ハイエンドと呼ばれた脳無が現れた日の翌日、まだ残っていた周辺住民を説得して避難させていたヒーロー達。
「何で家から出ないといけないんだ」と避難に乗り気ではない住民達も居て、一部のヒーローが説得に苦労していた最中。
新たな脳無が1体ほど、警察署から少し離れた場所に現れた。
脳無は黒い霧のようなワープゲートを通って現れたらしいが、座標移動を可能とする黒霧とやらの個性が使われたのは間違いない。
増援に来ていたヒーロー達が迎え撃とうと集まってくれていたが、感じる気配からして今回の脳無は明らかに、通常の脳無とは違う相手だ。
脳無が拳を構えた時、誰よりも速く前に出た私が、振るわれた拳を黒警棒で受け止めた瞬間、巻き起こった凄まじい風圧が周囲のものを吹き飛ばしていく。
ここまではハイエンドの時と同じだったが、個性無効化の範囲内に入っている脳無の両腕が膨れ上がり始めた。
常時発動型で範囲内では個性が使えなくなる個性無効化の範囲は狭めていない為、脳無の両腕が膨張したのは個性ではないということだろう。
膨れ上がった脳無の両腕は、これまで以上の力を発揮し、マスキュラーを素材にしたハイエンド以上の力を振るう脳無。
力だけではなく速度も上がっている脳無が繰り出す拳の連打は絶え間が無い。
黒警棒で脳無の拳を受け止めて確かめたことだが、通常の人間の身体とは違って、頑丈な骨の層が幾重も積み重なっている身体を持っているようだ。
並みの人間とは段違いな強度を持つ脳無の身体は、凄まじいパワーを出していても自壊するようなことはなかった。
より激しさを増す脳無の拳打を受け止め続けるだけではなく、放たれる拳に合わせて黒警棒を叩き込んでいくと、真正面から打つかり合うことになる拳と黒警棒。
脳無の拳による連続の殴打を迎え撃つのは、私が振るう黒警棒による打撃。
拳撃を上回るほどに速く振るった黒警棒で、連撃を繰り出していく。
脳無が拳で1打を放つまでの間に、黒警棒で8打を叩き込む程に速度を上げた私は、頑丈な脳無の身体すら破壊して貫く一刀の技を放つ。
「一刀、雀蜂雷公」
あらゆるものを穿ち貫く突き技である雀蜂雷公で、頭部に拳大の穴を開けて完全に貫くと、動きが止まった脳無。
やはり頭部が弱点というところは変わっていなかったらしい。
もう動くことはない脳無の身体には、またもやスピーカーが仕込まれており、聞き覚えのある声がスピーカーから発せられた。
「深化していく個性に身体を対応させるべく、人が獲得した新たな形。それを得た脳無を送り出してみたんだが、この音声が再生されているということは駄目だったみたいだね」
どうやら昨日と同じく脳無が倒された時にだけ、身体に仕込まれたスピーカーから音声が再生されるように設定されていたみたいだ。
「それでも見ただろう。きみの個性無効化でも無効化出来ない脳無の成長を」
「髪が伸びる事や爪が伸びる事と同じように、個性を用いなくとも身体を自在に変化させることが可能となるのは、まさに進化と言える筈だ」
「これこそが超人社会の行きつく先さ」
楽しげに語り続ける音声の再生は、まだ止まることはない。
「ああ、それと、最近素晴らしい出会いがあった僕には、もう弔は必要ないが、今回もきみには贈り物を用意してあるんだ」
「金属生成と金属操作の個性の組み合わせで、僕が手作りしてみた超圧縮金属になるが、受け取ってもらえると嬉しいね」
音声の再生が終わると同時に遥か上空に開いたワープゲートから出現したのは、警察署よりも巨大な金属の塊。
上空から落下してくる金属塊は、このまま何もしなければ警察署を完全に押し潰すだろう。
落下してくる金属塊を何とかしなければ、警察署だけではなく周辺の被害も凄まじいことになるのは間違いない。
とりあえず被害が出る前に、私があの金属塊を細かく斬っておくとしよう。
「一刀、殲景・千本桜」
黒警棒を振るって放つ一刀の技、殲景・千本桜は、無数の飛ぶ斬撃を連続で繰り出す技だ。
鉄すらも容易く断つ無数の飛ぶ斬撃で、粉微塵に斬り裂いた金属塊。
粉微塵になった結果、大量の金属粉が降り注いでくることになったが、ここには増援で来たバーストエンドくんが居る。
個性無効化範囲外に出たバーストエンドくんが放つ技は、エンデヴァー直伝の必殺技。
