんが「この人は大丈夫なのかな?」と聞いてきたが、忍野さんが受けているのは精神的なダメージなので、肉体を巻き戻しても意味はない。
壊理ちゃんの耳を塞いでいた手を一旦離し「ちょっと精神的なダメージを受けているだけですね」と伝えておく。
「落ち着いてください。壊理ちゃんは私の子どもではありませんよ」
私がそう言っても全く聞いていない様子だった忍野さん。
「こうなったら、拙者も先生との子どもを!」
遂にはそんなことまで言い出して此方に近寄って来ようとした忍野さんに、私は蹴りで放つ飛ぶ打撃を素早く叩き込んでおいた。
壊理ちゃんが見ている前で何をしようとしているんですか、という怒りも込められた飛ぶ打撃。
それが見事に直撃して完全に気絶していた忍野さんは、吹き飛んだ場所で倒れたまま動かない。
勢いよく吹き飛んで倒れた忍野さんが、流石に心配になった壊理ちゃんが巻き戻しの個性を使ったので、忍野さんの身体は万全に戻ったが、気絶したままだった。
それから1年A組の生徒達に忍野さんを預けておき、壊理ちゃんについても説明出来ることは説明しておいたので、私が子持ちだという誤解は解けたようだ。
まあ、一緒に居ると家族に見えるほどに壊理ちゃんと仲良くなれていたなら、それはきっと悪いことではないだろう。
壊理ちゃんの個性で巻き戻されたオールマイトの身体は、全盛期に戻りました
常にマッスルな状態を取り戻したオールマイトは、ワン・フォー・オールの残り火もまだ残っていますので、もうしばらくヒーロー活動ができそうです
ちなみに脳が破壊されていた雄英の生徒達はブレイドハートのガチ勢ですね
見たい番外編があれば選んでください
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志村菜奈世代に転生
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オールマイト世代に転生
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緑谷くん世代に転生
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最終話の続き