「プロミネンスバーン!」
上空で広範囲に放たれた高火力の蒼い炎が、降り注ぐ金属粉を完全に消し去っていき、あとには何も残ることはない。
「ありがとうございます。助かりましたよバーストエンドくん」
「感謝はいらないさ。ヒーローとして当然のことをしただけだからな。でも打撃は欲しい。さあ、その警棒で俺を叩くんだ!バッチコーイ!」
手助けに感謝しておくと、何故か妙なテンションになっていたバーストエンドくん。
とても期待した目で此方を見ているバーストエンドくんには悪いが、私は特に理由もないのに誰かを殴ったりはしないので、諦めてもらうしかないな。
なんてことがあったりもしたが、それから数日間は特に襲撃も無く、転弧くんが狙われるようなことも無かった。
数日間の間に警察と協力しているヒーローのグラントリノさんにより、黒霧も捕まえることができたようで、オールフォーワンの配下で座標移動が可能な個性持ちは、黒霧の他にはいないらしい。
他の転移系個性への対策として、常に現在地を示すデバイスを転弧くんに渡しておくことになり、転弧くんが転移させられた場合は、直ぐに私に情報が届くようにしてもらった。
それ以外にも転移系個性対策を山ほど行ったことで、なんとか転弧くんの安全が確保できたと判断されたみたいだ。
ようやく家に戻っても構わないと言われた私は、久しぶりに家に帰ることにして、空になっている冷蔵庫に詰め込む為の中身を買いに行く。
両手に一つずつ持つ買い物袋一杯に詰め込んだ様々なものを、早めに冷蔵庫に入れようと思って移動した自宅玄関に、立っていた忍野さん。
「お久しぶりです忍野さん」
私がそう話しかけてみた瞬間、此方を見た忍野さんは高速で私に近付いてくる。
「うおおおお!先生うおおおお!」
そんなことを言いながら近付いてくる忍野さんは、いつものござる口調ではなく完全に眼が血走っていた。
今の忍野さんに捕まるとまずいことになりそうだと直感で思った私は、とりあえず全力で逃げておく。
忍野さんが落ち着くまで少し待ってみることにしたが、一応買い物袋には保冷剤も入れてあるので、直ぐにナマ物が痛んだりはしない。
逃げながら何度か声をかけていくと「拙者は正気に戻ったでござるよ!」と言い出した忍野さん。
「本当ですか?」
「本当に本当でござる。忍者は嘘つかないでござるよ。拙者の曇りなきこの眼を見るでござる。トラストミー!」
「どう見ても眼が血走ってますが」
「それはもう、久しぶりに先生に会えた興奮が治まらないだけであって、えっちなことをしようとは少しくらいしか考えていないでござるよ」
「そんなことを少しも考えないようになってから、また会いましょう」
「それは拙者に死ねと言っていることと同じでござるな」
「とりあえず先生は、冷蔵庫に食品を入れたいんで貴女の相手はできませんよ忍野さん」
「手伝うので家にお邪魔させてほしいでござる」
「仕方ありませんね。外で待っていると暑いでしょうし、構いませんよ」
その後、血走っていた眼とテンションがちょっと落ち着いた忍野さんと一緒に買い物袋の中身を冷蔵庫に入れていった。
冷蔵庫の中身の補充が一段落して休憩している時、クーラーをつけているのに「暑いでござるな」と言いながら何故か服を脱ごうとする忍野さんを何度も止めることになったが、あれは間違いなくわざとだったな。
最終決戦が始まった時の原作の死柄木弔と同じように、個性を無効化されても身体を自在に変化させることが可能な脳無が作り出されていましたが、ハイスペックと似たような個性を与えられている本作の殻木は、進化する脳無の作成が可能になっていたりします
ちなみにバーストエンドこと轟燈矢くんが殴ってくれと頼むヒーローは、常無先生以外だとオールマイトくらいですね
それでオールマイトからは「えぇ」とドン引きされています
そして服を脱ごうとしていた忍野さんは常無先生が止めなければ靴下以外全部脱ぐつもりだったようですね
何で靴下を残すかというと「そっちの方が拙者が興奮するからでござるな」ということらしいです
見たい番外編があれば選んでください
-
志村菜奈世代に転生
-
オールマイト世代に転生
-
緑谷くん世代に転生
-
最終話の続き